35 / 177
第二章 奴隷編
第35話 タイチさん 同族の呼びかけ
しおりを挟む
街中でアキト達と戦ってから6日が過ぎた。
今日は新月だ。
地球から太陽に向けた視線を月が遮る位置へ来る日、三日月とも言う。
つまり暗いのだ。
「ソウ、歩けるか?」
「なんとか・・・」
ドルムさんに支えられ、鍛冶屋の作業場まで来た。
「師匠、窮屈でやんしょうが、一時の辛抱です。これに入ってくだしあ。」
ドランゴさんが指さすのは、元々石炭が入っていた樽だ。
俺は、未だに素早く歩けない。
だから、移動時間を短くするために樽の中に入り、樽ごと船まで運んでもらう予定だった。
「すみません。ふがいなくて・・・」
俺は自分の状態が情けなかったが、今はドルムさんとドランゴさんに助けてもらう他ない。
樽の中に入った。
万が一を考えて俺の頭の上に中蓋を落として、その上に細かな石炭を乗せた。
それほど用心するのは、町中に厳戒態勢が敷かれていたからだ。
ドルムさんの悪魔姿が複数人に目撃されたのが、その一因のようだ。
『殺人犯によって悪魔が召喚された。』
そんな噂が町中で囁かれている。
あちこちに検問所が設けられて、兵士の他、俺の同級生達が、門番と一緒に監視をしているらしい。
討伐隊が何組も組織されて、街中は常時いずれかの隊が巡回している。
そのいずれの隊にも同級生が配置されているようだ。
「いいか?ソウ。今から荷車で船まで行くぞ。」
ドルムさんが樽の外から俺に話しかけた。
「はい。お願いします。」
ガタゴトと俺が入っている樽を乗せた荷車が動き出した。
俺は、真っ暗な樽の中で、じっと息を潜めていた。
店を出て、2~3分後、不意に荷車が止まった。
外から話し声が聞こえる。
「おい、こんな夜中に何処へ行く。」
討伐隊のようだ。
間が悪い・・・
「いとこの鍛冶屋が急ぎ仕事で燃料が足りなくなったそうで、それを届けに行くところでやんす。」
「こんな夜中にか?」
「はい。最近物騒で、兵隊さんの武器を急ぎで打っているんでがんす。今日も徹夜だとぼやいておりやんした。」
「そうか、でも一応荷物はあらためるぞ。」
「・・はい。」
ガタゴトと蓋を開ける音がした。
「ほらね。石炭でやんすよ。」
頭の上で、石炭をかき混ぜる音がする。
(まずい・・・)
「もう、いいですよ。ただの石炭だよ。本体から遅れるよ。リュウヤの機嫌が悪くなる。行こうよ兵隊さん。」
(!!ツネオの声だ・・)
「・・・そうだな。行っていいぞ。」
「ご苦労様でやんす。」
ガタゴト蓋が閉まった。
(ナイス!ツネオ。・・・それにしても冷や汗出た。胃が痛いや。)
荷車の動きが止まった。
荷車から樽が下ろされて蓋が開けられた。
「危なかったな。アハハ」
ドルムさんが笑っている。
「用心してよかったです。」
それから俺達はドルムさんがあらかじめ用意していた船に乗った。
船は二本のオールで推進力を得るタイプの小型船で、俺はムシロをかぶって船に寝そべった。
2時間程船を漕いだだろうか、潮の匂いがしなくなって、船の揺れも小さくなった。
「着いたぞ。」
ドルムさんの声でムシロから出た。
そこは大きな湖の畔だった。
湖の沖方向は霧と暗闇で何も見えない。
岸方向は切り立った崖になっているが、崖の上に続く階段が見える。
崖の上には大きな屋敷の屋根部分が少しのぞいている。
船を桟橋に繋いで、歩いて階段を昇った。
崖の高さは10メートルくらいで、5分もかからず崖の上に出た。
「さあ、ここだ。俺達の新居」
ドルムさんの案内で建物を半周し、建物の正面に出る。
その建物は飾りも何もないそっけない建物だった。
崖の縁に立っていて、建物から陸地方向は緩やかに傾斜している。
小高い丘の上に建っているような感じだ。
高さ8メートル位、横10メートル、奥行き10メートル位、四角い大きな箱に屋根を乗せたような形だった。
建物の周囲には一応、柵が設けられているが、柵以外周囲に何もない。
庭もあるが、雑草が生い茂っている。
建物の周囲は建造物などなく、今は見渡すことができないが、遠くまで草原が続いているようだ。
建物はレンガ造りの二階建で、頑丈そうだ。
正面に丈夫な扉がある。
この場所からは見えないが、勝手口もどこかにあるだろう。
建物正面には小さな窓がいくつか見えるが、当然のこと灯りは灯っていない。
「変わった造りの建物ですね。」
「そうだな。変わっているな。不動産屋の話だと、この建物はそうとう古くて、以前は貴族が釣り小屋として使っていたそうだ。いつの時代の建物かわからないくらい古いらしい。」
「古くても全く問題ないです。しばらくの間だけですからね。ここで住むの。」
正面玄関は木製だったが、かなり頑丈な造りだ。
ドルムさんが力を込めて押すと。
ギィィー
と音を出して開いた。
「ピンターやルチアだと開けられないかもしれないですね。」
「次来た時に油を差しときやすよ。」
部屋の中へ入ったが家具と言えるものは何もなかった。
正面から入ると、直ぐにエントランス。
左右対称で一階は奥に台所兼食堂と浴室。左右に居間が一つづつ、合計で二部屋。
二階に4部屋というシンプルな造りだった。
その日は何もせず、俺一人で一夜を明かす予定だった。
翌日にはピンター達を迎え入れる予定で、ドルムさんとドランゴさんは鍛冶屋へ帰った。
帰り際ドルムさんが、「残ろうか」と言い出したが、ボートの漕ぎ手が一人だとしんどいはずなので断った。
一人で横になった時、魔法が回復していないかどうか試してみることにした。
「ヒール・・・」
わずかに反応するが、然程の効果は無い。
(マザー・・・マザー・・)
『ソ・・・ま』
マザーが反応したが、意思の疎通は図れない。
『来たか・・・』
(ん?)
マザーとは違う思念を感じた。
(誰だ?)
誰に向けるでもなく遠話で問いかけた。
『こちらへ・・』
間違いない、誰か居る。
思念が発せられる方法へ進む。
(どこだ?)
『こちらへ・・』
さらに進む。
一階手前右側の部屋から強く感じられる。
部屋の中へ入った。
・・・・
誰も居ない。
『こちらだ・・・』
部屋の中央部、床下から思念が感じられる。
床板を全部めくってみたが何もない。
床板の下は、滑らかな石の様な金属の様な、見たことのない床材だった。
「どうすればいい?」
『魔力を通してみろ・・・』
言われる通り、床に手を充てて魔力を流してみた。
すると部屋の奥の方、壁際の床に1メートル四方の四角い穴が音もなく開いた。
穴を覗くと床下に地下室の様な空間があった。
階段があったので、下に降りてみたところ、自動的に灯りが灯った。
地下室はかなり広く、この家の敷地面積と同じくらいだ。
地下室はまるで元の世界のサーバールームのようで、コンピューターらしき器械がいくつも並んで、無数の端子が明滅を繰り返している。
部屋の中央には、SF映画の宇宙船内で見る指令台のような設備があった。
扇形に広がる各種装置、キーボード、何かわからないレバー、そして指令台の左端に直径60センチ、高さ1メートル程の円柱がある。
3方の壁には3段位の棚があり旅行鞄やアタッシューケースのような物がいくつも並べられている。
一番奥の壁は壁の下に何かの装置があって、壁の面の四方を金属製の枠で囲んでいる。
俺は思念反応が濃いと思われる、指令台左端の円柱に近づいた。
円柱は全体が銀色に輝いている。
(何だろう?)
『君の同族だ。』
円柱から思念が発せられた。
『君とマザーの通話を傍受した。私は君の同族、人狼族だ。正確に言えば人狼族タイチ・ヤマトの記憶を持つAIだ。』
(どういうこと?)
『何でも答えるが、一つだけ、確認させてくれ。君が同族であることは間違いないと思うが、念のためDNA検査をしたい。これに君の血を一滴垂らしてほしい。』
円柱がそう言うと。
円柱の下方50センチくらいのところから直径5センチくらいの皿がスライドして出てきた。
『これに血を垂らせ。危なくはない。信用しろ。』
(危なくはないと言われて、危なかったことはいくらでもあるしな・・・)
『ひねくれた性格の個体だな。これから我が一族の貴重な遺産をくれてやろうとしているのだ。少しくらいの冒険をしても罰はあたらん。』
(最近のAIって怒るのか・・・)
俺は少し躊躇したが、敵ではなさそうなので、短剣の先で指を突いて血を皿に垂らした。
皿が円柱にひっこんだ。
待つこと10秒。
『間違いない。君は人狼族、マザーのデータとも一致する。』
ブオン♪
円柱の上に人が立った。
正確に言えば、人のフォログラム、立体映像が映し出された。
『やあ、わが同族よ。吾輩はタイチ・ヤマト、わずかに生き残った人狼族の一員だ。君が人狼であることは確認した。人狼族が生き残っていたのは幸いだ。私はもう死んでいるが、生きている同朋の手助けができるなら嬉しい。何か手助けが必要か?』
タイチ・ヤマトと名乗る人物は、60代前半くらいの年齢、緩やかな白い布を身にまとい髪の毛は白髪の長髪、髭も伸びている。
これで手に杖でも持てば、物語に出てくる仙人のようだ。
(助けは沢山必要だ。俺は異世界から来た。元の世界へ帰りたい。)
『先ほども言ったが私は、タイチの記憶を持つAIだ。タイチの記憶領域に異世界の知識は無い。回答不能だ。』
(なんだよ役にたたねぇな)
『そ、そんなことはないぞ、マザーを造ったのは私と仲間だし、武器や道具も沢山持っているぞ。いらんのならやらんがな。ふん。』
(ほんとにAIか?すねてやがる。・・・)
『タイチの記憶と共にタイチの性格も反映されとるんじゃ。文句言うな。』
タイチって人の性格が少し判ったような気がした。
(わかったよ。タイチさん、あんた死んでるって言ってたけど、いつ、どうして死んだの?人狼族って全滅しているの?)
『順に話すから、あわてるな。ウホン。・・・私は人狼抵抗戦線の幹部で、今からおよそ2万年前に生きていた。敵が迫ってきているのがわかったので、私の記憶をこのAIに移植したのだ。
今、タイマーを見たらAIとしての私が起動したのは19,998年と11か月23時間前だな。』
(2万年も前にAI技術があったのか・・・)
『その当時、人狼族は約8万人いたが、戦争後は数千人に減った。今現在は君を含んで数百名の単位でしか生き残っていないだろう。マザーのアカウントで有効なのが数十名だけだからな。』
(どうして人狼族は滅んだの?)
『戦争だよ。神族との戦争、特にヒュドラとの決戦に敗れたのが大きかった。あれでほとんど殺された。』
(どうして戦争になったの?)
『人狼族はマザー計画の成功で、栄耀栄華を極めた。それを羨んだ神族が青い月シスターを作り出したが、それがいけなかった。青い月のエネルギー、ブルーポイント(BP)は原初の月のRPと融合することで、神族に甚大な力を生じさせてしまった。この世に元々なかった魔法を生み出したからな。人狼族もその恩恵を受けたが、神族は魔法の利用に長けていて力が増大した。
そしてヒュドラを中心とする神族の一部が人狼殲滅計画を実行に移したのだ。』
(マザーと連絡出来る?)
『もちろん。出来る。』
(俺、マザーと連絡出来ないけど、なぜなんだろう?)
『たぶん、魔力詰まりだな。精神的なダメージが大きいと魔力が詰まることがある。ダメージの原因を取り除くか、他の要因で精神にゆとりが出来れば自然に治るだろう。この部屋に精神安定剤があるが、飲むか?気休め程度の効果はあるだろう。』
(治療してくれるの?ありがとう)
『素直なところもあるんじゃな。』
(・・・)
(いろいろ質問したいけど、まずは体を治療したい。)
『そこのケースに薬が入っている。』
フォログラムのタイチが指さす場所のアタッシュケースを取り出して開けると、中には沢山の薬瓶が詰められていた。
『2万年前の薬だが、そのケースは密封時に時間が経過しない設計だから大丈夫だ。赤いラベルの薬を飲め。』
(2万年前の薬?大丈夫?)
『大丈夫だよ、昨日作った薬と同じようなものだ。文句言うな。』
俺は恐る恐るその瓶の薬を飲んだ。
飲んで数秒経過すると・・・
心の中のモヤモヤが少しずつ晴れてきたような気がした。
「ヒール・・」
自分の体が輝いて苦痛が少なくなった。
(効いた・・)
『当たり前だ。』
「タイチさん。ありがとう。」
『現金なやっちゃな。魔力詰まりの元は、お前の『心』だから、その心の問題が解決しなければ、完治しないかもしれんぞ、その薬は対症療法にすぎないことを忘れるな。』
(うん。)
『ヒールは完全じゃないようだな。青いカプセルを飲め。』
青いカプセルを飲んだところ、ほぼ全ての傷が癒された。
青いカプセルは『身体回復薬』つまりヒール効果のある薬のようだ。
(この部屋には、いろんな品物があるみたいだけど、これ、もらっていいの?)
『いつの日か、同朋が現れれば役に立ててもらおうと思ってた。だからここにある物は全て君の物だ。役立ててくれ。』
(どんな物があるの?)
『魔導車や、魔導船、武器に、医薬品、ポータブルゲート等色々だな。戦争が始まって逃げる時、あわてていたから、それくらいしか持ち出せなかった。飛行機も持ってきたはずだが、どっかに落っことしたらしい。みあたらない。ハハハ』
(飛行機おっことしてきたって・・・どんだけよ。)
俺は部屋の中を見渡したが、車や船は見当たらない。
どこか別の格納庫があるのだろう。
(格納庫は、どこにあるの?)
『何の?』
(車や船の)
『格納庫なんてないよ、全部ここにある。』
(え?)
『車も船も全て、そのケースの中に格納してあるよ。』
どうやら、ここにある鞄やアタッシュケースは、マジックバッグ同様の機能が備わっていて、魔力を流せば中身が自動的に外へ出てくる仕掛けのようだ。
(それは、すごいな・・車や船があれば移動が楽になるぞ。)
『車や船も便利だろうが、移動ならもっと便利な物があるぞ。』
(何です?)
『そこのケースを持って上の部屋へ行ってみろ。』
言われるままに階段を上がった。
『ケースを開いて魔力を流せ』
ケースを開いて魔力を流しこんだところ、ケースの上に2メートル四方くらいの青く光るスクリーンのような幕が現れた。
『そのスクリーンを潜ってみろ。』
おそるおそるスクリーンを潜ったところ、さっきまで俺が居た地下室に出た。
目の前にはフォログラムのタイチが居る。
俺の後ろは、唯一棚のない壁が青白く輝いている。
どうやら、上の階のスクリーンと地下室の壁は、空間的につながっているようだ。
今度は、その青白く輝く壁を潜ってみたところ一階のアタッシュケースの前に出た。
『ポータブルゲートだ。』
(うひょー、これは便利だ・・)
俺は、その夜地下室におかれた様々な装備や武器の説明を受けた。
全てを理解したわけではないが、俺は相当貴重な財産を受け継いだようだ。
今日は新月だ。
地球から太陽に向けた視線を月が遮る位置へ来る日、三日月とも言う。
つまり暗いのだ。
「ソウ、歩けるか?」
「なんとか・・・」
ドルムさんに支えられ、鍛冶屋の作業場まで来た。
「師匠、窮屈でやんしょうが、一時の辛抱です。これに入ってくだしあ。」
ドランゴさんが指さすのは、元々石炭が入っていた樽だ。
俺は、未だに素早く歩けない。
だから、移動時間を短くするために樽の中に入り、樽ごと船まで運んでもらう予定だった。
「すみません。ふがいなくて・・・」
俺は自分の状態が情けなかったが、今はドルムさんとドランゴさんに助けてもらう他ない。
樽の中に入った。
万が一を考えて俺の頭の上に中蓋を落として、その上に細かな石炭を乗せた。
それほど用心するのは、町中に厳戒態勢が敷かれていたからだ。
ドルムさんの悪魔姿が複数人に目撃されたのが、その一因のようだ。
『殺人犯によって悪魔が召喚された。』
そんな噂が町中で囁かれている。
あちこちに検問所が設けられて、兵士の他、俺の同級生達が、門番と一緒に監視をしているらしい。
討伐隊が何組も組織されて、街中は常時いずれかの隊が巡回している。
そのいずれの隊にも同級生が配置されているようだ。
「いいか?ソウ。今から荷車で船まで行くぞ。」
ドルムさんが樽の外から俺に話しかけた。
「はい。お願いします。」
ガタゴトと俺が入っている樽を乗せた荷車が動き出した。
俺は、真っ暗な樽の中で、じっと息を潜めていた。
店を出て、2~3分後、不意に荷車が止まった。
外から話し声が聞こえる。
「おい、こんな夜中に何処へ行く。」
討伐隊のようだ。
間が悪い・・・
「いとこの鍛冶屋が急ぎ仕事で燃料が足りなくなったそうで、それを届けに行くところでやんす。」
「こんな夜中にか?」
「はい。最近物騒で、兵隊さんの武器を急ぎで打っているんでがんす。今日も徹夜だとぼやいておりやんした。」
「そうか、でも一応荷物はあらためるぞ。」
「・・はい。」
ガタゴトと蓋を開ける音がした。
「ほらね。石炭でやんすよ。」
頭の上で、石炭をかき混ぜる音がする。
(まずい・・・)
「もう、いいですよ。ただの石炭だよ。本体から遅れるよ。リュウヤの機嫌が悪くなる。行こうよ兵隊さん。」
(!!ツネオの声だ・・)
「・・・そうだな。行っていいぞ。」
「ご苦労様でやんす。」
ガタゴト蓋が閉まった。
(ナイス!ツネオ。・・・それにしても冷や汗出た。胃が痛いや。)
荷車の動きが止まった。
荷車から樽が下ろされて蓋が開けられた。
「危なかったな。アハハ」
ドルムさんが笑っている。
「用心してよかったです。」
それから俺達はドルムさんがあらかじめ用意していた船に乗った。
船は二本のオールで推進力を得るタイプの小型船で、俺はムシロをかぶって船に寝そべった。
2時間程船を漕いだだろうか、潮の匂いがしなくなって、船の揺れも小さくなった。
「着いたぞ。」
ドルムさんの声でムシロから出た。
そこは大きな湖の畔だった。
湖の沖方向は霧と暗闇で何も見えない。
岸方向は切り立った崖になっているが、崖の上に続く階段が見える。
崖の上には大きな屋敷の屋根部分が少しのぞいている。
船を桟橋に繋いで、歩いて階段を昇った。
崖の高さは10メートルくらいで、5分もかからず崖の上に出た。
「さあ、ここだ。俺達の新居」
ドルムさんの案内で建物を半周し、建物の正面に出る。
その建物は飾りも何もないそっけない建物だった。
崖の縁に立っていて、建物から陸地方向は緩やかに傾斜している。
小高い丘の上に建っているような感じだ。
高さ8メートル位、横10メートル、奥行き10メートル位、四角い大きな箱に屋根を乗せたような形だった。
建物の周囲には一応、柵が設けられているが、柵以外周囲に何もない。
庭もあるが、雑草が生い茂っている。
建物の周囲は建造物などなく、今は見渡すことができないが、遠くまで草原が続いているようだ。
建物はレンガ造りの二階建で、頑丈そうだ。
正面に丈夫な扉がある。
この場所からは見えないが、勝手口もどこかにあるだろう。
建物正面には小さな窓がいくつか見えるが、当然のこと灯りは灯っていない。
「変わった造りの建物ですね。」
「そうだな。変わっているな。不動産屋の話だと、この建物はそうとう古くて、以前は貴族が釣り小屋として使っていたそうだ。いつの時代の建物かわからないくらい古いらしい。」
「古くても全く問題ないです。しばらくの間だけですからね。ここで住むの。」
正面玄関は木製だったが、かなり頑丈な造りだ。
ドルムさんが力を込めて押すと。
ギィィー
と音を出して開いた。
「ピンターやルチアだと開けられないかもしれないですね。」
「次来た時に油を差しときやすよ。」
部屋の中へ入ったが家具と言えるものは何もなかった。
正面から入ると、直ぐにエントランス。
左右対称で一階は奥に台所兼食堂と浴室。左右に居間が一つづつ、合計で二部屋。
二階に4部屋というシンプルな造りだった。
その日は何もせず、俺一人で一夜を明かす予定だった。
翌日にはピンター達を迎え入れる予定で、ドルムさんとドランゴさんは鍛冶屋へ帰った。
帰り際ドルムさんが、「残ろうか」と言い出したが、ボートの漕ぎ手が一人だとしんどいはずなので断った。
一人で横になった時、魔法が回復していないかどうか試してみることにした。
「ヒール・・・」
わずかに反応するが、然程の効果は無い。
(マザー・・・マザー・・)
『ソ・・・ま』
マザーが反応したが、意思の疎通は図れない。
『来たか・・・』
(ん?)
マザーとは違う思念を感じた。
(誰だ?)
誰に向けるでもなく遠話で問いかけた。
『こちらへ・・』
間違いない、誰か居る。
思念が発せられる方法へ進む。
(どこだ?)
『こちらへ・・』
さらに進む。
一階手前右側の部屋から強く感じられる。
部屋の中へ入った。
・・・・
誰も居ない。
『こちらだ・・・』
部屋の中央部、床下から思念が感じられる。
床板を全部めくってみたが何もない。
床板の下は、滑らかな石の様な金属の様な、見たことのない床材だった。
「どうすればいい?」
『魔力を通してみろ・・・』
言われる通り、床に手を充てて魔力を流してみた。
すると部屋の奥の方、壁際の床に1メートル四方の四角い穴が音もなく開いた。
穴を覗くと床下に地下室の様な空間があった。
階段があったので、下に降りてみたところ、自動的に灯りが灯った。
地下室はかなり広く、この家の敷地面積と同じくらいだ。
地下室はまるで元の世界のサーバールームのようで、コンピューターらしき器械がいくつも並んで、無数の端子が明滅を繰り返している。
部屋の中央には、SF映画の宇宙船内で見る指令台のような設備があった。
扇形に広がる各種装置、キーボード、何かわからないレバー、そして指令台の左端に直径60センチ、高さ1メートル程の円柱がある。
3方の壁には3段位の棚があり旅行鞄やアタッシューケースのような物がいくつも並べられている。
一番奥の壁は壁の下に何かの装置があって、壁の面の四方を金属製の枠で囲んでいる。
俺は思念反応が濃いと思われる、指令台左端の円柱に近づいた。
円柱は全体が銀色に輝いている。
(何だろう?)
『君の同族だ。』
円柱から思念が発せられた。
『君とマザーの通話を傍受した。私は君の同族、人狼族だ。正確に言えば人狼族タイチ・ヤマトの記憶を持つAIだ。』
(どういうこと?)
『何でも答えるが、一つだけ、確認させてくれ。君が同族であることは間違いないと思うが、念のためDNA検査をしたい。これに君の血を一滴垂らしてほしい。』
円柱がそう言うと。
円柱の下方50センチくらいのところから直径5センチくらいの皿がスライドして出てきた。
『これに血を垂らせ。危なくはない。信用しろ。』
(危なくはないと言われて、危なかったことはいくらでもあるしな・・・)
『ひねくれた性格の個体だな。これから我が一族の貴重な遺産をくれてやろうとしているのだ。少しくらいの冒険をしても罰はあたらん。』
(最近のAIって怒るのか・・・)
俺は少し躊躇したが、敵ではなさそうなので、短剣の先で指を突いて血を皿に垂らした。
皿が円柱にひっこんだ。
待つこと10秒。
『間違いない。君は人狼族、マザーのデータとも一致する。』
ブオン♪
円柱の上に人が立った。
正確に言えば、人のフォログラム、立体映像が映し出された。
『やあ、わが同族よ。吾輩はタイチ・ヤマト、わずかに生き残った人狼族の一員だ。君が人狼であることは確認した。人狼族が生き残っていたのは幸いだ。私はもう死んでいるが、生きている同朋の手助けができるなら嬉しい。何か手助けが必要か?』
タイチ・ヤマトと名乗る人物は、60代前半くらいの年齢、緩やかな白い布を身にまとい髪の毛は白髪の長髪、髭も伸びている。
これで手に杖でも持てば、物語に出てくる仙人のようだ。
(助けは沢山必要だ。俺は異世界から来た。元の世界へ帰りたい。)
『先ほども言ったが私は、タイチの記憶を持つAIだ。タイチの記憶領域に異世界の知識は無い。回答不能だ。』
(なんだよ役にたたねぇな)
『そ、そんなことはないぞ、マザーを造ったのは私と仲間だし、武器や道具も沢山持っているぞ。いらんのならやらんがな。ふん。』
(ほんとにAIか?すねてやがる。・・・)
『タイチの記憶と共にタイチの性格も反映されとるんじゃ。文句言うな。』
タイチって人の性格が少し判ったような気がした。
(わかったよ。タイチさん、あんた死んでるって言ってたけど、いつ、どうして死んだの?人狼族って全滅しているの?)
『順に話すから、あわてるな。ウホン。・・・私は人狼抵抗戦線の幹部で、今からおよそ2万年前に生きていた。敵が迫ってきているのがわかったので、私の記憶をこのAIに移植したのだ。
今、タイマーを見たらAIとしての私が起動したのは19,998年と11か月23時間前だな。』
(2万年も前にAI技術があったのか・・・)
『その当時、人狼族は約8万人いたが、戦争後は数千人に減った。今現在は君を含んで数百名の単位でしか生き残っていないだろう。マザーのアカウントで有効なのが数十名だけだからな。』
(どうして人狼族は滅んだの?)
『戦争だよ。神族との戦争、特にヒュドラとの決戦に敗れたのが大きかった。あれでほとんど殺された。』
(どうして戦争になったの?)
『人狼族はマザー計画の成功で、栄耀栄華を極めた。それを羨んだ神族が青い月シスターを作り出したが、それがいけなかった。青い月のエネルギー、ブルーポイント(BP)は原初の月のRPと融合することで、神族に甚大な力を生じさせてしまった。この世に元々なかった魔法を生み出したからな。人狼族もその恩恵を受けたが、神族は魔法の利用に長けていて力が増大した。
そしてヒュドラを中心とする神族の一部が人狼殲滅計画を実行に移したのだ。』
(マザーと連絡出来る?)
『もちろん。出来る。』
(俺、マザーと連絡出来ないけど、なぜなんだろう?)
『たぶん、魔力詰まりだな。精神的なダメージが大きいと魔力が詰まることがある。ダメージの原因を取り除くか、他の要因で精神にゆとりが出来れば自然に治るだろう。この部屋に精神安定剤があるが、飲むか?気休め程度の効果はあるだろう。』
(治療してくれるの?ありがとう)
『素直なところもあるんじゃな。』
(・・・)
(いろいろ質問したいけど、まずは体を治療したい。)
『そこのケースに薬が入っている。』
フォログラムのタイチが指さす場所のアタッシュケースを取り出して開けると、中には沢山の薬瓶が詰められていた。
『2万年前の薬だが、そのケースは密封時に時間が経過しない設計だから大丈夫だ。赤いラベルの薬を飲め。』
(2万年前の薬?大丈夫?)
『大丈夫だよ、昨日作った薬と同じようなものだ。文句言うな。』
俺は恐る恐るその瓶の薬を飲んだ。
飲んで数秒経過すると・・・
心の中のモヤモヤが少しずつ晴れてきたような気がした。
「ヒール・・」
自分の体が輝いて苦痛が少なくなった。
(効いた・・)
『当たり前だ。』
「タイチさん。ありがとう。」
『現金なやっちゃな。魔力詰まりの元は、お前の『心』だから、その心の問題が解決しなければ、完治しないかもしれんぞ、その薬は対症療法にすぎないことを忘れるな。』
(うん。)
『ヒールは完全じゃないようだな。青いカプセルを飲め。』
青いカプセルを飲んだところ、ほぼ全ての傷が癒された。
青いカプセルは『身体回復薬』つまりヒール効果のある薬のようだ。
(この部屋には、いろんな品物があるみたいだけど、これ、もらっていいの?)
『いつの日か、同朋が現れれば役に立ててもらおうと思ってた。だからここにある物は全て君の物だ。役立ててくれ。』
(どんな物があるの?)
『魔導車や、魔導船、武器に、医薬品、ポータブルゲート等色々だな。戦争が始まって逃げる時、あわてていたから、それくらいしか持ち出せなかった。飛行機も持ってきたはずだが、どっかに落っことしたらしい。みあたらない。ハハハ』
(飛行機おっことしてきたって・・・どんだけよ。)
俺は部屋の中を見渡したが、車や船は見当たらない。
どこか別の格納庫があるのだろう。
(格納庫は、どこにあるの?)
『何の?』
(車や船の)
『格納庫なんてないよ、全部ここにある。』
(え?)
『車も船も全て、そのケースの中に格納してあるよ。』
どうやら、ここにある鞄やアタッシュケースは、マジックバッグ同様の機能が備わっていて、魔力を流せば中身が自動的に外へ出てくる仕掛けのようだ。
(それは、すごいな・・車や船があれば移動が楽になるぞ。)
『車や船も便利だろうが、移動ならもっと便利な物があるぞ。』
(何です?)
『そこのケースを持って上の部屋へ行ってみろ。』
言われるままに階段を上がった。
『ケースを開いて魔力を流せ』
ケースを開いて魔力を流しこんだところ、ケースの上に2メートル四方くらいの青く光るスクリーンのような幕が現れた。
『そのスクリーンを潜ってみろ。』
おそるおそるスクリーンを潜ったところ、さっきまで俺が居た地下室に出た。
目の前にはフォログラムのタイチが居る。
俺の後ろは、唯一棚のない壁が青白く輝いている。
どうやら、上の階のスクリーンと地下室の壁は、空間的につながっているようだ。
今度は、その青白く輝く壁を潜ってみたところ一階のアタッシュケースの前に出た。
『ポータブルゲートだ。』
(うひょー、これは便利だ・・)
俺は、その夜地下室におかれた様々な装備や武器の説明を受けた。
全てを理解したわけではないが、俺は相当貴重な財産を受け継いだようだ。
0
お気に入りに追加
78
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。

主人公の恋敵として夫に処刑される王妃として転生した私は夫になる男との結婚を阻止します
白雪の雫
ファンタジー
突然ですが質問です。
あなたは【真実の愛】を信じますか?
そう聞かれたら私は『いいえ!』『No!』と答える。
だって・・・そうでしょ?
ジュリアーノ王太子の(名目上の)父親である若かりし頃の陛下曰く「私と彼女は真実の愛で結ばれている」という何が何だか訳の分からない理屈で、婚約者だった大臣の姫ではなく平民の女を妃にしたのよ!?
それだけではない。
何と平民から王妃になった女は庭師と不倫して不義の子を儲け、その不義の子ことジュリアーノは陛下が側室にも成れない身分の低い女が産んだ息子のユーリアを後宮に入れて妃のように扱っているのよーーーっ!!!
私とジュリアーノの結婚は王太子の後見になって欲しいと陛下から土下座をされてまで請われたもの。
それなのに・・・ジュリアーノは私を後宮の片隅に追いやりユーリアと毎晩「アッー!」をしている。
しかも!
ジュリアーノはユーリアと「アッー!」をするにしてもベルフィーネという存在が邪魔という理由だけで、正式な王太子妃である私を車裂きの刑にしやがるのよ!!!
マジかーーーっ!!!
前世は腐女子であるが会社では働く女性向けの商品開発に携わっていた私は【夢色の恋人達】というBLゲームの、悪役と位置づけられている王太子妃のベルフィーネに転生していたのよーーーっ!!!
思い付きで書いたので、ガバガバ設定+矛盾がある+ご都合主義。
世界観、建築物や衣装等は古代ギリシャ・ローマ神話、古代バビロニアをベースにしたファンタジー、ベルフィーネの一人称は『私』と書いて『わたくし』です。

公国の後継者として有望視されていたが無能者と烙印を押され、追放されたが、とんでもない隠れスキルで成り上がっていく。公国に戻る?いやだね!
秋田ノ介
ファンタジー
主人公のロスティは公国家の次男として生まれ、品行方正、学問や剣術が優秀で、非の打ち所がなく、後継者となることを有望視されていた。
『スキル無し』……それによりロスティは無能者としての烙印を押され、後継者どころか公国から追放されることとなった。ロスティはなんとかなけなしの金でスキルを買うのだが、ゴミスキルと呼ばれるものだった。何の役にも立たないスキルだったが、ロスティのとんでもない隠れスキルでゴミスキルが成長し、レアスキル級に大化けしてしまう。
ロスティは次々とスキルを替えては成長させ、より凄いスキルを手にしていき、徐々に成り上がっていく。一方、ロスティを追放した公国は衰退を始めた。成り上がったロスティを呼び戻そうとするが……絶対にお断りだ!!!!
小説家になろうにも掲載しています。

異世界転生してしまったがさすがにこれはおかしい
増月ヒラナ
ファンタジー
不慮の事故により死んだ主人公 神田玲。
目覚めたら見知らぬ光景が広がっていた
3歳になるころ、母に催促されステータスを確認したところ
いくらなんでもこれはおかしいだろ!
男女比がおかしい世界の貴族に転生してしまった件
美鈴
ファンタジー
転生したのは男性が少ない世界!?貴族に生まれたのはいいけど、どういう風に生きていこう…?
最新章の第五章も夕方18時に更新予定です!
☆の話は苦手な人は飛ばしても問題無い様に物語を紡いでおります。
※ホットランキング1位、ファンタジーランキング3位ありがとうございます!
※カクヨム様にも投稿しております。内容が大幅に異なり改稿しております。
※各種ランキング1位を頂いた事がある作品です!

魅了が解けた貴男から私へ
砂礫レキ
ファンタジー
貴族学園に通う一人の男爵令嬢が第一王子ダレルに魅了の術をかけた。
彼女に操られたダレルは婚約者のコルネリアを憎み罵り続ける。
そして卒業パーティーでとうとう婚約破棄を宣言した。
しかし魅了の術はその場に運良く居た宮廷魔術師に見破られる。
男爵令嬢は処刑されダレルは正気に戻った。
元凶は裁かれコルネリアへの愛を取り戻したダレル。
しかしそんな彼に半年後、今度はコルネリアが婚約破棄を告げた。
三話完結です。

せっかくのクラス転移だけども、俺はポテトチップスでも食べながらクラスメイトの冒険を見守りたいと思います
霖空
ファンタジー
クラス転移に巻き込まれてしまった主人公。
得た能力は悪くない……いや、むしろ、チートじみたものだった。
しかしながら、それ以上のデメリットもあり……。
傍観者にならざるをえない彼が傍観者するお話です。
基本的に、勇者や、影井くんを見守りつつ、ほのぼの?生活していきます。
が、そのうち、彼自身の物語も始まる予定です。

私の薬華異堂薬局は異世界につくるのだ
柚木 潤
ファンタジー
薬剤師の舞は、亡くなった祖父から託された鍵で秘密の扉を開けると、不思議な薬が書いてある古びた書物を見つけた。
そしてその扉の中に届いた異世界からの手紙に導かれその世界に転移すると、そこは人間だけでなく魔人、精霊、翼人などが存在する世界であった。
舞はその世界の魔人の王に見合う女性になる為に、異世界で勉強する事を決断する。
舞は薬師大学校に聴講生として入るのだが、のんびりと学生をしている状況にはならなかった。
以前も現れた黒い影の集合体や、舞を監視する存在が見え隠れし始めたのだ・・・
「薬華異堂薬局のお仕事は異世界にもあったのだ」の続編になります。
主人公「舞」は異世界に拠点を移し、薬師大学校での学生生活が始まります。
前作で起きた話の説明も間に挟みながら書いていく予定なので、前作を読んでいなくてもわかるようにしていこうと思います。
また、意外なその異世界の秘密や、新たな敵というべき存在も現れる予定なので、前作と合わせて読んでいただけると嬉しいです。
以前の登場人物についてもプロローグのに軽く記載しましたので、よかったら参考にしてください。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる