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第四章

第87話 繋がる身体 -後編 -※

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 あまりの衝撃に息が止まり、痛みに背筋が仰け反った。
 チカチカと眼裡に星が散り、見開いた目からは涙が溢れた。


「……っく…は、っ…あ、あ、ぁぁ……」


 痛い、苦しい、痛い……

 まともに息ができなくて、空気を取り込もうとはくはくと口を動かしたけれど上手く吸えなくて、暫く痛みに耐えるように身体を強ばらせて耐え忍ぶ。
 それでも和らがない痛みを少しでも追いやろうと、私は渉にしがみついて声にならない声を上げると、渉は一旦動きを止め、私の額にキスを落とす。


「は……っ、くぅ……」

「ご、め……まだ…まだ、全部挿入、って…ない、か、ら……も、少し……」


 ごめん、と渉は呟くと、はっはっと苦しそうに荒い息を漏らしながら再び腰にグッと押し付け、ゆっくりと腰を前後に動かし、少しずつ腰を進めていった。

 そして、ビリッとした刺激と共にお腹の奥に渉自身がコツンと当たるとピタリと動きを止めて、切なそうにふぅと長く息を吐いた。


「っは……やっと、全部……挿入っ、た……っく……この、大丈夫、か……?」


 渉は甘い吐息を漏らしてそう言うと、ぽたぽたと汗を垂らして、私と同じく苦しそうに浅い呼吸を繰り返しながら、私を気遣うように声を掛け、するりとお腹を撫でた。

 渉の熱くて硬いものがなかを埋め尽くし、それを外側から撫でられるだけで、甘い痺れが広がり、ズキッと痛みが走る。

 大丈夫かどうか……そんなの決まってる。
 全然大丈夫ではない。
 正直、こんなに痛いなんて想像していなかったし、何度か「もう無理!抜いて!」と口に出してしまいそうな程辛かった。

 だけど、その言葉は最後まで私の口から出る事はなかった。

 だって、渉から齎されているこの痛みは、私が渉の…渉だけのものになったという確かな証なのだから。

 これで、正真正銘、心も身体も渉とひとつになれたのだと思うと、身が引き裂かれる程の痛みですら、今の私には愛おしくて仕方がなくて、ジンジンと痛む接合部からじんわりと渉の熱が伝わると、幸せな気持ちが湧いてきて涙が溢れた。


「痛かった、よな……ごめんな……」


 ゆっくり、ゆっくりと息を吐きながら、心配そうに覗き込む渉の問いかけにコクコクと首を縦に振って頷く。


「痛い、よ…だけど…… これは渉とひとつになれた痛みだから……痛いけど、今、凄く幸せ……」


 何かを辛そうに耐えている渉に、私は精一杯の笑顔を向けると、渉は顔を歪めて泣きそうな顔で笑った。そして、くしゃくしゃっと私の頭を優しく撫でた。


「香乃果、ありがとう。俺も、すっげぇ幸せ……今まで生きてきた中でいちばん幸せ。」


 そう言って、渉は心底幸せそうに破顔すると、汗でしっとりと貼り付いた私の前髪を後ろに撫で付け、そのまま額をコツンと合わせた。
 目を開けると、ほんのり頬を赤く染め涙を滲ませた渉が私を見つめていた。お互い涙で潤んだ視線を絡めると、ふふ、と笑み崩れ、そして、どちらからともなく、唇を重ねる。
 徐々に深くなるキスに、お腹の奥がきゅんとして無意識に私のなかが渉を締め付けると、渉の顔が真っ赤になる。


「この、それ、ヤバい。」

「え?」


 不意に言われた言葉の意味がわからず、思わず聞き返すと、渉は私の手を取り指を絡めてギュッと握り、心底嬉しそうに顔を綻ばせて笑み崩れた。


「きゅって締めるやつ……こののナカに俺が居るって実感する……はぁ…もう死んでもいい。それくらい幸せ。」

「渉……」


 眉根を寄せて幸せだと言わんばかりの顔でそう言う渉の表情に、愛おしさが溢れて、私は握られた手を私からもギュッと握り返す。
 渉は幸せを噛み締めるように深く息を吐くと、私を愛おしそうに見つめた。


「この、ごめん……まだ、痛む?」

「……少し」


 あれから暫く経って、だいぶ痛みは治まってきていたものの、やはりズキズキとした痛みは完全には引いていなかった。


「そう、だよね……ごめん。俺は香乃果と繋がれただけで満足だから、辛いなら……今はここまでにしておく?」


 ホントは嫌だけど……渉は申し訳なさそうにそう言うと、眉尻を下げた。
 その言葉に渉が私の事を大切に思ってくれていて、気遣ってくれている事が伝わってきて、心の奥がほっこり暖かくなるのを感じた。

 私はこういった行為自体初めての経験だった。
 渉も初めてだといっていたけれど、随分と慣れていたから、挿入は初めてでも、直前までは経験があるのだろうが……まぁ、真偽のほどはわからないけれど。

 そう思ったら、ツキンと胸の奥が痛んだような気がしたようなしないような……

 とにかく、多少経験値のある渉に、初っ端から結構ハードな愛され方をしてたので、疲労はすごかった。渉と繋がっている所は痛いし、あちこち筋肉痛のような痛みもあったので、正直渉の申し出は有難かった。

 だけど……このまま終われる?

 自問自答してみると、答えはすぐに出た。

 やめたくない。痛いし辛いけれど、その痛みの中に、甘い疼きがあるのも自覚していたし、何よりも、私は渉とちゃんと繋がりたかった。

 だから私は、渉の目をみて気持ちを伝えた。


「…大丈夫。このまま……して?」


 私の言葉を聞くと、途端に渉の目の色が熱と欲を孕んだ色に変わった。
 渉は両手で私の頬を挟み、じっと私を見つめて言う。


「…いいの?ここで頷いたら、もうやめてあげられないよ?」


 じっと真剣な目で私を見据える渉の背に腕を回して、私はこくりと頷いた。


「うん……いいよ。」

「わかった。できるだけゆっくり動くから……」


 渉はそろそろとゆっくりと腰を動かし始める。
 ピリリと弱い電気のような快感が走って、思わず声が漏れると、渉はほっとしたような顔をした。


「ひぁっ……あぁっ……」

「っ…感じてる?痛く無さそうで…良かった……じゃあ、もう少し……」


 渉は先程よりも少し動きを大きくした。
 ずっずっと音を立て、渉がゆっくりと腰を前後に動かす度に、痛みの代わりにじんわりした快感が湧き上がってくる。

 渉の熱く膨張した熱杭が狭い隘路を進む度に快感に身体が痙攣したように震えた。


「ふぁっ……あっ、んっ……」

「あっ…香乃果のナカ…っ、凄く、温かくて気持ちいい……堪んない……」


 私の様子を見ながら渉は少しずつ腰の動きを早めていく。


「っや……あっあっあっ……」

「香乃果、このっ……気持ちぃ?」

「んっ、んっ……きもっ…ち……あぁんっ!!!」


 私の口から鼻にかかった甘えたような声が漏れると、渉は興奮したように激しく腰を打ち付け始める。


「うぁ、っ……やべぇ……俺、もっ……きもちぃ……っ!」


「うっ、んあぁぁっ!!!」


 腰の動きを速めながら渉は私の唇に噛み付く様なキスをすると、より深く奥を抉るように激しく肉棒の抽挿を開始する。部屋中にベッドの軋む音とふたりの荒い息、パンパンと肉と肉がぶつかる音、ぐちゅぐちゅ淫らな水音が響く。

 最初に感じた痛みなどとうに消え去り、今はもう快感しか感じられず、熱い肉棒に膣壁を擦られ捏ね回される度に、全身がゾクゾクする。


「このっ……このっ……愛してる、愛してるよ……」

「んあっ……あぁぁぁ……っ」


 渉はうわ言のようにそう言いながら、夢中で腰を打ち付ける。奥を突かれる度に、今まで感じた事のない快感が身体を駆け巡り、ビクビクと跳ねた。
 出たり入ったりする渉のモノを私の蜜壷が離すまいとぎゅうぎゅうと締めつけると、熱くなった渉の肉棒が膨れ、より質量を増した。


「こ、この……っ、あん、ま…締め付けっ、ないで……まだ、イキたく、な…っ、あっ……」

「んっ……ふぁっ…っあっあっあっ…っ…」


 私の奥をぐちゅぐちゅと掻き混ぜる度に、気持ちが良過ぎて眦にチカチカと星が散り、何かがせり上がってくる。


「あっあっ……いや、あっん……」

「ん?何……そろそろ、イキそ……?」

「わか、ぁんっ、なっ……で、もっ……なんか……あぁぁっ!」


 先程から寄せては返すような快感の波が止まらず、背筋がゾクゾクと粟立って仕方がなく、お腹の奥が収縮を繰り返している。


「はぁっ…マジで、かわい……夢中で、締め付け、ちゃってさ。そんっ、なに……俺の事、離したく…っないの?」

「あぁぁっ……き、ちゃうっ!何か、くるの……!!!」


 渉は嬉しそうに目を細めて私を見つめると、抽挿の力強い突き上げと、時折織り交ぜる優しい揺さぶりで、緩急をつけて私の奥深くを攻めてたてる。


「このがイクなら…そろそろ、俺も……香乃果!一緒に……っ!!!」


 幾度となく押し寄せる快感の波に溺れ、そして、一際大きな波がやって来た時、そして、お腹の奥が強くぎゅっと収縮をすると同時に、お腹の中で熱いものが震えて弾けた。


「あ、あぁっ……っ!!!」


 お腹の奥が温かいもので満たされていくのと同時に、私の意識は途切れた。
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