異世界修学旅行で人狼になりました。

ていぞう

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第五章 獣人国編

第130話 Hello Welcome

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ブルナを無事救出できたが、まだまだ、やるべき事が多く残っている。
まずはルチアの捜索、次いでヒナ達の救出、ブラニさん、ラマさんの捜索、ヒュドラ教の悪事を暴くこと等など。

俺の体があと二つ欲しい。
それに移動手段も欲しい。
今はゲートとウルフで、この時代にしては恐ろしく早く移動できているが、それでもゲートは合計五つで展開する場所に限りがある。
ウルフは山岳地帯では動きがとれない。

今、俺が行きたい場所はいくつかある。
一つはラーシャ国。
ライジン将軍の後を追いかけたい。

次はネリア村、俺が救った村人達は再びゲラン軍に襲われたという。
その村人達がどうなったのか知りたい。

そして最後にキノクニ一族の故郷、「ヤマタイ」。
この国はゲランのはるか北東にある島国で、キノクニ総領のカヘイさんから聞いた話では俺達の国、日本にそっくりだった。

この国にもしかしたら地球帰還の手がかりがあるかも知れない。

(飛行機でもあれば楽なのに。)

そういえば、このキューブをタイチさんからもらい受ける時、タイチさんから「飛行機もあったが、どっかにおっことしてきた。」という話を聞いた覚えがある。

『タイチさん』

ブォン
フォログラムのタイチさんが現れた。

『なんぞい。結婚の仲人でも頼みに来たか?』

エリカとのことを言っているのだろう。

『違いますよ。』

エリカとの結婚は将来の選択肢にはあるが、俺達はまだ若いし、やるべき事が多く残っている。

『じゃ、なんぞい。』

『タイチさん、昔飛行機持っていたでしょ?』

『ああ、小型の飛行艇を持っていたぞ。10人乗りの軍用機だ。』

『それ、どこで落としました?』

『ん~。・・・・わからん。神族の奇襲を受けて逃げ惑っている最中に落としたらしいが、どこに落としたかわからん。』

『そうですか・・・じゃ仕方無いですね。』

『なんぞい。飛行艇がいるのか?』

『絶対というわけじゃないですけど、あればかなり便利です。』

『そうか~・・・ワシの飛行艇じゃ無いが、神族の飛行艇ならあるかもしれんぞ。』

『え?本当ですか。どこです?』

『前にガンドール遺跡で警備ロボットと戦ったのをおぼえているか』

『はい。戦闘のとばっちりでピンターが怪我をしたときのことですね。』

キャラバンでゲラニへ来る前、ガンドールという遺跡で発掘調査隊を相手にブンザさんが商売をしているとき、遺跡の踏査隊が遺跡の入り口を爆破しようとしたら、蜘蛛のロボットが多数現れた事があった。

俺がロボットを退治したが、多くの死傷者が出たのだ。
それ以来、国がその遺跡を封鎖しているという。

タイチさんがモニターに蜘蛛型ロボットを投影した。

『これか?』

『そうです。』

『これは神族の使う警備ロボットだ。あの遺跡は神族の倉庫だと思う。神族の倉庫なら飛空挺もあるかもしれんな。』

『もし、そうだとしても、格納庫には入れませんよ。入り口は堅いしセキュリティーがしっかりしているようです。』

俺は以前に遺跡の入り口にあったキューブと同じような認識板に魔力を流してみたが、その時には反応が無かった。

『そりゃ、人狼の魔力を流しても神族のセキュリティーは突破できんじゃろ。』

『では、どうすれば。』

『ソウ、お前神族と戦ったことがあるだろ。その時の魔力波形、おそらくマザーに残ってるぞ。な、マザー』

マザーが反応した。

『はい。神族ヘレナ・ドーベルの魔力波形がデータに残っています。』

『それってコピーできる?』

『私自身は魔力を出力できませんが、ソウ様が出力する魔力を変形することは出来ます。完全コピーとは参りませんが、やってみる価値はあると思います。』

俺は一階の居間へ戻った。
お昼前でアウラ様も来ていた。

「ドルムさん。お昼ご飯終わったら付き合って下さい。」

「お、なんぞはじめるんか?ワイも行くぞ。」

ドルムさんよりアウラ様が先に反応した。
アウラ様が参加してくれれば心強いが、いいのだろうか?こんなことに神様を付き合わせて。

「いいのですか?雑用ですよ。あるのかないのかわからない物を探しに行きます。」

「なんや、それ?」

「飛空艇です。」

「乗り物なんていらんやん。ワイに乗ってけばええやん。」

「そうはいかないですよ。龍神様を飛空挺がわりに使うなんて。それに飛空艇以外の物もあるかもしれないし。神族の遺跡調査ですから。」

ドルムさんが腰を上げた。

「それ、乗った。面白そうだな。昼飯食ったら行こう。」

「オイラも行きたい。」

ピンターが手を上げた。
ピンターがキューブから出ることはほとんど無い。
近くに友達もおらず、いつも留守番をさせている。

(たまには気晴らしも良いか。)

「わかった。連れていくけど、安全が確認できるまでウルフから出ないと約束しろよ。」

「うん。わかった。」

ピンターがブルナを振り向く。

「ピンター、ソウ様の邪魔にならないでね。」

「わかっているよ、ねぇちゃん。」

ブルナのドレイモンは完全に排除出来ている。
それでも俺に対して攻撃をしかけた後ろめたさからか、表情に少し影があるような気がする。

俺とアウラ様、ドルムさん、ピンターの四人でウルフに乗車し、ゲラニの南方、ゴブル砂漠の西端にあるガンドール遺跡へ向かった。

ゲラニからガンドール遺跡まではウルフでおよそ2時間かかる。
車中、後部座席のアウラ様から話しかけられた。

「ソウ。」

「はい。」

「あれ、いるんとちゃうけ?」

ドルムさんとピンターは(何?)という顔をしている。
俺にはすぐにわかった。
ここ最近でアウラ様が持っていて俺が必要とする物。
それは龍神丹だ。

「いえ。まだいいです。自分の力でなんとかしてみます。どうしても駄目な時はお願いするかもしれません。」

「イリヤが気にしとってな。あのままでは可愛そうだって。」

「ええ、わかっています。エリカの命にかかわることなら、今すぐにでもお願いしていましたが、幸い命は無事です。他国と戦争になっても守ってきた物、おいそれといただくわけには参りません。」

「ほうけぇ。どうしても必要なら言えよ。もう少しだけストックがあるさけ。」

「はい。ありがとうございます。」

ドルムさんもピンターも納得がいったようだ。


そうこうしているうちにガンドール遺跡へ到着した。
遺跡の入り口は封鎖されていて、番兵が3人いた。

番兵にどう説明しようかと考えているうちにアウラ様が先に進み出た。

「なんだ?お前は?」

「アウラや。」

「なんの用だ?」

「寝とけ。」

番兵がその場に崩れ落ちた。
ドルムさんが番兵をテントに引きずり込んだ。

「いこけ」

「はい。」

ま、てっとりばやいっちゃ、てっとりばやいけどね。

ガンドール遺跡は、以前訪れた時のままの姿だった。
遺跡の入り口の壁にユーザー識別のためだろうかB5サイズくらいの白い板がある。
キューブやウルフを管理するときの識別板と同じだ。

『マザー、どうすればいい?』

『はい。私と意識を同調するように心がけて下さい。ソウ様が魔力を出力するときに私がヘレナ・ドーベルの魔力波形と同型になるよう調整してみます。』

「アウラ様、ドルムさん、今から扉を開きます。いきなり戦闘になるかもしれませんので用意をしてください。」

「よっしゃ。」

「おう。」

俺は板に手を宛てた。

『マザーやるよ。』

『準備完了です。いつでもどうぞ。』

マザーが俺の心に干渉してきたのがわかる。
俺は入力デバイスを開いてマザーの干渉を受け入れた。

俺が魔力を練って識別板に放出しようとする寸前、マザーが介入して俺の魔力波形に変化があった。

目の前の何も無かった白い壁の中央に縦の筋が入ったかと思うと、その筋を中心に壁が左右に開いた。

「やった。」

扉が開くと同時に室内の照明が灯った。
室内は10メートル四方ほどの広さだ。

室内の奥にカウンターがあって、そのカウンターの向こうに誰か居る。

「誰かおるぞ、気ぃつけい。」

真っ先にアウラ様が反応した。
俺達は身構えながらその人物に近づいた。

『Hello Welcome』

いきなりその人物が話しかけてきた。

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