21 / 60
19話
しおりを挟む
あれから、佐原がやたらぐいぐいくるようになった。
あからさまな好意を向けてくるのは前からだったが、それに加えて距離がやたら近い。
職場ではいつも通りだが、家に帰ると途端に距離感がバグったのかと思う程で、近いと肩がぶつかるくらい近くにいる。
「お前、近くね?」
夕食の支度をしている最中、さすがに無視できなくなってきてそう言うと、佐原はにっこりと笑った。
「そうですか?」
お前....、この状況でシラを切るつもりか?
「あきらかに近いだろ!今!現在も!」
「俺、頑張ってみようと思って」
「は?何を?」
今それ関係あるか?っていうか遠回しに無視された?
「もう遠慮しない事にしました」
はぁ?言っとくけど、それも答えになってないからな?んでやっぱり無視されてんな。いい度胸だ。
「俺が聞いてんのはこの距離の——」
「どのくらい近づいても許されるか試してたんです」
食い気味に言われ、手が頬を滑る。
真剣に見据える目を真正面から見てしまい、心臓がまた暴れだす。
頬にあった手が更に首筋へと下りていき、その手を掴んだ。
「いっ!痛っ!姫崎さんっ、痛いですっ...!」
「当たり前だろ、痛くしてんだから」
掴んだ手を反対側に思いっきり捻って引き剥がす。
「うぅ....、酷いです、姫崎さん」
「調子に乗ったお前が悪い」
再び夕食作りに戻ろうとした時、携帯が鳴った。
平静を装ってはいたが、内心はまだ心臓がバクバクと早鐘を打っていたのでこのタイミングでの電話はありがたい。
画面には、登録されていない番号が表示されていた。
「もしもし」
『あ、姫崎さんですか?遅くにすみません。御堂です』
「御堂先生?」
そういえば番号を渡されていたが、いろいろあって登録するのを忘れていた。
「何かありましたか?」
『あの....、仕事が終わって、今帰宅途中なのですが....、誰かに、つけられているような気がして....』
「!今どこです?」
『家の近くなのですが....』
「家にはまだ帰らないでください。近くにコンビニなどはありますか?」
『はい』
「ではそちらで待っていてください。すぐに向かいます」
『えっ、でも...、気のせいかもしれませんし...』
「人影は見ていないんですね?」
『はい...』
「わかりました。ですが心配なのでご自宅まで送らせてください」
『............』
「御堂先生?大丈夫ですか?」
『あ、はい。大丈夫です』
「よかった。電話を切ったら位置情報を送ってください」
『.....わかりました。それでは、お言葉に甘えて...。ありがとうございます』
「いえ。何かあればすぐ連絡ください」
『わかりました』
電話を切ると、佐原が俺の分までコートを持ってきてくれていた。
「御堂先生が誰かにつれられている可能性がある。悪いが付き合ってくれ」
「もちろんです」
嬉しそうに頷く佐原にお礼を言ってコートを受け取り、御堂先生の元へと急いだ。
あからさまな好意を向けてくるのは前からだったが、それに加えて距離がやたら近い。
職場ではいつも通りだが、家に帰ると途端に距離感がバグったのかと思う程で、近いと肩がぶつかるくらい近くにいる。
「お前、近くね?」
夕食の支度をしている最中、さすがに無視できなくなってきてそう言うと、佐原はにっこりと笑った。
「そうですか?」
お前....、この状況でシラを切るつもりか?
「あきらかに近いだろ!今!現在も!」
「俺、頑張ってみようと思って」
「は?何を?」
今それ関係あるか?っていうか遠回しに無視された?
「もう遠慮しない事にしました」
はぁ?言っとくけど、それも答えになってないからな?んでやっぱり無視されてんな。いい度胸だ。
「俺が聞いてんのはこの距離の——」
「どのくらい近づいても許されるか試してたんです」
食い気味に言われ、手が頬を滑る。
真剣に見据える目を真正面から見てしまい、心臓がまた暴れだす。
頬にあった手が更に首筋へと下りていき、その手を掴んだ。
「いっ!痛っ!姫崎さんっ、痛いですっ...!」
「当たり前だろ、痛くしてんだから」
掴んだ手を反対側に思いっきり捻って引き剥がす。
「うぅ....、酷いです、姫崎さん」
「調子に乗ったお前が悪い」
再び夕食作りに戻ろうとした時、携帯が鳴った。
平静を装ってはいたが、内心はまだ心臓がバクバクと早鐘を打っていたのでこのタイミングでの電話はありがたい。
画面には、登録されていない番号が表示されていた。
「もしもし」
『あ、姫崎さんですか?遅くにすみません。御堂です』
「御堂先生?」
そういえば番号を渡されていたが、いろいろあって登録するのを忘れていた。
「何かありましたか?」
『あの....、仕事が終わって、今帰宅途中なのですが....、誰かに、つけられているような気がして....』
「!今どこです?」
『家の近くなのですが....』
「家にはまだ帰らないでください。近くにコンビニなどはありますか?」
『はい』
「ではそちらで待っていてください。すぐに向かいます」
『えっ、でも...、気のせいかもしれませんし...』
「人影は見ていないんですね?」
『はい...』
「わかりました。ですが心配なのでご自宅まで送らせてください」
『............』
「御堂先生?大丈夫ですか?」
『あ、はい。大丈夫です』
「よかった。電話を切ったら位置情報を送ってください」
『.....わかりました。それでは、お言葉に甘えて...。ありがとうございます』
「いえ。何かあればすぐ連絡ください」
『わかりました』
電話を切ると、佐原が俺の分までコートを持ってきてくれていた。
「御堂先生が誰かにつれられている可能性がある。悪いが付き合ってくれ」
「もちろんです」
嬉しそうに頷く佐原にお礼を言ってコートを受け取り、御堂先生の元へと急いだ。
21
お気に入りに追加
147
あなたにおすすめの小説
悩める文官のひとりごと
きりか
BL
幼い頃から憧れていた騎士団に入りたくても、小柄でひ弱なリュカ・アルマンは、学校を卒業と同時に、文官として騎士団に入団する。方向音痴なリュカは、マルーン副団長の部屋と間違え、イザーク団長の部屋に入り込む。
そこでは、惚れ薬を口にした団長がいて…。
エチシーンが書けなくて、朝チュンとなりました。
ムーンライト様にも掲載しております。
エリート上司に完全に落とされるまで
琴音
BL
大手食品会社営業の楠木 智也(26)はある日会社の上司一ノ瀬 和樹(34)に告白されて付き合うことになった。
彼は会社ではよくわかんない、掴みどころのない不思議な人だった。スペックは申し分なく有能。いつもニコニコしててチームの空気はいい。俺はそんな彼が分からなくて距離を置いていたんだ。まあ、俺は問題児と会社では思われてるから、変にみんなと仲良くなりたいとも思ってはいなかった。その事情は一ノ瀬は知っている。なのに告白してくるとはいい度胸だと思う。
そんな彼と俺は上手くやれるのか不安の中スタート。俺は彼との付き合いの中で苦悩し、愛されて溺れていったんだ。
社会人同士の年の差カップルのお話です。智也は優柔不断で行き当たりばったり。自分の心すらよくわかってない。そんな智也を和樹は溺愛する。自分の男の本能をくすぐる智也が愛しくて堪らなくて、自分を知って欲しいが先行し過ぎていた。結果智也が不安に思っていることを見落とし、智也去ってしまう結果に。この後和樹は智也を取り戻せるのか。
Take On Me
マン太
BL
親父の借金を返済するため、ヤクザの若頭、岳(たける)の元でハウスキーパーとして働く事になった大和(やまと)。
初めは乗り気でなかったが、持ち前の前向きな性格により、次第に力を発揮していく。
岳とも次第に打ち解ける様になり…。
軽いノリのお話しを目指しています。
※BLに分類していますが軽めです。
※他サイトへも掲載しています。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/bl.png?id=5317a656ee4aa7159975)
フローブルー
とぎクロム
BL
——好きだなんて、一生、言えないままだと思ってたから…。
高二の夏。ある出来事をきっかけに、フェロモン発達障害と診断された雨笠 紺(あまがさ こん)は、自分には一生、パートナーも、子供も望めないのだと絶望するも、その後も前向きであろうと、日々を重ね、無事大学を出て、就職を果たす。ところが、そんな新社会人になった紺の前に、高校の同級生、日浦 竜慈(ひうら りゅうじ)が現れ、紺に自分の息子、青磁(せいじ)を預け(押し付け)ていく。——これは、始まり。ひとりと、ひとりの人間が、ゆっくりと、激しく、家族になっていくための…。
秘花~王太子の秘密と宿命の皇女~
めぐみ
BL
☆俺はお前を何度も抱き、俺なしではいられぬ淫らな身体にする。宿命という名の数奇な運命に翻弄される王子達☆
―俺はそなたを玩具だと思ったことはなかった。ただ、そなたの身体は俺のものだ。俺はそなたを何度でも抱き、俺なしではいられないような淫らな身体にする。抱き潰すくらいに抱けば、そなたもあの宦官のことなど思い出しもしなくなる。―
モンゴル大帝国の皇帝を祖父に持ちモンゴル帝国直系の皇女を生母として生まれた彼は、生まれながらの高麗の王太子だった。
だが、そんな王太子の運命を激変させる出来事が起こった。
そう、あの「秘密」が表に出るまでは。
お酒に酔って、うっかり幼馴染に告白したら
夏芽玉
BL
タイトルそのまんまのお話です。
テーマは『二行で結合』。三行目からずっとインしてます。
Twitterのお題で『お酒に酔ってうっかり告白しちゃった片想いくんの小説を書いて下さい』と出たので、勢いで書きました。
執着攻め(19大学生)×鈍感受け(20大学生)
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/bl.png?id=5317a656ee4aa7159975)
ぜんぶのませて
はち
BL
Ωの大学生、吉井が帰宅途中に出会ったのは、体調の悪そうなαの羽鳥だった。羽鳥を何とか家に送った吉井だったが、羽鳥にはある秘密があった。
何でも許せる方向け。
攻は母乳が出るαです。
母乳が出るα
羽鳥保(はとりたもつ)
29歳
会社員
しっかり者Ω
吉井誉(よしいほまれ)
22歳
大学生
pixivにも掲載中
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/bl.png?id=5317a656ee4aa7159975)
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる