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第二章:ゲヘゲラーデン、責任を感じてビダーヤ村を去り旅路に着くのこと。

第十六節:団長とゼス、クヴィェチナ達の援護のもと魔物を倒し、レイ・チン、いよいよ焦り始めるのこと。

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「ふっ、ちっ、はっ!」
 自警団団員を食い殺されたこともあって、いきり立ち魔物を斬り殺す団長。一撃一撃が魔物の肉を裂き、骨を断ち、そのあまりにも強い太刀筋は防がれることを前提で防いでいる相手の刃ごと叩き切るという剛腕を前提とした剣術であった。一方で、
「せいっ!やあっ!」
ゼスの太刀筋はそれとは違い、自分が未熟な子供であることを考え抜いた果てにできた、遠心力や相手の隙などを衝いた、鋭利なる太刀筋であった。だが、斯様に一方的に魔物に対して彼らが優勢に立てるのには訳が存在していた。
「お嬢ちゃん、なかなか筋がいいねえ」
「私だって、攻撃魔法だけが取り柄じゃないってところを見せなくちゃ!」
 魔法により、ゼスたちの動きはかなり強化されていた。さらに言えば……。
「ええいっ、こうも乱戦だと魅了の術も利きゃしない!」
 レイ・チンの得意な分野はどうやら魅了及び傀儡化であったことから、彼女はアイバキップと違い、正面戦闘になると味方の魔物へかける補助魔法にすら事欠く有様であった。自警団員を食い殺されたという団長の怒りによる気迫もあった。ゼスの父が即席とはいえ指導したことによる補助魔法要員の数が増えていたこともあった。だが、何よりもレイ・チンにとって想定外だったのは……。
(やはり昨夜に泣き別れにされた分、魔力に乱れが出ているわね……)
 ……昨夜、ゼスの手によって思いきり首を切り落とされたがゆえに傷の修復に魔力の大部分を取られたことによる、全力全開で魔力を使えないレイ・チンの不調であった。悪魔である以上、首を斬られたり胸に何か所も風穴があいたぐらいで死ぬことはなかったものの、その傷の修復に魔力の大部分を使うという意味では、肉体的ダメージも決して悪魔対策では無意味ではなかった。むしろ正体を現す前の悪魔相手には、肉体を傷つけ魔力を乱すことは常套戦術とすら言えた。
 だが……。
「ちぃぃっ、あの魔女め、どれだけの魔物を連れてきた!」
「団長、後ろ!」
「!」
 金属と金属が強くぶつかる音がした。団長はかろうじて相手の攻撃を受け止めたものの、明らかに太刀筋には疲弊の色が見え始めていた。
「ふふっ、降参するなら今のうちよ?」
「誰がっ!」
 徐々にだが、疲弊しつつある自警団員たち。一方で、レイ・チンらも優位に立てない事情が存在した。無理もない、先ほど述べた通り無理やりくっつけたとはいえちぎれた首から魔力が漏れ出したままであり、刻一刻と現界できる時間に限界が近づきつつあった。
 ……そして、「こと」は起きた。
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