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第二章 黒猫の恋人
第68話 黒猫の独占欲 ※
しおりを挟む研修10日目。
この日は新卒達にとっても、俺達役職にとっても大きな山場を迎える。
今日で支社メンバーの研修が終了となり、週明けにはそれぞれの採用支社に配属されるため、業務終了後に研修生全員と関係役職メンバーでの壮行会があるのだ。
例年は各営業部毎に行われていた壮行会今年はちょうど同じ日に名月の第一営業部も壮行会を行うと話を聞いたのは営業部の研修が始まる1週間前。
俺はマネージャーなので、毎年強制参加なのだが、名月は今までOJT担当として途中参加を数回した事があるのみだったはずだ。
山田さんに壮行会の内容を聞くと、ここ数年は毎年近くの居酒屋を貸し切っててんやわんやの体育会系ノリの飲み会をしているとの事だったが、流石に今年は名月も研修講師としてメインで参加するのだ。
話を聞く限りだと、最後は新人と役職も男も女も関係なくもみくちゃになり、はっちゃけて泥酔者続出になるらしい。
その凄まじさに、数件の居酒屋では壮行会をお断りされる程……また、途中離脱者や酔いつぶれた奴ら用に、近くのビジネスホテルに雑魚寝用の休憩室も2~3室用意する程激しいとのこと。
うん…危ない……非常に危ない。
あわよくばと名月を狙っているやつは森川だけでは無いはず。
むざむざと狼共の巣窟である危険な体育会系ノリの坩堝に、子うさぎ名月を放り込む訳にはいかない!なんとかしなければ、と頭を抱えて考えた結果……
どうせなら第一営業と合同でやれるようにすれはいいのではないかと思い付いた。
思い立ったら即行動!
すかさず、仕事関係で縁を結べたホテルの担当者に電話をして事情を説明すると、系列のウェストホテルのパーティ会場が空いてるとの事。ハイグレードのホテルにも関わらず、値段も融通してくれるとの事だったので、そのまま会場と休憩用のスーペリアルームを3室と、これは個人的にだが、スイートルームを1室確保して貰った。
もみくちゃにはならないはずなので、休憩室は使用しない可能性もあるが、念には念をだ。
そして、第一営業部と第三営業部が合同でやるのであれば、第二営業部にも声を掛けないのは、対外的に宜しくない。
俺としては、嫌いな奴と名月の元カレのいる部署なんかと、好き好んで絡みたいとは思わなかったのだが、一応、形だけ第二営業部にも声掛けはした。
どうやらあちらは以前の俺と同じく、夜遊びの盛んな笹尾さんがメインで準備しているようだ。ちなみに笹尾さんは今も現役の遊び人で、その笹尾さん自身がこういった落ち着いた煌びやかなパーティよりも、EDMガンガンの派手なクラブ等を好んでいるため、恐らくだがこの話には乗ってこないだろうと踏んでいる。
静かなBARや大人の社交場を好む俺や新堂さんとは真逆で、ウェーイなパリピタイプの笹尾さんは、当時から何かと敵対視してきていたので、当然元新堂派の俺とは反りが合わない。
結果は思った通り、第二営業部は今回別開催となった。
まぁ、どうでもいいが。
全ての手筈を整えて、山田さんに伝えたのは、森川と名月がランチに言ったその日だった。
それから、今回の会場はホテルのパーティ会場になるので、インフォーマルもしくはビジネスタイア程度のドレスコードがある。
ビジネスタイアもOKなので基本はスーツでいいのだが、せっかくの機会なのだから、俺としては名月を着飾らせたい。そして、あわよくば俺と名月の関係を公表したいと思っている。
我ながら酷い独占欲なのは理解しているが、新卒といえど、男は男だ。きちんと牽制はしておきたいというのが本音だ。
さて、どうやって牽制する?
エスコートして一緒に会場入りして隣にいる……それだけじゃ足りない。
俺の選んだドレスとアクセサリーで着飾らせるのはもちろんだが……それだけでは全然まだ足りない。
それぞれ離れていてもひと目でお互いのものだとわかる様に、小物や色合いを合わせたものを身につけ、仕上げに俺のコロンを付ければ完璧だ。
頭から足の先まで、完璧にまで俺の色に染まる名月を想像すると胸が滾る。
ドレスや小物はいずれ必要になるので、名月と暮らし始めて直ぐに、何着か某ブランドや海外セレブ御用達のセレクトショップに注文していた。
もちろん服も小物も全てフルオーダーメイドだ。
服のサイズは一緒に買い物に行った時に確認しているし、下着も一度オーダーメイドで作っているので、その時にヌードサイズは確認済みだ。
俺は庶子とは言え、政治家家系の長男の為、父親や姉に請われればパーティや会合に顔を出さないといけない時がある。
大体が結婚相手の斡旋だったり、父親による政界への筋道作りだったり……
特に父親は俺をその道に引きずり込むのをまだ諦めていないようで、事ある毎に会合やパーティに呼びつける。
流石に父親と姉には育ててくれた恩があるので、全部は断れず、やむを得ず出席しなければならない物が年に数件あるのだが、今後、その時には名月を帯同するつもりで、予めドレスやスーツを注文しておいたのだ。
そして昨日、そのうちの黒のカクテルドレスとオーダーアクセサリーが出来上がったと某ブランドショップから連絡を貰ったので、外出ついでに受け取り、クローゼットに隠してきた。
準備を終えて帰社したのが、16時半。
今日壮行会に出席する役職は会場の準備やその他で、業務は17時までとなるので、もうすぐ業務終了だ。
念の為名月のグループウェアと確認したが、研修は17時までとなっていた。
17時になったら名月を迎えに行って、一緒に帰宅する予定だ。
早く名月の驚いた顔が見たい。
俺は緩む頬を無理やり引き締めた。
◇◇◇
「はっ…俺も……そろそろ限界……中に…出していい?」
研修終了後に大会議室に迎えに行った時に感じたちょっとした違和感が引っかかり、いつも以上に求めてしまった。
なんだろう…… まるで小さな棘のようなこの違和感は。
この10日間名月は何も言ってこない。
森川の事は既にこちらは認識しているのだが、全く名月から触れてこないので、あえてこちらから触れる事もしなかった。
しかし、今日、確実に何かあったのだろう。
相手は…確実に森川だ。
何があったのかは分からないが、会社で甘える様な素振りを見せたことのない名月が、俺に擦り寄り甘えてきたのだから。
そう考えると、森川に対する嫉妬と怒りで頭は沸騰し、腸が煮えくり返りそうだ。
名月は俺の物なのに……
言い様のない不安に駆られ、思わず中出しを要求してしまった。
「んっ……出して…あぁぁぁっ!!!」
絶対断られると思ったのに、意外にも名月からはOKの返事だったので、吃驚と同時に至大な歓喜が訪れ、自分自身が一層膨れ上がるのを感じた。
「くっ……あぁ…イクよ……名月っ!!!!」
「あぁぁぁ……熱…いぃ……」
ぐっと強く腰を押し付け、名月の膣に勢いよく精を放出すると、びくびくと全身を震わせながら名月は達した。
俺は最後の一滴まで名月の膣に注ぎ込む為に、何度も深く腰を打ち付ける。
「はぁ、名月……ありがとう……愛してるよ……」
はぁはぁと肩で荒い息をしている名月の額にキスを落とすと、名月はふにゃりと破顔した。
俺は繋がったまま名月を抱き込み横に倒れこんだ。
俺の全ての精を注ぎこんだ事で、内側から外側まで全て名月が俺の物であるという独占欲が満たされていく。
満足感を覚え、ゆるゆると幸福感で心が暖かくなるが、何か不安感が拭えない。
ここの所感じている違和感が刺さったまま、じくじくと痛み胸を苛むのだ。
その違和感と痛みからなのか、無性に、名月の見えるところにも俺の所有印を付けたい衝動に駆られる。
俺は名月の顔中にキスを降らせながら、そして首筋まで唇を滑らせていくと、項の辺りを軽く吸い上げた。
本当は首筋と鎖骨辺りに堂々と付けたいが、流石にそれはせっかくのドレスが台無しになる。
でもここなら、髪型によってはチラリと見えるだけだ。
俺の意図がわかったのか、名月が軽く身を捩った。
「んっ…弦……だめっ……」
「名月……痕つけたら、怒る?」
俺は逃がさないと抱きしめる腕に力を込め、首筋に顔を埋めながら、名月に訊ねる。
その間も痕がつかない程度に首筋の弱い所を軽く吸いながらキスをしたり、ちろちろと舌を這わせたりと名月の思考を蕩かしていく。
名月から甘い吐息が漏れ始めたところに、俺は名月の好きな声音で耳元で甘く囁く。
「ねぇ、だめ?痕…付けたいな……。」
ダメ押しで、お願い、と切ない声で言うと、とろんと蕩けた顔をして名月が陥落した。
「見えない所で……お願い……」
「ありがとう……んー、目立たないようにするね。」
俺は希望が通り、ほくそ笑む。
そんな胸の内は綺麗に隠して、名月ににっこりと笑みを見せると、思いっきり名月の白い項に吸い付き、俺の所有印を刻みつけた。
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