25 / 27
2章
25話
しおりを挟む
小守が居たら嫌だなと思って土曜日はバーには行かなかった。
なんで俺があいつに振り回されなきゃいけないんだよ....。
帰ってきたミィーファに聞くとやはり来ていたようだ。
ミィーファがむすっとした顔で膝の上に乗ってきたのでそれはそれで儲けもんだったがそろそろちゃんと話をしないとよろしくない気がする。
めんどくさい。非常ーにめんどくさい。
それでもずっとミィーファにあんな顔をさせるのは嫌だし自分もストレスが溜まる。
ソファーに座って映画を見ながら脚の間にいるミィーファの髪をひと束すくって唇を落とす。
自分から見たいと言ったのに映画の内容は頭に入ってこなかった。
「律さん?どうかしました?」
「んーん、なんでもねーよ」
「んっ...ちょ....律さんが見たいって言ったんですよ?」
頸に唇を落としながらぎゅっと抱きしめる。
「んー、そうだな」
そう言いながらも耳裏や耳朶、首筋に少し吸い付きながら唇を落とす。
「り、律さんっ...くすぐったい、ですっ....んっ...、もうっ、エイガ見ないんですかっ...?」
「見てる見てる」
「やっ、嘘っ...んっ...」
首筋に頬を寄せミィーファの背中に寄りかかる。
体温が心地よくてうっかりすると寝てしまいそうだ。
「律さん?もう寝ますか?」
「んー....。もう少しこのまま....」
結局その日はそのまま寝てしまった。
◇◇◇◇
そして月曜日。
昼飯に小守を誘い、今、まさに対峙している。
半個室のためあまり大きな声を出さなければ周りに聞かれる心配もない。
「進藤さんから誘って頂けるとは思いませんでした」
「課長」
にこにこと話す小守にピシャリと言い放つと途端にぶすっとした表情になる。
「で、話ってなんですか?進藤課長」
「お前、なんで俺にちょっかいかけるんだよ。正直迷惑」
けっこうズバッと言ったつもりだったのだが小守は気にした様子もなく口を開いた。
「だって進藤さん、俺の理想なんですもん。俺のモノになってほしくて」
「課長って呼べって言ってるだろ。それに恋人いるって知ってるだろ?悪いが諦めてくれ」
「恋人いるくらいじゃ諦めませんよ?だって男同士ってそんな上手くいかないじゃないですか。引っ掻き回せばすぐダメになる」
過去に似たようなことでもあったのだろうか。
まあ、だとしても興味はないし同情する気にもなれないが。
「はっ、だから自分が壊してもいいって?馬鹿か。ガキじゃあるまいし」
ガキという言葉に眉毛がぴくりと動いた。
「進藤課長はさぞかし幸せな恋愛してきたんでしょうね」
「はぁ?今そんなこと関係ねえだろ。つーかこんなことばっかしてたらみんなお前から離れてくぞ」
「俺が引っ掻き回しただけでダメになるなら遅かれ早かれダメになってますよ」
「だからってお前が壊していいことにはならん。恨み買うだけだからやめとけ」
「....真面目ですね、進藤課長。そんな大したことじゃないですよ。むしろ浮気男と別れられてラッキーって思ってますよ」
「....悪趣味だな」
「課長の彼氏さんだってあんなに美人なんですからもしかしたら陰で浮気してるかもしれないですよ?」
「あいつはそういうことしねーよ」
「なんでそこまで言い切れるんですか?」
「そういうやつだから」
「....そこまで信じてるのにもし裏切られたら辛くないですか?それなら早くに浮気男だってわかる方がいいですよね?」
....こいつはなにが言いたいんだ。
「はぁ....。辛くないと言ったら嘘になるがそれであいつが幸せなら俺は別に構わない」
「は....?それ本気で言ってます....?」
「ああ」
「....嘘だ。裏切られたことがないからそんな事が言えるんですよ」
「嘘じゃない。生きてて、幸せなら俺の側でなくてもいい。ま、よそ見させる気はねーけど」
そう言うと小守は少し黙ったあと、深くため息をついた。
「あー、もう。なんでそんなかっこいいんですか」
「はぁ?つかお前はなにがしたいんだよ」
「もういいです。すみませんでした。進藤課長のことは諦めます」
は?なんだそりゃ。随分あっけなく....。
まあいいか。諦めるって言ってんだし。
「諦めるんでバーには行ってもいいですか?」
「あー、それは別に...。俺がとやかく言うことじゃねーし...」
本音を言うと少しだけ嫌だったが部下でもあるのでそこまで邪険にするわけにもいかない。
「....よかった。ならまたバーで」
「お、おう....」
その後の1週間は今までがなんだったんだと思うくらい絡んでこなくなった。
いや、ほんとなにがしたかったんだあいつは。
まぁ、お陰でミィーファにあんな顔させることもなくなったのでそれはよかったのだが。
そして久しぶりに小守がバーに来たと思ったら、すでに出来上がった状態だった。
小守なりに気を遣ったのだろうか。
「未依風さん!あなたの彼氏ほんとにかっこいいんですよ!俺に譲ってくれませんか?」
おい。なに言ってるんだ、この酔っ払いは。
諦めたって言ってたろ。
「寝言は寝てから言ってください」
ミィーファさん、目が笑ってませんよ....。
「この前だって、未依風さんのことめちゃくちゃ想ってて感動したんですから!」
「おい、酔っ払い。それくらいにしとけ」
「それは是非とも詳しく伺いたいです」
「じゃああっち!あっちのテーブル行きましょ!」
俺の静止はもはや無視。
2人できゃっきゃしながらテーブルの方へ行ってしまった。
「なんか仲良くなってねえか?」
「いいんじゃない?歳も近いし。友達になれそう」
「まぁ....そうだけど....」
ウイスキーの氷が溶け、カラン、と小気味のいい音が響いた。
なんで俺があいつに振り回されなきゃいけないんだよ....。
帰ってきたミィーファに聞くとやはり来ていたようだ。
ミィーファがむすっとした顔で膝の上に乗ってきたのでそれはそれで儲けもんだったがそろそろちゃんと話をしないとよろしくない気がする。
めんどくさい。非常ーにめんどくさい。
それでもずっとミィーファにあんな顔をさせるのは嫌だし自分もストレスが溜まる。
ソファーに座って映画を見ながら脚の間にいるミィーファの髪をひと束すくって唇を落とす。
自分から見たいと言ったのに映画の内容は頭に入ってこなかった。
「律さん?どうかしました?」
「んーん、なんでもねーよ」
「んっ...ちょ....律さんが見たいって言ったんですよ?」
頸に唇を落としながらぎゅっと抱きしめる。
「んー、そうだな」
そう言いながらも耳裏や耳朶、首筋に少し吸い付きながら唇を落とす。
「り、律さんっ...くすぐったい、ですっ....んっ...、もうっ、エイガ見ないんですかっ...?」
「見てる見てる」
「やっ、嘘っ...んっ...」
首筋に頬を寄せミィーファの背中に寄りかかる。
体温が心地よくてうっかりすると寝てしまいそうだ。
「律さん?もう寝ますか?」
「んー....。もう少しこのまま....」
結局その日はそのまま寝てしまった。
◇◇◇◇
そして月曜日。
昼飯に小守を誘い、今、まさに対峙している。
半個室のためあまり大きな声を出さなければ周りに聞かれる心配もない。
「進藤さんから誘って頂けるとは思いませんでした」
「課長」
にこにこと話す小守にピシャリと言い放つと途端にぶすっとした表情になる。
「で、話ってなんですか?進藤課長」
「お前、なんで俺にちょっかいかけるんだよ。正直迷惑」
けっこうズバッと言ったつもりだったのだが小守は気にした様子もなく口を開いた。
「だって進藤さん、俺の理想なんですもん。俺のモノになってほしくて」
「課長って呼べって言ってるだろ。それに恋人いるって知ってるだろ?悪いが諦めてくれ」
「恋人いるくらいじゃ諦めませんよ?だって男同士ってそんな上手くいかないじゃないですか。引っ掻き回せばすぐダメになる」
過去に似たようなことでもあったのだろうか。
まあ、だとしても興味はないし同情する気にもなれないが。
「はっ、だから自分が壊してもいいって?馬鹿か。ガキじゃあるまいし」
ガキという言葉に眉毛がぴくりと動いた。
「進藤課長はさぞかし幸せな恋愛してきたんでしょうね」
「はぁ?今そんなこと関係ねえだろ。つーかこんなことばっかしてたらみんなお前から離れてくぞ」
「俺が引っ掻き回しただけでダメになるなら遅かれ早かれダメになってますよ」
「だからってお前が壊していいことにはならん。恨み買うだけだからやめとけ」
「....真面目ですね、進藤課長。そんな大したことじゃないですよ。むしろ浮気男と別れられてラッキーって思ってますよ」
「....悪趣味だな」
「課長の彼氏さんだってあんなに美人なんですからもしかしたら陰で浮気してるかもしれないですよ?」
「あいつはそういうことしねーよ」
「なんでそこまで言い切れるんですか?」
「そういうやつだから」
「....そこまで信じてるのにもし裏切られたら辛くないですか?それなら早くに浮気男だってわかる方がいいですよね?」
....こいつはなにが言いたいんだ。
「はぁ....。辛くないと言ったら嘘になるがそれであいつが幸せなら俺は別に構わない」
「は....?それ本気で言ってます....?」
「ああ」
「....嘘だ。裏切られたことがないからそんな事が言えるんですよ」
「嘘じゃない。生きてて、幸せなら俺の側でなくてもいい。ま、よそ見させる気はねーけど」
そう言うと小守は少し黙ったあと、深くため息をついた。
「あー、もう。なんでそんなかっこいいんですか」
「はぁ?つかお前はなにがしたいんだよ」
「もういいです。すみませんでした。進藤課長のことは諦めます」
は?なんだそりゃ。随分あっけなく....。
まあいいか。諦めるって言ってんだし。
「諦めるんでバーには行ってもいいですか?」
「あー、それは別に...。俺がとやかく言うことじゃねーし...」
本音を言うと少しだけ嫌だったが部下でもあるのでそこまで邪険にするわけにもいかない。
「....よかった。ならまたバーで」
「お、おう....」
その後の1週間は今までがなんだったんだと思うくらい絡んでこなくなった。
いや、ほんとなにがしたかったんだあいつは。
まぁ、お陰でミィーファにあんな顔させることもなくなったのでそれはよかったのだが。
そして久しぶりに小守がバーに来たと思ったら、すでに出来上がった状態だった。
小守なりに気を遣ったのだろうか。
「未依風さん!あなたの彼氏ほんとにかっこいいんですよ!俺に譲ってくれませんか?」
おい。なに言ってるんだ、この酔っ払いは。
諦めたって言ってたろ。
「寝言は寝てから言ってください」
ミィーファさん、目が笑ってませんよ....。
「この前だって、未依風さんのことめちゃくちゃ想ってて感動したんですから!」
「おい、酔っ払い。それくらいにしとけ」
「それは是非とも詳しく伺いたいです」
「じゃああっち!あっちのテーブル行きましょ!」
俺の静止はもはや無視。
2人できゃっきゃしながらテーブルの方へ行ってしまった。
「なんか仲良くなってねえか?」
「いいんじゃない?歳も近いし。友達になれそう」
「まぁ....そうだけど....」
ウイスキーの氷が溶け、カラン、と小気味のいい音が響いた。
11
お気に入りに追加
127
あなたにおすすめの小説
【完結・BL】DT騎士団員は、騎士団長様に告白したい!【騎士団員×騎士団長】
彩華
BL
とある平和な国。「ある日」を境に、この国を守る騎士団へ入団することを夢見ていたトーマは、無事にその夢を叶えた。それもこれも、あの日の初恋。騎士団長・アランに一目惚れしたため。年若いトーマの恋心は、日々募っていくばかり。自身の気持ちを、アランに伝えるべきか? そんな悶々とする騎士団員の話。
「好きだって言えるなら、言いたい。いや、でもやっぱ、言わなくても良いな……。ああ゛―!でも、アラン様が好きだって言いてぇよー!!」
好きなあいつの嫉妬がすごい
カムカム
BL
新しいクラスで新しい友達ができることを楽しみにしていたが、特に気になる存在がいた。それは幼馴染のランだった。
ランはいつもクールで落ち着いていて、どこか遠くを見ているような眼差しが印象的だった。レンとは対照的に、内向的で多くの人と打ち解けることが少なかった。しかし、レンだけは違った。ランはレンに対してだけ心を開き、笑顔を見せることが多かった。
教室に入ると、運命的にレンとランは隣同士の席になった。レンは心の中でガッツポーズをしながら、ランに話しかけた。
「ラン、おはよう!今年も一緒のクラスだね。」
ランは少し驚いた表情を見せたが、すぐに微笑み返した。「おはよう、レン。そうだね、今年もよろしく。」
【完結・BL】俺をフッた初恋相手が、転勤して上司になったんだが?【先輩×後輩】
彩華
BL
『俺、そんな目でお前のこと見れない』
高校一年の冬。俺の初恋は、見事に玉砕した。
その後、俺は見事にDTのまま。あっという間に25になり。何の変化もないまま、ごくごくありふれたサラリーマンになった俺。
そんな俺の前に、運命の悪戯か。再び初恋相手は現れて────!?
帝国皇子のお婿さんになりました
クリム
BL
帝国の皇太子エリファス・ロータスとの婚姻を神殿で誓った瞬間、ハルシオン・アスターは自分の前世を思い出す。普通の日本人主婦だったことを。
そして『白い結婚』だったはずの婚姻後、皇太子の寝室に呼ばれることになり、ハルシオンはひた隠しにして来た事実に直面する。王族の姫が19歳まで独身を貫いたこと、その真実が暴かれると、出自の小王国は滅ぼされかねない。
「それなら皇太子殿下に一服盛りますかね、主様」
「そうだね、クーちゃん。ついでに血袋で寝台を汚してなんちゃって既成事実を」
「では、盛って服を乱して、血を……主様、これ……いや、まさかやる気ですか?」
「うん、クーちゃん」
「クーちゃんではありません、クー・チャンです。あ、主様、やめてください!」
これは隣国の帝国皇太子に嫁いだ小王国の『姫君』のお話。
くまさんのマッサージ♡
はやしかわともえ
BL
ほのぼの日常。ちょっとえっちめ。
2024.03.06
閲覧、お気に入りありがとうございます。
m(_ _)m
もう一本書く予定です。時間が掛かりそうなのでお気に入りして頂けると便利かと思います。よろしくお願い致します。
2024.03.10
完結しました!読んで頂きありがとうございます。m(_ _)m
今月25日(3/25)のピクトスクエア様のwebイベントにてこの作品のスピンオフを頒布致します。詳細はまたお知らせ致します。
2024.03.19
https://pictsquare.net/skaojqhx7lcbwqxp8i5ul7eqkorx4foy
イベントページになります。
25日0時より開始です!
※補足
サークルスペースが確定いたしました。
一次創作2: え5
にて出展させていただいてます!
2024.10.28
11/1から開催されるwebイベントにて、新作スピンオフを書いています。改めてお知らせいたします。
2024.11.01
https://pictsquare.net/4g1gw20b5ptpi85w5fmm3rsw729ifyn2
本日22時より、イベントが開催されます。
よろしければ遊びに来てください。
平凡なSubの俺はスパダリDomに愛されて幸せです
おもち
BL
スパダリDom(いつもの)× 平凡Sub(いつもの)
BDSM要素はほぼ無し。
甘やかすのが好きなDomが好きなので、安定にイチャイチャ溺愛しています。
順次スケベパートも追加していきます
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる