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第一章 黒猫の恋
第24話 黒猫は想う※
しおりを挟む「うん。わかった。君が望むのなら、俺が君を慰めるよ。」
俺は立ち上がりそのまま彼女を抱き上げると、公園の出口に向かって歩き出した。
何年も長く想い続けた彼女が今自分の腕の中にいるという事実と、そして何よりも、腕の中にある彼女の温もりに俺の心は震え、胸が高鳴り歓喜の波が幾度となく押し寄せてくる。
グリグリと額を押し付ける彼女に愛おしさが溢れる。俺は感情の赴くままに彼女の唇に何度もちゅっちゅと啄むようなキスを落とすと、彼女は俺の首に腕を絡めて俺からのキスに可愛く応えてくれる。
まるで、彼女も俺を求めてくれているような熱い抱擁とキスに、もしかしたら…とありもしない淡い希望を持ってしまう。
俺は溢れる想いを抑えきれずに熱を持った目で彼女を見つめると、俺の想いと望みをぶつけた。
「名月は俺が欲しい?ねぇ、欲しいっていって?」
彼女に俺を求めて欲しかった。欲しいと言って欲しかった。
緊張で心臓がバクバクと激しく波打つ。返答が来るまでの数秒が酷く長く感じ、抱きしめる腕に力が籠った。
しかし、彼女からの返答は拍子抜けする程すぐにきた。
「ふふっ、黒猫ちゃん、あなたが欲しい。もっとキスしよ?」
悪戯っぽくそういうと、彼女は俺の頬をするりと撫で、とろんと目を細め見つめた。
まさか彼女の口からそんな言葉が出ると思わなかった俺は、一瞬頭が追いつかず目を見開いて固まるが、やがて言葉の意味を理解すると、ゆるゆると歓喜と幸福が訪れて胸がいっぱいになる。
ヤバい、泣きそうだ。もうこのまま死んでもいい……
そう思った。だけど、そんな都合のいい事なんてない。もしかしたら俺の願望からの幻聴かもしれないし、彼女が酔っ払って適当な事を言ってるだけかもしれない。
これで、明日酔いが醒めた時に、間違いだったと言われたらきっと…確実に立ち直れないだろう。
だんだん不安になってきた俺は、頬に触れている彼女の手を取り、想いを込めて掌にキスをすると、彼女をじっと見つめた。
いや、間違いだなんて言わせない。
愛して愛して、ドロドロに愛し尽くして、俺を名月の奥深くに刻みつける。
既成事実を作る、そう決めた俺は、念の為、彼女の意思を確認をする。
「うん…俺も名月が欲しいよ。ねぇ、名月を俺に頂戴?俺も名月に全部あげるから。ね?いい?」
「うん、いいよ。ぜ~んぶあげるよ。」
そう言ってにっこりと笑うと、彼女はまた俺の胸にグリグリと額を押し付けた。
酔っ払っているとは思えない程のしっかりした応答に、俺は安堵の溜息を吐くと、彼女の顎に手を添えて上を向かせた。
「あぁ…今すぐここで君と繋がりたいよ…… 家までなんて待ちきれないな。ねぇ、このまま君を連れて帰ってもいい?」
俺が彼女の瞳を覗き込みながらそう言うと、彼女は俺の胸にすりっと頬を寄せて、コクンと頷いた。
途端に歓喜の波が俺の理性を飲み込んで、堪らず彼女の唇に噛み付くようにキスをすると、彼女も俺のキスに一生懸命応えてくれた。
名月、好きだ。愛してる。
もう君を絶対に離さない…離してあげられない。
俺は暫し彼女の甘さに酔いしれた。
たかが触れ合うだけのキスをしているだけ、それだけで、俺は酷く興奮し、簡単に理性が飛んでしまう。
お互いの唇を夢中で啄むように、どちらからも唇を離すことはなく、俺と彼女はお互いに夢中でキスを贈り合う。
一刻も早く繋がりたい。
その一心で俺は彼女を抱き上げキスを贈りながら、公園の外へと歩を進めた。
チラチラと周りの視線を感じたが、誰が見ていようと関係なかった。
俺は愛しい彼女を自宅のベッド……俺の領域で大事に抱きたかった。
だから、近くにホテルがあるのはわかっているが、彼女との初めてをその辺の適当なホテルで済ませたくなくて、俺は自宅へ向かうべくタクシーの拾える大通りへと向かう。
こんなことは初めてだった。
今まで誰にも立ち入らせなかったところに、彼女を入れたい、彼女にだけは入ってきて欲しかった。
俺は目的通りに大通りでタクシーを拾い、迷うことなく自宅マンションに向かった。
◇◇◇
「んね、キスして?お願い…」
彼女を横抱きに抱きながらタクシーに乗り込むと、そのまま俺の膝の上に座らせる。タクシーの中でも彼女からのキスのお強請りは止まず、あまりの可愛らしさに、タクシーで10分も掛からない距離なのにもかかわらず、危うく襲ってしまいそうになるのをぐっと堪える。
要望通りちゅっとキスをすると、彼女は満足そうに破顔し、俺の胸にぐりぐりと額を押し付けてきた。
可愛すぎる…もう、ほんとに死んでもいい。
俺は額に手をあてて天を仰ぐ。
凄まじい幸福感に心と頭が満たされていき、俺は彼女の髪に顔を埋め幸せを噛み締めた。
今すぐにでも襲いかかりたい衝動を忍耐に忍耐を重ね、ようやくマンションに着くと、俺の理性は限界を迎える。
エレベーターに乗り込むや否や、俺は彼女の唇を激しく貪った。
密室内に響く、ちゅっちゅっというリップ音、激しいキスで乱れた息と彼女の鼻にかかった甘い声が、俺の劣情を激しく掻き立てる。
「んっ…はぁ…もっと……もっとキス…してぇ」
「うん、もっとしよ……っ…あぁ……気持ちいいね」
「…んっ…きもちぃ……」
酔って前後不覚なのかも知れないが、それでも彼女が夢中で俺を求めてくるのが嬉しくて、俺も夢中でキスをした。
唇を舌でノックすると、彼女はそれに応えて唇を開く。
俺は待ちかねたように舌を差し込むと、彼女の舌が出迎えてくれた。
俺は彼女の歯列をなぞるようにゆっくりと舌を動かし、彼女の舌に絡ませると、側面を舌先でなぞる。俺の舌が彼女の舌を絡めとる度に彼女の背がびくびくと震えた。
「…っ…んぅん……」
「…っはっ……名月、もっと俺を感じて……」
俺の愛撫に感じてくれている事が嬉しかった。
俺は深いキスをすると、舌をねじ込み同時に思い切り唾液を流し込む。彼女は躊躇することなく、それをコクコクと喉を鳴らしながら飲み込んだ。飲み込み切れなかった唾液が口の端から零れると、俺はそれを舌でぺろりと舐め上げ、情欲をたっぷり込めて耳元で囁いた。
「あぁ…溢れちゃったね。名月、美味しい?もう1回飲んでくれる?」
「…んっ…飲む……ちょーだい?」
トロトロに蕩けた顔で、口をぱくぱくさせながら可愛らしくお強請りをする彼女に、俺の理性は吹き飛びもう何も考えられなくなっていた。
俺は唾液で艶めかしく濡れる彼女の唇を捉え、深く口付け舌を絡める。
唾液を流し込み、じゅるじゅると彼女の舌を吸い上げる。
彼女は俺の唾液をゴクリと飲み込むと、力が抜けてくてんと俺の胸に撓垂れ掛かった。
「んむぅ…はぁ……」
エレベーターが目的階に到着し、俺は名残り惜しかったが彼女から唇を離した。
はぁはぁと肩で息をする彼女の頬を撫で、エレベーターを降り、玄関のロックを解除する。
抱いたまま靴を脱がせ、そのまま寝室へ連れていく。
着の身着のまま一旦ベッドに横たえ、俺はコートとジャケットを脱いで投げ捨てた。
ネクタイを外しながら、真っ赤な顔して艶かしい格好で、ベッドに横たわっている彼女をチラリと見る。
俺のベッドに彼女がいる……今まで誰にも許して来なかった俺の領域に、愛しい彼女がいるという事を実感し、酷く興奮した。
俺は、横たわる彼女の横に腰掛け、彼女を抱き起こして顔中にちゅっちゅとキスをしながら、コートとジャケットを脱がせた。続いて、ブラウスのボタンをプチプチと外していると、彼女が急に俺に抱きついてきた。
俺は慌てて彼女を受け止める。突然の事に心臓はドキリと跳ね上がる。
「んぅん……あっつい……」
そう言って、彼女は髪を纏めていたシュシュを外し、ふるふると頭を振った。緩くウエーブのかかった明るめの髪がパサっと広がり、彼女の香りが漂う。
そして、自らブラウスを脱ぎ、ベッドサイドに落とし、そのままスカートとストッキングも脱ぎ、下着姿でベッドにコロンと転がった。
その姿が可愛らしく艶めかしくて、俺に劣情を抱かせた。
「ふふっ…冷たくて気持ちぃ…いい匂いがする…」
彼女はベッドの上をコロコロと転がりながら、俺のベッドのリネンに顔を擦り付けて匂いを嗅いでいる。
その様子を俺がぽかんと突っ立って見ていると、彼女がふわりと笑って手を広げて俺を呼ぶ。
「……きて、一緒に寝よ?」
まるで彼女に抱っこをせがまれているかのような格好に、俺の理性は焼ききれ、ベッドに飛び込み彼女を強く抱きしめた。
なんだこれ、可愛すぎるだろ。
完全に余裕を無くした俺は、彼女の柔らかな唇に噛み付くようにキスをし、舌と口腔内を存分に貪る。
「んっ…あっ……うんっ……」
彼女の甘い吐息に頭が痺れ、彼女の唾液の甘さに俺の下半身は痛いくらいにガチガチに膨張していた。
抱きたい。繋がりたい。
セックスを覚えたての子供みたいに、気持ちだけが先に行く。
恋焦がれて想い続けた愛しい彼女が、俺の腕の中にいる、そう考えるだけで、はち切れそうな程に膨らんだ分身は達してしまいそうになる。
でも……身体だけ繋がるのは嫌だった。
きちんと想いを伝えて、受け入れて貰い、俺も彼女に想って欲しかった。
弱っている所に付け込む俺が狡いのは承知の上だ。
すぐには応えて貰えない、受け入れて貰えないかもしれない。
それでも俺は想いを告げたかった。
ちゅっと音を立ててキスをしてから唇を離し、俺は思い切って想いを告げた。
「…名月…好きだ。君を愛してる…」
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