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本編
古代地下迷宮と罠の行く先
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一行を背に連れた勇者は、鬱蒼とした精霊樹林へと足を運んでいた。
草の根を、蝶よりも花よりもそっと愛でるように丁寧に掻き分けて、慎重に歩みを進めていく。
さくさくと草花を踏みしめるような音と滅入る程の翠緑が続くばかりで、一向に迷宮の入り口が見えてこないことに痺れを切らしたエルフが、長らく閉ざしていた口を開いた。
「ところで、古代の地下迷宮って何?」
「過去に大賢者の地下都市の名残だそうだ」
「地下都市?」
「全人類の移住を目的とした大規模な企画だったとのことだが、真相は定かではないな」
「でも今、私たち地上に住んでるよね?」
「大方魔物の侵入が原因で、途中断念したのだろう」
「へぇー。で、大賢者って誰?」
「与太話に花を咲かせている場合か?ハァ…っ!お前!まさか戦闘経験が無いのか!?」
「うん」
三人に戦慄が走る。
「は?」
最初に言葉を漏らしたのは勇者であった。
「……え?何?」
「東の連中は何がしたい?何が目的だ?」
不思議そうにエルフは面々を見回す。
白髪は引き攣った苦笑を浮かべて、魔族は口を噤み、勇者は血走った眼を地に向けていた。
勇者は無愛想極まっていた仏頂面をあっさりと剥がし、骨張った小さき肩に両手を乗せ、指先の節々に力を込めた。
「な、何?」
「……決して傍を離れるな!絶対にだ!!」
「うん……」
勇者の狂気を孕んだ面差しに気圧されたエルフは、息を呑みながら小さく頷いた。
「そんなに戦力を割きたくないのかね。流石は東の国、やる事なす事皆目検討つかねぇ」
一呼吸終えた一行は、再び歩み出した。
「なんか樹蟻の巣みたいだね」
「そうだな」
土泥で塗り固められたかのような縦に建てられし筒状の入り口に、エルフは僅かに目を光らせる。
「これ作ったのって誰?」
「そう何度も恥を晒せるか?普通」
「フローズ・クライスターと四人の弟子だ」
「へぇー。ん?あれ?……って!誰も言わないからつい忘れちゃってたけどさ!まだ、みんな自己紹介してなくない!?」
「そうかもしれないな」
勇者たちはエルフをあしらい、迷宮の入り口への第一歩を踏み出そうとしていた。
「え?そんな流すような内容?結構大事だと思うんだけど!!」
慌ただしく追いかけるエルフと、闇夜たる道行きが、三者の足を僅かに躊躇させた。
「どうしたの?」
「……」
「ねぇ!早く行こう?」
最初に其の先へと踏み込んだのは、エルフだった。
一閃。
一行は一瞬にして白き眩い光に包まれた。
「チッ!おい!馬鹿僧侶!!」
「馬鹿じゃない!」
「誰にでもいいから、しがみつけ!」
「転送か」
「あぁ、恐らくだが。相当の手練だ」
「呑気なこと言ってる場合か!早く逃げ…」
勇者一行は煌々なる輝きの消滅とともに、跡形もなく消え去った。
「ハァ……」
隧道たる暗闇に双方、仁王立ち。
怪訝に顔を歪める勇者と、地に杖を突き立てし老人は、数メートルと距離を空けての、睨み合いが続いていた。
「御仁、此れは貴方の仕業か?」
「左様」
色褪せた白き短髪の男は、黒き外套を仄かに靡かせ、皺の際立つ細めた双眸で、不敵な笑みを浮かべていた。
「ならば、剣を交えようか」
掌に霜が降りてゆく。
草の根を、蝶よりも花よりもそっと愛でるように丁寧に掻き分けて、慎重に歩みを進めていく。
さくさくと草花を踏みしめるような音と滅入る程の翠緑が続くばかりで、一向に迷宮の入り口が見えてこないことに痺れを切らしたエルフが、長らく閉ざしていた口を開いた。
「ところで、古代の地下迷宮って何?」
「過去に大賢者の地下都市の名残だそうだ」
「地下都市?」
「全人類の移住を目的とした大規模な企画だったとのことだが、真相は定かではないな」
「でも今、私たち地上に住んでるよね?」
「大方魔物の侵入が原因で、途中断念したのだろう」
「へぇー。で、大賢者って誰?」
「与太話に花を咲かせている場合か?ハァ…っ!お前!まさか戦闘経験が無いのか!?」
「うん」
三人に戦慄が走る。
「は?」
最初に言葉を漏らしたのは勇者であった。
「……え?何?」
「東の連中は何がしたい?何が目的だ?」
不思議そうにエルフは面々を見回す。
白髪は引き攣った苦笑を浮かべて、魔族は口を噤み、勇者は血走った眼を地に向けていた。
勇者は無愛想極まっていた仏頂面をあっさりと剥がし、骨張った小さき肩に両手を乗せ、指先の節々に力を込めた。
「な、何?」
「……決して傍を離れるな!絶対にだ!!」
「うん……」
勇者の狂気を孕んだ面差しに気圧されたエルフは、息を呑みながら小さく頷いた。
「そんなに戦力を割きたくないのかね。流石は東の国、やる事なす事皆目検討つかねぇ」
一呼吸終えた一行は、再び歩み出した。
「なんか樹蟻の巣みたいだね」
「そうだな」
土泥で塗り固められたかのような縦に建てられし筒状の入り口に、エルフは僅かに目を光らせる。
「これ作ったのって誰?」
「そう何度も恥を晒せるか?普通」
「フローズ・クライスターと四人の弟子だ」
「へぇー。ん?あれ?……って!誰も言わないからつい忘れちゃってたけどさ!まだ、みんな自己紹介してなくない!?」
「そうかもしれないな」
勇者たちはエルフをあしらい、迷宮の入り口への第一歩を踏み出そうとしていた。
「え?そんな流すような内容?結構大事だと思うんだけど!!」
慌ただしく追いかけるエルフと、闇夜たる道行きが、三者の足を僅かに躊躇させた。
「どうしたの?」
「……」
「ねぇ!早く行こう?」
最初に其の先へと踏み込んだのは、エルフだった。
一閃。
一行は一瞬にして白き眩い光に包まれた。
「チッ!おい!馬鹿僧侶!!」
「馬鹿じゃない!」
「誰にでもいいから、しがみつけ!」
「転送か」
「あぁ、恐らくだが。相当の手練だ」
「呑気なこと言ってる場合か!早く逃げ…」
勇者一行は煌々なる輝きの消滅とともに、跡形もなく消え去った。
「ハァ……」
隧道たる暗闇に双方、仁王立ち。
怪訝に顔を歪める勇者と、地に杖を突き立てし老人は、数メートルと距離を空けての、睨み合いが続いていた。
「御仁、此れは貴方の仕業か?」
「左様」
色褪せた白き短髪の男は、黒き外套を仄かに靡かせ、皺の際立つ細めた双眸で、不敵な笑みを浮かべていた。
「ならば、剣を交えようか」
掌に霜が降りてゆく。
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