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34話
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ちゅっと小さな音を立て、左頬に柔らかいものが落とされる。
はっとして目を開ければ、ふふ、と笑う佐原と目が合った。
「口には姫崎さんが好きになってくれた時にしますね」
その言葉を理解する前に、ベッドへ押し倒された。
「ちょ、待っ...、っ....!」
混乱する俺に更なる追い討ちをかけるように、首筋をぬるりと舌が這う。
その瞬間、ぞくりと肌が粟立った。
そこに嫌悪はなく、あるのはくすぐったいような甘い痺れだけ。
多分、最初から心の奥底ではわかっていた。だから怖かったのだ。
それがわかってしまう事が。それを認めてしまう事が。
「ぁ、ま、てって...!」
「どうしました?まだ触ったばっかりですよ?」
「っ、馬鹿っ、そこで喋るなっ...!」
柔らかいものが耳へと移動し、耳朶を優しく喰まれる。吐息が当たる程の距離で囁かれる言葉は、直接脳に響いた。
「やっぱり媚薬なんて使わなくてもめちゃくちゃ感度いいですね。もう手に力入ってないんじゃないですか?」
「っぅ、くそっ....、馬鹿にすんなっ...!」
耳や首筋に何度も唇を落としながら、片方の手はまるで恋人のように指を絡め、もう片方は手のひらをくすぐるように撫でてていく。
「馬鹿になんてしてないですよ。そういうところも、全部可愛いです」
"可愛い"なんて、俺にとっては馬鹿にされている事と同じなのに、なぜそう聞こえないんだろう。
こいつに触られると、馬鹿になってしまったんじゃないかと思うくらい、いろんな感情がごちゃ混ぜになって訳がわからなくなる。
「もっ...、やだ、やめろっ...」
これ以上されたら、自分がどうなるかわからなくて怖い。
またあの時のように醜態を晒したくない。
「理由はなんですか?」
「え....?」
理由?
「忘れましたか?理由言ってくれないとやめないって言いましたよね?」
.....そうだった.....!...理由?怖いからやめろって?そんな事言えるわけないだろ...!くっそ...!あんな約束しなきゃよかった...!
「言わないなら続けますね」
「あ、ちょ...」
「はい、ばんざいしてください」
「え?わっ...、っん、く...っ」
言われるがままに手を上げてしまった俺の服を脱がすと、満足気に微笑みながら身体に指を這わせる。
「姫崎さん、気持ちいいですか?」
「っ、よ、くないっ...、っ...」
「....そうですか?....なら、俺もっと頑張りますね」
「な...んっ!ぁ、そこやめろっ...!」
胸の先端を爪でカリ、と引っかかれ、肩が跳ねた。
あの時程ではないにしろ、たったそれだけの事で身体が震える。
まずい。このままじゃ絶対。
「もっ、やめろって...!....ひぅっ!」
なんとか後ろを向いて乳首への愛撫をやめさせても、今度は背中の窪みをなぞるように舌が這った。
突然走った快感に、思わずシーツを手繰り寄せる。
「可愛い声....。背中も弱いんですね」
「っん、そんなとこ、舐めんなっ...!ふ...んっ」
ずるずると這うようにしてなんとかベッドの中程まで逃げても、すぐに追いつかれ、また舌が這う。時折吸い付きながら下へとおりていき、ズボンにかけられた手を咄嗟に掴んだ。
「待てっ、...もう、わかったからっ...!」
「何がわかったんですか?目を見て言ってください」
「っ、」
くそっ、と内心で悪態をつきながら、仕方なくもぞもぞと起き上がった。少し距離をとりながら起き上がるが、当然のように距離を詰めてくる。
「ち、近いっ!」
膝を抱え、少しでも遠ざけようと佐原の肩を押すが、びくともしない。
「だって、姫崎さん逃げそうなんですもん」
「っ逃げないから離れろっ」
「嫌です」
佐原から逃げていたら、逆に壁の方まで追い詰められてしまった。
「それで、何がわかったんですか?」
......言わなきゃ、駄目だよな.....。
顎を掴まれ、目を逸らしてさえもらえない状態で、言わずに納得してくれるとは思えない。
「...........ったから....」
「なんですか?」
「っ........、気持ち悪くなかったから!もういいだろ!」
腕を振り払いながら自棄になって叫ぶ。
佐原の返答も聞かず、ベッドから下りようとした腕を掴まれた。
はっとして目を開ければ、ふふ、と笑う佐原と目が合った。
「口には姫崎さんが好きになってくれた時にしますね」
その言葉を理解する前に、ベッドへ押し倒された。
「ちょ、待っ...、っ....!」
混乱する俺に更なる追い討ちをかけるように、首筋をぬるりと舌が這う。
その瞬間、ぞくりと肌が粟立った。
そこに嫌悪はなく、あるのはくすぐったいような甘い痺れだけ。
多分、最初から心の奥底ではわかっていた。だから怖かったのだ。
それがわかってしまう事が。それを認めてしまう事が。
「ぁ、ま、てって...!」
「どうしました?まだ触ったばっかりですよ?」
「っ、馬鹿っ、そこで喋るなっ...!」
柔らかいものが耳へと移動し、耳朶を優しく喰まれる。吐息が当たる程の距離で囁かれる言葉は、直接脳に響いた。
「やっぱり媚薬なんて使わなくてもめちゃくちゃ感度いいですね。もう手に力入ってないんじゃないですか?」
「っぅ、くそっ....、馬鹿にすんなっ...!」
耳や首筋に何度も唇を落としながら、片方の手はまるで恋人のように指を絡め、もう片方は手のひらをくすぐるように撫でてていく。
「馬鹿になんてしてないですよ。そういうところも、全部可愛いです」
"可愛い"なんて、俺にとっては馬鹿にされている事と同じなのに、なぜそう聞こえないんだろう。
こいつに触られると、馬鹿になってしまったんじゃないかと思うくらい、いろんな感情がごちゃ混ぜになって訳がわからなくなる。
「もっ...、やだ、やめろっ...」
これ以上されたら、自分がどうなるかわからなくて怖い。
またあの時のように醜態を晒したくない。
「理由はなんですか?」
「え....?」
理由?
「忘れましたか?理由言ってくれないとやめないって言いましたよね?」
.....そうだった.....!...理由?怖いからやめろって?そんな事言えるわけないだろ...!くっそ...!あんな約束しなきゃよかった...!
「言わないなら続けますね」
「あ、ちょ...」
「はい、ばんざいしてください」
「え?わっ...、っん、く...っ」
言われるがままに手を上げてしまった俺の服を脱がすと、満足気に微笑みながら身体に指を這わせる。
「姫崎さん、気持ちいいですか?」
「っ、よ、くないっ...、っ...」
「....そうですか?....なら、俺もっと頑張りますね」
「な...んっ!ぁ、そこやめろっ...!」
胸の先端を爪でカリ、と引っかかれ、肩が跳ねた。
あの時程ではないにしろ、たったそれだけの事で身体が震える。
まずい。このままじゃ絶対。
「もっ、やめろって...!....ひぅっ!」
なんとか後ろを向いて乳首への愛撫をやめさせても、今度は背中の窪みをなぞるように舌が這った。
突然走った快感に、思わずシーツを手繰り寄せる。
「可愛い声....。背中も弱いんですね」
「っん、そんなとこ、舐めんなっ...!ふ...んっ」
ずるずると這うようにしてなんとかベッドの中程まで逃げても、すぐに追いつかれ、また舌が這う。時折吸い付きながら下へとおりていき、ズボンにかけられた手を咄嗟に掴んだ。
「待てっ、...もう、わかったからっ...!」
「何がわかったんですか?目を見て言ってください」
「っ、」
くそっ、と内心で悪態をつきながら、仕方なくもぞもぞと起き上がった。少し距離をとりながら起き上がるが、当然のように距離を詰めてくる。
「ち、近いっ!」
膝を抱え、少しでも遠ざけようと佐原の肩を押すが、びくともしない。
「だって、姫崎さん逃げそうなんですもん」
「っ逃げないから離れろっ」
「嫌です」
佐原から逃げていたら、逆に壁の方まで追い詰められてしまった。
「それで、何がわかったんですか?」
......言わなきゃ、駄目だよな.....。
顎を掴まれ、目を逸らしてさえもらえない状態で、言わずに納得してくれるとは思えない。
「...........ったから....」
「なんですか?」
「っ........、気持ち悪くなかったから!もういいだろ!」
腕を振り払いながら自棄になって叫ぶ。
佐原の返答も聞かず、ベッドから下りようとした腕を掴まれた。
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