BLゲームのモブに転生したので壁になろうと思います

文字の大きさ
上 下
6 / 25

6話

しおりを挟む
「フィルー?おーい、まだ寝てんのかー?」

扉をうるさいくらいノックされ目が覚めた。

「んぅ.....?」
なんだ....?なんか今日あったっけ....?

まだ寝起きで頭がぼーっとしている。

「フィル?あれ?いないのか?」

扉の外からノック音とともに声が響く。

ん?ルカ?
.....は!そうだ!ここもう学校か!
今日約束してたんだった!

「ルカ!ごめん!今起きた!すぐ準備してそっち行くからもう少し待ってて!」
「おお、いたのか。わかった。待ってるなー」

ああああ、申し訳ない....!
今まで寝坊なんてしたことなかったのに....!

時計を見るともうすぐお昼の時間だった。
俺そんな寝てたの!?自分にびっくりだわ!

急いで顔を洗って着替えも含め5分程で支度を終え、ルカのドアをノックした。
もちろん前世を含め、最高新記録だ。

「お、早かったな」
「ほんっっとにごめん!こんな時間まで起きれないと思わなくて....」

「ははっ、いいって。疲れてたんだろ。それに時間は決めてなかったしな」
真面目だなー、と腰を折って謝罪する俺を見て笑いながら言った。

優しい...!
友達になれてよかった...!

「それより昼食べに行こーぜ」
「うん」

食堂へ行くとそこそこ混んでいたが席はすぐにみつかった。
席に着いて俺はもう一度謝った。

「本当にごめん」
「はい!もう謝るの禁止!ご飯まずくなるだろ」

「ありがとう」
「そんなことより、フィルはこの学校へは何しに来たんだ?次男だからやっぱ結婚相手探しにとか?」

家督を継げるのは原則長男だ。
場合によっては当主が決めることもあるようだがマクファイン家ではすでに兄さんが家督を継ぐことは決まっている。

俺もそれに異議はない。
そして、結婚をするつもりも今のところない。

「いや、魔法を学びに来たんだよ」
「魔法を学びに?コネ作りとかじゃなく?」

「うん。うち全体的に過保護だからあんまり魔法とか教えてもらってなくて」
「え、それならなおさら結婚相手探した方がよくないか?フィルならすぐ見つかるだろ」

「うーん、結婚はまだ考えてないからなぁ」
「なにかやりたいことでもあるのか?」

「うん。冒険者になりたいんだ」
「は!?冒険者!?」

そう!冒険者!
この国には前世で読んだ小説に出てくる冒険者がいるのだ。

男なら誰でも一度は憧れるだろう。

貴族が冒険者になった例は少ないがちゃんと前例もある。

「....魔法適性は?」

魔法適性とは、火、水、氷、土、風、雷、光、闇、聖、の9つある属性魔法の中で扱える魔法のことだ。

この世界では、全ての人が魔力を持って生まれてくるが、属性魔法は貴族にしか扱えない。

魔法適性はだいたい1人1~2つで、稀に3つ扱える人も居るらしい。
3つも扱えたらもうチートだよね。

「俺は風だけだよ」
俺の扱える属性魔法は風属性のみ。ちなみに兄さんは火属性だけだ。

「風....。やっぱやめといた方がいいんじゃないか....?」

まあ、ルカがそう言うのも分からなくはない。
風魔法は火や雷などの発生させるだけで脅威になるような攻撃魔法はないし、どちらかというとサポート系の魔法が多い。

サイクロンを発生させるなどの強力な魔法もあるがそれだけ魔力消費も多いので使い勝手が悪いのだ。

使い方次第だと思うんだけどね。

「風魔法もけっこう使えるよ?剣の練習もしてるし」
「それでもなぁ....。家族はOKしてんのか?過保護なんだろ?」

「う...、家族にはまだ言ってない....」
絶対反対されるだろうし。

「でも!学校である程度成果出せば認めてくれるかもだし!やるだけやってみるつもりだよ!」

「そうか、まあそんなに言うならもうなにも言わないけど....」
「心配してくれてありがとう。ルカは?何かやりたいこととかあるの?」

「俺はやっぱり騎士団だな!」
「おお!かっこいい!」

「だろ!.....でもなぁ、俺の魔法適性氷だけなんだよなぁ....」
「あぁ...」

氷属性が弱いわけではないのだが、この国には火属性を扱う人が多いので不利属性である氷は敬遠されがちだ。

まあ、隣で火使ってる人がいても氷だとフォローしにくいしね...。

「せめてもうひとつ使えればなぁー」
「でも騎士団の人全員が火属性なわけじゃないし実力さえあれば大丈夫だよ!」

「だな!ラッキーなことに騎士団長の息子と同学年だし!仲良くなれればコネで入れるかも!」
「うーん....。コネは、どうかな....」

「でも仲良くなっといて損はないだろー」

うーん、俺的には損得勘定で友達になるとかは....。
どうなんだろ、と思ってしまう。

だってもし自分がその立場だったら嫌だから。

俺とルカの関係だって損得勘定はないわけだし。
こんな考えだから市井の生まれだって言われるのかもしれないけど。

でも前世では庶民だったから俺に関してはあながち間違いではない。

ただ、自分の考えを押し付けるつもりはないので仲良くなれるといいね、と適当に流しておいた。

「仲良くなるためにはやっぱ同じクラスにならないとだよな」
「そうだね。どんなテストか気になるなぁ」

「だな。フィルんちあんま教えてもらえないって言ってたけど、どの程度なんだ?」
「うーん、基本は教えてもらったかな?ただ、実践はあんまりやらせてもらえなかったから隠れて練習はしてたよ」

「思ったより過保護だな。フィルとも一緒のクラスになれたらって思ってたんだけど」
「俺だって一番上のクラス目指してるから!」

「お!じゃあ明日楽しみだな!」
「うん!」

お昼ご飯を食べ終わった後は校内を見て回り、ルカがいつもやっているというトレーニングを一緒にやった。

「....はぁっ、はぁ....。ルカ...毎日こんなことしてるの....?」

「ああ。フィルは体力ないなー。冒険者になりたいならこれくらいできないと」

剣の練習もしていたとはいえ、風魔法と組み合わせた練習しかしてなかった。
それしか興味なかったし、筋トレはもともと好きじゃないからしていない。だから自分にこんな体力がないとは思わなかった。

思わなかったけどこれは普通ではないよね!?

腹筋とか腕立てとか基本的な筋トレを100回ずつくらい平気でやってのけている。
俺はもちろんそこまでついていけなかったけどね。

「確かに華奢だもんなー」
「はぁ....、明日絶対筋肉痛だよー」

「ははっ、大事なテストの前日にやるもんじゃなかったな」

「いや、これを機に俺も筋トレする....」
しおりを挟む
感想 10

あなたにおすすめの小説

ゲーム世界の貴族A(=俺)

猫宮乾
BL
 妹に頼み込まれてBLゲームの戦闘部分を手伝っていた主人公。完璧に内容が頭に入った状態で、気がつけばそのゲームの世界にトリップしていた。脇役の貴族Aに成り代わっていたが、魔法が使えて楽しすぎた! が、BLゲームの世界だって事を忘れていた。

最強の弟子を育てて尊敬されようと思ったのですが上手くいきません

冨士原のもち
BL
前世でやっていたゲームに酷似した世界。 美貌も相まって異名をつけられるほど強くなったミチハは、人生がつまらなくなった。 そんな時、才能の塊のようなエンを見つけて弟子にしようとアプローチする。 無愛想弟子×美形最強の師匠 ※ムーンライトノベルズにも投稿しています

身代わりになって推しの思い出の中で永遠になりたいんです!

冨士原のもち
BL
桜舞う王立学院の入学式、ヤマトはカイユー王子を見てここが前世でやったゲームの世界だと気付く。ヤマトが一番好きなキャラであるカイユー王子は、ゲーム内では非業の死を遂げる。 「そうだ!カイユーを助けて死んだら、忘れられない恩人として永遠になれるんじゃないか?」 前世の死に際のせいで人間不信と恋愛不信を拗らせていたヤマトは、推しの心の中で永遠になるために身代わりになろうと決意した。しかし、カイユー王子はゲームの時の印象と違っていて…… 演技チャラ男攻め×美人人間不信受け ※最終的にはハッピーエンドです ※何かしら地雷のある方にはお勧めしません ※ムーンライトノベルズにも投稿しています

美貌の騎士候補生は、愛する人を快楽漬けにして飼い慣らす〜僕から逃げないで愛させて〜

飛鷹
BL
騎士養成学校に在席しているパスティには秘密がある。 でも、それを誰かに言うつもりはなく、目的を達成したら静かに自国に戻るつもりだった。 しかし美貌の騎士候補生に捕まり、快楽漬けにされ、甘く喘がされてしまう。 秘密を抱えたまま、パスティは幸せになれるのか。 美貌の騎士候補生のカーディアスは何を考えてパスティに付きまとうのか……。 秘密を抱えた二人が幸せになるまでのお話。

【完結】健康な身体に成り代わったので異世界を満喫します。

白(しろ)
BL
神様曰く、これはお節介らしい。 僕の身体は運が悪くとても脆く出来ていた。心臓の部分が。だからそろそろダメかもな、なんて思っていたある日の夢で僕は健康な身体を手に入れていた。 けれどそれは僕の身体じゃなくて、まるで天使のように綺麗な顔をした人の身体だった。 どうせ夢だ、すぐに覚めると思っていたのに夢は覚めない。それどころか感じる全てがリアルで、もしかしてこれは現実なのかもしれないと有り得ない考えに及んだとき、頭に鈴の音が響いた。 「お節介を焼くことにした。なに心配することはない。ただ、成り代わるだけさ。お前が欲しくて堪らなかった身体に」 神様らしき人の差配で、僕は僕じゃない人物として生きることになった。 これは健康な身体を手に入れた僕が、好きなように生きていくお話。 本編は三人称です。 R−18に該当するページには※を付けます。 毎日20時更新 登場人物 ラファエル・ローデン 金髪青眼の美青年。無邪気であどけなくもあるが無鉄砲で好奇心旺盛。 ある日人が変わったように活発になったことで親しい人たちを戸惑わせた。今では受け入れられている。 首筋で脈を取るのがクセ。 アルフレッド 茶髪に赤目の迫力ある男前苦労人。ラファエルの友人であり相棒。 剣の腕が立ち騎士団への入団を強く望まれていたが縛り付けられるのを嫌う性格な為断った。 神様 ガラが悪い大男。  

悪役令嬢のモブ兄に転生したら、攻略対象から溺愛されてしまいました

藍沢真啓/庚あき
BL
俺──ルシアン・イベリスは学園の卒業パーティで起こった、妹ルシアが我が国の王子で婚約者で友人でもあるジュリアンから断罪される光景を見て思い出す。 (あ、これ乙女ゲームの悪役令嬢断罪シーンだ)と。 ちなみに、普通だったら攻略対象の立ち位置にあるべき筈なのに、予算の関係かモブ兄の俺。 しかし、うちの可愛い妹は、ゲームとは別の展開をして、会場から立ち去るのを追いかけようとしたら、攻略対象の一人で親友のリュカ・チューベローズに引き止められ、そして……。 気づけば、親友にでろっでろに溺愛されてしまったモブ兄の運命は── 異世界転生ラブラブコメディです。 ご都合主義な展開が多いので、苦手な方はお気を付けください。

弟勇者と保護した魔王に狙われているので家出します。

あじ/Jio
BL
父親に殴られた時、俺は前世を思い出した。 だが、前世を思い出したところで、俺が腹違いの弟を嫌うことに変わりはない。 よくある漫画や小説のように、断罪されるのを回避するために、弟と仲良くする気は毛頭なかった。 弟は600年の眠りから醒めた魔王を退治する英雄だ。 そして俺は、そんな弟に嫉妬して何かと邪魔をしようとするモブ悪役。 どうせ互いに相容れない存在だと、大嫌いな弟から離れて辺境の地で過ごしていた幼少期。 俺は眠りから醒めたばかりの魔王を見つけた。 そして時が過ぎた今、なぜか弟と魔王に執着されてケツ穴を狙われている。 ◎1話完結型になります

番だと言われて囲われました。

BL
戦時中のある日、特攻隊として選ばれた私は友人と別れて仲間と共に敵陣へ飛び込んだ。 死を覚悟したその時、光に包み込まれ機体ごと何かに引き寄せられて、異世界に。 そこは魔力持ちも世界であり、私を番いと呼ぶ物に囲われた。

処理中です...