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VSタイムスリップ

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「さぁ!スペクタートーナメント、セミファイナル!次の試合は……これだーー!!」
 会場には、司会、マッキーの声が響き渡る。会場のボルテージは最高潮。
 なぜかって……?なんてったってこの僕がいるんだから……!
「超新星スペクター!金剛寺 成こんごうじ なる!スペクトルは……『メタルボデー』!」
 僕が会場へ歩みを寄せる。あぁ、そこまで歓声を浴びせなくても……まぁ確かに?僕ってイケメンだし?まぁ、気持ちもわからなくはないけどぉ……
「対する相手は……最強と言えばコイツ!馬廠 丈ばしょう だけ!スペクトルは……『タイムスリップ』!」
 相手の丈も会場へ。こいつが相手とは、手強い。でも、僕に勝てるかな?
 僕の体は、俺でも破れない。

「レディーー……ファイッ!!!」
 ゴングがなる。すかさず、丈が俺との間合いを一気に縮める。
「うぉら!」
 丈が俺に一撃目の拳を打ち込むが、それじゃあ余裕で反撃を食らっちまうぞ。
 そんな瞬間、丈は元の立ち位置まで一瞬にして戻る。
 そう、これが丈のスペクトル ーーこの世界では、能力のことはスペクトルと呼ばれているーー『タイムスリップ』だ。
 立ち位置だけ過去へタイムスリップする。まぁ、タイムスリップで傷を修復といったことは出来ないが、こういったズルすぎる戦い方こそが、丈の醍醐味だ。
『『『うおーーー!!!』』』
 会場が爆発する。丈のお得意芸だが、何度やってもこの反応だ。
「そんないじ汚ぇ戦い方で満足かよ!」
「あぁ確かに恥ずかしいかもな……まぁでもそういう文句は優勝してから言ったらどうだ!?」
「ぐはっっっ」
 丈は先程と同じ要領で俺に拳を入れる。
「でも、丈さんよぉ?俺の能力知ってるなら、この戦い方無謀なんじゃあないですかぁ?」
 俺は狼狽えながらも攻めの姿勢に入った。
「そうだな。でも成、お前は俺のスピードについていけないだろ!!!」
 丈は全く同じノリで、ものすごいスピードで間を詰め、ものすごいスピードで殴り、ものすごいスピードで距離を開ける。
「ぐはっっっ」「ぼへっっっ」「どほぉぉっっっ」
 ダメだ、ずっと丈のターンだ。この状況を打破するには……見破れ……あいつの襲ってくるタイミング……
「勝負ありかもなぁ成。うぉ」今
「らぁぁぁ!!!……はっ!」
「言ったろ?無謀だって」俺の体は全身が金属になっていた。
 俺のスペクトル、『メタルボデー』は体の一部分を金属にする能力だ。
 元は錆びたものにしかならないが、鍛錬を積みまくってこうなった。硬いから守りにも攻撃にも使える。
「さぁて、反撃開始だ!」
 金属となることで、強烈な硬度を手に入れた手脚で丈を殴り、蹴り、ついでに踏んで。
 丈のタイムスリップを使わせる暇もなく、猛スピードで攻撃をくらわせる。
 勝敗は一瞬にして逆転した

 勝利した僕は遂に、決勝戦への参加権が与えられる。
「さて!決勝戦!最強の男、馬廠丈を破ったこの男金剛寺との対戦相手は!」
『うぉーーー』と会場が一体化する。
「本名不明!スペクトル『ノーバートール』!バーサーカー君!」
 ごっつガタイがいいやつがきやがった。まぁ、こいつの噂はかねがね。
 でも僕には勝てない……だって……
 僕の体は、俺でも破れ「優勝は!バーサーカー君!」


 へ?
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