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育児
成長
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郁人の育休が明ける頃には二人ともハイハイができるようになり、行動範囲が広がった。
リビングには極力物を置かず、机も移動させたのでソファしかないし、ダイニングから先には行けないように柵をつけたので怪我の心配もない。
しかも、二人ともほとんど同じような動きをするので、思ったよりてんやわんやにはならなかった。
進む方向も同じで、肩をくっつけて移動する様は見ていて微笑ましい。おもちゃでも同じ物で一緒に遊んでいることが多いが、双子はみんなそうなんだろうか?
ともあれ、順調に成長してくれて嬉しい限りだ。
今日も二人肩を並べてハイハイする様子をソファから見守っていると、俺の足元へ寄ってきた。
「どした~?」
あ!とか、ば!とか意味のない単語を発しながらズボンの裾をぐいぐい引っ張られる。座って欲しいのかと思いきや、その手は徐々に上へあがってきた。
も、もしやこれは....!
咄嗟に携帯のカメラを起動させ、録画ボタンをタップした。
左足に喜生、右足に來生が一生懸命にしがみついている。
それだけでも可愛いのに、真剣な顔をしながら立ちあがろうとしている様子は控えめに言って天使。
頑張れ!頑張れ!と心の中で叫びながら声を押し殺し、手ブレしないように携帯を構えながらその時を待った。
そして、ついにその時が訪れる。
た、立ったーーー!!!うちの子すごいーー!!
すぐに座り込んでしまったが、一瞬でも立てたことに変わりはない。親バカ丸出しで我が子を褒めちぎり、動画を郁人に送ると、仕事中だろうにすぐ返信が来た。
『えー!!立ってる!?うちの子すごくないですか!?生で見たかった!!』
と、郁人もなかなかの親バカだ。
『早退してもいいですか?』と続いていたため、「仕事しろ、バカ」と送っておいた。
今日は赤飯だな!子供たちは食べれないけど。
そうと決まれば買い物だ!
「喜生、來生、買い物いくぞ~」
声をかけると、きょとん、とした顔でこちらを見てくる。
か、可愛い....!
思わず写真を撮ってから支度を始めた。
最近のスーパーには、子供を二人とも乗せられるカートがあるのでかなり助かる。
これも双子あるあるなのかわからないが、喜生と來生を離して座らせたりすると、途端に二人とも泣き出してしまうのだ。抱っこするにしても二人合わせると二十キロ近くあるため、さすがに重い。
カートに乗せると、楽しそうに笑いながらおもちゃを振り回す。
そんな二人につい顔が緩むと、「花咲さん、こんにちは~」と声をかけられた。
「あ、桃野さん。こんにちは」
桃野さんはよくこのスーパーで会う先輩ママさんだ。お子さんは三人いて、上の子はすでに小学校に通っている。
おっとりとした方で、見かけるとこうして声をかけてくれる。
スーパーなどではまだまだ女性の方が多いため、気にかけてくれる人がいるのはありがたい。双子を連れて来るようになってから無遠慮な視線が多くなったので余計だ。しかも、料理のレパートリーが少ない俺のためにレシピを教えてくれたりと、まさに救世主。
「喜生くんも來生くんもこんにちは」
「「ばぁ~」」
わかっているのかいないのか、俺の救世主にも愛想よく反応し、手を伸ばす。あまり人見知りしない方ではあるが、二人も桃野さんを気に入っているようだ。
桃野さんも嬉しそうに伸ばされた小さな手に指を絡ませる。
「相変わらず可愛いわね~。ますますパパに似てきたんじゃない?」
「そうでしょうか?自分ではよくわかりませんが...」
可愛いのは否定しませんけどね!
「今日の晩ご飯は決まってるの?」
「はい!今日は初めて掴まり立ちできたので赤飯にします!」
「あら、すごい!二人同時に?」
「そうなんですよ!思わず動画撮っちゃいました」
「まあ、見せて見せて」
動画を見せると、あら、あら、と楽しそうに見てくれる。
「ふふっ、最後のドヤ顔が可愛いわねぇ」
「そうなんですよ...!」
最後に二人してこっちを向いて、どうだ、すごいだろう、と言わんばかりに「「だぁ!」」と声を上げたのだ。
もうこれはうちの子天才って言っても許されますよね?
きゃっきゃきゃっきゃ盛り上がっていると、後ろから声をかけられた。
「あら、今頃掴まり立ち?」
その声に、俺と桃野さんはげ、という顔を一瞬だけして笑顔で振り向いた。
「前園さん、こんにちは~」
「こんにちは」
この人もよくこのスーパーで会う人で、何かと俺によく絡んでくる。俺より一回り以上程年上で、きっと男が子供を産むなんて、とでも思っているんだろう。
今日は桃野さんまで巻き込んじゃったな、と申し訳ない気持ちでいっぱいだ。
「うちの子はもっと早くに掴まり立ちしてたわよ?」
だからなんだ。と、心の中で即答するが、顔には出さない。ここで反論すれば面倒な事になるのはわかりきっている。
「そうなんですか、すごいですね」
「そうよ~。おたくの子、ちょっと遅いんじゃない?」
「よそはよそ、うちはうちですから」
平静を保ち、我が子を背にして前園さんから隠す。
「でもねぇ、やっぱり母親がいないってのがよくないんじゃないかしら」
「ご心配ありがとうございます。ですが、そんな医学的根拠はどこにもありませんので」
「でもうちの子はもっと早かったのに、おかしいじゃない」
あんたの脳みそがな!
"おかしい"という単語に笑顔が崩れそうになった。
なんで赤の他人にそんなことまで言われなきゃいけないんだ。百歩譲って俺のせいだとしても、子供は関係ないだろう。
「え、前園さんのお子さんって国の基準にでもなってるんですか?それは知らなかったなぁ。どこに載ってます?」
あくまでもにこやかに聞くと、隣の桃野さんが少しだけ吹き出した。
「べ、別に国の基準だなんて言ってないじゃない。ただ、普通と比べて、ってことよ」
「その普通の基準ってなんなんですかね?エビデンスありますか?」
もちろんこれもあくまでにこやかに言うと、なぜか前園さんは怒ったように顔を顰めた。
「し、知らないわよ!私は普通のことを言っただけじゃない!心配してあげたのに!損した気分だわ!」
その上顔を真っ赤にさせ、声まで荒げてそのままスーパーを出ていってしまった。
あんたの心配なんてこっちから願い下げだわ。心の中であっかんべー、をしながら吐き捨てる。子供のことを悪く言われて黙っていられるほど聖人君子ではないんでね。
あー、イライラした。これで突っかかってこなくなればいいんだけど。
「ふふっ、あなた結構言うわねぇ」
「すみません、桃野さんまで巻き込んでしまって」
「いいのよ。あの人誰にでもああだし。私もスッキリしたわ」
あなたたちのパパはかっこいいわね~、と言われ、喜生も來生も嬉しそうに手をばたばたさせながら笑った。
それを見ただけで、さっきの出来事などどうでもよくなるほどの破壊力がある。
それじゃあ、と言って桃野さんとは別れた。
リビングには極力物を置かず、机も移動させたのでソファしかないし、ダイニングから先には行けないように柵をつけたので怪我の心配もない。
しかも、二人ともほとんど同じような動きをするので、思ったよりてんやわんやにはならなかった。
進む方向も同じで、肩をくっつけて移動する様は見ていて微笑ましい。おもちゃでも同じ物で一緒に遊んでいることが多いが、双子はみんなそうなんだろうか?
ともあれ、順調に成長してくれて嬉しい限りだ。
今日も二人肩を並べてハイハイする様子をソファから見守っていると、俺の足元へ寄ってきた。
「どした~?」
あ!とか、ば!とか意味のない単語を発しながらズボンの裾をぐいぐい引っ張られる。座って欲しいのかと思いきや、その手は徐々に上へあがってきた。
も、もしやこれは....!
咄嗟に携帯のカメラを起動させ、録画ボタンをタップした。
左足に喜生、右足に來生が一生懸命にしがみついている。
それだけでも可愛いのに、真剣な顔をしながら立ちあがろうとしている様子は控えめに言って天使。
頑張れ!頑張れ!と心の中で叫びながら声を押し殺し、手ブレしないように携帯を構えながらその時を待った。
そして、ついにその時が訪れる。
た、立ったーーー!!!うちの子すごいーー!!
すぐに座り込んでしまったが、一瞬でも立てたことに変わりはない。親バカ丸出しで我が子を褒めちぎり、動画を郁人に送ると、仕事中だろうにすぐ返信が来た。
『えー!!立ってる!?うちの子すごくないですか!?生で見たかった!!』
と、郁人もなかなかの親バカだ。
『早退してもいいですか?』と続いていたため、「仕事しろ、バカ」と送っておいた。
今日は赤飯だな!子供たちは食べれないけど。
そうと決まれば買い物だ!
「喜生、來生、買い物いくぞ~」
声をかけると、きょとん、とした顔でこちらを見てくる。
か、可愛い....!
思わず写真を撮ってから支度を始めた。
最近のスーパーには、子供を二人とも乗せられるカートがあるのでかなり助かる。
これも双子あるあるなのかわからないが、喜生と來生を離して座らせたりすると、途端に二人とも泣き出してしまうのだ。抱っこするにしても二人合わせると二十キロ近くあるため、さすがに重い。
カートに乗せると、楽しそうに笑いながらおもちゃを振り回す。
そんな二人につい顔が緩むと、「花咲さん、こんにちは~」と声をかけられた。
「あ、桃野さん。こんにちは」
桃野さんはよくこのスーパーで会う先輩ママさんだ。お子さんは三人いて、上の子はすでに小学校に通っている。
おっとりとした方で、見かけるとこうして声をかけてくれる。
スーパーなどではまだまだ女性の方が多いため、気にかけてくれる人がいるのはありがたい。双子を連れて来るようになってから無遠慮な視線が多くなったので余計だ。しかも、料理のレパートリーが少ない俺のためにレシピを教えてくれたりと、まさに救世主。
「喜生くんも來生くんもこんにちは」
「「ばぁ~」」
わかっているのかいないのか、俺の救世主にも愛想よく反応し、手を伸ばす。あまり人見知りしない方ではあるが、二人も桃野さんを気に入っているようだ。
桃野さんも嬉しそうに伸ばされた小さな手に指を絡ませる。
「相変わらず可愛いわね~。ますますパパに似てきたんじゃない?」
「そうでしょうか?自分ではよくわかりませんが...」
可愛いのは否定しませんけどね!
「今日の晩ご飯は決まってるの?」
「はい!今日は初めて掴まり立ちできたので赤飯にします!」
「あら、すごい!二人同時に?」
「そうなんですよ!思わず動画撮っちゃいました」
「まあ、見せて見せて」
動画を見せると、あら、あら、と楽しそうに見てくれる。
「ふふっ、最後のドヤ顔が可愛いわねぇ」
「そうなんですよ...!」
最後に二人してこっちを向いて、どうだ、すごいだろう、と言わんばかりに「「だぁ!」」と声を上げたのだ。
もうこれはうちの子天才って言っても許されますよね?
きゃっきゃきゃっきゃ盛り上がっていると、後ろから声をかけられた。
「あら、今頃掴まり立ち?」
その声に、俺と桃野さんはげ、という顔を一瞬だけして笑顔で振り向いた。
「前園さん、こんにちは~」
「こんにちは」
この人もよくこのスーパーで会う人で、何かと俺によく絡んでくる。俺より一回り以上程年上で、きっと男が子供を産むなんて、とでも思っているんだろう。
今日は桃野さんまで巻き込んじゃったな、と申し訳ない気持ちでいっぱいだ。
「うちの子はもっと早くに掴まり立ちしてたわよ?」
だからなんだ。と、心の中で即答するが、顔には出さない。ここで反論すれば面倒な事になるのはわかりきっている。
「そうなんですか、すごいですね」
「そうよ~。おたくの子、ちょっと遅いんじゃない?」
「よそはよそ、うちはうちですから」
平静を保ち、我が子を背にして前園さんから隠す。
「でもねぇ、やっぱり母親がいないってのがよくないんじゃないかしら」
「ご心配ありがとうございます。ですが、そんな医学的根拠はどこにもありませんので」
「でもうちの子はもっと早かったのに、おかしいじゃない」
あんたの脳みそがな!
"おかしい"という単語に笑顔が崩れそうになった。
なんで赤の他人にそんなことまで言われなきゃいけないんだ。百歩譲って俺のせいだとしても、子供は関係ないだろう。
「え、前園さんのお子さんって国の基準にでもなってるんですか?それは知らなかったなぁ。どこに載ってます?」
あくまでもにこやかに聞くと、隣の桃野さんが少しだけ吹き出した。
「べ、別に国の基準だなんて言ってないじゃない。ただ、普通と比べて、ってことよ」
「その普通の基準ってなんなんですかね?エビデンスありますか?」
もちろんこれもあくまでにこやかに言うと、なぜか前園さんは怒ったように顔を顰めた。
「し、知らないわよ!私は普通のことを言っただけじゃない!心配してあげたのに!損した気分だわ!」
その上顔を真っ赤にさせ、声まで荒げてそのままスーパーを出ていってしまった。
あんたの心配なんてこっちから願い下げだわ。心の中であっかんべー、をしながら吐き捨てる。子供のことを悪く言われて黙っていられるほど聖人君子ではないんでね。
あー、イライラした。これで突っかかってこなくなればいいんだけど。
「ふふっ、あなた結構言うわねぇ」
「すみません、桃野さんまで巻き込んでしまって」
「いいのよ。あの人誰にでもああだし。私もスッキリしたわ」
あなたたちのパパはかっこいいわね~、と言われ、喜生も來生も嬉しそうに手をばたばたさせながら笑った。
それを見ただけで、さっきの出来事などどうでもよくなるほどの破壊力がある。
それじゃあ、と言って桃野さんとは別れた。
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