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第二章:ゲヘゲラーデン、責任を感じてビダーヤ村を去り旅路に着くのこと。

第一節:ゼス、師匠の許可をもらい自警団に入団するのこと。(前)

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 あれから、時は流れて2月も半ばになった頃の事である。魔法が一通り使えるようになったゼスは、ゼンゴウの腕前であることをいいことに相変わらず剣の師匠であるシャッタ・フォウにこき使われていた。
「さて、ゼス。お前もそろそろ弟子の育成を行ってもいいころだ、俺もあんまり大勢の弟子を同時に教えることはできん。誰ぞ見繕って持っていくといい」
 猫の子でも与えるかのようにゼスの弟弟子のうちいずれかをゼスに弟子として持っていけと命令するフォウ。それはフォウにとって孫弟子といえる存在になると同時に、ゼスにとっては初めての弟子であった。
「師匠、僕はまだ魔物すら倒せないんですよ?」
 案の定、不安がるゼス。確かに彼は、王宮に行くまでに全滅しそうになり、また王宮でも精々近衛隊長が時間を稼いでいる間に援兵を呼びに行ったくらいしかしていなかったので、自信がないのも当然と言えた。
「阿呆、相手があのショケンネズミなのはお前の運が悪いからだ。お前だって、もうそろそろジセキモドキの1匹や2匹くらい正面戦闘では戦えるような腕前なんだぞ?ゼンゴウというのは、だ」
 ジセキモドキとは、ジセキによく似た肉の美味い動物であり、駆け出しの冒険者にとってはよく捕獲ミッションが出ることでも有名であった。当然ながら、ショケンネズミに比べてはるかに弱い。
「はあ……」
「まったく、そんなことでは村の自警団に入れる日もますます遠のくぞ?お前にとってはかねてよりの目標じゃないのか、あの自警団の団員というのは」
 自警団。このビダーヤ村にも存在するそれは、王宮直轄領であることからそこまで大規模で本格的なものではなく、王宮の兵士が押っ取り刀で派遣されるまでの時間稼ぎを行う存在と言ってもよかった。
「それなんですが……」
「あ?」


「……悪魔が王宮に出た、ねえ……」
 近衛隊長であるロベンテ・トゥオーノですら苦戦した悪魔は、到底自警団如きでは太刀打ちできないように見えた。
「自警団じゃ、守れないと思えませんか?」
「とはいえ、その近衛隊長様が何とか防衛したんだろ?」
「それは、そうかもしれませんが……」
「それにな、悪魔がなんでこんな田舎村狙うんだよ」
 ビダーヤ村は決して田舎とは言い難かったが、村という名が示す通り都会とも言い難かった。シャッタが田舎村といったのは、あくまで町や王宮の方が襲撃価値があるという意味である。
「それは……」
「まあ、お前の言いたいこともわかる、わかるが、当初の予定をその程度で崩すのはよくないぞ。
 それにな……」
「それに?」
「……この前、村長の家に客人が来たのは知っているだろう」
 王宮直轄領という特性上、ビダーヤ村には訪問者が来ることもよくあった。問題は、その客人はその「よくあるタイプの訪問者」ではなかったのだが、閉鎖的な村ではないということは、この村の特性と言ってもいいだろう。
「えっ」
「……知らなかったのか、おい」
「は、はい」
「……まあ、いい。この前、村長の家に客人が来てから妙なことが多発しており、ここはひとつ自警団の出番かと思ってな。推薦状は書いてある、お前も団員に加われ」
 妙なこと。一つ一つは些細なことであったが、その「客人」が来訪してからその手の出来事が頻発しており、一度調査依頼が自警団に舞い込んだのもこの時期のことであった。
「いいんですか!?」
「魔法は使えるようになったんだろう?ちょうどいいじゃないか」
「はいっ!!」


「師匠、本気であんな子供が自警団の役に立つとでも?」
「……ダンガか。
 実は俺もそれは疑問に思っていてな、あいつにゼンゴウを名乗る許可を与えたのは事実だが、それは剣の腕というよりはあいつの場合座学的な部分の方が大きい。
 まあ、自警団の入団に成功したのならば、最低限の腕はあるんだろう。ダメだったら帰ってくるさ」
 ダンガと呼ばれた男はシャッタ・フォウの弟子であり、ゼスにとっては師範代というべき存在であった。そのダンガにとっては、ゼスはゼンゴウの腕前を取ったとはいえまだまだ体の完成していない素人ともいえた。
「まあ、そうでしょうな」
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