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閑話:佐原視点
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御堂先生が姫崎さんに好意を抱いているのは、初めてお会いした時からわかっていた。
姫崎さんは気づいていないようだったけど。好意なんて今までたくさん向けられていただろうに。それとも、気づかないフリでもしているんだろうか。
どちらにせよ、気づかないならその方がいい。
俺のだけ知っていてくれればそれで。
だから、御堂先生には正直あまり会ってほしくない。
けど、仕事に対する姿勢は本当に尊敬しているから、すぐに向かうと決めたときは、かっこいい、と思ってしまうんだ。
それなのに、俺の腹の虫が空気を読まなかったせいでご自宅にお邪魔することになってしまった。
姫崎さんが誰かの作った料理を食べてるところなんて見たくなかったのに。あ、でもお酒を美味しそうに飲んでる姫崎さんはめちゃくちゃかわいかった。
申し訳なさそうにトイレへ向かう姿も、俺を気遣ってくれているのがわかって嬉しい。
「チッ.....、ぽっと出が.....」
ん?聞き間違いか?今御堂先生の方から聞こえてきたような....。
さっきまで話していた声色とは全然違ったので空耳かとも思ったのだが、振り返った御堂先生の顔は全く笑っていなかった。
「接点ないなかどんだけ時間かけてここまで仲良くなったと思ってんだ」
.....どうやら、聞き間違いや空耳ではなかったらしい。今の言葉は、間違いなく御堂先生から発せられていた。
「....どうしたんですか?御堂先生。もしかして酔ってます...?」
「あんなんで酔うわけねえだろ」
こっちが本性か.....。
他人の言葉遣いにとやかく言うつもりはないが、すごい変わりようだ。声だけ聞いてたら誰かわからないんじゃないだろうか。
「...同居は、姫崎さんを守る上で必要な事です」
「あ?んな建前どうだっていいんだよ。警部さんだって楽しんでんだろ?」
たしかに、それは否定できない。姫崎さんが家にいる事に浮かれているし、手料理を食べれるなんて思いもしなかった。
「急に仲良くなりやがって...。まさか付き合ってるとか言わねえよなぁ?」
「.....付き合ってませんよ。それにしても、御堂先生がそんな言葉遣いをなさるとは...皆さんご存知なんですか?」
「関係ねえだろ」
と、いうことは知らないっぽいな...。それだけ俺が敵視されてるってことか?
「んなことより、俺も同居できるように言ってくれよ。あんた一応偉いんだろ?」
「......嫌です」
警部としてではなく、姫崎さんを好きな一人の男として拒否した。巻き込む可能性があるから、とも言えたのにそう言わなかったのは、単なる意地だ。
「無理じゃなく嫌、ねぇ...。あんただってどうせにわかだろ。こっちは姫崎さんが警察入った時からなんだよ。少しは遠慮しろ」
「時間で言うなら俺は子供の頃からです」
「はぁ?なにそれ。冗談でも笑えねえな」
「冗談ではないですから」
「だとしたら余計キモいわ」
「別にあなたになんと思われてもいいです。姫崎さんは引かずに聞いてくれましたから」
「チッ...。仲良しアピールしてくんじゃねえよ、イラつくなぁ。ってかあんたゲイなの?ノンケみたいなツラして。どうせ女も抱けるんだろ?」
「なっ....!」
あけすけな言葉に、思わず絶句する。
たしかに、俺は姫崎さんしか好きになった事がないから、自分がどちらの性別が好きなのかよくわかっていない。でも、それってそんなに重要だろうか?
だって、もし姫崎さんが女性でも何も変わらない。俺は"姫崎さん"が好きだから性別など二の次だ。
「なにその反応。もしかして童貞?」
「....さっきからなんなんですか。そんな事御堂先生に関係ないですよね?」
「あるよ。女も抱けるならわざわざ男に執着する必要ないだろ。それに童貞なら姫崎さんを満足させることもできないだろうしさっさと諦めろ」
「俺は男だからとか女だからとかじゃなくて、姫崎さんが好きなんです!諦めるとか絶対にないですから!それに姫崎さんは——」
言いかけてはっと口を噤んだ。
姫崎さんがセックスに対してトラウマがあることは知られたくないようだったし、人のプライベートを勝手に話すのはよくないだろう。ましてやデリケートな問題だ。
「なんだよ。そうやって自分は姫崎さんのことよく知ってるって言いたいのか?」
「ち、違——」
「言っとくけど、俺だって譲る気なんてさらさらねーから」
言い返そうとした時、ドアががちゃりと音を立てて開き、姫崎さんが戻ってきた。
「どうかしましたか...?」
「いえ!なにも!それよりも姫崎さん、私も同居させていただきたいのですが!」
一瞬で猫をかぶる様が、単純にすごいと思った。自分ならあんな器用にできない。
最近気づいたのだが、姫崎さんは仕事モードになると愛想が格段に良くなる。警察のイメージを悪くしないためか、その方が物事が円滑に進むからなのか、理由は知らない。
そして、圧倒的に押しに弱くなる。嫌な事でも、やんわりと断ろうとするからだ。
同じ課の人にはすぐに手や足がでるのに、今は近寄られても困ったような顔をして後ずさるだけ。
御堂先生の本性を知った今、遠慮はいらない。
俺が姫崎さんを守らなくては!
姫崎さんは気づいていないようだったけど。好意なんて今までたくさん向けられていただろうに。それとも、気づかないフリでもしているんだろうか。
どちらにせよ、気づかないならその方がいい。
俺のだけ知っていてくれればそれで。
だから、御堂先生には正直あまり会ってほしくない。
けど、仕事に対する姿勢は本当に尊敬しているから、すぐに向かうと決めたときは、かっこいい、と思ってしまうんだ。
それなのに、俺の腹の虫が空気を読まなかったせいでご自宅にお邪魔することになってしまった。
姫崎さんが誰かの作った料理を食べてるところなんて見たくなかったのに。あ、でもお酒を美味しそうに飲んでる姫崎さんはめちゃくちゃかわいかった。
申し訳なさそうにトイレへ向かう姿も、俺を気遣ってくれているのがわかって嬉しい。
「チッ.....、ぽっと出が.....」
ん?聞き間違いか?今御堂先生の方から聞こえてきたような....。
さっきまで話していた声色とは全然違ったので空耳かとも思ったのだが、振り返った御堂先生の顔は全く笑っていなかった。
「接点ないなかどんだけ時間かけてここまで仲良くなったと思ってんだ」
.....どうやら、聞き間違いや空耳ではなかったらしい。今の言葉は、間違いなく御堂先生から発せられていた。
「....どうしたんですか?御堂先生。もしかして酔ってます...?」
「あんなんで酔うわけねえだろ」
こっちが本性か.....。
他人の言葉遣いにとやかく言うつもりはないが、すごい変わりようだ。声だけ聞いてたら誰かわからないんじゃないだろうか。
「...同居は、姫崎さんを守る上で必要な事です」
「あ?んな建前どうだっていいんだよ。警部さんだって楽しんでんだろ?」
たしかに、それは否定できない。姫崎さんが家にいる事に浮かれているし、手料理を食べれるなんて思いもしなかった。
「急に仲良くなりやがって...。まさか付き合ってるとか言わねえよなぁ?」
「.....付き合ってませんよ。それにしても、御堂先生がそんな言葉遣いをなさるとは...皆さんご存知なんですか?」
「関係ねえだろ」
と、いうことは知らないっぽいな...。それだけ俺が敵視されてるってことか?
「んなことより、俺も同居できるように言ってくれよ。あんた一応偉いんだろ?」
「......嫌です」
警部としてではなく、姫崎さんを好きな一人の男として拒否した。巻き込む可能性があるから、とも言えたのにそう言わなかったのは、単なる意地だ。
「無理じゃなく嫌、ねぇ...。あんただってどうせにわかだろ。こっちは姫崎さんが警察入った時からなんだよ。少しは遠慮しろ」
「時間で言うなら俺は子供の頃からです」
「はぁ?なにそれ。冗談でも笑えねえな」
「冗談ではないですから」
「だとしたら余計キモいわ」
「別にあなたになんと思われてもいいです。姫崎さんは引かずに聞いてくれましたから」
「チッ...。仲良しアピールしてくんじゃねえよ、イラつくなぁ。ってかあんたゲイなの?ノンケみたいなツラして。どうせ女も抱けるんだろ?」
「なっ....!」
あけすけな言葉に、思わず絶句する。
たしかに、俺は姫崎さんしか好きになった事がないから、自分がどちらの性別が好きなのかよくわかっていない。でも、それってそんなに重要だろうか?
だって、もし姫崎さんが女性でも何も変わらない。俺は"姫崎さん"が好きだから性別など二の次だ。
「なにその反応。もしかして童貞?」
「....さっきからなんなんですか。そんな事御堂先生に関係ないですよね?」
「あるよ。女も抱けるならわざわざ男に執着する必要ないだろ。それに童貞なら姫崎さんを満足させることもできないだろうしさっさと諦めろ」
「俺は男だからとか女だからとかじゃなくて、姫崎さんが好きなんです!諦めるとか絶対にないですから!それに姫崎さんは——」
言いかけてはっと口を噤んだ。
姫崎さんがセックスに対してトラウマがあることは知られたくないようだったし、人のプライベートを勝手に話すのはよくないだろう。ましてやデリケートな問題だ。
「なんだよ。そうやって自分は姫崎さんのことよく知ってるって言いたいのか?」
「ち、違——」
「言っとくけど、俺だって譲る気なんてさらさらねーから」
言い返そうとした時、ドアががちゃりと音を立てて開き、姫崎さんが戻ってきた。
「どうかしましたか...?」
「いえ!なにも!それよりも姫崎さん、私も同居させていただきたいのですが!」
一瞬で猫をかぶる様が、単純にすごいと思った。自分ならあんな器用にできない。
最近気づいたのだが、姫崎さんは仕事モードになると愛想が格段に良くなる。警察のイメージを悪くしないためか、その方が物事が円滑に進むからなのか、理由は知らない。
そして、圧倒的に押しに弱くなる。嫌な事でも、やんわりと断ろうとするからだ。
同じ課の人にはすぐに手や足がでるのに、今は近寄られても困ったような顔をして後ずさるだけ。
御堂先生の本性を知った今、遠慮はいらない。
俺が姫崎さんを守らなくては!
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