年下上司の愛が重すぎる!

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19話

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あれから、佐原がやたらぐいぐいくるようになった。

あからさまな好意を向けてくるのは前からだったが、それに加えて距離がやたら近い。
職場ではいつも通りだが、家に帰ると途端に距離感がバグったのかと思う程で、近いと肩がぶつかるくらい近くにいる。

「お前、近くね?」

夕食の支度をしている最中、さすがに無視できなくなってきてそう言うと、佐原はにっこりと笑った。

「そうですか?」

お前....、この状況でシラを切るつもりか?

「あきらかに近いだろ!今!現在も!」

「俺、頑張ってみようと思って」

「は?何を?」

今それ関係あるか?っていうか遠回しに無視された?

「もう遠慮しない事にしました」

はぁ?言っとくけど、それも答えになってないからな?んでやっぱり無視されてんな。いい度胸だ。

「俺が聞いてんのはこの距離の——」

「どのくらい近づいても許されるか試してたんです」

食い気味に言われ、手が頬を滑る。
真剣に見据える目を真正面から見てしまい、心臓がまた暴れだす。
頬にあった手が更に首筋へと下りていき、その手を掴んだ。

「いっ!痛っ!姫崎さんっ、痛いですっ...!」

「当たり前だろ、痛くしてんだから」

掴んだ手を反対側に思いっきり捻って引き剥がす。

「うぅ....、酷いです、姫崎さん」

「調子に乗ったお前が悪い」

再び夕食作りに戻ろうとした時、携帯が鳴った。
平静を装ってはいたが、内心はまだ心臓がバクバクと早鐘を打っていたのでこのタイミングでの電話はありがたい。
画面には、登録されていない番号が表示されていた。

「もしもし」

『あ、姫崎さんですか?遅くにすみません。御堂です』

「御堂先生?」

そういえば番号を渡されていたが、いろいろあって登録するのを忘れていた。

「何かありましたか?」

『あの....、仕事が終わって、今帰宅途中なのですが....、誰かに、つけられているような気がして....』

「!今どこです?」

『家の近くなのですが....』

「家にはまだ帰らないでください。近くにコンビニなどはありますか?」

『はい』

「ではそちらで待っていてください。すぐに向かいます」

『えっ、でも...、気のせいかもしれませんし...』

「人影は見ていないんですね?」

『はい...』

「わかりました。ですが心配なのでご自宅まで送らせてください」

『............』

「御堂先生?大丈夫ですか?」

『あ、はい。大丈夫です』

「よかった。電話を切ったら位置情報を送ってください」

『.....わかりました。それでは、お言葉に甘えて...。ありがとうございます』

「いえ。何かあればすぐ連絡ください」

『わかりました』

電話を切ると、佐原が俺の分までコートを持ってきてくれていた。

「御堂先生が誰かにつれられている可能性がある。悪いが付き合ってくれ」

「もちろんです」

嬉しそうに頷く佐原にお礼を言ってコートを受け取り、御堂先生の元へと急いだ。




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