異世界修学旅行で人狼になりました。

ていぞう

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第三章 キャラバン編

第50話 俺の子供 ツインズ

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俺は今、アウラ様と共に、フォナシス火山の火孔にいる。

俺の傍、両肩の少し上には、手乗りドラゴンと言っていい程の、かわいいドラゴンの兄妹がフワフワと浮いている。

飛んでいるのではなく、浮いているのだ。
おそらく生まれながらに重力操作のスキルを持っているのだろう。

二人の見掛けは色の違いだけで、大きさや顔かたちは全く一緒だ。
一卵性双生児ではないが、ツインズと言ってもいいだろう。


アウラ様は、仰向けで地面に寝そべっている。
肩と足を怪我しているので、俺がヒールを施した。

「おお、すまんな。」

アウラ様は俺の両肩のツインズドラゴンを見つめている。

「生まれたか、少し早いが、問題ないやろ。」

ツインズの赤い方を先に見て、次に青い方を見た。

「こっちがテランで、こっちがリーザやな。」

二人が頷く。

テランとリーザは時差で同じことを言った。

「あんた、誰?」
「あんた、誰?」

アウラ様ががっくりとうなだれる。

「誰て、おまえらの父親でんがな。ほれ、声に聞き覚えあるやろ?」

二人が同時に首をふる。

テランが俺を見る。

「僕の父ちゃん、この人」

リーザが俺を見る

「私の父様、この人」


「ふ化に立ち会えんかった父親の末路やな・・・」

アウラ様が恨めしそうに俺を見る。

(俺のせいじゃないですからね・・・)

「ふ化して最初に見たのが、ソウやったか。まぁしゃあない。子供らは後からイリヤに説得してもらうわ。ま最初に見たのが敵でなくてよかったわ。不幸中の幸いやな。」

アウラ様は傍に転がっている敵の死体に視線をやった。
敵の死体は9体ある。

俺が殺したのではないが、気絶している間にアウラ様達の戦闘に巻き込まれたのだろう。
敵ながら哀れだ。

死体はほとんど黒焦げ状態だったが、それぞれの死体の胸に青い月の文様が入ったペンダントがある。
俺は、それを回収した。

「どないすんねん。そんなもん。」

アウラ様が不思議そうに見ている。

「敵には間違いないですけど、今は仏様ですから、せめて遺品をここから、持ち出してあげようと思いまして・・・」

「ソウは、優しいんやなぁ」

その後、俺とアウラ様はアウラ様の体力が回復するのを待って、アウラ様の神殿まで帰った。
神殿まで帰ると、子供たちの気配を察したのか、イリヤ様が玄関まで出迎えてくれた。

「テラン・リーザ。お帰りなさい。よく無事で帰ってくれたわ。」

さすが母親、双子の姿を見るのは初めてのはずなのに、二人の名前を取り違えることなく、声をかけた。

「母ちゃん。」
「母様」

二人はイリヤ様の胸に飛び込んだ。
俺は、玄関まで、歩くには歩いたが、疲れと、足の痛さで、その場に座り込んでしまった。

「父ちゃん。」

「父様。」

二人が俺に近寄り心配そうな目でみている。
イリヤ様もこちらを見る。

「あら、まぁ。貴方たち、ソウさんを先に見たのね。」

アウラ様が悲しそうな顔をしている。

「そやねん。」

俺はアウラ様に支えられながら、神殿へ入った。
神殿内のアウラさんの寝室で、メディの診察を受けた。

俺の足は溶岩流を歩いたことで、ボロボロだ。
特に左足の激痛が治まらない。

「メディ。どうだ?治るか?」

『治りません。元の状態に戻すことは不可能です。』

(ええー・・・)

『両足が重度の火傷を負っています。特に左足首以下は完全に炭化しています。

このままの状態では、歩行どころか、生命維持にも支障をきたします。左足首と右足指5指の切断が必要です。実行しますか?』

(実行しないで・・・)

どうしよう、生き残るには足首の切断が必要らしい。
しかし、それはあまりにも切ない。義足に頼るしかなくなる。
もう自分の足では走ることができないのだ。

「そんなに心配する必要あれへんで。ワイがなんとかしたる。」

アウラ様が俺の心情を察したらしく、普段のアウラ様では考えられない様な優しい声で話しかけてくれた。

「かぁちゃん。あれ、もってきたって。」

アウラ様がイリヤ様を促した。

「はい。」

と言ってイリヤ様が外へ出た。
イリヤ様は数分で戻ってきて、何かをアウラ様に手渡した。

「ほれ、これ飲み」

アウラ様の掌には、パチンコ玉くらいの大きさの金色に輝く球が乗っていた。

「これは?」

「龍神丹や、ワイが1000年間、神力を注ぎ込んだものや。

死んでない限り、あらゆる病気と怪我に効く、足や腕が切り落とされても、それを飲めば、また生えてくる。指くらいなら2~3日で生え変わるで。」

龍神様が1000年かけて作った薬、俺のやっていたゲームで言えば『エリクサー』にあたる物だろう。
アウラ様達の信者が多かった時代、信者の為に作り続けていた物らしい。

「そんな、貴重な物をいいんですか?」

「ええも悪いもあるかい。ワイらの子供を命がけで救ってくれたんや。これでケチっとたら、神の名は返上じゃワイ。」

アウラ様と、イリヤ様が、こちらを向いて微笑んでいる。
二人の子供達も心配そうに俺を見つめている。
俺は遠慮しながらも、その龍神丹を飲み込んだ。

龍神丹を飲み込んだ途端、胃が燃えるように熱くなった。
その熱さは、胃から体全体に広がった。
怪我をしている足は、それこそ燃えるような感覚を覚えたが、痛みが消えた。

徐々に熱さが引くと、良い睡眠から目覚めた時のように、体がすっきりとした。
心なしか、飲む前より体の各種機能が向上したように感じる。

足を見た。

右足は足指の根元から炭化した指が崩れ落ちて、根元から肉球が盛り上がっている。
左足は、足首から下が無くなっていたが、右足と同じように肉球が出来ていた。

「しばらくは不自由やが、一週間くらいで生えそろうはずや。何か不自由な事があればワイを呼べ、お前の足替わりくらいにはなったるわ。」

「そんな恐れ多い。でもありがとうございます。」

俺は頭を下げた。

「ええて、ええて、な、かあちゃん。」

「そうですわ、子供たちを救って下って、本当にありがとうございます。心からお礼申し上げます。」

イリヤ様が深々と頭を下げた。

「貴方、ソウさんに、何かお礼を」

「ほうじゃの、隣の部屋のあれで、ええかな。ワイらには何の意味もないし。」

「そうですね。あれがよろしいでしょう。」

(何なの?アレって。)

俺はアウラ様に支えられて、隣の部屋へ移動した。
隣の部屋には、うず高く積まれた金貨や銀貨、銅銭、それに何かの彫像や、杖、冠等があった。

貨幣は何万枚、いや何千万枚あるのかわからない。10畳くらいの部屋に1メートル位の嵩で奥からドア直前までびっしりと硬貨や財宝が積み上げられている。

「ここ3万年くらいで、集まったお布施や。ワイら貨幣なんて使わへんしな。わけのわからん杖や銅像もある。いつのまにかこんだけ貯まってしもた。邪魔くさいから、ソウ、お前これ全部使え。」

(ええー。これって日本円にしたら何億?いや・・何兆円?)

「こんなにもらって、いいんですか?」

「ええて、信者もおらんようになったワイらには、そこらへんの石ころと、なんら変わりの無いもんやからな。」

俺は一瞬で億万長者になった。

「全部持っていかれへんやろうから、いつでもココ来て勝手にもってけ。」

金はこれからも必要だ。
もしこの資金があれば、今後魔力を大量消費してダイヤを造る必要もなくなる。

俺は、せっかくの行為を受け取ることにした。

アウラ様は、なんでも持って行けと言うが、ここでお金を持って帰るのは少し恥ずかしい。
だから、松葉杖代わりの杖を一本と、龍の細工が施された盾をもらうことにした。

「お、その盾は便利やで、昔信者に頼まれていくつか作ったが、自分だけでなく周囲の仲間も守ってくれる。」

アウラ様はほかにもいくつか宝物の説明をしてくれたが、その日はその二つだけもらうことにした。

「それじゃ、俺はこれで帰ります。いろいろとお世話になりました。」

俺はキャラバンで待っている仲間の事が心配だった。
ドルムさんとは、ある程度連絡を取り合っていたが、詳細な話はしていない。
俺が軽い怪我をしたくらいには伝えてあるが、心配しているだろう。

「なんや、もう帰るんか、ゆっくりしてけば、ええのに。牛の丸焼きでも作ったろか?」

(俺はここへ来る前に草原で見た牛の群れを思い出した。・・・)

「いえ、お気遣いありがとうございます。仲間が心配しているでしょうから。」

「ほーかー。無理に引き留めるのもなんやしな。ほな送ってくわ。」

「はい。お願いします。」

と俺が腰を上げると。

「父ちゃん。どこ行く?」

「父様。どこへ?」


ツインズの問題を忘れていた。・・・
二人は、生まれた瞬間に俺を見た。
鳥など一部の卵から生まれる生物は、ふ化時、最初に見た物を親だと思い込む性質、本能があるらしい。

ヒヨコがふ化する時、蛇を見せたらどうなるか、という実験を動画サイトでみたことがあるが、その実験をした野郎を殴りたくなったことを覚えている。

ツインズは、アウラ様を差し置いて俺の事を父親だと、思っているようだ。
俺はツインズに

「また、来るから、ここでお母様と待っててね。」

と引き攣った笑顔をむけた。

「嫌だ。一緒に行く。かあちゃんも行こう。」

「嫌だ。父様と一緒が良い。」

ツインズは俺から離れようとしない。
俺の背中にしがみついている。

「しょうがないわね。ということで、私もソウさんと一緒に行きます。」

「お、おい。かあちゃん。」

アウラ様が焦っている。

「というわけにもいきませんよね。ウフフ。」

イリヤ様がおどけたようだ

「こんな時に変な冗談言うな、焦るやんけ。」

俺の方が二人の間で焦っている。

「子供らは10年かかるところを7年でふ化してもうたからなぁ。その3年でワイとの関係も深まるはずやったのに。

しかたない。ソウ、一時お前に子供ら預ける。ただし夜はワイが迎えに行くから、ここへ帰してくれ。」

(ええー・・・毎日アウラ様が、キャラバンとここを往復するの?)

それは、問題があった。
アウラ様が広場に現れた時のことを思い出していた。

「ソウさん。迷惑でしょうけど、子供たちがアウラを父親だと理解できるまで、昼間だけでも子供たちの面倒を見ていただけませんか?」

神様に頼みごとをされたら、断り様がない。

「わかりました。昼間だけお預かりします。ただし、アウラ様の送り迎えは必要ないです。(というか迷惑)私が送迎します。」

俺はマジックバッグから

『ポータブルゲート』

を取り出し、その場で起動した。
アウラ様の寝室に転移用のスクリーンが出現した。

「なんや、?これ」

「ポータブルゲートです。このスクリーンの向こうはガルダ村にある俺の家の地下室です。」

「ほー、便利なもんがあるんやな。これでガルダ村とここを行き来できるんか。」

「はい。」

ポータブルゲートは便利だが、一つだけ不自由なところがある。

ポータブルゲートを起動させた空間側で電源をOFFにしなければポータブルゲートを閉じられないし、ゲートを収納して持ち運ぶことが出来ない。

キューブの地下室側からではポータブルゲートの電源をオフにできないので、ポータブルゲートを回収するには、誰かが向こう側でゲートを収納して実際にキューブまで運んでこなければならないのだ。

だから、遠くにゲートを開くと回収が面倒だ。
ポータブルゲートの在庫は5個、キューブに残っているのは残り4個だ。

「理屈はわかった。これなら安心できるな。夜には子供ら連れてきてくれ。それとゲートの場所、ここはまずい。ワイらの寝室やしの。アハハ」

それはそうだ。
大人の寝室に誰でも自由に出入りできるドアがあってはまずいよね。

寝室の近く、何も無い部屋にゲートを設置した。

「それじゃ、帰ります。」

「おう、またの。つうてもゲートがあるから、隣の部屋へ移動するようなもんか。後から子供らの様子見に行くさけな。」

「あ、それなら私も。」

アウラ様とイリヤ様が後からキューブへ来ることになった。
俺は、さっきもらった杖を松葉杖代わりにして、自力でキューブへ帰って来た。

もちろんツインズも一緒だ。

地下室から一階へ上がり、居間へ行くと、仲間が全員揃っていた。

「遅かったな。心配したぞ。」

「兄ちゃん」

「ニイニ」

皆が群がる。
テルマさんが、俺の足に気が付いた。

「ソウ様、その足は?」

「ああ、焼け落ちちゃった。アハ」

「「「「「ええー!!!!」」」」」

ツインズが俺の肩に乗った。

ドランゴさんが、それを見て質問した。

「その生き物は何でがすか?」

「俺の子供、ンツインズドラゴン」

「「「「「ええええええええ!!!!!」」」」」
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