異世界修学旅行で人狼になりました。

ていぞう

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第五章 獣人国編

第146話 友達を助けたいだけだ。

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俺はライベル上空でゲラニ軍とジュベル軍の戦いを見守っていた。
戦闘に巻き込まれているはずのヒナ達を探すためだ。

俺自身はゲラン、ジュベル、どちらの勢力にも加担しないつもりだった。
双方に親しい人がいるからだ。

それでもヒナ達を助けるためなら、どちらか、若しくは双方の勢力と戦う覚悟は出来ていた。
上空から戦場を見守るうち、ライベル正面の城門に大きな火柱が上がるのが見えた。
アキトの魔法攻撃だ。

城門の一部が破れるとレギラとセトが降り立ち城門を守った。
そこへ突進する多数のゲラン軍兵士。
先頭はリュウヤだった。

リュウヤの後にはイツキらしき兵士とツネオらしき兵士が続いている。

(見つけた!!)

ソラをリュウヤ達近くまで下ろした時、リュウヤ達3人はレギラの『雄叫び』を受けた。
イツキとツネオは『雄叫び』を受けて吹き飛び気絶した。

リュウヤは雄叫びに耐えてレギラに突進する。
リュウヤも善戦するが、やはりレギラには、かなわない。
人狼Ⅱの俺が苦戦したほどの強者だ。
無理も無い。

リュウヤが腹部に大打撃をくらい止めを刺されようとした時、俺はレギラの前に立ち塞がり止めの一撃を掌で受け止めた。
レギラが俺を睨む。

「やはりお前は敵なのか?ソウ。」

俺はリュウヤを片手で抱きながらレギラに言った。

「俺は、お前の敵でも味方でもない。俺の友人を助けただけだ。」

レギラは一歩前に出る。

「俺の部下を殺した敵が、お前の友人ならば、お前は俺の敵だ。」

レギラが臨戦態勢を取った瞬間、セトがレギラの前に出た。

「お待ちください。若!」

「止め立てするなセト!ヌーレイの言うとおりだった。ソウはライベル・・いやジュベル国の敵だ。」

「わかりました。ソウは敵です。しかし今はお待ちください。今、ソウと戦えば、ゲラン軍に城門を突破されます。そうなるとライベルの街は終わりです。」

セトが俺を向いた。

「ソウ殿・・いやソウ!お前は俺達と戦うのか?それとも友人を救出するだけか?立場を明らかにせよ。」

おそらくセトはわかっている。
おれがジュベル国の敵では無いことを。

「わかった。明確に告げる。お前達と戦う意思は無い。おれの友人の命を守りたいだけだ。この場は見逃せ。友人達の命さへ守ることが出来れば、俺は早々にここを立ち去る。」

セトが再度レギラに向き直る。

「若、今は怒りの気持ちより、ここライベルを守ることに専念しましょう。若もご存じのはず、今ソウを敵に回せばどうなるかを・・・」

レギラは眉間にしわを寄せている。

「知るか・・そんなこと!!!」

レギラは「雄叫び」をはなった。

俺は龍神の盾で雄叫びを避ける。
リュウヤを庇いながらイツキとツネオの元まで後退した。

城門の外に出ようとしているレギラをセトが、なんとか食い止めている。
俺はソラにリュウヤとイツキ、ツネオを放り込んだ。

「ソラ最大速でこの場を離脱!」

なんとか間に合った。
ソラを自動運転で戦場から離脱させ、リュウヤの様子を見た。
リュウヤはかすかに息をしている。

俺はリュウヤに対してヒールを施した。
リュウヤを完全に回復させることはできなかったがリュウヤの意識は回復した。

「ソウ・・・礼なんか言わないからな。」

リュウヤはそう言いながらも目を潤ませていた。

「いらねぇよ。お前なんかに感謝されたくねぇよ。」

リュウヤはレギラに意識を刈り取られ、次に意識が回復したのは誰かに抱かれて体が持ち上がった時だ。

そしてはっきりと聞こえた。

「俺の友人を助けただけだ。」

聞き覚えのある声、ソウの声だった。


俺は、ソラを操縦してドルムさんの待機する場所まで行き、ドルムさんとエリカを加え全員でオオカミ村まで戻った。
途中意識を回復したイツキからヒナの行方を聞いたので一端、戦場を離れることにしたのだ。

オオカミ村には、レンがガラクに連れられて来ていた。
レンはイツキの姿を見つけると全速力でイツキに駆け寄り、イツキに抱きついた。

「イツキ、よくぞ生きていた。嬉しいぞオイ。」

「レン君こそ、大丈夫?無茶するんだから。」

レンはヘレナにイツキ殺害を命じられた時、それを拒むために自らに剣を刺した。
イツキはそれを黙って見ているしか無かったのだ。

「アハハ、あの時は、ああするしか方法が無かったんだ。お前を殺すなんて死んでも嫌だぞ、オイ。」

「うん。ありがとうね。おかげでなんとか生きているよ。うふふ。」

レンがイツキの腕を取る。

「奴隷の魔法は解けたみたいだな。」

「うん。ソウ君が解除してくれた。」

「そうか。すべてソウのおかげだな。」

レンとイツキが俺を振り向いたので、俺が拳を差し出したところ、レンもイツキも、俺の拳に自分の拳を合わせた。

日本に居た時、なにか良いことがあれば、よく3人でこのポーズを取っていたのだ。
それを見ていたツネオがおずおずと俺達に近づいてきた。
ツネオは、ばつが悪そうに俺を見ている。

「ソウ・・あの、その・・・」

「なんだよ。ツネオ何か気に入らないのか?」

「いや、そうじゃなくて、あの・・・ごめん!!」

ツネオは土下座しそうな勢いで俺に謝罪した。

「何だよ。急に。お前、何か悪いことしたのか?」

「あの、ほら、川岸でオオカマキリに襲われた時、助けを呼べなかった・・いや呼ばなかった。だからゴメン、本当にゴメン。」

飛行機が不時着した後、現場から避難する際、ツネオが見張り番を離れて隠し持ったチョコを食べるのを見つけたことがあった。

その時、ツネオがオオカマキリに襲われようとした所を俺が身を挺して助けたが、かわりに俺が負傷して川に落ちた。
その時のことを言っているのだろう。

「いいよ。そんなこと。おかげでこうやって皆生きているんだから。」

レンとイツキは何のことだかわかっていない。

「何のこと?」

イツキが質問したが、詳しく説明してツネオを責めようとは思っていない。

「なんでも無いよ。昔、ちょっとした手違いがあっただけだよ。」

ツネオは涙ぐんだ。

「ありがとう・・・」

リュウヤは話には加わらず、ずっと周囲を眺めている。
オオカミ村は日に日に成長している。

ドランゴさんが頑張って、リンダと共にオオカミ村を発展させているのだ。
直径1キロ程の円形の街・・というより要塞で、周囲を高い壁で取り囲んでいる。
壁の中には大小様々な白い建物が建ち並び、大きなビル型のマンションもいくつか見える。

道路は碁盤の目のように張り巡らされていて、時折、蜘蛛型の警備ロボットが巡回している。
道路の脇にはレニア山脈からの湧き水が流れている。
街の中心部には広場があって噴水のある池と大きな銅像が建てられている。

その広場では獣人の子供と、人族の子供が仲良く竹馬に乗って遊んでいる。
その様子を見ながら獣族の老人と人族の老人が笑い合っている。
街路樹を植えたり道路を整えたり、見た目も美しい街になっていた。

「ソウ、ここは何処だ?近代的な街だな。」

俺に代わってレンがリュウヤに説明を始めた。

「どうだ。すごいだろ。オイ。この街はソウが造った街だ。マンションの中には風呂も水洗トイレもあるんだぜ。メシも美味いしな。ウハハ」

説明は、良いけど、なんでレンが自慢そうにしてるの?

「これをソウが造ったのか?一人で?」

「俺が造ったのは間違いないが、俺一人でじゃない。俺の仲間が一緒に造ったんだ。」

そう話している内に子供達が集まってきた。

「ソウ様、お帰りなさい。」
「「「おかえりなさーい。」」」
「「キュイキュイ、キャウキャウ。」」

猫人の子供ライチとレンヤさん、シゲルさんの子供達、それにツインズだ。

「だだいま、ライチ、テラン、リーザ、みんな。」

子供達が俺を取り囲む、ツインズは俺の両肩に止まる。

イツキがツインズを不思議そうな顔で見ている。

「ソウ君、ひょっとして・・その生き物・・・ドラゴン?」

「ああ、そうだ。俺の子供のツインズドラゴン。テランとリーザだ。」

「「「「ええ~!!!!」」」

「テラン、リーザ、ここに居るのは皆俺の友達だ。仲良くしろよ。」

「「キュイキュイ。」」

リュウヤはツインズに驚くと共に、俺が「友達だ。」と言ったことに反応したようだった。
といっても嫌な顔をしたのではなく、照れくさそうにしているだけだ。

その後、レン達を俺の仲間に紹介して、それぞれにマンションの一室をあてがった。

「後で今後の事を話し合うから、一時間後に一階の会議室に集まってくれ。それまでは自分の部屋で、のんびりしていていいぞ。」

広場近くの一番大きな建物の一階には食堂があり、老人達が子供達に食事の世話をしている。

その隣に30人くらいが入れる会議室を設けていて、最近はその会議室で仲間と作戦会議を開くことも多くなっていた。

もともとはキューブの居間が会議室のようなものだったが、仲間が増え、このオオカミ村が出来てからは、この会議室を使うことが基本になってきたのだ。

しかし、それには一人だけ不満を持つ人が現れた。
タイチさんだ。

一人仲間はずれにするなということで、キューブにあるタイチさんそのものを移すことはできないが、タイチさんと通信の出来る端末を会議室に設置したのだ。

「それじゃ後で。」

「ああ、わかった。」

レン達はそれぞれの部屋へ入っていった。
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