異世界修学旅行で人狼になりました。

ていぞう

文字の大きさ
上 下
142 / 177
第五章 獣人国編

第142話 反乱分子

しおりを挟む
「胴ーッ!! 」

「面ーッ!籠手!! 」

ピリピリとした空気が広がる。これは本当に稽古か?凄まじい。まさにその一言に尽きる。三吉は見慣れたはずの稽古風景が道場を変わるとこうも違うのかと、ある意味関心していた。

「凄いだろう。何せ、総司と歳の立ち合いだからなあ。 」

うむうむと隣で近藤が頷く。確かに凄い。自分とは格がまるで違う。


「お。見かけぬ顔だな。新入りか? 」

急に声をかけられたので、まじまじとその顔を見つめてしまう。

「な、なんだ?何か顔にでも付いているのか? 」

ぼーっと見つめたままでいるとその男は徐々に焦り出した。

「ハッ...!い、いえ。急に声をかけられたので驚きまして。失礼致しました。 」

見た所この男は此処の馴染みのようなので、三吉はしっかりと詫びる。粗相があってはいけない。

「永倉君、彼は先代の友人の息子さんの三吉君という。はるばる伊予から此方まで剣を学びに来たのだ。よろしく頼む。 」

「え...。もう此処で稽古をするのは決まったことなのですか____。 」


「そうかそうか!なら少し私と手合わせ致そうではないか。 」

わくわくと楽しそうな顔を作りながら、永倉は準備を始める。

「えと、永倉様。私、剣の心得はあまりないので先ずは稽古の様子を見させて頂きたいと思っていたのですが。 」

三吉は先程の二人の試合を思い出し、身震いした。なんとしてでも、永倉との手合わせを避けねばなるまい。永倉があの二人のような強さを持っていることは容易に想像できるからだ。

「心配するな。三吉。極力手加減致そう。 」

そう言い放つと永倉は防具を着け始めた。

「おお。三吉君のお手並み拝見といこうじゃないか。 」

近藤もにこにこと笑みを浮かべて、乗り気である。

「土方さん、一度手を止めて見てみましょう。何やら面白そうですよ。伊予から来たということですと、原田さんと同じだ。 」

「なんだか、見るからにひょろひょろとして弱そうだがな。まぁ、茶漬け程度にはならねえことはねえか。 」

汗を拭きながら、土方沖田の両名も集まってくる。三吉はとうとう後に引けなくなっていた。

「永倉様。ご勘弁を。 」

三吉は咄嗟に土下座の体勢を取った。それを見ていた全員が目を見開き驚いていると、三吉は堰を切ったように言葉を零した。

「実は私、伊予に居た頃に剣術道場に通っていましたところ、師範に道場を追い出されたのです。”お前の様な甘ったれた人間は要らぬ“と。確かに私はその様な人間なのです。ですから、永倉君と手合わせなぞ出来るような器など持ち合わせては___。 」

「なら、此処で、天然理心流で鍛えりゃ良いじゃねえか。その甘ったれとやらを叩き直しゃあ、お前も胸を張って国許にも帰れるし、一端の剣士として道場の師範も見返せるってもんだ。...永倉やれ。 」

土方は三吉の言葉を遮り、捲し立てるように話す。その言葉につ、と三吉は顔を見上げた。

「私の身の上は全て筒抜けなのですね...。 」

「承知。 」

その言葉を皮切りに、永倉は物凄い気迫を纏った。







三吉が次に目を覚ましたのはそれから三日後の夕刻であったそうな...。
しおりを挟む
感想 7

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

異世界転生してしまったがさすがにこれはおかしい

増月ヒラナ
ファンタジー
不慮の事故により死んだ主人公 神田玲。 目覚めたら見知らぬ光景が広がっていた 3歳になるころ、母に催促されステータスを確認したところ いくらなんでもこれはおかしいだろ!

せっかくのクラス転移だけども、俺はポテトチップスでも食べながらクラスメイトの冒険を見守りたいと思います

霖空
ファンタジー
クラス転移に巻き込まれてしまった主人公。 得た能力は悪くない……いや、むしろ、チートじみたものだった。 しかしながら、それ以上のデメリットもあり……。 傍観者にならざるをえない彼が傍観者するお話です。 基本的に、勇者や、影井くんを見守りつつ、ほのぼの?生活していきます。 が、そのうち、彼自身の物語も始まる予定です。

私の薬華異堂薬局は異世界につくるのだ

柚木 潤
ファンタジー
 薬剤師の舞は、亡くなった祖父から託された鍵で秘密の扉を開けると、不思議な薬が書いてある古びた書物を見つけた。  そしてその扉の中に届いた異世界からの手紙に導かれその世界に転移すると、そこは人間だけでなく魔人、精霊、翼人などが存在する世界であった。  舞はその世界の魔人の王に見合う女性になる為に、異世界で勉強する事を決断する。  舞は薬師大学校に聴講生として入るのだが、のんびりと学生をしている状況にはならなかった。  以前も現れた黒い影の集合体や、舞を監視する存在が見え隠れし始めたのだ・・・ 「薬華異堂薬局のお仕事は異世界にもあったのだ」の続編になります。  主人公「舞」は異世界に拠点を移し、薬師大学校での学生生活が始まります。  前作で起きた話の説明も間に挟みながら書いていく予定なので、前作を読んでいなくてもわかるようにしていこうと思います。  また、意外なその異世界の秘密や、新たな敵というべき存在も現れる予定なので、前作と合わせて読んでいただけると嬉しいです。  以前の登場人物についてもプロローグのに軽く記載しましたので、よかったら参考にしてください。  

冷遇された第七皇子はいずれぎゃふんと言わせたい! 赤ちゃんの頃から努力していたらいつの間にか世界最強の魔法使いになっていました

taki210
ファンタジー
旧題:娼婦の子供と冷遇された第七皇子、赤ちゃんの頃から努力していたらいつの間にか世界最強の魔法使いになっていた件 『穢らわしい娼婦の子供』 『ロクに魔法も使えない出来損ない』 『皇帝になれない無能皇子』 皇帝ガレスと娼婦ソーニャの間に生まれた第七皇子ルクスは、魔力が少ないからという理由で無能皇子と呼ばれ冷遇されていた。 だが実はルクスの中身は転生者であり、自分と母親の身を守るために、ルクスは魔法を極めることに。 毎日人知れず死に物狂いの努力を続けた結果、ルクスの体内魔力量は拡張されていき、魔法の威力もどんどん向上していき…… 『なんだあの威力の魔法は…?』 『モンスターの群れをたった一人で壊滅させただと…?』 『どうやってあの年齢であの強さを手に入れたんだ…?』 『あいつを無能皇子と呼んだ奴はとんだ大間抜けだ…』 そして気がつけば周囲を畏怖させてしまうほどの魔法使いの逸材へと成長していたのだった。

異世界無宿

ゆきねる
ファンタジー
運転席から見た景色は、異世界だった。 アクション映画への憧れを捨て切れない男、和泉 俊介。 映画の影響で筋トレしてみたり、休日にエアガンを弄りつつ映画を観るのが楽しみな男。 訳あって車を購入する事になった時、偶然通りかかったお店にて運命の出会いをする。 一目惚れで購入した車の納車日。 エンジンをかけて前方に目をやった時、そこは知らない景色(異世界)が広がっていた… 神様の道楽で異世界転移をさせられた男は、愛車の持つ特別な能力を頼りに異世界を駆け抜ける。 アクション有り! ロマンス控えめ! ご都合主義展開あり! ノリと勢いで物語を書いてますので、B級映画を観るような感覚で楽しんでいただければ幸いです。 不定期投稿になります。 投稿する際の時間は11:30(24h表記)となります。

お前じゃないと、追い出されたが最強に成りました。ざまぁ~見ろ(笑)

いくみ
ファンタジー
お前じゃないと、追い出されたので楽しく復讐させて貰いますね。実は転生者で今世紀では貴族出身、前世の記憶が在る、今まで能力を隠して居たがもう我慢しなくて良いな、開き直った男が楽しくパーティーメンバーに復讐していく物語。 --------- 掲載は不定期になります。 追記 「ざまぁ」までがかなり時間が掛かります。 お知らせ カクヨム様でも掲載中です。

【本編完結】転生したら第6皇子冷遇されながらも力をつける

そう
ファンタジー
転生したら帝国の第6皇子だったけど周りの人たちに冷遇されながらも生きて行く話です

処理中です...