異世界修学旅行で人狼になりました。

ていぞう

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第五章 獣人国編

第154話 参戦

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キノクニ本社で俺がこの戦いに参戦することを告げた後、ハットリ部長とブンザさんのたっての願いで俺の国「オオカミ」へ二人を案内することになった。

といってもキノクニ社屋にあるキューブからゲートをくぐるだけなので、なんの手間もかからない。

「オオカミ」側のゲートは街の中心部のビル一階にある。
そこにはライベルからの移住者を迎えるために仲間の誰かが常駐している。
俺とブンザさん達がゲートをくぐったときには受付にエリカとブルナ、それにドランゴさんが居た。

「あ、ソウ様、お帰りなさい。」
「お帰りなさい。」

エリカとブルナが声をかけてきた。

遅れてドランゴさんが。

「師匠お帰りでがんす。おっ!ブンザもいらっしゃい。歓迎するでやんすよ。」

ブンザさんがそれに反応した。

「おう。ドランゴ。久しぶりだな。元気だったか?」

「ほい。元気でヤンスよ。ブンザも相変わらずでようがす。」

(ん?さっきまでのブンザさんと少し違う雰囲気。やけに明るいような気がする。)

「ドランゴさん。こちらはブンザさんの同僚のハットリ部長だ。二人を案内してもらえませんか?」

「ようがす。ワッシの設計したこのオオカミ村。とくとごらんくだしあ。」

ドランゴさんは上機嫌だ。

ブンザさんが少し驚いている。

「ドランゴが設計って?」

ブンザさんが俺の方を見たので俺が答えた。

「そうですよ。この街の設計は、ほぼ全てドランゴさんによるものです。建ち並ぶビルや家屋の配置、水路、公園、擁壁。全部ドランゴさんの案ですよ。」

ブンザさんがドランゴさんを見つめる。
ドランゴさんは少し照れている。

「あはは、どうだブンザ、驚きやんしたか?」

「あ、ああ、おどろきヤンシタ。」

「といったものの、実際に作ったのは、このリンダでやんすけどね。」

アンドロイドのリンダが会釈をした。

「全てドランゴ様のご注文通りにいたしております。」

ブンザさんがリンダを見て少し表情が曇る。

その気配を察したのかドランゴさんが説明をする。

「このリンダは師匠の命令でワッシの下についている部下でやんす。人では無く人形でやんすよ。もっともワッシは人間と同じように接しておりやんすけどね。」

リンダが微笑んだような気がした。

「この方が人形?」

「はい。ブンザ様、私はソウ様の配下、AC283型、汎用ヒューマノイド、呼称名をリンダと申します。よろしくお願いします。」

ブンザさんがかしこまる。

「あ、はい。こちらこそよろしくお願いします。」

ブンザさん達にヒューマノイドの説明は困難かも知れない。

「じゃ、ドランゴさん、後をお願いします。」

「任してくだしあ。」

ふと視線をエリカに向けるとエリカがハットリ部長に挨拶していた。
ハットリ部長がエリカに声をかける。

「エリカ、幸せか?」

エリカが微笑む。

「はい。とても。」

エリカの火傷は治っていないが、エリカの表情はこのところ明るい。

「本当に幸せそうだな。よかったぞ。」

ハットリ部長の声が少し湿っているように思えた。

ブンザさん達を案内する間、俺はライベルでレギラ達に会っていたが、俺の居ない間にオオカミでは誰が言い出したのかしらないが一階の会議室で宴会が始まっていた。

(まっ。たまにはいいか・・・)

れいによってドルムさん、ドランゴさん、ブンザさん、ハットリ部長、これらの人を中心に酒盛り。ニク串の匂いにつられて、ピンター、ヒュナ、ライチなどが集まっている。
それにエリカ、ブルナ、テルマさんが料理を振る舞い、一緒に食事をしている。
俺も食事をしようと席に着いた時、

「なんや、こっちか。ドルム!一言声をかけんかい。」
「ま、貴方。遠い場所じゃないし。」
「「キュイキュイ、キャウキャウ。」」

アウラ様一家が現れた。

ゲートの向こうでは未だに戦争が起こっているのだが、気休めも必要だろう。
その日はかってないほどの大宴会になった。
ハットリ部長はアウラ様を前に平身低頭している。
アウラ様は酔ってハットリ部長の頭をピシャピシャと叩いているがハットリ部長はそれを怒るどころか嬉しがっているようだ。

ブンザさんはドランゴさんと何度も杯を交わして笑い合っている。
ブンザさんもドランゴさんも幸せそうだ。

(そういうことなのかな?ま、二人共大人だし、二人の自由だからね。)

エリカとブルナはイリヤ様となにやら話し込んでいる。
テルマさんは料理をして皆にそれをふるまっている。
テルマさんも幸せそうだ。

俺の周りにはツインズとピンター、ライチ、ヒュナがつきまとい離れない。
ヒュナが俺の膝に乗ると、まけじとピンターが背中にしがみつき、ツインズが俺の肩に乗る。
ライチも俺の側から離れようとしない。
もてるのはいいけど食事も取れない。

(きっと、皆は今が幸せなんだろうな・・・)

俺の心を読んだようにドルムさんが言った。

「なっ。お前にはこれだけの人の幸せがかかってんだ。苦労ばかりのようだがそうじゃないぞ。お前、これを見たら幸せだろ?」

「はい。そうだね。ドルムさん。」

俺はもう一度心に刻んだ。

(何があっても、この仲間達を守ろう。それが俺の幸せだ。)

「おーい。ドルム。なにやっとんねん。酒がたりんぞ。酒、酒」

「はーい。今持って行きますよ。」

宴会は深夜まで続いた。



翌朝、俺は監視用ドローンを飛ばしてラーシャ軍とゲラン軍を偵察した。

ラーシャ軍はライベルまで二日の位置、ゲラン軍はいつもの小競り合いをしかけているが本気で攻め入る気は無いようだ。

その状況をライベル城にいるレギラに伝えた。
レギラの眉間にしわがよる。

「そうか、あと二日か、10万の大軍に耐えられるかどうか・・・」

ライベル守備隊はおよそ2万、それに対してゲラン軍3万、ラーシャ軍魔物部隊10万。
どう考えても勝利への道は見えてこない。

レギラもセトもライジンも、そのことはわかっているはずだが、逃げるとは言わない。
兵士と一緒にライベルに残るつもりだ。
3人共、死を覚悟しているのだろう。

オラベルからの援軍を求めてはどうかと進言したが、ジュベルの主力はライジン将軍の部隊で、これ以上、首都を手薄に出来ないそうだ。

竜人のセトが口を開く

「若、先日の話通り、民間人だけでも先に逃がしましょう。」

セトに続いて豹頭の将軍、ライジンも意見を言う

「レギラ様、セトのいうとおりかと。幸いにソウが逃げ道を確保し民間人を全て引き受けると言ってくれています。軍人はさておいて民間人を先に逃がしましょう。」

レギラが俺を向く。

「ソウ。お前を頼りたいが、民間人を全部にがすとなるとおよそ3万人。引き受け可能か?」

今のオオカミの総人口はおよそ5000人。
クチル島周辺からつれてきた人族およそ1000人。
ネリア村から連れてきた獣人およそ1000人。
そしてここライベルから避難している獣人がおよそ3000人だ。
そこへ3万人追加するとなるとかなりきつい。

今オオカミでは急ピッチで住宅の増設工事が行われている。
ガンドール遺跡、元アンブレラ社の住宅展示場で見つけたキューブタイプの家が4000、マンションタイプ建造物がおよそ1000。
それに各種建築資機材、ブルドーザーやフォークリフト等の重機もある。

それらを全部使えば3万5000人くらいは収容可能だが、建築が間に合うかどうか。

「物理的にはギリギリだな。なんとか間に合うとは思うが。」

「すまん。迷惑をかける。」

ライジンが頭を下げた。

「いいさ。乗りかかった船だ。最後まで付き合うよ。それとレギラ。」

「なんだ?」

「俺とお前は杯を交わした兄弟だよな。」

「ああ、そうだ。間違いない。俺がお前に惚れて杯を交わした。義兄弟だ。」

「レギラ、お前、俺が死を覚悟しなければならない戦いがせまっているとしたら、どうする。」

セトもライジンもレギラも不思議がっている。

「そりゃ、なんとしても助けるさ。」

「何があってもか?」

「ああ、男に・・戦士に二言はない。何があってもだ。」

「そうだな。それが兄弟だよな。だから俺もそうすることにした。」

3人とも目を見開いている。

「なんだと?それは、ソウ。お前も参戦してくれると言うことか?」

「ああ、そうだ。魔獣部隊10万は俺に任せろ。殲滅までできるかどうかわからないが敵戦力としては無力な状態にまで持って行けると思う。」

レギラが立ち上がる。
セトもライジンも立ち上がった。

「本当か?ソウ。」

「ああ、男に二言はないんだよな。アハ」

レギラが俺の手を掴んだ。
ライジンとセトもそれに手を添える。

レギラが言った。

「希望が見えてきた。ソウの力は喧嘩した俺がよく知っている。これで1000人力いや万人力だ。な、ソウ。」

「まぁ俺だけの力じゃ10万は無理だけど、俺のご先祖様が残した秘密兵器があるからね。敵が密集さえしてたら、かなりのところまでやれると思うよ。」

俺は敵が密集している所にミサイルを撃ち込み残った敵兵士は俺とガラクで殱滅するつもりだ。

セトもライジンも俺の力を知っているから質問はしてこない。
俺なら何か隠し球をもっていると想像できるのだろう。

その日から生活維持の為に残っていた一般民も避難を開始した。

避難先はオラベルとオオカミのどちらでも選択できるようにしたが、先に家族が避難しているオオカミを選ぶ者がほとんどだった。

オオカミの方でも拡張工事が進んでいて、直径2キロ程の要塞都市になっていた。
もはやオオカミ国といっていいだろう。
移民も先に移住していた人達が手伝ってスムースに行われた。

移住手続きは簡単なもので、B5サイズの認識板に手を載せるだけ。
マザーに住民票を管理させたのだ。

移住の最終グループにはレンヤ一家、シゲル一家がいた。
二家族が最後になったのは、俺と親しいからと言って優遇されたら俺の立場がまずくなるだろうとのレンヤの配慮だった。

これで人口3万5千の一大都市「オオカミ国」が誕生した。

住民の避難は完了したが、ライベルには兵士2万が残っている。
俺はできるならば、この兵士達も生かしたい。
もちろんレギラもライジンもセトも。
できるだけ死傷者を少なくしたいのだ。
そのためにはラーシャ国軍に大打撃を与えなければならない。
良心の呵責はある。

自分の仲間を守るために多くの人を殺さなければならない。
しかし仲間を守るためには過酷な選択もしなければならないのだ。
それはこの世界へ来て何度も行ってきたことだ。
生きるために敵を殺す。
覚悟は出来ている。



ラーシャ軍がライベルまで数キロの位置まで来た時、ゲラン軍から一騎の騎馬が白旗を掲げてライベル擁壁に近づいてきた。

俺とレギラが正面、正門の上でなりゆきを見守る。

ゲラン軍将校と思われる軍人が正門前で騎乗したまま口を開く。

「我はゲラン国軍第二師団第三大隊長ミハイル・デルナルドである。最終通告に来た。」
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