年下上司の愛が重すぎる!

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32話

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真剣に考える、とは言ったものの、どうすれば答えが見つかるのか想像もつかない。
こんなことを相談できる友人などいないし、どうしたものか。

考えても埒があかないので、とりあえず気になっている事から確かめていく事にした。
まず、一番気になっているのは、他の奴に触られても気持ち悪くないかどうかだ。
本当にトラウマを克服できたのか。

とはいえ、誰彼構わず触ってもらうわけにもいかない。というかそれは俺が嫌だ。
本当はそんな検証もしたくないが、真剣に考えると言った手前、これを確認するのが一番の近道な気がする。

だが、問題は誰に触ってもらうか、だ。
想像しただけで吐きそうになる奴は却下だとすると、幽霊課のメンバーしかいない気がする。
プロに頼む事も考えたが、知らない人は少しハードルが高い。なのでそれは最終手段にする事にした。


「千葉、どこでもいいから触ってみてくれないか」

仕事の合間にそう頼んでみると、幽霊課全員の動きが一瞬止まった。

......しまった。みんながいる前で言う事じゃなかったか。

まずは服の上からでも、と軽く考えていたのがいけなかった。
だが、俺が言葉を撤回するより、みんなの反応の方が早かった。

「頭でもおかしくなったか?」

と、目の前の千葉はドン引きしており、

「姫崎さん!?なんで千葉さんに触ってもらう必要が!?」

と、佐原が怒ったような顔で詰め寄り、

「俺も触りたいです!」

と、影山が立候補し、

「私も触らせてもらえるのかな?」

と、神野さんが携帯を取り出しながら言った。

.....神野さんはとりあえず撮るのやめてもらえますかね....。

「姫崎さん!真剣に考えてくれるって言ったじゃないですか!」

佐原の怒りように、先に伝えておけばよかったと少し後悔した。

「.....だから、それを考えるために触ってもらおうと思ったんだよ...」

この間の飲み会で、俺が佐原にタメ口で喋っている事が影山以外にも知られてしまったので、もうほとんど敬語を使っていない。

佐原にはちゃんと説明するとして...、千葉が駄目となると影山か....?だが、ノリノリで立候補する影山を見ているとなぜか不安になってくる。

「ちょっと、なに面白そうなことになってんすか。俺も仲間に入れてくださいよ」

「.........いや、お前はやっぱいい」

「えー!なんでですかっ!」

そうえいば、触ってもらう事に対しての理由を考えるのを忘れていた。
もしちゃんと説明するのなら、俺のトラウマの事も話さなければいけなくなる。だが、できるだけそれは言いたくない。そもそも打ち明けられる方も迷惑だろう。

なんと説明しようか考えていると、佐原が「パトロール行ってきます!」と、強引に俺を連れ出した。


「で、あの発言はなんだったんですか」

もちろんしっかりと周りに目を光らせながら、佐原が聞いてきた。

「.....だから、お前以外の奴が触っても気持ち悪くならないかどうか確かめたかっただけだって」

「それならなんで俺に一言言ってくれなかったんですか」

「.....あれは、本当に軽い気持ちで....。服の上からでも触ってくれればあとは想像で何とかなると思ったんだよ」

「それでもし千葉さんが止まらなかったらどうするつもりですか?」

「は.....?」

何言ってんだ、こいつは。止まらなかったら?そんなのぶん殴るだけだろ。まさかまだ俺の事を弱いとでも思ってるんだろうか。

「お前、俺が千葉に負けるとでも思ってんのか?」

「そうじゃないです!」

足を止め、大きな声を出した佐原に少し注目が集まる。

「あんまり大きい声だすな」

「.....すみません。ですけど、俺が言いたいのはそうじゃなくて、そんな事確かめるためだけに、姫崎さんが嫌な思いをする必要はないって事です」

「........でも、それだと佐原が大丈夫だった理由がわからないだろ」

「..........姫崎さんって、意外とバカですよね」

「あ゛?」

なんだこいつ、喧嘩売ってんのか?
せっかく人が真剣に考えてるっていうのに。

「あー、すみません、そういう意味じゃなくて....」

他にどういう意味があるのか教えてほしい。

「とにかく、そういう事なら俺に考えがあるんで!誰にも触らせちゃ駄目ですよ!」

「なんだよ、考えって」

「帰ったら言いますから。間違ってもプロにお願いしようとか思わないでくださいね」

「え、」

なんでわかったんだ。
触ってもらう理由を作るのが面倒で、最終手段を使うしかないかと思っていたんだが。

「絶対駄目ですからね!?」

「わかったからパトロールに集中しろ」

その後、一人だけ幽霊に取り憑かれた人を発見し、神社へと送り届けて、その日のパトロールは終了した。

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