年下上司の愛が重すぎる!

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エピローグ

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「限度ってもんがあるだろ...!何時間ヤってんだよ!まだ猿の方が理性的なんじゃねえか!?」

「すみません.....」

立たなくなった足腰のせいで、寝転んだままというなんとも締まらない体勢での説教ではあったが、佐原はベッドの下で正座をして小さくなっている。

「謝るくらいなら最初からすんな!」

「.....すみません。...想いが通じ合ったんだと思ったら、止められなくて....」

俺の方が負担が大きいとはいえ、けろっとしている佐原を見ると腹が立つ。
今だって体力がないわけではないのだが、もっとつけよう、と心に決めた。

「だから、俺だってそれは考慮しただろ。明日に響かせるなよって。それがどうしたら煽ることになるんだよ」

「.....まさか許可が出るとは思わなかったんです。それに、なんだか言い方がエロくて....」

こいつの興奮ポイントを押さえておこうと思っていたのに、聞いてもよくわからなかった。これではまた同じ轍を踏んでしまうかもしれない。

「よし、わかった。お前の煽りワード書き出しとけ」

「はい?」

理解はできなくても、用語がわかっていれば回避できる。こっちは割と真面目に言っているのに、怪訝な顔を返された。

「なんですか?煽りワードって」

「そのままの意味だ。お前がどんな言葉に興奮するか知っとけばこんなことにはならないだろ」

「え!嫌ですよ!っていうか無理です!俺自身把握しきってないですし、思い浮かぶだけでも余裕で原稿用紙千枚は超えますよ!」

「多いわ!」

あまりの多さに思わず叫んだ。はぐらかされているのか、本気で言っているのか判別ができない。
嘘だろ、と一蹴することもできず、馬鹿らしくなってきて諦めた。

シャワーを浴びれるようになるまで回復した頃には、すでに日が沈み始め、昼飯を食いっぱぐれた所為で空いた腹を満たすために少し早めの夕食を摂った。佐原に買いに行かせようと思っていたのだが、「こんな状態の姫崎さんを置いていけるわけないでしょう」とわけのわからない理由で却下されたのでデリバリーだ。

それをつまみながら昨日のことを説明した。

まず、捕まったのはわざとだ。
途中から尾行けられていることに気づき、放っておくのも面倒なことになりそうだったので、気絶させられたフリをした。佐原との関係性はわからなかったが、なかったらなかったで面倒ごとがひとつ減ると思えばいい。

二人の男が式札を確認しながら、「これ、どれがどれ?」「全くわからん」「まぁ気絶してんだから大丈夫か」などと会話しているのが聞こえたので多少の知識はあるのだろう。
術者が死んだり気絶をすれば、式神は存在できなくなって消えるのだ。

一応護符がついていないかも確認していたが、先程と同じ理由で詳しくは調べず、肌に直接貼り付けていたこともあってバレずに済んだ。
そして、佐原が関わっていることを確認してからリューイを署へと向かわせた。

俺以外と話すことはできないが、幽霊課の誰かに会えれば捜査員を派遣してくれる。だからあとは到着するまでの時間を稼ぐだけで良かったのだ。

「お前が殴られる必要なんてなかったんだよ」

一通り話終わってからそう言うと、佐原は複雑そうに顔を歪めた。

「.....俺、全然姫崎さんのこと守れてないですね....」

「はぁ?」

「今回だって、結局姫崎さんが解決したじゃないですか」

「それはお前がなにも考えずに突っ込むからだろ」

俺の言葉に、ぐっと押し黙る。自覚はあったようだ。
この際だから言いたいことを全部言わせてもらおうと、再び口を開く。

「大体な、上位式神も使役できない、現場に出てたった数ヶ月の奴が俺を助けようなんざ百年早いんだよ」

「う.....」

「あと、簡単に命懸けようなんて思うな」

あの時、佐原が殴られている時、「例え死んでも置いていかない」という無責任な発言に腹が立った。

「別に軽々しく言ったつもりはありません」

心外だ、とでも言うように手を止め、真っ直ぐに見据えられる。

「じゃあ、もしあの時お前が死んでたら、残された俺はどうなる」

「っ!」

「死んで解決することなんてほとんどないんだ。そんなことより、生き抜くために死ぬ気で考えろ」

佐原の顔がみるみるうちに沈んでいく。

「っ.....、すみません.....。俺、そういうつもりじゃなくて....」

「わかったならいい。二度と言うなよ。言ったら別れるからな」

「っ、」

しょぼくれていたからてっきり反省しているのかと思いきや、俺の言葉に息を呑んだ。
こいつ、納得してない...?

「.......わー、やばい.....」

「ん?」

「別れるってことは、付き合ってるってことでいいんですよね...?なんか実感したら込み上げてきて....、勃っちゃいました...」

「................は?」

予想の斜め上の返答に、理解が一瞬遅れる。

立った...、勃った...!?が!?散々ヤッたのに!?
今のどこにそんな要素があったのかも疑問だが、それよりもまだそんな元気があることの方が驚きだ。
こっちは真面目な話をしてたっていうのに、お前の頭の中はそれしかないのかっ!
これ以上ここにいたらまたヤられる。
身の危険を感じて俺は無言で立ち上がった。

「姫崎さんっ!?」

「帰る」

「へ!?ちょ、待ってください!」

慌てた佐原が、後ろから抱きしめるようにして止めに入る。
動けるようになったからといって、それを振りほどける回復はしていなかった。

「そんな状態で襲われたらどうするんですか!」

「ここにいてもお前に襲われるわ!」

「なっ、今日はもうしませんよ!」

「今日ってなんだよ!っちょ、押し付けんなって!」

「こ、これはわざとじゃ...。姫崎さんが暴れるからっ」

「人の所為にすんな!離せバカ!」


結局俺が折れるまで離してはもらえず、佐原の家に泊まることになってしまった。
今日はしない、という言葉を信じるしかないが....、こいつに心を許すのはまだ早かったのもしれない。

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