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覚悟

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 ある荷物が届いた。
 それは最近急に家から姿を消した、認知症気味の母からだった。
「訳あって家を出ないと行けなくなりました」
 入っていた手紙にはそんな言葉が書いてあった。訳ってなんだよ説明しろよ。
 それに、思っていたよりも沢山の内容物。野菜とかティッシュとか。いかにもな仕送り。
 だから違和感が凄かった。1枚、CDが箱の奥底に眠っていた。
「あんたに、最後に1曲送らせてください。お母さんの曲じゃないけど、聞いててめっちゃ泣いちゃった曲だから」
 なんか……違和感……

 ♢

 おい、早く聞けよ!
 俺が殺すことにしたのは「空手 傑そらて すぐる」。
 有名探偵として今バズってるやつ。頭が凄いのはネックだが、それ以上に好都合がでかかった。
 最近、こいつの母親が夜中、ここら辺を徘徊してた。いままでは遊ぶには物足りないから手付けてなかったけども、今回はこいつを使えば意外と簡単に課題を達成出来るかもしれなかった。
「殺されたくなければ俺の言うことを聞け」と誘拐してから言えば余裕だった。
 可哀想なことに、あのお母さんは自分の息子のことを忘れてたのか簡単に住所を教えてくれたよ。しかも、家に侵入する時間を作ってくれたし。
 もちろんその後解放したふりして殺したけどな。

 家に侵入した時に、あいつの部屋に監視カメラを取り付けた。あとは荷物を送って聞かせれば、俺の勝ちだ。
 だが、何を渋っているのか全く聞こうとしない。なんだよ!?ちゃっちゃときけよ!?
 あ、やっと聞いた。フルで聞かなきゃいいだけだ。冒頭数秒だけ聞こう。地味に俺も気になるしな。
 カメラの音量をオンにすると、CDのガチャっと言う音がした。しかし、流れてきたのはこう叫ぶ男の声だった。
「再生を止めろ!これは呪いのCDだ!聞いたら死ぬぞ!」
 しまった……!試聴をしていなかったのが間違いだった!それにこんなのをフルで聞かせるなんて無理だろ!!
 男は急いでCDを止める動きをした後、当たりを見回し、カメラに気づいたのか、こっちに向かってペンなどを投げてきた。ひとつが電源に当たったのか、映像がプツリと切れる。
 不味い。これはまずい。曲を聞かせることが難しいだけでない。そもそものCDが傑の手に渡ってしまったんだ。処分とかされたらおしまいだ。

 ♢

 カメラに気づいてよかった……あのままだったら殺されていたかもしれない。
 さて次はどうしよう。あんなことをされて黙ってはいられない。それに、母の名前を勝手に使いやがったのも許せない。
 あれは母の送った荷物じゃない。俺の母は……母さんは……息子がいた事を忘れていたからだ。俺のことは兄弟的な存在だって思ってるんだ。
 そんな母さんに漬け込んで俺を陥れようとしたやつを……俺は許さない……許さない!!!コロしてやる!!この!CDで!!!
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