勇者になるのを断ったらなぜか敵国の騎士団長に溺愛されました

文字の大きさ
上 下
34 / 37

32話

しおりを挟む
内臓が出ることはなかったものの、腰とお尻にはものすごいダメージを負った。脚には力が入らず、未だナカにリベルが入っているような妙な感覚がある。

事が終わった後はすぐに寝てしまい、起きたら絶対に怒ってやろうと思っていた。思っていたのに。

あまりにも優しい顔で俺の頭を撫でているもんだから戦意を削がれた。

「おはよう」

「......はよ」

「身体は?痛むか?」

「......めちゃくちゃ痛い」

「だよな。だけどあれはお前が悪い」

「な、なんで俺が....」

「ヒートの時はほとんどヤることしか考えられなくなる。そんな時に好きな奴から誘われてみろ。そりゃタガも外れるだろ」

「は.........?」

「ったく、俺がどんだけ我慢してたと思ってる。あっさり線越えてきやがって」

待って待って?今さらっとなんか言わなかった?

「......え、と....手振り払ったのは....?」

「触ったらもっと触りたくなるだろ。あの時は正直匂いだけでもやばかった」

頭を撫でていた手がするりと頬を撫ぜる。

そうか...拒否られたわけじゃなかったんだ.....。

「ん?どうした?」

「あ....、リベルがそんなふうに思ってるなんて、知らなくて....」

「ああ、男同士の恋愛は一般的ではなかったんだろ?仕方ない。それより、お前の気持ちを聞かせてくれないか?あの時どうして誘ったのか」


「......俺、男好きになったことなくて....。だから自分の気持ちよくわかんなくて。......その、リベルのを抵抗なく触れるなら気持ちはっきりするかなって....」

今思うとけっこう最低な理由だな...。
言っててちょっと恥ずかしくなってきて目を伏せた。

「ふ~ん?じゃあ触ってみるか?」

「っ!いいっ!もうわかったから!」

「それで?」

頬に添えていた手を今度は顎へと滑らせ上を向かされる。金色の瞳に見据えられドクンと心臓が跳ねた。

「............すき。......たぶん」

「ふっ、多分なのか?」

「だ、だって自分でも信じられなくて——んっ...ぁ....ん....」

昨日とは違ってとても優しいキスだ。
ねっとりと舌を絡められ、舌裏などをくすぐられる。それだけなのに背筋がぞくりと震えた。

「今はそれでいい」

わー!!もう!心臓爆発するからっ!あなたは自分がイケメンだってこと自覚してくださいっ!

「そっ、それより!こんな事してる場合じゃないんじゃ!?」

あからさまに話を逸らすとリベルは喉の奥でくつくつと笑いながら口を開いた。

「ああ、それについては心配しなくていい。もう終わった」

「へ........?」

終わった....。終わった?え?戦争が?嘘でしょ?


「終わったつってもまだやることはたくさん残ってんだよ。お前は何もしてないんだから動けるなら働け」

「!?」

突然声がしたと思えば開け放たれた扉の前で仁王立ちしているラージュ副団長の姿があった。

「はぁ...、勝手に入るな」

こ、こんないかにも事後です、みたいなとこ見られるなんて...!それも女の人に!

あまりの恥ずかしさに布団を引き上げるとラージュ副団長は「へぇ」と少し驚いたような声を上げた。

「ガキかと思ってたけどいい表情するな。俄然興味が湧いてきた」

「!?」

「湧くな。俺のだ。すぐ行くから」

リベルに布団を頭まで被らされ途端に視界が暗くなる。

お、俺のって言った...!

嬉しさと羞恥に身悶えしながらそのままの状態で話が続いた。

「チヒロ、後で薬と昼飯を持ってこさせる。その時に説明もするように言っておくから休んでろよ」

「わ、わかった」
しおりを挟む
感想 2

あなたにおすすめの小説

異世界に転移したら運命の人の膝の上でした!

鳴海
BL
ある日、異世界に転移した天音(あまね)は、そこでハインツという名のカイネルシア帝国の皇帝に出会った。 この世界では異世界転移者は”界渡り人”と呼ばれる神からの預かり子で、界渡り人の幸せがこの国の繁栄に大きく関与すると言われている。 界渡り人に幸せになってもらいたいハインツのおかげで離宮に住むことになった天音は、日本にいた頃の何倍も贅沢な暮らしをさせてもらえることになった。 そんな天音がやっと異世界での生活に慣れた頃、なぜか危険な目に遭い始めて……。

究極の雨男で疎まれていた俺ですが異世界では熱烈歓迎を受けています

まつぼっくり
BL
ずっとこの可笑しな体質が嫌だった。でも、いつかこの体質で救える命もあるんじゃないかと思っていた。 シリアスそうでシリアスではない 攻 異世界の虎さん✕ 受 究極の雨男 ムーンさんからの転載です

異世界で王子様な先輩に溺愛されちゃってます

野良猫のらん
BL
手違いで異世界に召喚されてしまったマコトは、元の世界に戻ることもできず異世界で就職した。 得た職は冒険者ギルドの職員だった。 金髪翠眼でチャラい先輩フェリックスに苦手意識を抱くが、元の世界でマコトを散々に扱ったブラック企業の上司とは違い、彼は優しく接してくれた。 マコトはフェリックスを先輩と呼び慕うようになり、お昼を食べるにも何をするにも一緒に行動するようになった。 夜はオススメの飲食店を紹介してもらって一緒に食べにいき、お祭りにも一緒にいき、秋になったらハイキングを……ってあれ、これデートじゃない!? しかもしかも先輩は、実は王子様で……。 以前投稿した『冒険者ギルドで働いてたら親切な先輩に恋しちゃいました』の長編バージョンです。

【完結】健康な身体に成り代わったので異世界を満喫します。

白(しろ)
BL
神様曰く、これはお節介らしい。 僕の身体は運が悪くとても脆く出来ていた。心臓の部分が。だからそろそろダメかもな、なんて思っていたある日の夢で僕は健康な身体を手に入れていた。 けれどそれは僕の身体じゃなくて、まるで天使のように綺麗な顔をした人の身体だった。 どうせ夢だ、すぐに覚めると思っていたのに夢は覚めない。それどころか感じる全てがリアルで、もしかしてこれは現実なのかもしれないと有り得ない考えに及んだとき、頭に鈴の音が響いた。 「お節介を焼くことにした。なに心配することはない。ただ、成り代わるだけさ。お前が欲しくて堪らなかった身体に」 神様らしき人の差配で、僕は僕じゃない人物として生きることになった。 これは健康な身体を手に入れた僕が、好きなように生きていくお話。 本編は三人称です。 R−18に該当するページには※を付けます。 毎日20時更新 登場人物 ラファエル・ローデン 金髪青眼の美青年。無邪気であどけなくもあるが無鉄砲で好奇心旺盛。 ある日人が変わったように活発になったことで親しい人たちを戸惑わせた。今では受け入れられている。 首筋で脈を取るのがクセ。 アルフレッド 茶髪に赤目の迫力ある男前苦労人。ラファエルの友人であり相棒。 剣の腕が立ち騎士団への入団を強く望まれていたが縛り付けられるのを嫌う性格な為断った。 神様 ガラが悪い大男。  

魔力のいらない世界であなたと

BL
ある日、飲んだ帰りに美人な青年を拾った。 いつもは寄らない公園で偶然見つけた、暗がりでも綺麗だと思うほど整った容姿の青年だ。 いろいろ考えて家に連れて帰ったがなんだか様子がおかしくて———? 愛を遠ざける男と愛されたことのない男の歳の差ラブストーリー 「異世界ではじめて奪われました」のスピンオフ作品ですが読んでいなくてもわかるようにはなっております!

異世界転生先でアホのふりしてたら執着された俺の話

深山恐竜
BL
俺はよくあるBL魔法学園ゲームの世界に異世界転生したらしい。よりにもよって、役どころは作中最悪の悪役令息だ。何重にも張られた没落エンドフラグをへし折る日々……なんてまっぴらごめんなので、前世のスキル(引きこもり)を最大限活用して平和を勝ち取る! ……はずだったのだが、どういうわけか俺の従者が「坊ちゃんの足すべすべ~」なんて言い出して!?

【完結】俺の身体の半分は糖分で出来ている!? スイーツ男子の異世界紀行

うずみどり
BL
異世界に転移しちゃってこっちの世界は甘いものなんて全然ないしもう絶望的だ……と嘆いていた甘党男子大学生の柚木一哉(ゆのきいちや)は、自分の身体から甘い匂いがすることに気付いた。 (あれ? これは俺が大好きなみよしの豆大福の匂いでは!?) なんと一哉は気分次第で食べたことのあるスイーツの味がする身体になっていた。 甘いものなんてろくにない世界で狙われる一哉と、甘いものが嫌いなのに一哉の護衛をする黒豹獣人のロク。 二人は一哉が狙われる理由を無くす為に甘味を探す旅に出るが……。 《人物紹介》 柚木一哉(愛称チヤ、大学生19才)甘党だけど肉も好き。一人暮らしをしていたので簡単な料理は出来る。自分で作れるお菓子はクレープだけ。 女性に「ツルツルなのはちょっと引くわね。男はやっぱりモサモサしてないと」と言われてこちらの女性が苦手になった。 ベルモント・ロクサーン侯爵(通称ロク)黒豹の獣人。甘いものが嫌い。なので一哉の護衛に抜擢される。真っ黒い毛並みに見事なプルシアン・ブルーの瞳。 顔は黒豹そのものだが身体は二足歩行で、全身が天鵞絨のような毛に覆われている。爪と牙が鋭い。 ※)こちらはムーンライトノベルズ様にも投稿しております。 ※)Rが含まれる話はタイトルに記載されています。

異世界転移して出会っためちゃくちゃ好きな男が全く手を出してこない

春野ひより
BL
前触れもなく異世界転移したトップアイドル、アオイ。 路頭に迷いかけたアオイを拾ったのは娼館のガメツイ女主人で、アオイは半ば強制的に男娼としてデビューすることに。しかし、絶対に抱かれたくないアオイは初めての客である美しい男に交渉する。 「――僕を見てほしいんです」 奇跡的に男に気に入られたアオイ。足繁く通う男。男はアオイに惜しみなく金を注ぎ、アオイは美しい男に恋をするが、男は「私は貴方のファンです」と言うばかりで頑としてアオイを抱かなくて――。 愛されるには理由が必要だと思っているし、理由が無くなれば捨てられて当然だと思っている受けが「それでも愛して欲しい」と手を伸ばせるようになるまでの話です。 金を使うことでしか愛を伝えられない不器用な人外×自分に付けられた値段でしか愛を実感できない不器用な青年

処理中です...