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第五章 獣人国編
第133話 俺の国
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クチル島でヒュドラの宣教被害者を救出した翌日、俺はネリア村に居た。
ブンザさんからの情報でネリア村が再度、襲撃されたと知ったからだ。
ソラでネリア村の広場に降り立ったところ近くの物見櫓に居た誰かが半鐘を鳴らした。
槍や剣を持った老人が何人か現れた。
若者はいない。
槍を持った老人に見覚えがある。
ネリア村の村長だ。
遠巻きに俺を眺める村人達。
俺はゆっくりと歩いて近づいた。
村長の側には頭が二つある犬がいた。
俺が声をかける前に、その犬が俺に近づいて「くぅーん」と鼻を鳴らした。
ケルベロスに似た『ハチ』。
村長の飼い犬だ。
「村長、無事だったか。」
村長はヨロヨロと近づいてきた。
「ソウ様にか?ソウ様だにか?」
「ああ、俺だ。」
村長は槍を放り出した。
ボロボロと涙を流している。
「祈りが通じたがや。ソウ様が来て下さっただによ。皆、もうなんも心配いらんでや。」
村長の後ろに居た老人達が一斉にひざまずいた。
村長の話によれば数週間前、とつぜんゲラン軍がネリア村を襲い、村人を殺戮して食料を焼き払ったそうだ。
襲ったのは東洋風の顔立ちの若者二人とその部下。
わずか数十名によって、ネリア村と、その周辺の集落が壊滅したらしい。
その東洋風の顔立ちの男二人は、村の広場に建立されていた俺の彫像を見て「ソウ」と俺の名前を言ったらしい。
アキトだろう。・・・
俺の心の中にファイヤーボールを無闇に打ちまくるアキトの姿が浮かび上がった。
(アキトめ・・・)
広場の俺の彫像はクビから上が無かった。
アキトが壊したそうだ。
「ソウ様、申し訳ないだによ。銅像は壊されるし、せっかく戴いた食料や苗も、全て焼き払われたがや。本当に申し訳ないだに。」
村長が地べたに手をついた。
「いいよ。村長さん。食料はまた手に入れられる。それより残った村人はこれだけか?」
広場にいるのは老男性ばかり10人ほどだ。
「いや、村の外れの林に、ばぁさまと子供で30人くらいが隠れているだによ。それに近隣の村人も合わせると300人は生き残ったがや。」
ソラからピンターが出てきてハチの腹をさすっている。
「たった300人か・・・」
前回、俺がこの村に来た時に村の人口は300人程度だった。
周辺の村を含めれば、この一帯で1000人以上の人が暮らしていたはずだ。
この地方の半分以上の人が虐殺された勘定だ。
300人程度の人口では、このあたりの集落を再生するのは困難だろう。
それに、このあたりはジュベル国首都へ通じる街道筋で、まもなくゲランの正規軍が通過するはずだ。
そんな危険な場所へ村人を放置する気にもならない。
「村長、明日の朝、迎えに来る。周辺の住民を集めておいてくれ。」
「どこへ連れて行ってくれるだにか?」
「俺の国だ。」
俺はネリア村へ来る前、アウラ神殿に居た。
「アウラ様、これから先、本格的な戦争になったら難民が多く出ます。ネリア村やライベル。獣人国だけでなく人間側の難民も出ます。」
「せやろうな。そんで?」
「そこで俺は決心しました。俺は俺の居場所、俺の仲間と平和に過ごせる場所を作ろうと。」
「どこに作る?」
「アウラ様の許可をいただけるなら、アウラ神殿の麓、あの草原に街を作ろうと思います。」
アウラ神殿はカルスト地帯の中腹にあり、その山の麓には、果てしなく草原が広がっている。
土地は良く肥えているし野生動物も多い。
山からは、幾筋もの川が流れ出しているし、他国からは遠い。
平和に暮らすにはもってこいの場所だ。
ただこの付近一帯は元々アウラ様が治めていた場所だ。
太古の戦争で麓の都市は滅んだというが、今でもアウラ様の土地なのだ。
だからこそ他の国も容易に攻めようとはしないのだ。
「ええで。なっ。かあちゃん。」
アウラ様の隣でイリヤ様が微笑んでいる。
「そうですわよね。もう信者も住んでいないし、居るのは牛と鹿だけ。ソウさんが国を作るなら依存はないですわ。遠慮無くおやりなさい。」
「ありがとうございます。でも国を作るわけではないです。難民を収容する集落を作るだけですよ。」
「ああ、最初は村でも集落でもええわいな。しかし統治者がソウなら、いずれ国になる。断言したるわ。アハハ」
俺は国を作ろうなんて思ってもいない。
俺や俺の仲間が安心して暮らせる場所を作りたいだけだ。
しかし、その場所が結果的に国になるなら、それはそれで良し。
男として野望の一つも持っていた方が良いのかも知れない。
俺は元住宅展示場で働いていたリンダに命じて草原を建設重機で平らげ、そここにキューブに似た家屋を数百戸建てた。
とりあえずの居場所だが、その住宅地は水源地に近く良く肥えた土地に隣接している。
当面そこで暮らすのには問題が無い。
というか痩せたネリア村や滅びかけのクチル島に比べれば天国のような場所だ。
ただし問題はあった。
人間と獣人が同じ集落で暮らせるかと言うことだ。
翌朝ネリア村へ行ったところ広場に300人程度の獣人が集まっていた。
「村長、最初に言っておくが、今から行く場所は絶対的に安全だけど、住むのは獣人だけじゃない。お前達と同じようにヒュドラ教から迫害を受けた人間も一緒に住む。それを承知するなら俺と居一緒に来い。」
村長と村人の数人は不安そうな顔をした。
「んだども。ソウ様も一緒に暮らしてもらえるんで?それなら誰も文句は言わないだによ。」
「ああ、今すぐじゃないが俺も住む。俺が統治する場所だ。」
他の村人から質問があった。
「税金はどうなるにか?」
そこまでは考えていなかった。
「皆の暮らしが安定するまで税金は徴収しない。とりあえず定着するまで食料支援も行う。」
難民にとってこんな好条件はないだろう。
俺は広場にゲートを設置した。
ゲートの出口はアウラ神殿の麓、広大な草原の一角に俺が設置した集落だ。
敷地面積は今のところ一万平方メートルだ。
昨日一日がかりで草を焼き払い、重機を使って地面をならし、キューブタイプの家を100戸並べた。
今はまだ荒れ地の上にキューブタイプの家を並べただけだが、冷暖房に上下水道完備の未来型住宅(過去型住宅かな?)100世帯がゆうに暮らせるだけの設備を整えた。
キューブ型の住宅なので家そのものが移動可能だ。
将来どのようにでも街作りをやりなおせる。
一日でこれだけの住宅街ができたのは、この世界では奇跡に近い。
それもこれもリンダのおかげだ。
村長をはじめ村人達が目をまるくして驚いている。
「こ、これは?」
「お前達の新しい村だ。各家族に一戸割り当てがある。どの家に住むかはお前達で決めろ。わからないことがあれば、このリンダに聞け。」
俺は集落の建設と拡張、住民への各種情報提供をリンダに任せることにした。
『リンダと申します。主から皆様のお世話を仰せつかっています。何でも申しつけて下さい。』
これでネリア村周辺の難民保護は完了した。
次はクチル島の島民だ。
クチル島の老人と子供達はすでにアウラ神殿で保護していた。
アウラ神殿から住宅地まで歩いて30分くらいの距離だ。
山道をゆっくりと下るとすぐ眼下にキューブが立ち並ぶ住宅街が見える。
「ほら、あそこが新しい家だ。今日からみんなで、あそこに住むんだ。」
クチル島やその周辺の島から連れてきたのは老人と子供ばかりで約100人。
この日初めてジュベル国の獣人難民とクチル島周辺の人間族の難民が顔を合わせた。
やはりお互い警戒しあっている。
それに言葉も通じない。
俺は獣人言葉と人間の言葉、両方の言語を交互に使い住民に話しかけた。
「今日からお前達は、同じ村に住む仲間だ。種族は違うが同じ境遇にある。ヒュドラに侵略されたという悲しい共通の歴史がある。でも侵略は今日で終わりだ。お前達は、この俺、ソウ・ホンダの仲間だ。俺が責任を持ってお前達を守る。」
パチパチ・・・
まばらな拍手が起きた。
無理もない。
境遇が激変して、違う種族と共同生活をしろといわれても、「はいわかりました。」と安易に受け入れることができないのだろう。
まぁ、おいおい慣れるだろう。
リンダが集落で生活するための基本的な説明をしている時に集団の後方で歓声が上がり、バウワウと犬の鳴き声が聞こえた。
何事かと思い歓声のする方向行ってみたところ、ピンターが竹とんぼを飛ばし、それを獣人の子供と人間の子供、それにケルベロス「ハチ」が追いかけてはしゃいでいる。
どの子も笑顔だ。
何ヶ月ぶりかにまともな食事を取り、ゆっくり寝て、ピンターの遊びに参加することで子供らしさを取り戻したようだ。
(ナイス、ピンター)
その夜、キューブで食事をすると時、仲間に俺の考えを話した。
「今日から、俺の保護すべき集落が出来ました。今はまだ獣人と人間の間にわだかまりがあるだろうし、いろいろ問題も出てくると思います。俺が責任を持って集落をまとめ上げるべきなのだろうけど、俺には他にもやるべき事があります。そこで、テルマさん、ブルナ、ピンター」
「はい。」
「はい。」
「なぁに?兄ちゃん」
「お前達にあの集落の面倒を見てもらいたい。」
「「ええ?」」
「いいよぉ」
「クチル島出身の3人、ピンターは獣人言葉がしゃべれる。だから俺に代わってあの子達、あのじいちゃん、ばあちゃんの面倒を見てくれないか?それとドランゴさん。」
「はい。ワッシも?」
「ドランゴさんは3人を補佐しながら、集落を見て回って必要な施設を作って下さい。資材はリンダが用意します。」
「ようがす。ワッシにお任せを。久しぶりの出番に腕がなるでやんす。」
ドランゴさんは快く引き受けてくれた。
「テルマさんと、ブルナはどうなの?」
二人とも少し戸惑ったが。
「やってみます。」
と引き受けてくれた。
これで、新しい集落の運営基盤ができた。
「ソウ様、アタシはぁ~」
ヒュナがすねたように言う。
「ヒュナはブルナを助けてやってくれ。頼りにしている。」
「はぁーい。ねえちゃん頑張ろうね。」
ヒュナ達奴隷部隊だった少女達も新しい集落に住んでもらうことにした。
食事を続けていたところ、突然ガラクが現れた。
「ソウ、ライジンが帰って来たぞ。」
ブンザさんからの情報でネリア村が再度、襲撃されたと知ったからだ。
ソラでネリア村の広場に降り立ったところ近くの物見櫓に居た誰かが半鐘を鳴らした。
槍や剣を持った老人が何人か現れた。
若者はいない。
槍を持った老人に見覚えがある。
ネリア村の村長だ。
遠巻きに俺を眺める村人達。
俺はゆっくりと歩いて近づいた。
村長の側には頭が二つある犬がいた。
俺が声をかける前に、その犬が俺に近づいて「くぅーん」と鼻を鳴らした。
ケルベロスに似た『ハチ』。
村長の飼い犬だ。
「村長、無事だったか。」
村長はヨロヨロと近づいてきた。
「ソウ様にか?ソウ様だにか?」
「ああ、俺だ。」
村長は槍を放り出した。
ボロボロと涙を流している。
「祈りが通じたがや。ソウ様が来て下さっただによ。皆、もうなんも心配いらんでや。」
村長の後ろに居た老人達が一斉にひざまずいた。
村長の話によれば数週間前、とつぜんゲラン軍がネリア村を襲い、村人を殺戮して食料を焼き払ったそうだ。
襲ったのは東洋風の顔立ちの若者二人とその部下。
わずか数十名によって、ネリア村と、その周辺の集落が壊滅したらしい。
その東洋風の顔立ちの男二人は、村の広場に建立されていた俺の彫像を見て「ソウ」と俺の名前を言ったらしい。
アキトだろう。・・・
俺の心の中にファイヤーボールを無闇に打ちまくるアキトの姿が浮かび上がった。
(アキトめ・・・)
広場の俺の彫像はクビから上が無かった。
アキトが壊したそうだ。
「ソウ様、申し訳ないだによ。銅像は壊されるし、せっかく戴いた食料や苗も、全て焼き払われたがや。本当に申し訳ないだに。」
村長が地べたに手をついた。
「いいよ。村長さん。食料はまた手に入れられる。それより残った村人はこれだけか?」
広場にいるのは老男性ばかり10人ほどだ。
「いや、村の外れの林に、ばぁさまと子供で30人くらいが隠れているだによ。それに近隣の村人も合わせると300人は生き残ったがや。」
ソラからピンターが出てきてハチの腹をさすっている。
「たった300人か・・・」
前回、俺がこの村に来た時に村の人口は300人程度だった。
周辺の村を含めれば、この一帯で1000人以上の人が暮らしていたはずだ。
この地方の半分以上の人が虐殺された勘定だ。
300人程度の人口では、このあたりの集落を再生するのは困難だろう。
それに、このあたりはジュベル国首都へ通じる街道筋で、まもなくゲランの正規軍が通過するはずだ。
そんな危険な場所へ村人を放置する気にもならない。
「村長、明日の朝、迎えに来る。周辺の住民を集めておいてくれ。」
「どこへ連れて行ってくれるだにか?」
「俺の国だ。」
俺はネリア村へ来る前、アウラ神殿に居た。
「アウラ様、これから先、本格的な戦争になったら難民が多く出ます。ネリア村やライベル。獣人国だけでなく人間側の難民も出ます。」
「せやろうな。そんで?」
「そこで俺は決心しました。俺は俺の居場所、俺の仲間と平和に過ごせる場所を作ろうと。」
「どこに作る?」
「アウラ様の許可をいただけるなら、アウラ神殿の麓、あの草原に街を作ろうと思います。」
アウラ神殿はカルスト地帯の中腹にあり、その山の麓には、果てしなく草原が広がっている。
土地は良く肥えているし野生動物も多い。
山からは、幾筋もの川が流れ出しているし、他国からは遠い。
平和に暮らすにはもってこいの場所だ。
ただこの付近一帯は元々アウラ様が治めていた場所だ。
太古の戦争で麓の都市は滅んだというが、今でもアウラ様の土地なのだ。
だからこそ他の国も容易に攻めようとはしないのだ。
「ええで。なっ。かあちゃん。」
アウラ様の隣でイリヤ様が微笑んでいる。
「そうですわよね。もう信者も住んでいないし、居るのは牛と鹿だけ。ソウさんが国を作るなら依存はないですわ。遠慮無くおやりなさい。」
「ありがとうございます。でも国を作るわけではないです。難民を収容する集落を作るだけですよ。」
「ああ、最初は村でも集落でもええわいな。しかし統治者がソウなら、いずれ国になる。断言したるわ。アハハ」
俺は国を作ろうなんて思ってもいない。
俺や俺の仲間が安心して暮らせる場所を作りたいだけだ。
しかし、その場所が結果的に国になるなら、それはそれで良し。
男として野望の一つも持っていた方が良いのかも知れない。
俺は元住宅展示場で働いていたリンダに命じて草原を建設重機で平らげ、そここにキューブに似た家屋を数百戸建てた。
とりあえずの居場所だが、その住宅地は水源地に近く良く肥えた土地に隣接している。
当面そこで暮らすのには問題が無い。
というか痩せたネリア村や滅びかけのクチル島に比べれば天国のような場所だ。
ただし問題はあった。
人間と獣人が同じ集落で暮らせるかと言うことだ。
翌朝ネリア村へ行ったところ広場に300人程度の獣人が集まっていた。
「村長、最初に言っておくが、今から行く場所は絶対的に安全だけど、住むのは獣人だけじゃない。お前達と同じようにヒュドラ教から迫害を受けた人間も一緒に住む。それを承知するなら俺と居一緒に来い。」
村長と村人の数人は不安そうな顔をした。
「んだども。ソウ様も一緒に暮らしてもらえるんで?それなら誰も文句は言わないだによ。」
「ああ、今すぐじゃないが俺も住む。俺が統治する場所だ。」
他の村人から質問があった。
「税金はどうなるにか?」
そこまでは考えていなかった。
「皆の暮らしが安定するまで税金は徴収しない。とりあえず定着するまで食料支援も行う。」
難民にとってこんな好条件はないだろう。
俺は広場にゲートを設置した。
ゲートの出口はアウラ神殿の麓、広大な草原の一角に俺が設置した集落だ。
敷地面積は今のところ一万平方メートルだ。
昨日一日がかりで草を焼き払い、重機を使って地面をならし、キューブタイプの家を100戸並べた。
今はまだ荒れ地の上にキューブタイプの家を並べただけだが、冷暖房に上下水道完備の未来型住宅(過去型住宅かな?)100世帯がゆうに暮らせるだけの設備を整えた。
キューブ型の住宅なので家そのものが移動可能だ。
将来どのようにでも街作りをやりなおせる。
一日でこれだけの住宅街ができたのは、この世界では奇跡に近い。
それもこれもリンダのおかげだ。
村長をはじめ村人達が目をまるくして驚いている。
「こ、これは?」
「お前達の新しい村だ。各家族に一戸割り当てがある。どの家に住むかはお前達で決めろ。わからないことがあれば、このリンダに聞け。」
俺は集落の建設と拡張、住民への各種情報提供をリンダに任せることにした。
『リンダと申します。主から皆様のお世話を仰せつかっています。何でも申しつけて下さい。』
これでネリア村周辺の難民保護は完了した。
次はクチル島の島民だ。
クチル島の老人と子供達はすでにアウラ神殿で保護していた。
アウラ神殿から住宅地まで歩いて30分くらいの距離だ。
山道をゆっくりと下るとすぐ眼下にキューブが立ち並ぶ住宅街が見える。
「ほら、あそこが新しい家だ。今日からみんなで、あそこに住むんだ。」
クチル島やその周辺の島から連れてきたのは老人と子供ばかりで約100人。
この日初めてジュベル国の獣人難民とクチル島周辺の人間族の難民が顔を合わせた。
やはりお互い警戒しあっている。
それに言葉も通じない。
俺は獣人言葉と人間の言葉、両方の言語を交互に使い住民に話しかけた。
「今日からお前達は、同じ村に住む仲間だ。種族は違うが同じ境遇にある。ヒュドラに侵略されたという悲しい共通の歴史がある。でも侵略は今日で終わりだ。お前達は、この俺、ソウ・ホンダの仲間だ。俺が責任を持ってお前達を守る。」
パチパチ・・・
まばらな拍手が起きた。
無理もない。
境遇が激変して、違う種族と共同生活をしろといわれても、「はいわかりました。」と安易に受け入れることができないのだろう。
まぁ、おいおい慣れるだろう。
リンダが集落で生活するための基本的な説明をしている時に集団の後方で歓声が上がり、バウワウと犬の鳴き声が聞こえた。
何事かと思い歓声のする方向行ってみたところ、ピンターが竹とんぼを飛ばし、それを獣人の子供と人間の子供、それにケルベロス「ハチ」が追いかけてはしゃいでいる。
どの子も笑顔だ。
何ヶ月ぶりかにまともな食事を取り、ゆっくり寝て、ピンターの遊びに参加することで子供らしさを取り戻したようだ。
(ナイス、ピンター)
その夜、キューブで食事をすると時、仲間に俺の考えを話した。
「今日から、俺の保護すべき集落が出来ました。今はまだ獣人と人間の間にわだかまりがあるだろうし、いろいろ問題も出てくると思います。俺が責任を持って集落をまとめ上げるべきなのだろうけど、俺には他にもやるべき事があります。そこで、テルマさん、ブルナ、ピンター」
「はい。」
「はい。」
「なぁに?兄ちゃん」
「お前達にあの集落の面倒を見てもらいたい。」
「「ええ?」」
「いいよぉ」
「クチル島出身の3人、ピンターは獣人言葉がしゃべれる。だから俺に代わってあの子達、あのじいちゃん、ばあちゃんの面倒を見てくれないか?それとドランゴさん。」
「はい。ワッシも?」
「ドランゴさんは3人を補佐しながら、集落を見て回って必要な施設を作って下さい。資材はリンダが用意します。」
「ようがす。ワッシにお任せを。久しぶりの出番に腕がなるでやんす。」
ドランゴさんは快く引き受けてくれた。
「テルマさんと、ブルナはどうなの?」
二人とも少し戸惑ったが。
「やってみます。」
と引き受けてくれた。
これで、新しい集落の運営基盤ができた。
「ソウ様、アタシはぁ~」
ヒュナがすねたように言う。
「ヒュナはブルナを助けてやってくれ。頼りにしている。」
「はぁーい。ねえちゃん頑張ろうね。」
ヒュナ達奴隷部隊だった少女達も新しい集落に住んでもらうことにした。
食事を続けていたところ、突然ガラクが現れた。
「ソウ、ライジンが帰って来たぞ。」
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