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お付き合い

初めての夜

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そして、あっという間に約束の日の前日になったのだが、予想外なことが起こっていた。


「えっ!出張ですか!?」

「ああ、明日から1泊2日でね。頼むよ」

「そんな....!ですが金曜日は予定があって....」

「そうなのかい?うーん...でも君のクライアントだし...なんとかならないか?」


という話が水曜日にあり、郁人が出張することになったのだ。

「いいですか、混む時間の電車には絶対に乗らないでくださいね!あと移動する時はマスクしてください!ちゃんと真っ直ぐ家に帰ってきてくださいね!」

「わーかったって。昨日の夜も聞いたから。心配しすぎ」

会社の前で聞き飽きた注意事項をまた繰り返す。
わざわざ会社まで送ってくれ、郁人はこれから出張先へ向かう。

「......本当に1人で行くんですか....?」

手をぎゅっと握られ、不安そうな顔でぽつりと言った。本当はそのことが一番気がかりなのだろう。

「うん。だって向こうは明日しか無理なんだろ?大丈夫だって」

明日の夜8時、俺は1人で郁人の親に会うことになったのだ。
郁人が他の日にしてくれと連絡したのだが、"明日しか無理"と連絡がきて、それなら会うのはやめようと郁人が言ったのだが向こうは俺1人でもいいということだったので俺は行くことにした。

郁人には当然、猛反対されたが話せる機会はたぶん明日しかない。もともと俺1人でもいいと思っていたし、緊張はするが行かないという選択肢はなかった。

「でも.....」

「早く行かないと遅刻するぞ。ちゃんと連絡するから」

「........明日、なるべく早く帰ってくるんで」

「無理すんなって。クライアントと飲みに行くんだろ?」

「なるべく早く帰ります」

「ふっ、わかったから。いってらっしゃい」

「....いってきます」

不安そうな顔のまま、さっと頬に口付けられた。
そして何事もなかったかのようにくるりと背を向け歩いていってしまう。

あいつ....!ここ外!

キスされた頬を手で押さえ、真っ赤になっているであろう顔を伏せて逃げるように会社へと入った。



同棲をしてから初めての、郁人の居ない夜。
思ったよりも広いベッドが寂しくて携帯を手に取った。
寝転びながら郁人の電話番号を表示するが、発信ボタンは押せずにいた。

声聞いたら会いたくなりそうだしなー.....。

そんな理由で約10分くらいこの画面のままである。やっぱりやめておこう、と画面を消した時だった。

消した直後に画面が明るくなり、マナーモードにしていた携帯が振動した。画面には郁人の名前が表示されている。
どうやらビデオ通話のようだ。急いで部屋の電気をつけて通話を押す。

「もしもしっ?」

電話に出ると画面がパッと切り替わり、郁人の顔が映し出された。風呂上がりなのかタオルを首にかけ、髪も濡れている。

『あ、伊織さん?寝てましたか?』

「いや、まだ起きてたよ」

『よかった。明日ちゃんといつもと同じ電車に乗ってくださいよ』

「わかってるって。何回言うつもりだよ、それ」

『何回言っても心配なんです。ちゃんと目覚ましセットしましたか?』

「したって」

おかんか、お前は。

「お前もちゃんと髪乾かせよ」

『わかってます。....ふふっ、声聞くと会いたくなりそうだなと思ってかけるの迷ってたんですけど..やっぱりかけてよかったです』

郁人も同じこと考えてたのか....。なんかちょっと嬉しい。

『どうかしました?』

「いや、俺も同じこと考えてたから」

ま、俺はかけない方を選んだんだけどね。

『..........伊織さん、テレセクしません?』

「ん?テレセク?何それ」

『テレフォンセックスです。電話越しでエッチするやつ』

「えっ.....!?なっ.......!」

言葉の意味を理解すると、自分の顔がボッと一気に赤くなったのがスマホの画面にも映し出されてしまう。

『だって明日の夜まで触れないんですよ?せめてエロい顔くらい見たいです』

「おま、何言ってんの!?やるわけないだろ!そんなこと!」

『えー、いいじゃないですか。俺もうムラムラしちゃって寝れそうにないですし』

そんなこと知るか!

「む、無理だから!だいたいやり方もわからないのに....」

『大丈夫ですよ。俺の言った通りに自分のを触るだけですから』

簡単でしょう?とこともなげに続ける。
どこが簡単なんだ!だって自分で自分のを触るって事は、つまり自慰を郁人に見られながらするってことじゃんか!
そんなの恥ずかしすぎる!

『....明日の約束、断ってもいいんですよ?』

「は....?」

『そうしましょうか。俺はもともと1人で行かせる気はなかったですし』

「お前...!それは卑怯だろ....!」

『俺はどっちでもいいですよ?むしろ心配事がなくなるんでその方がいいかも』

画面の向こうでにこにこと微笑む郁人。
その二択にさせられたら、どちらを選ぶかなどもう決まっている。

「........わかったよ!やればいんだろ....!」

『む、もう少し悩むかと思いましたけど...。そんなにあの人に会いたいんですか?』

会いたい、とは少し違う。会わなきゃいけないような気が漠然とするだけなのだが、それは今言う必要もないだろう。

「.....それで?.....どうすればいいんだ?」

『...じゃあ、服を脱いでください。あ、パンツは穿いたままで』

スマホを置く場所も指定された。
ベッドボードに背中を預け、両方の膝を立てた状態で脚を広げたその中心。ベッドの上に置くのは不安定だがスマホスタンドに立てれば少し動いても大丈夫そうだった。

正直、こんな全てが見えてしまうところになんて置きたくない。だが無理だと言うと「じゃあ明日の予定はキャンセルでいいんですね?」と言ってくるのだ。
渋々従う他なかった。

何が嫌って郁人から丸見えなこともそうなのだが、自分の姿も見えてしまうことだ。
小さな画面ではあるがあれが気になって仕方ない。消す方法があるのかどうかもわからないし、あったとしてもたぶん消させてくれないだろう。

『じゃあ目を瞑って、俺に触れられてると思いながら乳輪をなぞってください』

「っ.....」

言葉にされるとより羞恥に襲われる。
自分の乳首など、身体を洗う時にしか触ることがなく、こんなところで感じるとは夢にも思っていなかった。

『時々爪で引っ掻きながら軽く摘んで....そう、上手ですね』

「ふっ.....っ.....」

『もう少し強めに摘んでみましょうか』

「っ!.....は......」

『ふふっ、まだ恥ずかしいのが勝ってますかね?それじゃあ右手で玉を揉んで....裏筋を爪で根本から先までなぞって....あ、左手はそのまま乳首を弄ってください』

「っ......ん.......」

こんな状況なのに、じんわりと熱を持ち始めていた。

『パンツ脱いじゃいましょうか』

「..............」

どの道脱ぐんだったら服と一緒に脱がせてほしかった。見られながら脱がなきゃいけないなんて恥ずかしすぎる。
しかも、これを脱いでしまったらパンツで隠れていた部分が全て丸見えになってしまう。

あまりの恥ずかしさに画面から顔を背けてゆっくり脱いだ。
だが、元の姿勢に戻す勇気はなく、無駄だとは思いながらも脚を閉じて陰部を隠す。

『伊織さん、脚開いてください』

「っ、うぅ.....恥ずかしい....っ」

『顔真っ赤ですもんね。可愛い。でももう何度も見てますよ?』

「そ、そういう問題じゃ....!」

『恥ずかしがる伊織さんも可愛いですけど今日は触れないんで早く脚開いてください』

「うっ.....」

仕方なく、覚悟を決めゆっくり脚を開く。

『エロ.....。伊織さん知ってます?まだそんな触ってないのにもう勃ってますよ』

「!!」

『俺に見られて興奮したんですか?本当は見られるの好きだったんですね』

「っ、ちがっ....!」

言葉では否定しても、勃ちあがったそれによって説得力がまるでない。恥ずかしさのあまり、涙が滲んだ。

『じゃあさっきと同じように触ってください。あ、目は開けたままでこっち見ててくださいね』

「!?」

画面を見ると嬉しそうな郁人と目が合う。

「っ、このドS....!」

『ふふっ、伊織さんはMっ気ありますよね』

「は!?」

『ほら、早く。伊織さんの好きな裏筋なぞって先っぽぐりぐりしてください』

「っ、....っ....ん....はっ.....」

自分の姿を視界に入れないように、郁人を睨みつけながら言われた通りに指を動かす。
指先を鈴口に埋めると、とろりと先走りが溢れたのがわかった。

『左手はそのままで右手で全体を扱いて....』

郁人の指示で陰茎に指を這わせてから、体感ではかなり時間が経っている気がするのだが、実際にはどうなんだろうか。
久しぶりに自分で触る陰茎はガチガチで、擦る度にもっと触って欲しいかのように蜜を零す。

次第にくちゅくちゅと水音が響くようになり、より一層羞恥が襲う。声を抑えるのも、睨み続けるのも難しくなってきて、もう今は自分がどんな顔をしているのかわからなかった。

『伊織さんかわいい....。自分の姿見えます?すっごいエロい。先走りお尻まで垂れてますよ』

「や、ぁっ、言うなっ...!」

『前触るだけじゃ物足りないんじゃないですか?後ろ、挿れてほしいって口ぱくぱくしてますよ?』

「う、嘘っ....、んっ、やだっ、みるなぁっ....」

『あっ、隠しちゃ駄目ですって』

「やっ、郁人っ....も、許してっ....」

『でもイきたいでしょう?一回イったら終わりにしますから。そのまま後ろに指を挿れてみてください』

「むっ、むりっ...!そんなことできない...!」

『大丈夫ですって。先走りが潤滑剤になってくれるんで2本くらいすんなり入りますよ』

違う!俺が気にしてるのはそこじゃない!
確かに、前の刺激だけでは熱が溜まる一方で、お腹の奥が疼いてしかたなかった。陰茎を直接刺激しているのにも関わらず、なにか物足りず、射精には程遠い。
でもだからって自分でそんなところに指を挿れるなんて。

『左手はそのままで、右手の人差し指ゆっくり挿れてください』

「っ!?」

有無を言わせないような雰囲気に負け、恐る恐る指を埋める。郁人の言う通り、それほど抵抗もなく飲み込んでいった。
自分の中は、思ったよりも熱く、絡みついてくる。

『もう少し奥まで...そう、上手ですよ。そこで指曲げて擦ってみてください』

「んっ....は...んんっ、ん、く....ひっ!」

上手いと言われても全然嬉しくないし、どう動かせばいいのか全く分からない。一応言われた通りに指を動かしてはいるが、なぜだかさらに奥が疼く。
だが、郁人が前に言っていた前立腺に指が掠めると身体がびくりと震えた。

『ありましたか?じゃあ指もう1本増やして挟み込むように刺激してください。左手も止めないでもっと速く扱いて』

「んぅ!あっ、ぅ...んんっ、は..ぁあっ」

鬼畜な指示が次々と飛び、快感がどんどん押し寄せてくる。だんだん、恥ずかしさよりも気持ちよくなりたいという思いが勝り、積極的に指を動かしていた。
2本の指でしこりを押しつぶし、爪でカリカリと引っ掻く。左手は全体を扱きながら時折カリ首を擦り、亀頭を刺激する。

『エロ....。はぁ...めっちゃ触りたくなってきた...。伊織さん、もう自分で気持ちいとこ弄ってません?』

「んぁっ、ぁっ、だって、んっ、きもちっ...。ゆび、とまんなっ...ひぅ!」

『うわ、それ反則....。イくときはイくって言ってくださいね』

「んんっ!あっ、あぁっ、イくっ、いくとっ、イくっ...!」

『はぁ..っ、いいですよ、イってください』

「んっ、あっ...んんっ、んぁあーーっ!」

もう郁人からの指示はないのに、自分の意思で指を動かし、絶頂へと上りつめた。
勢いよく吐き出された白濁液は量も多く、胸辺りにまで飛び散り、広範囲を汚した。

絶頂には達したものの、まだ身体が熱い。正確には、指では届かないもっと奥。ずるりと指を引き抜くが、奥がじんじんと疼き、未だ陰茎は硬いまま萎えてくれない。

「はっ、いくとっ、奥にほしいっ....」

『!?っ、くっ.....!』

切なくなって、気づいた時にはとんでもないことを口走っていた。
郁人もどうやら自身で扱いていたようで、苦し気に息を吐いている。

『は....。伊織さんエロすぎ....。残念ですけど今日は挿れれないんで我慢してください。その代わり帰ったら伊織さんが満足するまでたっぷり突いてあげますから』

そう言われてようやく自分の失言に気づき、先走りや精液でぐちゃぐちゃになっている自分の姿を慌てて隠した。

『あれ、正気に戻っちゃいました?残念』

「い、今のは忘れろ....!」

『無理ですね。帰ったら覚悟してください』

「~~~~!!」

あまりの恥ずかしさに声も出ず、反射的に電話を切った。
その後すぐにかかってきたが、もちろん出られるはずもない。何度目かのコールで、諦めたのかようやく振動が止まった事にほっとした。

だがまたすぐに携帯が振動する。ただ、振動は短いもので、電話ではなくメールだ。

『明日、話終わったら必ず連絡ください。おやすみなさい』

俺を気遣うような文面に胸が熱くなる。

『わかった。おやすみ』

素っ気ない返しになってしまったと送った後に気づいたが、自分の状態を思いだし、風呂へと急いだ。
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