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四章:はじめの一歩

大きい望み、小さい望み

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開店準備をしながら昨日のことを思い返していた。


結局神様はチューバ(プレミア)を2本食べたことではなく……。

一応猫に戻ってから食べていたけど…人の姿に戻った時の満足気な顔を見る限り、多分猫と一緒に味わえる仕組みになっているのだろう。


いやだからそのことではなくて!カフェで「そのうち大きな望みにも気付けるじゃろう」と話していたことだ。


帰宅してからふとその言葉が気になって聞いてみた。


「大きな望みはあった方がいいんですか?小さい望みより大事なんですか?」


モデルの話でもかなり悩んだのに、これよりも大きい望みが出てきたらどれだけ悩まなきゃいけないの!?


「そうじゃの。大きな望みの間に小さい望みがいくつかあると、楽しく願望を叶えていけると思うぞ。」


「大きな願いの間に小さい望み?」


「ふむ、大きい望みは叶うまでに時間がかかるな?

その望みが叶うまでに小さい望みをいくつか叶えていくと、大きい望みが叶うまでに挫折しない可能性が上がるのじゃ。」


ここからまた難しい話が始まって、楽しかったお出かけの思い出に浸れなくなってしまったのだ。



「あ、神屋さん。おはようございます。」


「おはよう。昨日スタッフコーデの指定品番が発信されたから、打海くんが出勤してから一緒に朝礼しよう。」


今日は急ぎで伝える内容がないということで、オープンしたらそのまま店頭に居ていいらしい。


「かしこまりました。」


入り口のネットを外してミラーを磨き始める。


そこでまた昨日の続きに脳内がトリップした。


「大きい望みを叶えるまでに小さい望みを叶えていくことで”成功体験“を積んでいけるじゃろ?

そうしているうちに“本当の望み”に気付ける目を持てるようになり、更に“自分は望みを叶える能力がある”と自信がついていくんじゃ。」


「………………はい………。」



まだわかっておらぬの。と言って右手の人差し指を立てる。


「例えばカーナビというものがあるじゃろ?

目的地を決めて設定すると、そこまでのルートを表示して案内してくれるアレじゃ。

例え道を間違っても軌道修正して、最終的には目的地にたどり着くの?」


大きい望みまでは距離があるから途中、途中に立ち寄るポイントを決めておく。

服屋さんとか休憩する時のカフェとか。

でもその中でも道に迷うこともあって、でも迷ったからこそ出会えるものがあったりして…結局道に迷うことすら収穫になる。

そして巡り巡って1番始めに設定した目的地にたどり着ける。


「ということが人生のイメージじゃ。

もし設定した場所まで何もなかったら?もちろん設定はしておるからたどり着くことはできるんじゃ。

しかしそこに行くまでに飽きてしもうたり、嫌気がさしたりしてしまう可能性もあると思わぬか?」


「あー、それは確かに。」


私だったらナビを使っていても「この道で本当に合ってるのか?」って不安になりそう。


「しかしじゃ。大きい望みがないとそれはそれで危険なんじゃ。」


「危険?」


最終地点がなく途中の小さな目的ばかりだと、結局ただふらふらしているだけになってしまう。


望みを叶えているのに”どこにもたどり着けない“事態がおこってしまう。


「じゃから小さい望みも大きい望みも両方大事なんじゃ。」


私はまだ、やっと小さい望みを一つ見つけたところだ。


大きい望み…まだまだ見つかりそうにないな。



開店時間を知らせる音楽が鳴る。


慌てて掃除道具を片付けて入り口に立った。
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