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第三章:ン・キリ王国、モンスターの大攻勢を受けるのこと。
第十七節:ン・キリ王国、モンスターの大攻勢を受けるのこと。(5)
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「生きている者はどれだけいる!」
「はいっ、近衛兵残存、おおむね千八百名!」
「二百人もやられたか……。死者の名前は」
「いえ、それが……」
「あぁ?」
「……一応、生きてはいますがもはや戦闘能力が乏しく、役には立たないかと……」
「可惜使い捨てるわけにもいくまい、欠員として勘定しておけ」
なぜ、生きているのにも関わらず欠員なのか。それはこの世界の戦闘能力という仕組みを知る必要がある。この世界では戦闘は主に行動力の消費を以て行う必要が存在した。ただ普通に動くだけであれば熱量を消費するだけで済むが、近衛兵団のような戦闘技能はそれ専門のリソースが存在し、それを消費することによって超人的な戦闘を可能にしていた。そのリソースが行動力であり、我々の世界の概念で意訳すると「マッスルポイント」という感じである。
「で、モンスターは。さすがに全滅させたとは思うが……」
「ああ、そちらは大丈夫です。斥候が探っていますが付近にモンスターはいないようです」
「だと、いいが……」
ン・キリ王国、首都レチトツ。魔物の死体だらけのその都市に生きているのは、幸運にも人間だけであった。ロベンテの活躍や後続の自警団員の増援などもあって、どうにかこうにか都市陥落という最悪の事態にはならなかった。だが、それは被害が非常に大きいことも意味していた……。
「……国王陛下はどうした」
「それが……」
「おい、まさか……」
「いえ、さすがに亡くなってはおりません。ただ、少々深手を負っており、神官が治療している最中です」
「そうか、とはいえ予断は許されんな。一応城市の中だが、城壁が破損している以上どこから襲ってくるかわからん」
「隊長っ!!」
「おう、どうした」
「……招かれざる客のようです……」
「あぁ?」
ロベンテの前にいた「招かれざる客」、それは。
「ふっふっふー、ここで張っていて正解だったッス」
「所詮人間どもの浅知恵などイカサーマ宇宙大将軍様はお見通しッス!」
「いけ皆の者、今こそン・キリ王国を叩き潰し人間どもの補給を絶つのだ!」
……ショケンネズミの群れ、しかも隊長格と思われるリョーライまで揃った魔物の別動隊であった……。
「くっ……」
「観念したか人間ども、ここならアイバキップ様を殺した撤退術は使えまい……」
ポンポンとこん棒を鳴らすリョーライ。ショケンネズミもまた、槍をしごきつつ構えを取っていた。
と、その時である。
「獲物を前に舌なめずりをするのは三流の証拠だ、これだから魔物は……」
「誰ッス!?」
と、ショケンネズミが反応する最中にも、瞬く間に魔物の別動隊の命を刈り取る謎の人間。その、正体は。
「修行が足らんぞ、トゥオーノ」
「師匠っ!?」
「師匠?」
「久しぶりだな、トゥオーノ」
「師匠っ、生きてらしたんですか!?……いや、そんなはずは……」
「おう、一応あの世は見てきたんだがな、追い返されたわ」
「師匠っ……」
思わず、顔をかがめるロベンテ・トゥオーノ。それは、どう形容したらいいかわからない奇妙な表情であった。
「しかし、近衛隊長になっていたとはな。(あれほど宮仕えを嫌っていたのに、どういう風の吹き回しだ?)」
「そ、それは……」
「隊長さん?」
「る、ルーチェ、この方はだな……」
「さて、積もる話は後だ。今は、王国を復興せんとな」
真剣な顔で、咳ばらいをしつつ立ち上がる影。先ほどまで神官の治療を受けていたン・キリ王国国王ン・ヅニ・クイである。
「さて、諸君。しんどそうなところにこんなことを告げるのはいささか気が引けるが、復興作業だ。故郷を立て直すぞ!」
「はいっ、近衛兵残存、おおむね千八百名!」
「二百人もやられたか……。死者の名前は」
「いえ、それが……」
「あぁ?」
「……一応、生きてはいますがもはや戦闘能力が乏しく、役には立たないかと……」
「可惜使い捨てるわけにもいくまい、欠員として勘定しておけ」
なぜ、生きているのにも関わらず欠員なのか。それはこの世界の戦闘能力という仕組みを知る必要がある。この世界では戦闘は主に行動力の消費を以て行う必要が存在した。ただ普通に動くだけであれば熱量を消費するだけで済むが、近衛兵団のような戦闘技能はそれ専門のリソースが存在し、それを消費することによって超人的な戦闘を可能にしていた。そのリソースが行動力であり、我々の世界の概念で意訳すると「マッスルポイント」という感じである。
「で、モンスターは。さすがに全滅させたとは思うが……」
「ああ、そちらは大丈夫です。斥候が探っていますが付近にモンスターはいないようです」
「だと、いいが……」
ン・キリ王国、首都レチトツ。魔物の死体だらけのその都市に生きているのは、幸運にも人間だけであった。ロベンテの活躍や後続の自警団員の増援などもあって、どうにかこうにか都市陥落という最悪の事態にはならなかった。だが、それは被害が非常に大きいことも意味していた……。
「……国王陛下はどうした」
「それが……」
「おい、まさか……」
「いえ、さすがに亡くなってはおりません。ただ、少々深手を負っており、神官が治療している最中です」
「そうか、とはいえ予断は許されんな。一応城市の中だが、城壁が破損している以上どこから襲ってくるかわからん」
「隊長っ!!」
「おう、どうした」
「……招かれざる客のようです……」
「あぁ?」
ロベンテの前にいた「招かれざる客」、それは。
「ふっふっふー、ここで張っていて正解だったッス」
「所詮人間どもの浅知恵などイカサーマ宇宙大将軍様はお見通しッス!」
「いけ皆の者、今こそン・キリ王国を叩き潰し人間どもの補給を絶つのだ!」
……ショケンネズミの群れ、しかも隊長格と思われるリョーライまで揃った魔物の別動隊であった……。
「くっ……」
「観念したか人間ども、ここならアイバキップ様を殺した撤退術は使えまい……」
ポンポンとこん棒を鳴らすリョーライ。ショケンネズミもまた、槍をしごきつつ構えを取っていた。
と、その時である。
「獲物を前に舌なめずりをするのは三流の証拠だ、これだから魔物は……」
「誰ッス!?」
と、ショケンネズミが反応する最中にも、瞬く間に魔物の別動隊の命を刈り取る謎の人間。その、正体は。
「修行が足らんぞ、トゥオーノ」
「師匠っ!?」
「師匠?」
「久しぶりだな、トゥオーノ」
「師匠っ、生きてらしたんですか!?……いや、そんなはずは……」
「おう、一応あの世は見てきたんだがな、追い返されたわ」
「師匠っ……」
思わず、顔をかがめるロベンテ・トゥオーノ。それは、どう形容したらいいかわからない奇妙な表情であった。
「しかし、近衛隊長になっていたとはな。(あれほど宮仕えを嫌っていたのに、どういう風の吹き回しだ?)」
「そ、それは……」
「隊長さん?」
「る、ルーチェ、この方はだな……」
「さて、積もる話は後だ。今は、王国を復興せんとな」
真剣な顔で、咳ばらいをしつつ立ち上がる影。先ほどまで神官の治療を受けていたン・キリ王国国王ン・ヅニ・クイである。
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