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トラヴェエ王太子の責務と恋
□自覚した気持ち※
しおりを挟む静かな部屋にふたりの荒い息とちゅっちゅっと唇を啄むリップ音が響いている。
ヒュー兄様に何度も優しく柔らかく唇を食まれ、その度にぴくんと身体を震わせる。
食べられているはずなのに、なんでこんなに優しいのだろうか。
ヒュー兄様はゆっくりと私を解かすように優しく柔らかく唇を食んで吸い上げる。ただ唇に触れているだけなのに、唇を重ねることがこんなにも気持ちがいいなんて知らなかった。
ヒュー兄様が口付けをしながら、時折苦しそうに私の名を呼ぶ。
それが更なる興奮と快感を呼び、胸をギュッ締め付けた。
私もヒュー兄様の名を呼びたい、堪らなくなった私は、涙の滲む瞳をうっすらと開けると、ヒュー兄様を見つめて名を呼んだ。
「はぁはぁ……ヒュー、にぃ、様…」
ヒュー兄様は一瞬驚いたように目を大きく見開いた。そして蠱惑的な深紅の瞳に歓喜の色を滲ませると、泣きそうに顔を歪ませて破顔した。
ヒュー兄様のその表情に私は胸がいっぱいになり涙が一筋こぼれ落ちる。
名を呼び合う、ただそれだけの行為なのに何故このように高まるのか。
「リーナ……私の、リーナ…あぁ……可愛いよ…」
ヒュー兄様が何度も何度も私の名前を紡ぎ、私の官能を高めていく。次第に激しくなる口付けに呼吸が上手く出来ず、はくはくと唇を震わせていると、口内に生暖かいものが侵入してきた。
それが、ヒュー兄様の舌だと気がつくのにそう時間はかからなかった。
ヒュー兄様の舌は私の口腔を味わうように余すことなくなぞった。上顎を舌先で舐めらると、ゾクゾクと快感が襲いおなかの奥がぎゅっと締め付けられるように感じた。
「んぅっ……あ、んっ…」
気が付くと私は甘い声をあげ、ヒュー兄様の舌に自分の舌を絡めていた。
ヒュー兄様の舌が私の舌の側面をなぞり、そのままヒュー兄様の口腔内へと誘われると、じゅるじゅると舌を吸われ、ちろちろと舌先を愛撫される。
ヒュー兄様の舌が触れる度、ぴくぴくと快感に身体が震え頭の芯が痺れていく。
ぴちゃぴちゃ、じゅるじゅるという厭らしい水音が響く中、私はヒュー兄様との行為にどんどん溺れていった。
気持ちいい…気持ちいい……
もっと……もっとして欲しい……
もうこの快楽から逃れることはできなかった。
くちゅくちゅと舌を絡ませ私からも自らもヒュー兄様の唇を追う。
ヒュー兄様が熱い吐息を漏らしゆっくりと唇を離すと、舌先が唾液の銀糸で繋がっていた。
「ほら、リーナ…みてごらん?私と、リーナが繋がっているよ…」
荒く乱れた吐息を吐きながら、ヒュー兄様が嬉しそうに言った。
「いやぁ……いわないでぇ…」
私は辛うじて一欠片残っていた羞恥心で顔を背けようするが、ヒュー兄様はそれを許さなかった。
淫らに乱れた自分が恥ずかしくて、こんなにはしたないあられもない姿を見せて、ヒュー兄様に嫌われるのが怖くてぶるりと身体が震える。
ヒュー兄様は私の頬に手を添えて自分の方へ向かせると、苦しそうに眉を寄せ、まるで愛を乞うように切なそうに掠れた声で言った。
「その瞳でちゃんと見て。今、リーナに口付けているのは誰なのか。誰の腕の中にいるのか、きちんとわからせてあげる。」
そう言ったヒュー兄様の深紅の瞳は私を映してゆらゆらと揺れている。その情欲に濡れたヒュー兄様の瞳が答えを乞うように訴えていた。
「にぃ……さ、ま……」
心臓が速い鼓動を打ち、唇が震えた。
ヒュー兄様はゴクリと喉を鳴らすと私の首筋に顔を落とし、首筋を吸い上げた。一瞬ちりっとした痛みを感じたが、すぐにヒュー兄様の熱い舌が首筋を這っていき、そのまま唇で耳たぶをやわやわと食むと、耳元で熱い吐息を吐いた。
「ねぇ、今リーナに触れているのは…誰?」
私に触れているのはヒュー兄様………
ヒュー兄様……私はヒュー兄様の事が……
頭の中でそう答えると子宮がの辺りがびくびくと震え、心だけでなく私の身体もヒュー兄様を欲して、足の付け根がじんわりと湿りを帯びたことに気が付いた。
もっとヒュー兄様が欲しい。
そして、もっとヒュー兄様に触れられたい。
私からヒュー兄様の首に腕を回すと、ヒュー兄様から噛み付くような口付けをされる。
ヒュー兄様を奥で感じたくて自分から口を開くと、そこにたっぷりと唾液を流し込まれ溺れそうになる。
コクコクとヒュー兄様の唾液を飲み込むと、ヒュー兄様が嬉しそうに目を細めた。
「あっ……ふっ…んぅ……」
羞恥心はもうない。あるのは火照りきってヒュー兄様を求めてやまない淫らな身体だけだ。
夢中で舌を絡め、お互いの唾液を流し合い、やがてゆっくりと唇を離す。
飲み込みきれなかった唾液が唇の端から溢れ、それをヒュー兄様が舌で舐めとると、途端に頭の奥で何かが弾け背筋にゾクゾクと快感が走り全身が弛緩した。
やがて、力なくヒュー兄様の広い胸に倒れ込み抱きしめられると、
とてつもない幸福感が押し寄せてくるとどうしようもない愛おしさが溢れてきた。
私、ヒュー兄様が好きなんだ……
自然とそう思えた。『好き』を自覚したら、ヒュー兄様への愛おしさで胸がいっぱいになり、無性にヒュー兄様に触れたくなる。
ゆっくりと瞳を開けて見上げると、ぎゅうっと瞳を閉じ切なそうに眉を寄せて私を抱きしめるヒュー兄様がいる。
「……ヒュー…に、いさ……ま…」
愛しい人の名を呼ぶと優しい銀色の瞳が開く。
その瞳には愛しみが溢れていた。
私はヒュー兄様の頬に手を添え、私もヒュー兄様をお慕いしております…と心の中で伝え、想いを乗せた笑顔を向けた。
ヒュー兄様はまた苦しそうに眉根を寄せると瞳を閉じ、私の手に自分の手を重ねて頬を擦り寄せた。
「…リーナ愛してるよ…良い夢を…」
薄れて行く意識の中で、ヒュー兄様の声を聞いた気がした。
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