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第一章 黒猫の恋
第31話 誰の物?※
しおりを挟む「名月…どうしたの?大丈夫?なんで泣いてるの?」
目を開けると、眉根を寄せて心配そうに覗き込む愛しい人の顔があった。
弦は私の涙を拭うと、愛おしむように私の頭を撫でながらぎゅうっと抱きしめている。
私は緩く笑みを作り、手を伸ばして弦のふわふわの猫毛を撫でた。
「弦…私、思い出したよ。」
私の言葉に弦は目を丸くして驚き、眉尻を下げて困ったような顔で訊ねた。
「えっ……ど、どこまで?」
「全部だよ。出会いから、もちろんあの日の夜の事も……」
私がそう言うと、弦は私の頬を愛おしそうにするりと撫でる。私はその弦の手に自分の手を重ねて、その掌にキスを送り、弦の黒くて綺麗な瞳を見つめた。弦も嬉しそうに目を細めて私を見つめ返し、熱を帯びた声でゆっくり問いかける。
「本当に?……俺とキスしたのは覚えてる?」
「うん。」
「…俺を欲しいっていったのは?」
「うん…覚えてるよ。」
「じゃあ……俺が、名月を頂戴って言ったのは…?」
弦の瞳が戸惑いに揺れた。驚愕と不安と少しの喜びが入り交じった表情で、私を見つめている。
「…覚えてる。全部あげるって言ったのも…」
涙で滲んだ弦の瞳をじっと見つめて、不安を取り除くようにしっかりはっきり言うと、それまで緊張で強ばっていた弦の顔が嬉しそうにくしゃっと破顔した。
そして、弦は私をぎゅうっと強く抱きしめて震える声で呟いた。
「あぁ、名月…好きだ……心から君を愛してる。」
その不安そうで今にも泣き出しそうな顔に、私は愛しさが溢れて胸がいっぱいになって、私までつられて泣きそうになった。
私は弦の頬に手を添え、唇にちゅっとキスを贈ると、おでこをコツンと当てて目を開ける。涙に濡れて俺を受け入れて欲しい、そう訴えている弦の瞳と視線が合うと、愛しさが込み上げてきて自然と言葉として溢れた。
「弦……私もあなたの事が好きよ。多分、出会った日からずっと……あなたの事が好き。」
その言葉に弦はぱっと驚いたように顔をあげた。不安で泣き出しそうだった表情が徐々に歓喜に満ちたものになり、そして、心底嬉しそうに破顔した。
私も、そんな弦につられて笑顔になる。
瞳と瞳が合い、どちらからともなく唇を寄せ触れるだけの軽いキスをすると、また強く抱きしめられた。
弦の心臓の鼓動が伝わってくる。トクントクンと心地よい。
私を抱きしめながら、弦は囁く。
「名月……俺も、出会った時から、ずっと…ずっと好きだった。」
「うん……」
私も弦をきゅっと強く抱きしめ返すと、弦はちゅっと音を立てて啄むキスを落とし、少し身体を離した。
そっと目を開けると、私の事を愛おしそうに覗き込む視線とかち合う。
ドキリと心臓が跳ね、そして、きゅうっと締め付けられる。
弦の事が好き…
自覚して、想いを口に出しただけなのに、こんなにも胸が熱くなるのは何故なのか。胸がいっぱいで目の奥がじんとする。
弦はゆっくりと私の左手をとり、薬指にそっと口付けると蕩ける笑みを湛えて、そのまま目線だけ私に向けて、愛を乞うように言った。
「名月……愛してるよ。俺の物になってくれる?」
その言葉に涙が溢れた。心から幸せだと思った。
今までのどんな男性から告白された時にも感じたことの無い、圧倒的な幸福感が私を満たしていく。
私もあなたの物になりたい、そう自然と思えた。
「もちろん…だって、私の全部貰ってくれるんでしょ?」
溢れる涙を堪え、無理やり笑顔を作りそう答えると、弦はそのままぐいと私を引き寄せ、ぎゅうっと力いっぱい抱きしめて、心底嬉しそうに言った。
「はは、やった。嬉しい。好きだよ。愛してる。んー、大好きだ!」
「ふふふっ、そんなに抱きしめたら痛いよ。私も大好きだよ。」
「あ……ごめん…嬉しすぎて加減するの忘れてた。…あぁ、名月…好きだ。何度伝えても伝え切れない程、君の事が大好きだよ。」
そう言って、弦は優しくキスをする。そのまま顔中にちゅっちゅっと沢山キスの雨を降らせた。
「んぅ、弦…くすぐったいよ…」
私がくすぐったさに身を捩るも、弦は構うことなくキスを続けた。
やがて満足したのか、ゆっくりと弦が離れて行った。
私が目を開けると、うっすらと情欲を灯した弦の視線とかち合う。弦は、艶色をたっぷり含んだ表情で、くすりと笑い、耳元で囁いた。
「あぁ、名月愛してるよ。でも、まだ実感が足りない……ねぇ、名月…名月が俺の物だって実感させて?」
そう言って、弦は熱く聳り立つ自身を、彼によって解され蕩け切った蜜口に擦り付けてきた。
「あんっ……えっと…また、するの…?」
長い時間彼によって愛撫され抱かれた身体は、少しの刺激で快感を感じトロリと蜜を零す。
弦は私の解けきって蜜を零している入口を、先っぽでつんつんとノックする。
「……ダメ?だって、5年も…もうすぐ6年か、俺はずっと名月の事想ってたんだ。いくら抱いても抱きたりないよ。ほら、それに前回お預け食らったし…」
「…いや、でも、今日はもう沢山したから…んっ!!」
「ふふ、まだ2回だよ。全然足りないよ。ねぇ、名月は俺の物だよね?それとも…」
「弦っ…弦の物だけど…」
弦は私の言葉に満足したのか、にっこりと艶っぽい笑顔を向け、腰を進めて蜜口をノックしていた自身の亀頭だけをくぷっと押し込めた。
「はぁんっ……もぉ…」
「はは、先っぽ挿っちゃった。ねぇ、ダメ?名月を全部くれるんじゃなかったの?」
「んぅっ…そうだけど…」
「ん?そうだけど、なぁに?」
そう言いながら、弦は入口の浅い所だけを責める。
入口にカリが引っかかって気持ちがいい…けど、もどかしい。
浅い挿入を何度も繰り返されるうちに、奥がきゅんきゅん疼いて身体が熱くなってきた。
もっと奥に刺激が欲しくてもじもじする私を見て、弦はくすりと笑み、耳元で意地の悪い事を言う。
「あぁ、ちょっとしか挿ってないけど気持ちいいね。名月も気持ちいいよね?このまま…入口だけ擦ってようか?」
「…げ、んっ……そん、な……意地悪しないでぇ……」
気持ちよさともどかしさ、快感と焦燥感で頭がおかしくなりそうになりながら、涙を流して頭をふるふる振る。弦はふっと笑うと、私にちゅっとキスを落とし、そのまま唇をこじ開けると舌をを絡めとった。
「んっ…はぁ……名月、俺が、欲しいの?…っどこに欲しいの?お強請りしてごらん?わかってると思うけど、言わなきゃ、ずっとこのままだよ?」
溢れる唾液を舐め取りながらそう言う弦の瞳は、狙いをつけた肉食獣のような目をしていた。私はその瞳に捉えられもはや抵抗する余地もなかったし、するつもりもなかった。
私に灯った情欲の火は熱く燃え広がって、快感を追うことだけに意識が向いていた。
弦が欲しい……私の奥深くに…
弦の熱い熱杭で私の最奥をグリグリと刺激して欲しかった。
「弦、お願い……もっと奥まで挿れて…」
私の言葉を聞くと、弦はぺろりと唇を舐めると片口角を上げて、私の膣壁を己の肉杭で擦るようにゆっくりと刺激しながら、奥へ奥へと侵入してきた。
「はぁぁぁぁん……」
私はその快感に身を委ね、恍と目を閉じと甘い吐息を洩らした。
「ほら、名月、奥まで挿ったよ。ふっ、腰が揺れてるね。この後は?どうして欲しいの?」
弦は快感に酔っている私に問いかけてくる。
弦の肉棒が私の奥で存在を主張するようにびくびくと震えている。
その微弱な刺激がもどかしい、もっともっと刺激が欲しい…
私は強請るように彼を締め付けると、弦はくすりと笑った。
「名月の膣は素直だね。俺はこのままで十分気持ちがいいけど、名月はどうかな?」
そう言うと、弦は子宮口にグリグリと先っぽを押し付けてきた。
「はっあ!…お、くっ……もっと奥、グリグリして……」
「んっ…ここ?」
弦は更に深く腰を沈めて、肉棒でグリグリと擦るように刺激をする。その瞬間、私はあっけなく達してしまった。
「あぁぁぁっ……」
「名月は奥が好きなんだね……」
「…んっ……すき……」
「ふぅん。誰に開発されたのかな……気に入らないな…」
快感の余韻で震える私の頭上から、少し不機嫌そうな弦の声が聞こえたが、気持ち良すぎて頭が働かない私は答えることが出来ない。
弦は答えない私をちらりと見ると、肩で荒い息をしている私の唇を隙間なくぴったりと塞ぐように、激しく深いキスを仕掛けてきた。
あまりの激しさに呼吸が追いつかず息が出来なくて苦しくなって弦の胸を押し返すが、弦は一向に離してくれない。
いよいよ酸欠になりそうになり、必死になって両手で弦の胸を叩くと、今度はあっさりと解放された。
「…んっ…こほっ…弦!何するの?!」
乱れる息を整えながら、涙目で抗議の意味も含めてきっと睨め付けるも、弦は不機嫌な表情を崩さずじっと私を覗き込む。
そして、弦は諭すような、言含めるような口調で言った。
「名月は俺のものだよ。俺は名月を一生離すつもりはないから、もうこれからは俺以外には少しも身体を許さないで。いい?」
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