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第二章 黒猫の恋人
第47話 黒猫の本気※
しおりを挟む「俺の本気ねぇ。そんなの名月以外に信じて貰おうと思ってないけど、数少ない名月の友人っぽいし?ちゃんと説明した方がいい?ねぇ?名月?」
そういい終わると、俺は名月の首の後ろを掴み引き寄せ、噛み付く様なキスする。名月は驚いて目を見開き、俺の胸を押し返したが、所詮女の力だ、どうってことはない。
鋭い目付きで楠木嫁を睨み付けながら、名月とのキスを見せつけるように、何度も角度を変えながら深く口付ける。
「あっ……ふっ…んっ。」
俺とのキスに抵抗出来なくなった名月からは、次第に鼻にかかった甘ったるい吐息が漏れ始める。俺は力が入らなくなった名月の唇をこじ開け舌をねじ込んだ。
「んぅ……ふっ……やぁ…」
名月の甘い吐息とくちゅくちゅという水音が半個室に響く。
その様子に、目の前の楠木夫妻は真っ赤になりながらも、俺と名月から目が離せないでいた。
俺は名月の唇を犯しながら、不適な笑みを浮かべて名月の項にかかった髪をふたりに見せつけるように掻きあげると、そこにある沢山の俺の所有の証に、ふたりの目が見開いた。
そこでやっと俺は名月から唇を離し、唇をペロリと舐め上げ秋波を送りながらふたりに言い放つ。
「……っは。どう?コレでわかる?俺、こいつに溺れきってるの。外面なんか被る余裕ないくらい。」
名月は、激しく口腔内を蹂躙され、息も絶え絶えになって俺の胸に抱かれている。
俺は名月の髪に顔を埋め、旋毛にキスを落とす。
「っ……はい……疑ってすみませんでした…」
楠木嫁は耳まで真っ赤にして俯き、絞り出すように言った
俺はそのまま畳み掛けるように、今流れている不届きな噂について訂正をする。
「それから、いつかの話のネタにでも覚えといて。俺、名月に6年間片想いをしてたから。好きだと自覚してからは無闇矢鱈には女遊びはしてないよ。」
「……はい、最近また再開されたと言われるまでは確かに全く聞きませんでした。」
最近とは、名月と鈴木に嫉妬して自分が抑えられなくなった時の事だろう。あの件も既に噂になっていたのか…俺は心の中で盛大に舌打ちをした。
「それについては猛省してるよ。先に弁解しておくけど、名月の事が好き過ぎての暴走だから、あんなのは女遊びのうちに入らない、ノーカウントだよ。」
いや、どう考えてもノーカウントにはならないだろう。
我ながら強引で苦しい弁解だなと思うが、しれっと勢いで押し通す。
周りにも、名月にもこのまま女癖が悪くて女遊びの激しい男だと誤解されたままなのは、是非とも勘弁して欲しい。
「噂を聞いてるなら、この話は聞いた事ない?俺、誰にも執着しないって。その上でどうかな?俺の名月への執着の程度。ふたりとも目の前で嫌という程見ただろうから異論は認めないけど。」
目の前のふたりに視線を遣ると、ふたりともぶんぶんと首を縦に振り、肯定の意を表す。
その反応に俺は漸く溜飲が下がった心地がした。
さて、では肝心のお仕置だ。
「あと、楠木、今日このまま外出して直帰するから、代理頼める?出来るよね?」
「は、はひぃぃぃっ!!!!」
楠木は飛び上がりそうな程ビクッとして、ぶんぶんと首を縦に振った。
今朝のMTGで今日やるべき仕事の確認はしてある。出来ないとは言わせないよ、と有無を言わせない口調で楠木を威圧した。当然だろう、嫁の不始末は夫である楠木がするべきだ。
俺は財布から5千円を出してテーブルに置くと、名月の荷物と手を取り、立ち上がり強引に歩き出した。
「名月……行くよ。あ、楠木、釣りは要らないから。楠木嫁も、くれぐれもよろしくね。」
俺の勢いに気後れして固まっているふたりを横目に、俺と名月は店の外に出て、どんどん歩を進める。
名月は戸惑いを隠せず、半ば俺に引き摺られるようになりながらも着いてくる。
「げ…弦!ど、何処に行くの……?」
「家。悪いけどアポイントはリスケして。」
俺は後ろの名月を振り返ることもせず、一方的に言った。
名月は混乱する頭で、必死に何かを考えているようだが、どうせ碌な考えが浮かぶわけが無い。さっさと逃げ道は潰して置くことにする。
「どうせ、俺の案件か……いいや、俺が電話する。」
そう言って俺は社用ケータイから、名月のアポイント先に電話をかけた。
◇◇◇
「やっ……あぁぁんっ!も、もっ……ゆるしっ……」
家に着き、名月をベッドの上に押し倒してからどれくらい経ったのだろう。
俺は長い時間、唇と舌と手で、名月の滑らかな肌にそっと触れながら名月を攻め立てている。
しかし、キスはおろか、胸の頂きや秘部など決定的な刺激になる箇所には一切触れずに。
名月は快楽に溺れてトロトロに蕩けきって、少しの刺激に
も簡単に反応をする。
「っ……まだ…まだダメだよ。名月が心から俺を欲しがるまではあげない。」
「んもぅ……ほしっ……欲しいのっ!おねが…」
俺が胸の頂きのすぐ横を指の腹で撫でると、名月はそれだけで反応し、涙を流しながら背中を仰け反らせてびくびくと震え、トロリと蜜を零す。
足をの間に身体を割入れ、太腿のつけ根をちろちろと舌で刺激しながら、溢れ出る密に濡れそぼる花弁にふっと息を吹きかけると、感情の籠らない声で名月に言った。
「…あぁ、身体が疼いて仕方ないんだよね?ほら、名月のココは素直だ…ヒクヒクして俺を欲しがってる……でも身体だけなんて、俺は御免だ。」
「…な、何……言って……」
名月が弾かれたようにぱっと身体を起こし、目を見開いて自身の足の間に埋まっている俺を見る。
俺も身体を起こして、名月に向かい合うように座り、胡座をかいた上に名月をのせる。
下から名月の顔をじっと見上げると、名月の瞳には情欲の他に後悔と不安の色が滲んでゆらゆらと揺れていた。
俺は名月の頬をさらりと撫で、そのまま首筋へと指を滑らせていく。
「…名月さぁ、さっきなんで目ぇ逸らしたの?俺の事信じられない?」
「そ…んっな、こっ…と……」
俺に触れられ再びピクピクと反応しながらも、懸命に名月が紡いだ言葉を俺は先回りして潰す。
「……ない?へぇ、じゃああれは何?それに、その後の態度も気に入らないなぁ。」
それ程怒っているわけでも無いのに、自分でも吃驚する程冷たい声が出た。
その声に名月の表情が絶望と悲しみに歪み、大きな瞳からは大粒の涙がポロポロと零れ落ち、俺の頬を濡らした。
「……ごめん…なさい。」
そんなつもりはなかったの…と名月はしゃくりあげながら、消え入りそうな声で呟いた。
涙を零しながら顔をくしゃくしゃにして泣いている名月はとても綺麗で、俺の心を揺さぶった。
後悔?懺悔?どんな感情であれ、今名月の心と頭を占めているのは間違いなく『俺』なのだ。
そう考えた瞬間に、名月の泣き顔に俺の嗜虐心が擽られ、ゾクゾクと快感が背筋を駆け抜け、心が歓喜で満たされる。
もっと泣かせたい…
もっともっと俺でいっぱいにしたい…
愛してるのに泣かせたいとか、名月の泣き顔に興奮するとか、頭がおかしいのかもしれない。
反面、泣いてる名月をめちゃくちゃに甘やかして、可愛がりたい気持ちもある。
反目し合う心に翻弄され、自分でもどうしていいのかわからなくなってきた。
ただ、今はっきりとわかっているのは、まだお仕置し足りないということ。
「あぁ、怒っているわけではないよ。あの話を聞いたら誰でも不安になるさ。ただ……悲しいだけ。」
そう言うと俺は名月の涙を指で拭い、にっこりと綺麗な笑顔を作ると、名月の肩をトンと押す。
そのまま、ベッドに仰向けにぽすんと倒れ込んだ名月の上にのしかかり、耳元で情欲をたっぷり込めて囁いた。
「……噂なんかじゃなくて、俺を見て欲しかったな……だから、これは信じてくれなかった名月へのお仕置だよ。今日は挿れてあげないし、触ってあげない。」
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