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六章:視界

抜擢!

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この週末を乗り越えたら刈谷さんが復帰する。


彰の疲労もピークじゃないかな?


負担にならないように動かなきゃ!


(こんなに仕事は真面目にできるなら、恋愛も真面目にすればいいのに…と思ってしまうが、まあそれはもう今更だから流しておこう。)


「おはよう!」


「あ、瑠偉くんおはよう!」


今日はお昼まで瑠偉くんと二人だから、その間にコーデのことと神社のこと聞かなきゃ!


一緒に掃除をしながらタイミングを伺う。


「瑠偉くん、今回のコーデどうしたの?」


モップで床を拭きながら近くを通ったフリをして話しかけると、ミラーを拭いていた手を止めて顔だけこちらを向けた。


「コーデね、言ってたサマーニットとオーバーオールのコーデとグラフィックTにサイドラインのチノの2コーデにしたよ。」


グラフィックのにしたんだ!それ悩んでロゴTにしたんだよね。

被らなくて良かった!


「っていうか、聞いたよ?ファン1号!」


「ええ!1号ってわけでは…でも反応があるって嬉しいよね。」


ここで開店の時間になってしまった。


お店の入り口に並んで立つ。


「あの…前に言ってた神社は行った?」


小声で話しかける。


「もちろん、カフェのあと神社にも行ったよ。

でも今回も猫には会えなかったよ。」


悲しそうな声で呟かれると胸が痛む…。


「でも…気のせいかもしれないけど、鳴き声が聞こえた気がするんだ。」


「え、そうなんだ!?」


でも姿を見ないと意味ないのかも…といつになく気弱になってる。


そんなに深刻なお願いだったのかな?


「そんなことないよ!きっと神様は聞いてくれてるよ!」


「…そうだね、ありがとう。」


といつもの笑顔に戻った。


やっぱり安易に人の願い事を聞こうなんてしたらダメだったな。


オープン直後から入店が多く、二人で店内を走り回っているうちにお昼になっていた。

遅番の店長と彰が一緒に出勤してきて、店長が私と瑠偉くんを準備に呼び止めた。


二人の休憩が終わってから伝えることがあるという…なんだろう?


刈谷さんのことかな?


そう思いながら先に休憩に入った。


いつもなら30分遅れで瑠偉くんも休憩に入るのに、忙しいのか今日は一人で休憩時間を終えた。


お店に戻るとやっぱりみんな走り回っていて、私もすぐ店頭に戻る。


結局夕方になってやっと店長の話を聞く時間が取れた。


瑠偉くんと3人でレジカウンターに集まる。


「実はね…スタッフコーデの反響が大きくて、次はSNSで新商品の紹介をするライブ配信をやろうという企画があってるの。」


と言っても配信は決定していて、あとは出演する人を誰にするか?という協議中らしい。


「そこでサイトに掲載されたスタッフの中で、特にビュアー数が多いスタッフを本社に集めて配信しようという方向で話が決まりそうなのよ。」


「へえ!」


本社に集まってライブ配信!そういえば最近たまに見かけるなあ。


「それでね、初めての掲載で相原さんと打海くんのビュアー数が凄く多いらしいの!

つまり二人とも、ライブ配信に呼んでもらえそうよ!」


「ええーーー!」


瑠偉くんと声を合わせて驚いた。


す…すごい展開…。


瑠偉くんはオシャレだし、男性スタッフも少ないから抜擢されるのわかるけど…。

私なんて彰と店長が見立ててくれたおかげなのに。


ライブ配信だと二人に相談もできないし、大丈夫だろうか?


「もちろん二人同日には行かせてあげられないから、一人ずつの出演にはなるけどね。」


まあ二人とも人見知りしないし、大丈夫でしょ?と、あっさり言われる。


いや、人見知りはしないけど!


「はい!頑張ります!」といつも通り即答する瑠偉くん。


「また詳しく決まったら改めて伝えるわね。」


と話が終わってしまった…。
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