猫神様のお気に召すまま

結香こっこ

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三章:二人のカウンセラー

店長カウンセリング

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「店長!おはようございます。」


従業員用入り口で店長と鉢合わせた。
店長と一緒に中番に入るのは結構久しぶりのような気がする。


「相原さん、おはよう。なんだか元気いっぱいね?」


「なにかあったの?」とニヤッとされる。


だから!どうしてわかるんですか!?


「いえいえ…知り合いが引いて来てくれたおみくじが良くて!末吉だったんですけど、“絶対良くなる”と書いてくれてて。」


「なんだー、新しく彼氏ができたのかと思ったんだけどなー。」



確かに神様のおかげで元気になれたけど…神様を彼氏とは言えない…。

言ったら怒られそうだな。


「いやぁ…」と思わず苦笑いになってしまった。



「そういえば店長って何歳で結婚されたんですか?」


「24よ。ちょうど相原さんの年齢かしら?」


私の歳で結婚!?えー、やっぱり私も真剣に考えた方がいいのかな?


「はい、今24です。でも結婚なんて想像できない…どうして結婚しようと思ったんですか?」


「ええ…?周りの女の子たちを黙らせるため?」と軽く笑いながら、衝撃的な理由が返ってきた。


「えー!?どういうことですか???」


どうやら美人でスタイルもいい店長を妬んで有る事無い事…というより無い事ばかり噂されて、だいたいその内容が「遊び人」ということだったらしい。


その時既に旦那さんと付き合っていたから、「結婚したら噂も無くなるかも」と思ったんだそう…。


「でも、わかったわ。私が結婚しようがしまいが、言う人は言うって。」


と肩をすくめた。
私には無縁の理由だ…美人なりの悩みもあるんだなぁ。


「相原さんは結婚願望ないの?」


「いやあ…フラれたばかりで結婚は考えられないです…。」


と言って笑うと、「そんなタイミングだからこそ考えなきゃ!」と言い返された。

え、フラれた今だから!?


「まあでも今の私の話だと、結婚にいいイメージは持てないわよね…」と言って少し考えて


「そうねぇ…その時付き合ってたから結婚したんじゃなくて、やっぱり“この人だから”結婚を決められたのよ。

付き合ってる時から私のペースを尊重してくれる人だったから、一緒になってもいいかな…と思って。」


不規則な生活だし、一人の時間もほしいということに対して文句を言われたことがないんだとか。


「相原さんはどんな人が好みなの?」


「好み…ですか?えーっと」


年上で…優しくて…カッコよくて…


「つまり神屋くんね?」と笑われた。


ええ…本当に運命だと思ったのに!1年も経たずしてフラれるなんて。


そこでお店に着いて話は中断された。


今日は刈谷さんが早番で彰が遅番だ。


店長がいるからか、今週初めて目を合わせてくれた…すぐ逸らされたけど。


週末はオープンから入店が多い。

テンパるほどではないけど、お昼が近付くにつれてどんどん忙しくなっていった。


(おみくじに焦るな、と書いてたじゃん!落ち着け!)


二人連れのお客様をお見送りしたところで店長に呼び止められた。


「相原さん、刈谷さん戻ってきたから休憩入って。」

接客に集中してて気付かなかったけど、いつの間にか彰も出勤していた。


「はい、行ってきます。」



食堂に移動して1番手前の席に座る。

お弁当を半分くらい食べたあたりで店長も食堂にきた。


「今日は週末にしては少ないわね…。」と言いながら向かいの席に座った。


それでも私は必死なんだけど…。


「朝の話、途中になっちゃったけど」と店長から切り出してきた。


「どうしてカッコよくて優しくてオシャレな人が好きなの?」


え、誰でもそういう人は好きなんじゃ?と思ったけど、改めてどうしてだろう?と考えた。


「えーっと、自慢できるし?」


と何気なく言ったけど、「自慢のために付き合うの?」と言われてやっとハッとした。


あー、私。自慢したかったんだ!


海で遭遇した気になってた人も、その前に付き合ってた人も。



共通点、「自慢できる人」だった!


それでちゃんと自慢してた!自分の願い、叶えてたじゃん!



…やばい!早く帰って神様に報告したい!
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