年下上司の愛が重すぎる!

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33話

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「で、考えって?」

同居期間が一カ月伸びてしまったので、仕方なく今日も佐原の家へと来ている。
あれから影山はしつこく聞いてきたが、「これ以上聞くなら喧嘩売ってるとみなすぞ」と言えばすぐ静かになった。

「もう一度俺が触ってみればいいんです!」

「は?」

自信満々に言うからなにかと思えば....。なんでそうなった。お前が触りたいだけなんじゃないか?
ジト目を送ると、俺の言いたい事がわかったようで慌てて首を振る。

「姫崎さんに触りたいからってだけじゃないですよ!?」

ってなんだ。やっぱ自分が触りたいってのもあるんじゃねえか。

「姫崎さん、あの時媚薬盛られてたでしょう?だから、素面の時はどうなのかなって」

......確かに、あの時は頭がぼーっとしていて、深く考える事もできなかった。
頭がはっきりしていれば気持ち悪くなかった理由もわかるかもしれないし、そもそも感じ方も違うかもしれない。
一理ある。一理あるが....、下心が見え見えでなんかむかつく。

「......わかった」

「本当ですか!」

「ただし、やめろって言ったらすぐやめろよ」

「......わかりました。けど、ちゃんと理由言ってくださいね」

「理由?」

「はい。やめてほしい理由です」

そんなのいるか?とは思ったが、まあそれでやめるなら、と了承した。


「.....なんでわざわざお前の部屋で...」

じゃあ俺の部屋行きましょう、と強引に連れてこられた。

「え、姫崎さんの部屋の方がよかったですか?」

「そうじゃなくて!別にソファでもよかったろ」

「でもソファ狭いですし、ベッドの方が雰囲気出るじゃないですか」

いらねえだろ、雰囲気なんて。
なんだか気まずくなってきて、ベッドの淵に座る。

なんで了承なんかしてしまったんだろう。
だって、もしこれであの時と同じような感じになってしまったら、いろいろと媚薬の所為にできなくなる。もしはっきりした頭でいろいろとわかってしまったら。

めちゃくちゃ今更で、むしろそれをはっきりさせるための行為なのに、急に怖くなってきた。
ただ、撤回するのも、その恐怖に屈したようで躊躇われる。

何に怯えてんだ、俺は。
しっかりしろ、と心の中で喝を入れる。
こいつと出会うまで、自分がこんなにも弱い奴だとは思わなかった。

「姫崎さん、もしかして緊張してますか?」

「......お前は、随分慣れてるな。....初めてじゃなかったのか?」

俺とは違い、余裕のある態度に若干腹が立つ。
しかも、言い方が拗ねているような感じになってしまった事に、言ってから気づく。

「全部姫崎さんが初めてですよ!....けど、ずっとこうしたい、とかああしたい、とか妄想してきたんで....。っあ、引かないでくださいねっ?」

慌てて付け加えられたが、既に引いた後だ。
ずっとっていつからだよ....。
身体ごと引くと、逃げないようにか両腕を掴まれた。

「男なんてみんな大体同じ事考えてるんですからね!?」

そんな馬鹿な。

「....俺は考えてないぞ」

「姫崎さんは特殊なんです!」

特殊だと言われると確かにそうなのかもしれない、となぜか納得してしまった。
その間にぐっと距離が近づく。

「っ、近い.....」

「近くなきゃ触れないじゃないですか」

ガラリと変わった空気に、息を呑んだ。
待て、待ってくれ。
心の中で、そんな情けない言葉が飛び交う。

「姫崎さん、俺、本当に嬉しいんです。こうやって触れる事もですけど、ただ目を合わせて、話せて、一緒に仕事ができて。....好きです。姫崎さん」

真っ直ぐに眼を見つめられ、喉が張り付いてしまったかのように声がでない。
どんどん近づいてくる佐原の顔から背けることもできず、ぎゅっと目を瞑った。

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