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11.脱いだらすごい!

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それから1週間が経ち、最初の方こそ次会った時どんな顔をすればいいんだと悩んだものの、価値観が違うのはしょうがない!と開き直った。率直に友達になってください!と言えばいいだけだ。それによく考えると、黒の悪魔と呼ばれているヴァルクに友達がいるかどうか怪しいし、急に友達だと言われてびっくりしたのかもしれない。友達になりたくないって言われたわけでもないしね。
そんなわけでヴァルクに渡す服も買ったし、いざ行かん!


今回、ロベルトとは一緒に来ていない。薬草採取の依頼も受けていないので時間にも余裕がある。ブルーとゆっくり歩きながらも警戒は怠らないが、ここでヴァルク以外の人と会ったことはない。
そもそも、ここには薬草採取の依頼を受けた人くらいしか来ないらしい。魔物もほとんどいないしね。

因みにあれから2体のスライムをテイムした。未だテイムできる上限はわからないが、4体になったブルーは、俺の腰くらいまでの大きさになった。あまり大きくてもなにかと不便なので、街の中は肩に乗るくらいに、外に出る時は膝くらいまでの大きさになってもらっている。


「ヴァルクー!」

あくまでも小声で名前を呼びながら近づく。今日は最初から気配を消していなかったようで、俺でもすぐに見つけることができた。
別れ際があんな感じだったからもしかしたら気まずくなるかも、と思っていたが向こうも気にしていないのか特に変わった様子はない。よかった。

「服買ってきたぞ。好みじゃないとかサイズ合わなかったらあれだからちょっと着てみてくれるか?」

白いシャツにダークグリーンのベスト、茶色のズボンにこげ茶のブーツとよくある服装だ。俺の瞳の色がいい、と言っていたけど、明るい緑がなかなか無くてロベルトの髪色と似たような色になってしまった。それでもマント...いや、丈が短いからポンチョか?髪を隠すために上から羽織るフード付きの上着は俺の瞳の色と比較的似ているものがあった。

「わかった」

「はい、これ——」

服を渡そうと顔を上げると、既に上を脱いでいて鍛えられた身体が露わになっていた。
わ!いい身体!
服を着ているとそこまで筋肉がついているようには見えないが、俺なんかよりずっとついている。ロベルトやセロほどの筋肉ではないにしろ、なんか無駄なものが一切ない。これぞ細マッチョ!って感じ。
うらやまなんですけどー!ってかメイジにこんな筋肉必要ですか?

「どうかしたか?」

中途半端に服を掲げて止まった俺を見て、ヴァルクが訝しげに見下ろしている。

「あ、いや、鍛えてるんだなーと思って」

「ん?ああ、これくらい大したことないだろ」

「嫌味かっ。俺だって鍛えてんのにそんな綺麗に割れない」

ほらっ、と服をまくって腹を見せる。リアルよりついているとはいえ、ヴァルクと比べるとかなり貧弱だ。

「....悪い、嫌味のつもりはなかった。.........それに、お前の方が綺麗だと思うが」

冗談で言ったのだが、どうやらヴァルクは俺が怒ったと思ったらしい。しゅんとして謝られ、逆に居心地が悪くなる。しかもこれのどこが綺麗なんだ。

「冗談だからな?ってかどこが綺麗なんだよ」

ちゃんと見てる?見てるなら眼科行きな?あ、この世界に眼科ないか。

「肌が白く、きめ細かい。傷痕もないしとても綺麗だ」

な、なに真顔で恥ずかしいこと言ってんのー!?俺が言った綺麗はそういう意味じゃないから!本気で言ってそうなところがまた怖い。顔がいいから男の俺でもドキドキしてしまう。

「そういうことは女の子に言いなさい」

「?なぜだ」

「モテるから」

「もてる?」

だって男に言ったってしょうがないじゃん。
ヴァルクはよくわかっていないようだったが、それ以上は説明しなかった。天然っぽいのがいいって言う人もいるだろうしね。
わからないならいいよ、と言って服を渡した。


さすがイケメン。よくある平凡な服であるはずなのに、かなりオシャレに見える。ロベルトが言っていたように、服が変わるだけで随分印象が変わるな。これならフードは被らないといけないけど、遠目ならヴァルクとはわからないだろう。サイズも問題ないようでよかった。

そしてヴァルクからドロップアイテムを預かって、本日の用事は終了だ。あとはこれをロベルトに持って行くだけなのだが......、1週間ぶりに会ったのにこれでバイバイは少し寂しい。それに、まだ言いたいことも言っていない。俺の用事はどちらかというとこちらの方が本題だ。


「なぁ、ヴァルク、俺と友達になるのは嫌だった?」

友達になろう、と言うつもりだったのに、口から出たのは全く違う言葉で、しかも少し責めるような言い方になってしまった。ほとんど無意識に出てしまったその言葉が、思ったよりガキっぽくて撤回しようとした時———

「違う!」

両肩をがしっと掴まれ、すごい勢いで否定した。驚きはしたものの、違ったことにひとまずホッとする。尚も声を荒げそうな雰囲気だったので、しー!しー!と人差し指を口に当て、取り敢えず落ち着かせた。人通りがほとんどないとはいえ、大きな声はよくないだろう。

「......あの後、気づいたらダンジョンにいて....。どうやって戻ったのか...記憶がなかった」

「えっ、そうだったの?」

「ああ....。悪かった。本当は一番に謝らなければいけなかったのに......サクヤは気にしていなさそうだったから....」

「いやいや!それを言うなら俺がヴァルクの気持ち考えずに友達って言ったからだし」

嫌ではないと否定はしてくれたものの、放心するほどの衝撃はあったということだ。

「違う。お前は悪くない」

「でも.....」

「友と呼んでくれて、俺がどれほど嬉しかったかわかるか?」

「え......?」

嬉しかった?そうなの?なんだぁ、よかったー!じゃあ今から友達ってことでいいよね?いいよね?
じゃあ改めて友達ってことでよろしく!と言おうとすると、肩に置かれていた手にぎゅっと力が込められた。

「.....街に住むこと同様に、諦めていたのだ。.......以前、母親が"生きてさえいれば、外見に惑わされず中身を見てくれる人が必ず現れるから"....と言ったことがあった」


それからヴァルクはとつとつと昔のことを語り出した。
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