26 / 60
23話
しおりを挟む
鶴橋のように何も話してもらえないかと思いきや、意外とすんなり答えてくれた。
まず聞いたのは目的だ。
だが、以前も言った通り、俺が目的だと言う。
『あんたを穢したいって奴は意外と多いぞ?』
ニヤニヤとした顔でそう言われ、なぜか佐原が怒ったような顔で一歩前に出たので手で制した。
「他の奴らもそうなのか?」
『そ。あの人間たちは知らないけどね』
顎で示した先には佐原が伸した男が三人いる。
影山には報告したので、すぐに誰かが回収に来てくれるだろう。
「なぜ協力を?今までまとまって行動なんてしなかっただろ」
『俺も別に好き好んで一緒に行動したわけじゃないよ?ただその方が成功率上がるっていうし、面倒なマッチングは全部あいつがやってくれたしそれならいいかなぁって』
「あいつ...?」
『いっとくけど名前なんて知らないよ。知ってるのは人間の男で、顔はまあまあ綺麗だけどあんたよりは劣るってことくらいかな』
「そいつが幽霊をまとめ上げてたのか?」
『まとめ上げるなんてたいそうな事はしてないと思うよ。あんたに用のある奴ばっか集めてたし』
「俺に....?」
『そうとう執着されてるみたいだけど心当たりないの?』
心当たり.....。あるといえばあるが.....。
隣をちら、と見ると佐原は目を見開き、慌てて首を横に振った。
「俺じゃないですよ!?」
「わ、わかってるよ」
いや、俺だって本気で疑ってたわけじゃないぞ?ただ、可能性はなくはないかな、と思っただけで。
しゅんとしてしまった佐原を見ると罪悪感が湧いてくる。
「わ、悪い...。けど、俺だって本気でそう思ったわけじゃ....」
「俺は、姫崎さんに顔向けできなくなるようなことはしませんよ」
きっぱりと言われ、返答に困る。
わ、悪かったって...、ともう一度謝れば、『なにイチャついてんだよ』と男に言われた。
「は!?んなことしてないだろ!」
『えー、自覚ないの?』
自覚!?そんなもんあるわけねえだろ!してないんだから!何を言い出すんだこいつは!
「話戻すぞ!」
なにやら照れている佐原を無視して強引に話を戻す。
その後も話を聞いたが、どうやら協力、というよりは本当にお互いに利害が一致して、都合が良かっただけのようだ。
大きなコミュニティが無かったのは一安心だが、なぜこうも俺に執着するのかがわからない。
結局、興味の無い事にはとにかく無頓着で、幽霊の橋渡しのようなことをしている奴がどんな男かも、目的もはっきりしないままだ。
あまり有益な情報を得られなかったことに、焦りと苛立ちを覚える。元々、回りくどいのは嫌いだ。俺に用があるなら直接来やがれ。
最後の男も除霊し終え、後処理などでなんやかんや家に帰ったのは0時を過ぎた頃だった。
さすがに疲れたし眠い。
佐原が風呂から出るのを待つ間、瞼が閉じそうになるのを何度か堪えていると、携帯が短く振動した。
御堂先生からメールで、『渡したい物があるので今から会えませんか』とのことだった。
今から?と少し訝しむが、もしかしたら何か伝えたいこともあるのかもしれない。
だが、今は佐原が風呂に入っているので外に出る事ができない。
伝えたい事があるのかどうかも含め、外に出られない事を返信すると、すぐに『マンションまで来ているので』と返ってきた。
伝えたい事に関してのレスポンスはなかったが、もしかしたら焦っていて返信ができなかったとか?と、いうかこんな時間に出歩くなんて...。
余程緊急の用なのか、どちらにせよここまで来ているのなら一人で帰すのも危険だ。とりあえず上がってもらって、佐原が出てきたら申し訳ないが一緒に送っていくしかない。
「佐原、少し出るがすぐ戻る」
「えっ!?姫崎さん!?待ってください!一人での行動は——」
「下に行くだけだから」
風呂場から聞こえてくる静止の声を無視して部屋を出た。
エレベーターで一階に下り、警備員に挨拶をしてからマンションを出た。
だが、肝心の御堂先生が見当たらない。
下に着いたことをメールをしても、返事は来ないし、電話をしても留守電に繋がってしまう。一応留守電にもメッセージを残しておいた。
何かあったのか....?そうだとしたら一度戻って佐原を呼んだ方がいいかもしれない。...いや、その前にマンションの周りだけ見ておくか。
もしかしたら玄関ではなく、裏にいる可能性もある。
電話をかけ続けながらマンションの周りを歩き始めると、何度目かのかけ直しでようやく繋がった。
「もしもし?御堂先生?」
『........っ、は.....、ひめ、ざきさん.....』
聞こえてきた声はかなり弱々しく、何かあった事は明白だ。
「御堂先生!?今どこです!?」
『.....すみ...ません.....』
クソッ!この状況だと連れ去られてる可能性が高いか...!?
「御堂先生!電話はこのままで!動けるようならどこかに隠れられる場所がないか探してください!」
あのメールは僅か五分ほど前のものだ。もし連れ去られていたとしてもまだそこまで遠くへは行っていないだろう。
連続で喚びだすのは少々しんどいが、空からリューイに探してもらって....、
そう考えたところで、後頭部に強い衝撃が走った。
痛い、と声に出す事もできず、意識が遠ざかっていく。
しまっ———
誰に殴られたのか確認もできぬまま地面に倒れ、意識を失った。
まず聞いたのは目的だ。
だが、以前も言った通り、俺が目的だと言う。
『あんたを穢したいって奴は意外と多いぞ?』
ニヤニヤとした顔でそう言われ、なぜか佐原が怒ったような顔で一歩前に出たので手で制した。
「他の奴らもそうなのか?」
『そ。あの人間たちは知らないけどね』
顎で示した先には佐原が伸した男が三人いる。
影山には報告したので、すぐに誰かが回収に来てくれるだろう。
「なぜ協力を?今までまとまって行動なんてしなかっただろ」
『俺も別に好き好んで一緒に行動したわけじゃないよ?ただその方が成功率上がるっていうし、面倒なマッチングは全部あいつがやってくれたしそれならいいかなぁって』
「あいつ...?」
『いっとくけど名前なんて知らないよ。知ってるのは人間の男で、顔はまあまあ綺麗だけどあんたよりは劣るってことくらいかな』
「そいつが幽霊をまとめ上げてたのか?」
『まとめ上げるなんてたいそうな事はしてないと思うよ。あんたに用のある奴ばっか集めてたし』
「俺に....?」
『そうとう執着されてるみたいだけど心当たりないの?』
心当たり.....。あるといえばあるが.....。
隣をちら、と見ると佐原は目を見開き、慌てて首を横に振った。
「俺じゃないですよ!?」
「わ、わかってるよ」
いや、俺だって本気で疑ってたわけじゃないぞ?ただ、可能性はなくはないかな、と思っただけで。
しゅんとしてしまった佐原を見ると罪悪感が湧いてくる。
「わ、悪い...。けど、俺だって本気でそう思ったわけじゃ....」
「俺は、姫崎さんに顔向けできなくなるようなことはしませんよ」
きっぱりと言われ、返答に困る。
わ、悪かったって...、ともう一度謝れば、『なにイチャついてんだよ』と男に言われた。
「は!?んなことしてないだろ!」
『えー、自覚ないの?』
自覚!?そんなもんあるわけねえだろ!してないんだから!何を言い出すんだこいつは!
「話戻すぞ!」
なにやら照れている佐原を無視して強引に話を戻す。
その後も話を聞いたが、どうやら協力、というよりは本当にお互いに利害が一致して、都合が良かっただけのようだ。
大きなコミュニティが無かったのは一安心だが、なぜこうも俺に執着するのかがわからない。
結局、興味の無い事にはとにかく無頓着で、幽霊の橋渡しのようなことをしている奴がどんな男かも、目的もはっきりしないままだ。
あまり有益な情報を得られなかったことに、焦りと苛立ちを覚える。元々、回りくどいのは嫌いだ。俺に用があるなら直接来やがれ。
最後の男も除霊し終え、後処理などでなんやかんや家に帰ったのは0時を過ぎた頃だった。
さすがに疲れたし眠い。
佐原が風呂から出るのを待つ間、瞼が閉じそうになるのを何度か堪えていると、携帯が短く振動した。
御堂先生からメールで、『渡したい物があるので今から会えませんか』とのことだった。
今から?と少し訝しむが、もしかしたら何か伝えたいこともあるのかもしれない。
だが、今は佐原が風呂に入っているので外に出る事ができない。
伝えたい事があるのかどうかも含め、外に出られない事を返信すると、すぐに『マンションまで来ているので』と返ってきた。
伝えたい事に関してのレスポンスはなかったが、もしかしたら焦っていて返信ができなかったとか?と、いうかこんな時間に出歩くなんて...。
余程緊急の用なのか、どちらにせよここまで来ているのなら一人で帰すのも危険だ。とりあえず上がってもらって、佐原が出てきたら申し訳ないが一緒に送っていくしかない。
「佐原、少し出るがすぐ戻る」
「えっ!?姫崎さん!?待ってください!一人での行動は——」
「下に行くだけだから」
風呂場から聞こえてくる静止の声を無視して部屋を出た。
エレベーターで一階に下り、警備員に挨拶をしてからマンションを出た。
だが、肝心の御堂先生が見当たらない。
下に着いたことをメールをしても、返事は来ないし、電話をしても留守電に繋がってしまう。一応留守電にもメッセージを残しておいた。
何かあったのか....?そうだとしたら一度戻って佐原を呼んだ方がいいかもしれない。...いや、その前にマンションの周りだけ見ておくか。
もしかしたら玄関ではなく、裏にいる可能性もある。
電話をかけ続けながらマンションの周りを歩き始めると、何度目かのかけ直しでようやく繋がった。
「もしもし?御堂先生?」
『........っ、は.....、ひめ、ざきさん.....』
聞こえてきた声はかなり弱々しく、何かあった事は明白だ。
「御堂先生!?今どこです!?」
『.....すみ...ません.....』
クソッ!この状況だと連れ去られてる可能性が高いか...!?
「御堂先生!電話はこのままで!動けるようならどこかに隠れられる場所がないか探してください!」
あのメールは僅か五分ほど前のものだ。もし連れ去られていたとしてもまだそこまで遠くへは行っていないだろう。
連続で喚びだすのは少々しんどいが、空からリューイに探してもらって....、
そう考えたところで、後頭部に強い衝撃が走った。
痛い、と声に出す事もできず、意識が遠ざかっていく。
しまっ———
誰に殴られたのか確認もできぬまま地面に倒れ、意識を失った。
20
お気に入りに追加
147
あなたにおすすめの小説
エリート上司に完全に落とされるまで
琴音
BL
大手食品会社営業の楠木 智也(26)はある日会社の上司一ノ瀬 和樹(34)に告白されて付き合うことになった。
彼は会社ではよくわかんない、掴みどころのない不思議な人だった。スペックは申し分なく有能。いつもニコニコしててチームの空気はいい。俺はそんな彼が分からなくて距離を置いていたんだ。まあ、俺は問題児と会社では思われてるから、変にみんなと仲良くなりたいとも思ってはいなかった。その事情は一ノ瀬は知っている。なのに告白してくるとはいい度胸だと思う。
そんな彼と俺は上手くやれるのか不安の中スタート。俺は彼との付き合いの中で苦悩し、愛されて溺れていったんだ。
社会人同士の年の差カップルのお話です。智也は優柔不断で行き当たりばったり。自分の心すらよくわかってない。そんな智也を和樹は溺愛する。自分の男の本能をくすぐる智也が愛しくて堪らなくて、自分を知って欲しいが先行し過ぎていた。結果智也が不安に思っていることを見落とし、智也去ってしまう結果に。この後和樹は智也を取り戻せるのか。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/bl.png?id=5317a656ee4aa7159975)
美しき父親の誘惑に、今宵も息子は抗えない
すいかちゃん
BL
大学生の数馬には、人には言えない秘密があった。それは、実の父親から身体の関係を強いられている事だ。次第に心まで父親に取り込まれそうになった数馬は、彼女を作り父親との関係にピリオドを打とうとする。だが、父の誘惑は止まる事はなかった。
実の親子による禁断の関係です。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/bl.png?id=5317a656ee4aa7159975)
イケメンに惚れられた俺の話
モブです(病み期)
BL
歌うことが好きな俺三嶋裕人(みしまゆうと)は、匿名動画投稿サイトでユートとして活躍していた。
こんな俺を芸能事務所のお偉いさんがみつけてくれて俺はさらに活動の幅がひろがった。
そんなある日、最近人気の歌い手である大斗(だいと)とユニットを組んでみないかと社長に言われる。
どんなやつかと思い、会ってみると……
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/bl.png?id=5317a656ee4aa7159975)
悩める文官のひとりごと
きりか
BL
幼い頃から憧れていた騎士団に入りたくても、小柄でひ弱なリュカ・アルマンは、学校を卒業と同時に、文官として騎士団に入団する。方向音痴なリュカは、マルーン副団長の部屋と間違え、イザーク団長の部屋に入り込む。
そこでは、惚れ薬を口にした団長がいて…。
エチシーンが書けなくて、朝チュンとなりました。
ムーンライト様にも掲載しております。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/bl.png?id=5317a656ee4aa7159975)
主人公のライバルポジにいるようなので、主人公のカッコ可愛さを特等席で愛でたいと思います。
小鷹けい
BL
以前、なろうサイトさまに途中まであげて、結局書きかけのまま放置していたものになります(アカウントごと削除済み)タイトルさえもうろ覚え。
そのうち続きを書くぞ、の意気込みついでに数話分投稿させていただきます。
先輩×後輩
攻略キャラ×当て馬キャラ
総受けではありません。
嫌われ→からの溺愛。こちらも面倒くさい拗らせ攻めです。
ある日、目が覚めたら大好きだったBLゲームの当て馬キャラになっていた。死んだ覚えはないが、そのキャラクターとして生きてきた期間の記憶もある。
だけど、ここでひとつ問題が……。『おれ』の推し、『僕』が今まで嫌がらせし続けてきた、このゲームの主人公キャラなんだよね……。
え、イジめなきゃダメなの??死ぬほど嫌なんだけど。絶対嫌でしょ……。
でも、主人公が攻略キャラとBLしてるところはなんとしても見たい!!ひっそりと。なんなら近くで見たい!!
……って、なったライバルポジとして生きることになった『おれ(僕)』が、主人公と仲良くしつつ、攻略キャラを巻き込んでひっそり推し活する……みたいな話です。
本来なら当て馬キャラとして冷たくあしらわれ、手酷くフラれるはずの『ハルカ先輩』から、バグなのかなんなのか徐々に距離を詰めてこられて戸惑いまくる当て馬の話。
こちらは、ゆるゆる不定期更新になります。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/bl.png?id=5317a656ee4aa7159975)
いっぱい命じて〜無自覚SubはヤンキーDomに甘えたい〜
きよひ
BL
無愛想な高一Domヤンキー×Subの自覚がない高三サッカー部員
Normalの諏訪大輝は近頃、謎の体調不良に悩まされていた。
そんな折に出会った金髪の一年生、甘井呂翔。
初めて会った瞬間から甘井呂に惹かれるものがあった諏訪は、Domである彼がPlayする様子を覗き見てしまう。
甘井呂に優しく支配されるSubに自分を重ねて胸を熱くしたことに戸惑う諏訪だが……。
第二性に振り回されながらも、互いだけを求め合うようになる青春の物語。
※現代ベースのDom/Subユニバースの世界観(独自解釈・オリジナル要素あり)
※不良の喧嘩描写、イジメ描写有り
初日は5話更新、翌日からは2話ずつ更新の予定です。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/bl.png?id=5317a656ee4aa7159975)
【完結】ぎゅって抱っこして
かずえ
BL
幼児教育学科の短大に通う村瀬一太。訳あって普通の高校に通えなかったため、働いて貯めたお金で二年間だけでもと大学に入学してみたが、学費と生活費を稼ぎつつ学校に通うのは、考えていたよりも厳しい……。
でも、頼れる者は誰もいない。
自分で頑張らなきゃ。
本気なら何でもできるはず。
でも、ある日、金持ちの坊っちゃんと心の中で呼んでいた松島晃に苦手なピアノの課題で助けてもらってから、どうにも自分の心がコントロールできなくなって……。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる