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第16話 Can you celebrate?②
しおりを挟む「では私は教会本部に戻りますので、これで……ああ、こちらで新郎新婦の衣装を貸し出してくれる場所を当たってみます。フランチェスカ、あとは頼みましたよ?」
では、と礼拝堂を出るマザーに本田と鈴木の若き夫婦が頭を下げる。
一方、フランチェスカはまだひりひり痛む頭をさすりながら「はーい」と返事し、マザーが出るとべーっと舌を出す。
するとマザーが扉から顔を出したので慌てて舌を引っ込める。
「しっかりやるのですよ? フランチェスカ」と釘を刺す。
「そ、そりゃもう、万事お任せを!」
「よろしい」とぱたんと扉が閉まり、ふぅっとひと息つく。
そしてくるりとふたりに向き直って、布教用もとい営業スマイルでにこりと微笑む。
「あらためて自己紹介しますね。私はフランチェスカ・ザビエルです。スペインから来ました」
「こちらこそよろしくお願いします。日本語お上手ですね」
七々子が興味津々でフランチェスカを見る。
「ほぼ独学ですけどね。さ、まずは段取りを説明しましょうか」
当日の式の大まかな流れと要所要所でポイントを押さえながら説明した。
「これが大まかな流れです。後日実際にタキシードとウェディングドレスを着てリハーサルしてみましょう」
「ありがとうございます!」
「本当になにからなにまで……」
いえいえとフランチェスカが手を振り、「これもシスターの務めですから」とふたりを見送る。
扉を出ると本田と七々子のふたりはすぐそばに停めてあるバイクへと向かう。
V4エンジンが特徴のツーリングバイクだ。
「カッコいいバイクですね!」
フランチェスカが目を見張る。
「色々カスタマイズしてあるんです。自信作なんですよ」
本田がヘルメットを被りながら自慢気に言う。
「だから結婚式なかなか挙げられないのよ」と七々子から突っ込まれて三人が笑う。
「鈴木さんもバイクに乗られるんですか?」
「もちろん。といっても私のはこれより小さい250CCですけどね。今日は彼のバイクに乗せてもらってるんです」
七々子もヘルメットを装着して本田の後ろに座る。
「今日は本当にありがとうございました!」
センタースタンドを外してエンジンをかけ、アクセルをひねると、ふたりを乗せたバイクはそのままマフラーから排気音を響かせて遠ざかっていった。
「カッコいいな。あたしもいつか乗ってみたいな……」
くるりと教会へ戻ろうとしたとき、前方の数メートル先のT字路に赤いスポーツカーが停まっていることに気づく。
この町ではあまり見かけない高級車だ。その車の運転席の窓から若い男がこちらを睨んでいるように見えた。
すぐに窓を閉めるとエンジン音を響かせてこの場を去った。
「……?」
ヘンな男ねと頭を振って教会へと歩く。
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