誤楽

ツチノコのお口

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誤楽

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「全国民のみなさん!日本は今、未だかつてない経済難に陥っています!また、日本は今、未だかつてない無職率になっています!20代の無職率は30%です!なぜこのようになってしまうのか?それはこの世の中には娯楽が溢れすぎているのです!それも無料の娯楽がです!無料で楽しむことができるのならば働く必要がないのです!正に誤った娯楽とでも言うべきでしょうか?そこで、有料の物も無料の物も娯楽を全面的に規制することで、無職率を下げ、経済難から脱却することができます!今我慢しないといつ我慢するんですか!?ぜひ、娯楽排除法の可決をお願いします!」

 政治家は自分たちが楽をして経済が復活するということで、全員賛成となり可決された。
 翌月からは娯楽排除法が施行されることとなった。
 娯楽排除法では、ゲームやテレビだけでなく、必要以上に3大欲求を満たす行為、映画、ネットを使うことも禁止となった。違反者には懲役1年から3年。罰金10万円以上。
 この法律によって潰れた娯楽系企業の従業員らは、就職がうまくいく手はずを踏まれることになり、無職者もありとあらゆる娯楽が潰され、就職を始めた。
 結界、全体の無職率は5%以下となり、残りの5%は富豪もしくはホームレスといった、働かなくても大丈夫もしくは働く暇がない人のみになった。
 経済も右肩上がりに成長し、あと1年もすれば経済は復活するだろうと政府は考えていた。
 増税をし、政治家の懐も大きく重くなっていた。

 1年後
 娯楽排除法はまだ施行されたままであった。なぜなら、経済の最盛期にはまだ届いていないからであった。
 依然として無職率は5%。しかし、この5%は確率としてだけだ。
 娯楽もなく、働くことしかない社畜が大量に生まれ、過労死していく現象が多発し、人口は5割にまで減ることとなった。
 政府はこの問題に危惧し、遂に娯楽排除法を廃止することを発表した。
 長年溜まった国民の遊び欲は勢いよく爆発し、ゲームやスマホの売上が勢いよく伸び、有給を使う人が一気に現れることとなった。
 しかし、長年溜まった鬱憤が一瞬にして晴れるわけもなかった。
 20代の無職率が勢いよくあがり、50%もの人が無職となっていたのだ。
 政府は1年もしないうちに娯楽排除法を再び施行することとした。

 しかし、数ヶ月経っても効果は現れなかった。
 ゲームやウェブの海賊版が出回っていたのだ。また排除されてしまうかもしれないと思った優秀な者たちの手によって、完璧と言えるほどの出来を誇った海賊版サイトが出回った。
 この法律が意味を成すことはなくなり、無職率は上がっていく一方。
 そこで政府は、海賊版の利用者を問答無用で処刑にするとし、一日一回の家宅捜索も行われるとされた。
 これにより、ただでさえ減っていた人口が5割に減り、世界中で日本政府に対する恨みが募っていった。
 そして、あるとき、その恨みが爆発することになる。

 政府を潰すことに賛成した者たちは今、国会議事堂の目の前に集まっている。その数およそ100000人以上。
 政治家は武力で抵抗を進めるが、たかが数人殺したところですずめの涙。
 人の波は国会へと流れ、ありとあらゆる武器で攻撃・破壊・殺人を繰り返した。
 避難した国会議員も外で待っていた仲間たちによって一人残らず殺害されていった。
 こうして、1時間もしない間に、政治家は全員死んでしまったのである。

 さて、政府は誤った方法で楽に稼ごうとした。
 娯楽が必要かどうかは置いておこう。
 政府は今、本当に必要なことをしているのか。
 そして、それになんの疑いも持たずに従い、最後にそれが爆発して悲惨な目に合わないだろうか?
 誤った認識で楽に生きるのではない。これは将来日本で起きることなのかもしれないのだから…
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