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第三章

第59話 内部進学試験

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「ようやくテストも終わったけど……うぇーん、振られて辛いよぉ~!!!人肌恋しいよぉ~!!!彼女が欲しいよぉ!!!……ってな訳で合コンしよ?!」


 放課後、学食のテラスで集まっているところ、小森はテーブルに突っ伏してそう喚いていた。

 季節は巡り師走の12月。ここのところめっきりと冬の様相も深まり、すっかり寒くなってきた今日この頃。
 恋人のいない俺には関係ないが、世間ではそろそろクリスマスムードも高まり人恋しい季節になってきた。

 多感な年頃の俺らには辛い季節……だけど、正直そんな事言ってる場合ではなかった。

 と、いうのも……

 3年生のこの時期、学年トップの猫実や、常に成績上位をキープしていた近藤はさておき、大体いつも真ん中辺りをウロウロしている俺や成績下位の小森にとっては正念場で、外部受験をする奴らはもちろん、内部進学をする俺らにとっても進学先が決まる大事な時期だったりした。

 そして、先日内部進学の為の試験でもある2学期の期末試験も終わったのだが……

 足切りの憂き目にあわない為にも、遊びを控えて必死に勉強をした結果、俺も小森も無事に第一志望の学部への進学が決まった。
 もちろん、猫実も近藤も内部進学なので、みんな一緒に進学するになり、一安心したのも束の間……

 漸く大変だった試験勉強から解放され、これから彼女とイチャコラするぞと意気込んでいた小森だが、日頃サボっていたツケが回り、本格的に内部進学が怪しくなった事から、勉強にかまけて彼女へのフォローを怠っていたようで、なんとクリスマス前に他の男に乗り換えられ、あっさりと捨てられてしまったのだ。


「猫実ぇ~頼むよぉ!合コン!!!オネシャス!!!」


 完全に自業自得なのだが、そう言って泣き言を言いながらテーブルにグリグリと額を擦り付けて頼み込む小森を見て、猫実は楽しそうにくつくつと喉を鳴らして笑う。


「くくくっ……必死だな。」

「当たり前じゃん!ようやく勉強から解放されて、これからって時にだよ?!鬼畜すぎんだろ?!」

「いやぁ、普段からやってればこんな事にならなくない?」


 頭を抱えて喚く小森に、猫実は片口角を上げて意地の悪い笑みを浮かべながら言うと、小森は図星を突かれて言い淀む。


「ゔっ……そ、それはそうなんだけどさぁ……でもぉ~浮気した挙句、さっさと別の男に乗り換えるとか!男心を弄んでるじゃん?!そんなの酷過ぎんだろ~?!」

「んー…日頃の行いの結果だね。」

「いや、それ、お前にだけは言われたくない。」


 サラリと正論を言われるが、それについては小森も真顔で素早く反論した。

 猫実は心底楽しそうに声を上げて笑った。

 このふたりの応酬だが、普段から女心を弄びまくっている訳なので、どちらの言い分も全く持って正論で間違ってはいない。
 そして、今回の小森の件については因果応報だが、それを上回る程鬼畜な猫実に突っ込まれるのは小森にとって癪にさわったのだろう。

 そんな事を考えながら、俺と近藤は猫実と小森に呆れた視線を送る。
 そして、猫実は俺の冷たい視線に即座に気が付いたようだが、意に介した様子もなく相変わらず楽しそうに笑うと、徐にスマホの画面を弄りながら、小森に声を掛けた。


「ははは、そうだね。まぁ、事情はよくわかった、いいよ。それで、小森のご希望は?」

「え?!いいの?!やってくれんの?!合コン!!!」


 猫実の言葉を受けて、小森はガバリと身体を起こし食い気味に隣の猫実に詰め寄ると、猫実は小森の身体を去なしながら、スマホをテーブルの真ん中に置き、メッセージアプリの友達一覧を開いた。


「…うっ……ち、近い。で?希望教えて?上?下?女子高生に、女子大生…それから、カフェの店員さん?それともここは大人の女性で、OLかCAか……」


 小森は話を聞きつつも、スマホ画面ををスクロールしながら興奮気味に叫ぶ。


「うひょー!!選り取りみどりじゃん!!そしたら……カフェの店員さんか女子大生でお願い致します!!!よっしゃーーーー!!!」


 猫実が合コンをセッティングしてくれる事になった瞬間、先程までウジウジべそべそしていたはずの小森はガッツポーズの後、小躍りをし始めた。


「渉ももちろん参加するんだよな?」


 現金なヤツだな、と小躍りする小森を冷めた目で見ていた俺の横腹を、ニヤニヤ顔で肘で突きながら近藤は訊ねた。

 正直な話……俺は合コンで女漁りをするよりも、少しでも早く香乃果に会いたかった。
 毎月の小遣いの一部を渡航費としてコツコツ貯めてはいたが、微々たるもので、このままでは目標額に到達するには気が遠くなりそうで……

 漸く進学も決まり、柏木のおじさんの言う"学生の本分"は果たしたのだから、そんな時間が少しでもあるならばバイトがしたかった。

 だけど、バイトをするにも表向きは校則でバイトは禁止されている。

 さて、どうやって伝えるべきかな……

 少し思案するが、詳細を伝えるのもなんなので、まずは不参加の意思だけを伝える事にした。


「あー……俺は今回パスかな。ていうか、これからはあんまり参加出来ないかも。」


 その俺の言葉にほんの一瞬空気が固まるが、即座に打ち消して小森は俺に噛み付いた。

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