年下上司の愛が重すぎる!

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43話 佐原視点

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「来てない?」

翌日、例の宅配業者へと来たのだが昨日の配達員はまだ来ていないという。

「ええ...。どうやら昨日の配達の帰りに倒れたようで...。今は病院にいます」

勤務表を見せてもらったが、労働時間やシフトに問題はないようだ。
ということは、操られていた可能性が高いな。
病院を教えてもらい話を聞きに行くと、やはり操られていた線が濃厚だった。

マンションの住人と同様、寝れなくなった日から考えても、俺が姫崎さんから離れない事を見越しての行動だろう。

離れた方が、いいのかもしれない。
後手後手に回ってしまっているし、このままだと姫崎さんに被害がおよぶ可能性だってある。
けど、離れたとしても安全が保障されるわけではない。
それなら一日中張り付いていたいくらいだ。

ただ、そうすると姫崎さんにバレずに解決するのは難しいだろう。
........やっぱり一度距離を置こう。そうすればもっと調べられる時間が増える。

神野さんに頼んで姫崎さんに伝えてもらった。
姫崎さんを前にしたら、すぐにでも撤回しそうだったから。


——それなのに、姫崎さんが俺の部屋にいるなんて。
玄関で靴を見た時、信じられなかった。
だって姫崎さんはこれ幸いとすぐに出て行くと思ってたのに。

なんでいるんですか。俺の決意を無駄にさせないでくださいよ。
自分で決めた事なのに、一瞬で覆しそうになる。


早く帰ってはもらえたものの、心配で仕方ない。
タクシー呼ぶ前に帰っちゃったし、メールの返事はこないし....。
というかご飯まで作っていてくれたなんて。なんでそこまでしてくれたんだろう。
嬉しいけど!めちゃくちゃ嬉しいけど!

もしかしてこれで最後だからと気を遣ってくれたんだろうか。
だとしたら申し訳なさすぎる。ご飯のお礼くらい直接言いたかった。
もちろん最後になんてするつもりないけど。

それから姫崎さんとほとんど顔を合わせない日々が続き、俺は重度の姫崎さんロスに陥っていた。

そのせいか、最近、体調があまり良くない。
早朝から姫崎さんの家の周りを巡回し、夜中まで防犯カメラのチェックなどをしているせいもあるんだろうが、姫崎さん不足が一番大きな要因だろう。

姫崎さんのいない家は、こんなにも広かっただろうか。
早く解決させて、姫崎さんを抱きしめて、匂いを吸って、あわよくば舐めたい。
こんな事を言ったらまた姫崎さんにドン引きされるだろうか。
それでも、ほとんど会えないこの状況よりましだ。

非番の日も欠かさず早起きしていたが、今日はさすがに起きられなかった。
今日も姫崎さんの家を巡回をするつもりだったのになんたる失態。
けど、いざという時動けなくなるのは困る。

不本意ではあるが今日は休養日だな、と二度寝を決め込もうとした時、電話が鳴った。
表示は非通知。

嫌な予感がしつつも出ると、聞き覚えのない男の声が耳に届いた。

『佐原壱か?』

「........どちら様ですか?」

『はっ、んなことわかってんだろ』

どうやら隠す気はないようだ。
声も加工している様子はない。

「........あんたがストーカーか」

なぜ、この番号を知っているのか。
ドクン、ドクン、と早まる鼓動を鎮めながら、努めて冷静に返す。

『ストーカーって言い方はヤメロ。気色悪りぃ。俺はあいつに復讐したいだけだ』

「復讐....?」

職業柄、逆恨みされることはよくある。
だから復讐と言われてもそれほど驚きはしないが、やり方がかなり回りくどい。

『今から言う場所へ一人で来い』

「は?」

『来ないならそれでも構わん。だが、来ないならあいつを殺す』

「急に何を——」

『あ?別に急じゃねえよ。こっちは算段つけてたんだ』

「俺がその言葉を信じるとでも?」

『信じないならあいつを殺すだけだ』

「.....姫崎さんを、簡単に殺せると本気で思ってるのか?」

『はっ!馬鹿だなぁ、簡単に殺すわけねえだろ?苦しめて、生まれてきたことを後悔するくらい追い詰めてやらねえと』

笑いながら話す男に、怒りしか湧かない。
駄目だ。相手のペースに飲まれるな。

「...........なんでそこまで恨んでる」

『ふんっ、来たら教えてやるよ。どうする?』

きっと、罠だ。そんなことはわかってる。
けど、万が一。万が一俺が行かなかったことで姫崎さんが殺されてしまったら?
俺は一生後悔する。
例え行った事で自分が死のうとも、姫崎さんが無事ならそれでいい。

姫崎さんが簡単に殺されるとは思っていないが、相手は用意周到で恨みもかなり強そうだ。

「..........場所は」

『そうこなきゃなぁ!住所を送る。だが電話は切るなよ。それと走って来い』

「....注文が多いな」

『できねえならあいつを殺すだけだ』

「.....クソ野郎」

『ほら、あんまり遅くても同じことになるぞ?』

「チッ....」

『ははっ!ゲームスタートといこう!』


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