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7話

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そしてようやくテスト当日。
案の定、筋肉痛はあるが動けないほどではない。

「おー、今日はちゃんと起きたんだな」
「あんな時間まで寝てたのあれが初めてだよ」

ルカと一緒にテスト会場へ向かった。

会場といっても学校の敷地内で運動場のようなところだ。
すでに多くの生徒が集まっている。

時間になると先生らしき人物の声が響いた。

「みなさん、時間になりました。これからテストを開始いたします。今回のテスト内容はこちらです」

指をさした方へ全員が顔を向ける。
そこには魔道具の鳥がふわふわと不規則に飛んでいた。

主に子供のおもちゃとして販売されているものだ。
魔力を込めると飛ぶ仕組みになっている。

子供の魔力操作の練習なんかにも使われている一般的なおもちゃ。

「これを魔法で撃ち落としていただきます」

その言葉に周りがざわざわと騒ぎだした。

「今回のテストは難易度高めだな。もしかしたらクラス4つとかになるかもな」

隣のルカも少し険しい顔つきをしている。
これ高めなの?でも兄さんの時は止まってる的みたいだったしそうなのかな?

「4クラスになることもあるの?」
「ほとんどないけどな。今年は大物が多いからお近づきになりたい奴が多いんじゃないか?」

ふーん。そんなものなのか。

「名前を呼ばれた方からこちらへお願いします」

早速テストが開始された。
2人の先生が各1人ずつ見るようだ。

これは時間がかかりそう。
でも他の人の魔法が見れるし退屈はしないか。

そう思っていたのだが、思ったより魔法のレベルが低いような気がする。

今のところ、撃ち落とせていない者の方が多いんじゃないだろうか。

うーん....。これはどうしたものか。
動く物を撃ち落とす練習ならずっとしていたのでできると思う。
けど、この中であっさり撃ち落としてしまうとなんだか目立ちそうな気もする。

目立つことは極力避けたいし、どうしようか。
ただ、昨日行われたテストがどれだけのレベルだったのかわからない以上、手を抜くのもちょっと怖い。

ま、いっか。
1番嫌なのはイケボが聞けなくなることだし。
いつも通りでいこう。

そう決心した直後、歓声があがった。
「フィル、大物のお出ましだ」

ルカが顎で示す方を見てみると3人の人影が見えた。

げっ。

攻略相手の3人だ。
金髪に碧眼でいかにも王子様です、といった風貌のカイル・ユグドール。
胸ほどまである茶髪を左側で結い、エメラルドグリーンの瞳に眼鏡をかけているレミオラ・クロスフィード。
そして黒髪碧眼のイケボ、ベルトレッド・アレイシス。

慌てて視線を逸らす。
目が合った、ような気がしたがきっと気のせいだ。
ライブで目が合ったと錯覚するアレと同じ。


「フィルローゼ・マクファイン」

ようやく名前を呼ばれた。
「フィル、頑張れよ!」
「うん。ありがとう」

視線が3人に集まっているから目立たなくてちょうどいいかもしれない。

「それでは、始めてください」

右腕を鳥に真っ直ぐ向け、親指と人差し指以外を折りたたむ。
銃のように構えたほうがイメージもしやすいし、狙いやすい。

狙いを定め、風の弾を放った。

ガシャン!

音もなく的中したおもちゃの鳥は音を立てて地面に落ちた。

撃ち落とした鳥を回収して先生に渡すが受け取ってくれない。
なんだかあんなにうるさかった周りも、少し静かになった気がする。

あれ?
「あの、駄目でしたか?」

声をかけるとようやく反応があった。
「あ、いえ。すみません。大丈夫です」

テストが終わった人はそのまま他の人の見学をするなり寮に戻るなり自由なので、邪魔にならないような所で見学しようと人だかりから抜けると兄の姿を見つけた。

「兄さん!」
「フィル、お疲れ様。見てたよ。すごいじゃないか」

にっこりと笑って頭を撫でてくれた。

「兄さんのアドバイスのお陰です!」
「それはよかった。この後はどうする?寮に戻ってゆっくりするかい?」

「いえ。ルカがまだなので。あと他の方も見たいです」
主人公のアレン・スピナーと幼なじみのラーフエル・トライトンも見ておきたい。

「.....そうか、早くここから移動したかったけど....。仕方ないね」
「なにか用事ですか?」

「いや、いいんだ。私がついてるからね」
「?」
兄さんがなにを言っているのか理解できなかったがルカの名前が呼ばれたのでそちらに意識を向けた。

ルカは右手に槍のような先の尖った氷の棒を作るとそれを鳥に向かって投げつけた。

ガキィン!

よし!
見事命中!

「ルカ!こっちこっち!」
キョロキョロしているルカを手を上げて呼んだ。

「フィル!お前すごいな!あれどうやったんだよ!」
両肩を掴まれぐいっと近づいてきた。

うおっ。なんか興奮してません?

落ち着いて、と言う前に兄さんが「近い」と一言。
ルカは両肩からばっと手を離して一歩下がった。

「あー、お兄さん居たんすね。失礼しました」
「君に兄と呼ばれたくはない」
「ちょ、兄さん!?」
普段はそんな意地悪なことを言わないのにどうしたのだろう?

「ルカ、シュレイツ兄さんだよ。兄さん、隣の部屋で友人のルーカスです」

うーん....。なんか空気悪くないか?
握手をするわけでもなくお互いにこっと笑っただけだ。
その笑顔もなんだか怖い。

「えーっと、ルカはこの後どうする?俺と兄さんはまだ少し見ていくつもりなんだけど....」
「じゃあ俺も見ていこうかな」

......。
なんか兄さんから舌打ちが聞こえたような気がしたんだけど.....。気のせいだよね?

「君は空気が読めないタイプなのかな?」
「ええ、よく言われます」
2人ともにこにこしているのに火花が散っているように見える。

えええええー。
なにこれ。どういう状況?俺の居ないところでなんかあった?

どうしたもんかと悩んでいたけどアレン・スピナーの名前が呼ばれたので一旦無視した。

違いますよ?決して面倒だからとかじゃありません。
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