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15話
しおりを挟む次の日も、また次の日も返事を迫ってくるのだ。
「待ってくれるって言ったじゃんか!」
そう言っても、
「少しだけだと言ったろ」
と悪びれもせずに言い返される。
それでもなんとか1週間逃げきっていたのだが、とうとう捕まってしまった。
「おい、いつまで待たせる気だ」
「い、いつまでって....まだ1週間しか経ってない.....」
「十分待った」
「っ、そもそも、承諾以外認めないっておかしいでしょ!」
「断る気か?」
当たり前でしょっ。
なんでモブがメインキャラと付き合うのさっ。
俺は壁になれればそれでいいのに!
なんてことを言えるわけもなく黙り込むとため息をつかれた。
「.......わかった」
そう言うとあっさり背を向けて行ってしまった。
予想外の行動に、遠ざかる背中を呆然と見送ることしかできなかった。
その日から、ベルが迫ってくることはなくなった。
平和、というか静か、というか寂しい、というか.....。
ルカも喧嘩したのか、とか聞いてくるし。
喧嘩ではない、はず。
いやいや、むしろこれが正常!今までがおかしかったんだよ!
これで壁ライフを満喫できるかと思ったのだがそうでもなかった。
ベルはあまり喋らないのだ。
俺とはけっこう話すくせに。
殿下やレミオラ様に話しかけられれば応えはするがそれも一言二言。
その他の人に話しかけられれば基本無視。
自分から声をかける姿はこの1週間まるでなかった。
これじゃあ録音なんてできないよ!
自然とため息が漏れる。
「どした?フィルの好きな魔法の授業なのに浮かない顔だな」
「ううん!なんでもない!」
そうだ。今は授業中だった。集中しなくては。
今回は同じ属性を持った者同士の実戦形式。
なので複数の属性を扱える人でもひとつの属性しか使ってはいけない。
縛りがあるのもおもしろそうだよね!
まあ、俺はもともとひとつだから関係ないけど。
前回の試合を踏まえて先生がペアを決めたらしい。
ん?ちょっと待てよ....。
風属性って俺以外に使えるのベルしかいなかったような....?
そんでもって光属性もベルしかいなかったような....?
順番に名前が呼ばれていき———、案の定俺とベルがペアになった。
うう....。またしても勝てる気がしない.....。
しかもベルは前回の試合で風魔法を使っていない。
完全に未知数だ。
その他の組み合わせは、
ルカと同じ氷属性の人(名前は覚えてないです)
ラーフエルとレミオラ様
アレンと殿下だ。
ルカは難なく勝利、ラーフエルとレミオラ様は拮抗していたがレミオラ様の勝利。
そして、俺とベルの番が回ってきた。
なんかめっちゃ緊張する。
楽しみなような、気まずいような、少し複雑だ。
先生からネックレスを受け取って首にかけ、目を閉じて深呼吸をしてからベルを見る。
ブルーの瞳はこちらを見据えていた。
目が合ったのは1週間ぶりだ。
目が合うとやっぱりどきどきするが、嬉しさもあった。
「始め」
先に動いたのはベルの方だ。
すごい勢いでこちらに向かってくる。
風魔法使ってなくてこれですか!?
後ろに跳んで距離をとる。
同時に向かい風を発生させ、少しでもベルのスピードを落とした。
そして前回、距離が近くて威力が出なかったことを考慮して自分からではなく遠くの方で空気の弾を作る。
視線を向けるとバレるのでベルを見据えたまま自分とベルの間、ベルがこれから到達するであろう場所に向けて放った。
「!?」
当たる直前、高々と跳び上がった。
脚に何発か掠めたが当然ネックレスは壊れない。
でも、空中での動きは鈍くなるはずだ。
一気に懐まで距離を詰め、地面に叩けつけようと剣を振る。
だが、下からの突風によって勢いが死んでしまった。
キィン!
勢いが死んだ剣では叩きつけられるわけもなく難なく受け止められてしまう。
「くっ....!」
直後、お腹に衝撃が走った。
間髪入れず背中にも衝撃が続く。
ネックレスのおかげで痛みはないが衝撃までは殺せず、地面が近づいた。
風魔法で地面に叩きつけられることを防ぎ、すぐにその場から離れる。
予想通り、ベルが剣を突き立てながら落下してきた。
ガッ!
剣が地面へと突き刺さる。
すかさずそこへ空気の弾を放ったのだが.....
キン、キンッ
全て剣で器用に弾かれてしまった。
はい!?反射神経やばくない!?
ギィィン!
その一瞬の隙をついて距離を詰められ、重い一撃を受け止める。
だが、あまりに重い一撃に手が痺れ剣が手から弾き飛ばされてしまった。
剣先が自分の喉元に突き立てられ、切っ先が触れる。
弾き飛ばされた剣が地面に落ちたのと同時にネックレスが壊れた。
「や、やめ」
いつの間にか肩で息をしていた。
大きく息を吸ったとき、チリッとした痛みを喉元に感じた。
未だ突き立てられていた剣の切っ先が喉元を浅く裂いたのだ。
思わず身を引くとベルははっとした顔をして剣を落とした。
「悪い」
「いえ、たいした怪我ではない——、わっ」
顎を無理矢理上に上げられた直後、喉元が少し暖かく感じた。
え、もしかして治癒魔法!?
見たい!...じゃなくて!こんな小さい傷にそんなことしなくてもよかったのに!
「あの、ベルトレッド様...?ひっ、んっ」
ぬるりとしたものが首筋を這い、先程怪我をしたであろう部分をぢゅっと音を立てて吸われた。
なっ、なにしてんすかー!!
こんな公衆の面前で!!
幸いすぐに顔を離してくれたが心なしかほっとしたような表情をしている。
いや、ほっとしてる場合じゃないですよ!
「せ、先生!トイレ行ってきますっ!」
恥ずかしすぎてその場をダッシュで立ち去った。
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