ステータスブレイク〜レベル1でも勇者と真実の旅へ〜

緑川

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蛇行する王位継承戦編1日〜3日

第四十一.五.五話 晩餐会と花火 Part 2

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「あの……完成しましたが、これからどうされるのですか?」

「すみませんが、少々お待ちください」

 颯爽と無駄に響く音に引き寄せられた使用人が、満面の笑みで温め直した白米と塩の山を差し出す。

「……ありがとう。もし宜しければ、皆様御手を綺麗にして、自分たちでお作りになられませんか?」

「宜しいのですか?」
「何分、私共は素人ですから。上手くできるかどうか……」
「失敗してしまっては、せっかくの貴重な食材を台無しにしていますのよ」

「そんなに不安がらず、とても簡単なのでご安心を」

「先代様がそう仰るのなら、お言葉に甘えて」

 そうして貴族たる振る舞いを依然として保ち続けて周囲を冷徹な眼差しで彷徨く連中を憚る事なく、一同が一つの机の上で高価なる正装の襟を折って、上流階級の人達が初めての料理に挑戦するという、二度とお目にかかれない光景を目の当たりにした。

「……皆さん、丸に作られるんですね」

 そんな皆が同じ形に揃える不思議な姿にボソッと呟けば、10代目が慌ただしく俺の背後に忍び寄る。

「この国では初代王が球状に作られて以来、そのような形になぞらえる習わしがあるとされています」

「へぇ、そうなのか」

「何か仰いましたかな?」

「いえ、他愛もない独り言です」

「……お前はやらないのか?」

「えぇ」

「ほう、まぁ人には得手不得手がある。無理はしなくていいさ」

「ただ気乗り薄なだけで、出来ないという訳では――」
「自信が無いのだろう。それとも彼奴を取り逃したことをまだ悔いているのか? 前進しない奴だな」

「いえ、ですから――」

「其処で見ていろ」

「…………少し失礼します」

 あまりに囃し立ててしまったせいか、10代目は怪訝な形相を浮かべたまま何処かへ行ってしまった。

「大人げないですね」

「ただ関係を深めたかっただけなんだがな」

「もっとやり方というものが――」
拗ねてしまったのだと反省していれば、籠手を外した10代目が飄々とした姿で舞い戻り、机に並んだ。
「そ、そうでもないみたいですね」

「私は保存用に多く作りますので、収納限界量を教えて下さいますか」

「大体、10ってところかな」

「思いの外、小さな器のようですね」

「なら、それ以上の数を収めてみるといい。そのキラキラした甲冑の隙間にでもな」

「け、喧嘩はよしましょう。此処は仲良く」

「だそうだ」

「でしたら、その口を閉じては如何ですか?」

「あぁ、お前が先に噤めばな」

「……」
「……」

「ハァ……」

 それから無駄に疲れるイベントがありつつも、無事に懐かしの握り飯を完成させ、皆一同席に着く。

「では、頂きましょうか」

「はい!」

【アイテムボックスの収納スペースが完全に満たされました。様々な具入りおにぎり×8 塩むすび×2 】

 保存はいつまでだ?

【常時魔力供給により、半永久的に保存可能です】

 全く魔力とは便利な代物だな。

 俺が徐に両手を重ね合わせる最中、皆は指を絡めるようにして手を揃えて、目をそっと瞑っていた。

「天に――」それからベリルだけが一言一句、祈りの言葉を口ずさみながら不思議な間が続いていく。

「感謝を……」

 ようやっとご馳走をお預けにされたまま延々と続く想いの綴りを終えて、皆がおにぎりを掴み取る。

「い、いただきます」

 さりげなく静かに囁き、口に運ぶ。

「っ!」

 ただ、黙々と頬張っていく。けれどそれは決して、重苦しき空気でも気まずい雰囲気でも無く、俺にとっても暖かな心地の良い至福の時間であった。

「どうだ?」

 誰よりも口一杯にご飯を詰めるベリルの頬には米粒が付いていて、その一言に緩慢に口角を上げる。

「はい! とっても美味しいです‼︎」

「そうか……それは良かった」

「こんなに美味しい物を食べたのは、初めてです」

 大袈裟な偽りのお世辞を告げる一方で、10代目は僅かにキラリと目を輝かせ、手が止まらずにいた。

「あっ、そう言えば、最後のイベントがあるんだった」

「……イベント?」

 徐に天を仰げば、運良く快晴なる大空が広がっていた。

「皆様! 少し宜しいでしょうか!」

 机に手を突いて立ち上がり、周囲の者の入り乱れた視線と方々に行き交う言葉を一点に集中させた。

「もう時期、私の地域でしか見られないとても珍しいものをお見せ致しますので、空をご覧ください」

「空……?」

 箸を止め、グラスを置き、口を塞いで、一部の用心深い連中が訝しげに小さな疑問を漏らしつつも、忙しない使用人をも含む皆んなが天を仰いでいく。

 静寂。

「……何も起こらないじゃないか」

 その瞬間、ヒューとしめやかな音を立てて上がってゆく一条の淡い光芒が天へと達すると、爆ぜる。

 ふっつりと途絶えてから跡形も無く消え去って、皆が愚痴をぶつけんとし始める頃、弾けるような乾いた音を奏でるとともに燦爛と照らす炎の玉が方々へと迸っていく。その散り際に見せる光は、皆を一様に釘付けにし、完全に心を鷲掴みにしただろう。

 そして、お前も――。

「星花……」
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