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終わらない仕事
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あの出来事から遡ること、数時間前。
「今日も晴れてんなぁ。はぁ……腹減った」
今日も俺は公園のベンチで、空を見上げながら、たわいもない事を口にしていた。
が、そんな暇はない。まだ仕事の半分も終わってないのにも関わらず、公園で空を見上げ怠けている現状。
やる気はある、あるのだが未だ朝ごはんすら食べていないのだ。動くわけがない。いや、正確に言うと食べれない。何故か?金が無いからだ。一銭もと言う訳では無いが、毎日3食分程の金額は持ち合わせていない。
一日一食、早朝に食事を取ると夜には必ず空腹で吐き気を催し眠れなくなるので絶対に夜に食べる様にしなくてはならない。
にしても月曜から土曜まで毎日仕事。早朝六時から深夜二時まで。休みは日曜だけ。それで給料はたったの二十万以下。
毎日激務で命も懸かってるって言うのにこの安さ。デビルハンターに労働基準法が果たしてあるのだろうかと疑うほどだ。デビルハンターは日本だけでも二十万人近くいるのにも関わらず、何でこんなに激務で格安なんだ!!とお偉方に一言申してやりたい。
「おい!黒瀬!」不満を爆発しそうになっていると、公園の入り口辺りから女性の怒鳴り声がした。こちらに駆け足で近づいてくる足音。聞き馴染みのある声、だいたい察しはつきながらも、視線を声のする方へと向ける。
「あー。七瀬さんお疲れ様です」
「サボりか?サボりだよな?お前、仕事舐めてる?」
やっぱりだ。この誰から見ても整った顔立ちに、黒髪ショートヘア。そして全く似合わないカーキ色の軍服。面倒い上司のお出ましだ。
「やー黒瀬君」
そしてもう一人の上司、茶髪ロングの可憐な女性。
「相川さんお疲れ様です」
「おい、聞いてるか黒瀬!お前まだ仕事終わってないよな?公園でサボる暇があると、本気で思ってんのか?」
「いやだなぁ、……休憩ですよ休憩。ん?あれ?そういえば、なんで俺が此処に居るって分かったんですか?」
「ん?何でって、GPSだよ、GPS。少し前に渡しただろ、忘れたのか?」腕を組み不思議そうな顔で問いただしてきた。GPS…?
「あー、そうでした」
完全に忘れていた。デビルハンターは常に命の危機に晒されているため、連絡手段の無い時の緊急時の為に、小型GPSを強制で持たなくてはならない。
しかも二個も。そういえばトランシーバーも同じタイミングで渡されたが覚えがあるが、確かどちらも初日に壊した覚えがある。
何度買い直してもすぐ壊れるので今は小型GPS一つのみ。正直心許無いが、そんなポンポン買えるほど安くもないので仕方がない。
「ていうか俺の休憩に気付くとか、どんだけ確認してるんですか。もしかして暇ですか?」
「あぁ、確かに暇だな君と違って仕事を終えるのが早いから」
と座る俺を見下ろしながら、煽るように捲し立てた。
「確認回数は大体、一日で約300回程度だな。特にお前は無線機を持ってないんだからな」
そこまでするのならもはやトランシーバーを買った方が楽なのではと言いたかったが流石に図々しいので、グッと堪えて話を続けた。
「はぁ、ど、どうも。ていうか疲れないんですか?」
「疲れるさ。だが命が懸かってるんだ、どれだけ疲れてもやめるわけにはいかないよ」
「は、はぁ」
真剣な眼差しでこちらを見つめ、思わず謝ってしまいそうになってしまった。意識の違いというかなんというか、俺と先輩との仕事に対しての熱と格の違いが身にしみて分かる瞬間だった。
「で、パトロール終わったの?黒瀬君」
「え、えーと。ま、まだです」
もうお昼過ぎなのにまだ半分も終えてないなんて口が裂けても言える訳がない。裂けたら言えないが。納得のいく言い訳を必死に考えようと目線を地に向けた。
「はぁ、まだ終わってないのか。無能な部下を持つと大変だよ全く」
そう言うと組んでいた腕を解き、呆れた様子で、俺の座っている一つ横のベンチへと腰をかけた。
ほんと無茶な仕事を格安で押し付ける会社には困るよ全く。
「もう仕方ないなぁ、この相川お姉さんが半分手伝ってあげよう!」
「ほ、本当ですか⁉︎あ、ありがとうございます!」
にんまりとした笑顔を見せ、優しく言い寄るお姉さん!!
「おい!甘やかすな。いつまで経っても成長しないぞ。いいのか黒瀬、このままじゃずっと無能ままだぞ?」「俺が無能なんじゃなくて仕事内容がおかしいんですよ!!」
「そんなに嫌なら辞めちゃえば?黒瀬君バイトでしょ?」
「いやまぁそうなんですが。少し……やらないといけない事があるので」
『……ん?』
「いいから早く行きません?相川先輩」
一瞬空気が凍りついたが、気にせず話を進める。
「そうだね!さぁ、行くよ!」
と、言いながらもポケットから飲み物を取り出して、ベンチへと腰をかけ俺の横に座る先輩……。
「あの先輩」
「何だね黒瀬君や」
「言ってる事とやってる事が真逆なんですが」
「大丈夫、大丈夫。私はすぐ終わるからさ」
「は、はぁ」
まぁ確かに俺と相川さんじゃ回る速さは天と地の差だが、少し納得いかない。だが人にやってもらうのだから文句も言えない。でもやっぱり納得はいかない。
「言っとくけど、これ貸しだからね?今度ご飯でも連れてっよ?」
「へーい。じゃあ担当なんですが、8区は俺がやりますので、7区お願いしますね」
「オッケー。気をつけてねー。黒瀬君回るの遅いんだから小走りで行きなよ」
「分かりました。行ってきます」
一言多いんだよなぁと思いながらも、重い腰を上げ、10分程の雑談を終えた俺は、8区へと足を向けた。
「今日も晴れてんなぁ。はぁ……腹減った」
今日も俺は公園のベンチで、空を見上げながら、たわいもない事を口にしていた。
が、そんな暇はない。まだ仕事の半分も終わってないのにも関わらず、公園で空を見上げ怠けている現状。
やる気はある、あるのだが未だ朝ごはんすら食べていないのだ。動くわけがない。いや、正確に言うと食べれない。何故か?金が無いからだ。一銭もと言う訳では無いが、毎日3食分程の金額は持ち合わせていない。
一日一食、早朝に食事を取ると夜には必ず空腹で吐き気を催し眠れなくなるので絶対に夜に食べる様にしなくてはならない。
にしても月曜から土曜まで毎日仕事。早朝六時から深夜二時まで。休みは日曜だけ。それで給料はたったの二十万以下。
毎日激務で命も懸かってるって言うのにこの安さ。デビルハンターに労働基準法が果たしてあるのだろうかと疑うほどだ。デビルハンターは日本だけでも二十万人近くいるのにも関わらず、何でこんなに激務で格安なんだ!!とお偉方に一言申してやりたい。
「おい!黒瀬!」不満を爆発しそうになっていると、公園の入り口辺りから女性の怒鳴り声がした。こちらに駆け足で近づいてくる足音。聞き馴染みのある声、だいたい察しはつきながらも、視線を声のする方へと向ける。
「あー。七瀬さんお疲れ様です」
「サボりか?サボりだよな?お前、仕事舐めてる?」
やっぱりだ。この誰から見ても整った顔立ちに、黒髪ショートヘア。そして全く似合わないカーキ色の軍服。面倒い上司のお出ましだ。
「やー黒瀬君」
そしてもう一人の上司、茶髪ロングの可憐な女性。
「相川さんお疲れ様です」
「おい、聞いてるか黒瀬!お前まだ仕事終わってないよな?公園でサボる暇があると、本気で思ってんのか?」
「いやだなぁ、……休憩ですよ休憩。ん?あれ?そういえば、なんで俺が此処に居るって分かったんですか?」
「ん?何でって、GPSだよ、GPS。少し前に渡しただろ、忘れたのか?」腕を組み不思議そうな顔で問いただしてきた。GPS…?
「あー、そうでした」
完全に忘れていた。デビルハンターは常に命の危機に晒されているため、連絡手段の無い時の緊急時の為に、小型GPSを強制で持たなくてはならない。
しかも二個も。そういえばトランシーバーも同じタイミングで渡されたが覚えがあるが、確かどちらも初日に壊した覚えがある。
何度買い直してもすぐ壊れるので今は小型GPS一つのみ。正直心許無いが、そんなポンポン買えるほど安くもないので仕方がない。
「ていうか俺の休憩に気付くとか、どんだけ確認してるんですか。もしかして暇ですか?」
「あぁ、確かに暇だな君と違って仕事を終えるのが早いから」
と座る俺を見下ろしながら、煽るように捲し立てた。
「確認回数は大体、一日で約300回程度だな。特にお前は無線機を持ってないんだからな」
そこまでするのならもはやトランシーバーを買った方が楽なのではと言いたかったが流石に図々しいので、グッと堪えて話を続けた。
「はぁ、ど、どうも。ていうか疲れないんですか?」
「疲れるさ。だが命が懸かってるんだ、どれだけ疲れてもやめるわけにはいかないよ」
「は、はぁ」
真剣な眼差しでこちらを見つめ、思わず謝ってしまいそうになってしまった。意識の違いというかなんというか、俺と先輩との仕事に対しての熱と格の違いが身にしみて分かる瞬間だった。
「で、パトロール終わったの?黒瀬君」
「え、えーと。ま、まだです」
もうお昼過ぎなのにまだ半分も終えてないなんて口が裂けても言える訳がない。裂けたら言えないが。納得のいく言い訳を必死に考えようと目線を地に向けた。
「はぁ、まだ終わってないのか。無能な部下を持つと大変だよ全く」
そう言うと組んでいた腕を解き、呆れた様子で、俺の座っている一つ横のベンチへと腰をかけた。
ほんと無茶な仕事を格安で押し付ける会社には困るよ全く。
「もう仕方ないなぁ、この相川お姉さんが半分手伝ってあげよう!」
「ほ、本当ですか⁉︎あ、ありがとうございます!」
にんまりとした笑顔を見せ、優しく言い寄るお姉さん!!
「おい!甘やかすな。いつまで経っても成長しないぞ。いいのか黒瀬、このままじゃずっと無能ままだぞ?」「俺が無能なんじゃなくて仕事内容がおかしいんですよ!!」
「そんなに嫌なら辞めちゃえば?黒瀬君バイトでしょ?」
「いやまぁそうなんですが。少し……やらないといけない事があるので」
『……ん?』
「いいから早く行きません?相川先輩」
一瞬空気が凍りついたが、気にせず話を進める。
「そうだね!さぁ、行くよ!」
と、言いながらもポケットから飲み物を取り出して、ベンチへと腰をかけ俺の横に座る先輩……。
「あの先輩」
「何だね黒瀬君や」
「言ってる事とやってる事が真逆なんですが」
「大丈夫、大丈夫。私はすぐ終わるからさ」
「は、はぁ」
まぁ確かに俺と相川さんじゃ回る速さは天と地の差だが、少し納得いかない。だが人にやってもらうのだから文句も言えない。でもやっぱり納得はいかない。
「言っとくけど、これ貸しだからね?今度ご飯でも連れてっよ?」
「へーい。じゃあ担当なんですが、8区は俺がやりますので、7区お願いしますね」
「オッケー。気をつけてねー。黒瀬君回るの遅いんだから小走りで行きなよ」
「分かりました。行ってきます」
一言多いんだよなぁと思いながらも、重い腰を上げ、10分程の雑談を終えた俺は、8区へと足を向けた。
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