猫神様のお気に召すまま

結香こっこ

文字の大きさ
上 下
25 / 128
三章:二人のカウンセラー

話し合い

しおりを挟む
刈谷さんとはギスギスしたままだけど、たまたま入店が立て続いてあっという間に休憩時間になった。


それまでに瑠偉くんによる初の朝礼と(緊張のためか棒読みになってて笑ってしまった)、刈谷さんの休憩もあったからわりと穏やかな気持ちを保てたな…。


瑠偉くんと刈谷さんに「休憩入ります」と言って従業員食堂に移動した。



真ん中あたりの席に座ってホッとため息をつく。


昨日、彰と刈谷さんが話しあったって…なんだろう?


注意程度かな?


それにしても今だに刈谷さんが私に対して冷たい態度を続ける意味がわからない…。



ゆっくりお弁当を食べながら(考えても仕方ないか)と思って、神様の宿題を考えることにした。



(共通点かー…)



深掘り…深掘り…んーーーー難しい!


神様はわかってるんだろか?ヒントくれないかなー!


結局、休憩中に「これ!」と言った答えが出ないままお店に戻ると、バックルームのデスクで瑠偉くんが何かの書類と睨めっこしていた。


「瑠偉くん…眉間にシワが寄ってるよ…?」


ハッとして「ヤバいヤバい!」人差し指で眉間をグリグリほぐす瑠偉くんに「そんな難しい内容なの?」と聞くと


「本社に送る先週の商品反応の報告書と館のホームページに載せてもらう申請書、それに来週のイベント内容の把握!

申請書はできたけど、報告書がねー!」


髪をグチャッとしながら「もう頭パンクしそう!」っと不貞腐れる。


なんか聞いただけで頭痛くなりそうだったから「が…頑張ってね!」と言ってそそくさと店頭に出た。


もしかしたら私は次期サブに抜擢されなくてよかったかもしれない…それも願いが叶ったということだろうか?



引き続き刈谷さんとは必要以上に接触せずに接客に集中した。


ちょうどお客様をお見送りした瞬間、背後から「お疲れ様です」と声がかかった。


もちろん振り返る前に誰かわかる。


彰だ。


いざ“その時”を迎えるとやっぱり少しは緊張する。


顔が引きずらないように意識しながら振り返った。



「神屋さん、お疲れ様です。」


「今、大丈夫?裏で少し話をしたいんだけど。」


そう言う彰の後ろの方から刈谷さんが一瞬こちらを睨んだように見えたのは気のせいだろうか。


もちろん接客が終わったところだ。断る理由もないので「大丈夫です」と言って二人でバックルームに入った。


書類と睨めっこしていた瑠偉くんにも一度店頭に出てもらって、彰と二人になる。


「座って。」


と、言われて向かい合わせに座った。


「刈谷さんのことだけど、まずは嫌な思いをさせる事態になって申し訳ない。
こんなことになったのは俺にも責任がある。」



と言って頭を下げられた。



そんなことされたら許すしか選択肢がなくなるんだけど…。


「いえ…店長が止めてくれましたし、私もムキになって大人気なかったと反省しています。」


そう言うと困ったように笑って


「殴られるくらいの覚悟をして来たんだけどな。」


と呟いた。


「そんな凶暴じゃないです…。」


じとーっと見つめ返しながら言うと「ごめん、ごめん。わかってるよ。」と言って話を続けた。


「とりあえず今のところクレームはない。多分、もう来ないんじゃないかな…と個人的には思っている。」


そうなればいいな…。


その後は改めて店内での私語を注意され、これは確かにその通りなので素直に受け止めた。



「それで昨日、刈谷さんと話し合ったんだけど…あまり反省の色が感じられなかった。
君にも冷たく当たっているそうだね?」


「はい…。」



「この状況が続くようなら人員変えの処置を取らざるを得なくなる。

極力早く状況が好転するように勤めるが、何かあったら遠慮なく相談してほしい。

もちろん、俺じゃなくて店長でもいい。」


「ありがとうございます」と言って、これで話は終わったかと思って立ち上がろうとしたら


「待って。ごめん、もう少しいいか?」


と言われたので座り直した。


「刈谷さんとは一旦別れることにした。」
しおりを挟む
感想 5

あなたにおすすめの小説

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

クラスメイトの美少女と無人島に流された件

桜井正宗
青春
 修学旅行で離島へ向かう最中――悪天候に見舞われ、台風が直撃。船が沈没した。  高校二年の早坂 啓(はやさか てつ)は、気づくと砂浜で寝ていた。周囲を見渡すとクラスメイトで美少女の天音 愛(あまね まな)が隣に倒れていた。  どうやら、漂流して流されていたようだった。  帰ろうにも島は『無人島』。  しばらくは島で生きていくしかなくなった。天音と共に無人島サバイバルをしていくのだが……クラスの女子が次々に見つかり、やがてハーレムに。  男一人と女子十五人で……取り合いに発展!?

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

マキノのカフェ開業奮闘記 ~Café Le Repos~

Repos
ライト文芸
カフェ開業を夢見たマキノが、田舎の古民家を改装して開業する物語。 おいしいご飯がたくさん出てきます。 いろんな人に出会って、気づきがあったり、迷ったり、泣いたり。 助けられたり、恋をしたり。 愛とやさしさののあふれるお話です。 なろうにも投降中

古屋さんバイト辞めるって

四宮 あか
ライト文芸
ライト文芸大賞で奨励賞いただきました~。 読んでくださりありがとうございました。 「古屋さんバイト辞めるって」  おしゃれで、明るくて、話しも面白くて、仕事もすぐに覚えた。これからバイトの中心人物にだんだんなっていくのかな? と思った古屋さんはバイトをやめるらしい。  学部は違うけれど同じ大学に通っているからって理由で、石井ミクは古屋さんにバイトを辞めないように説得してと店長に頼まれてしまった。  バイト先でちょろっとしか話したことがないのに、辞めないように説得を頼まれたことで困ってしまった私は……  こういう嫌なタイプが貴方の職場にもいることがあるのではないでしょうか? 表紙の画像はフリー素材サイトの https://activephotostyle.biz/さまからお借りしました。

ちょっと大人な体験談はこちらです

神崎未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない ちょっと大人な体験談です。 日常に突然訪れる刺激的な体験。 少し非日常を覗いてみませんか? あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ? ※本作品ではPixai.artで作成した生成AI画像ならびに  Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。 ※不定期更新です。 ※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。

極悪家庭教師の溺愛レッスン~悪魔な彼はお隣さん~

恵喜 どうこ
恋愛
「高校合格のお礼をくれない?」 そう言っておねだりしてきたのはお隣の家庭教師のお兄ちゃん。 私よりも10歳上のお兄ちゃんはずっと憧れの人だったんだけど、好きだという告白もないままに男女の関係に発展してしまった私は苦しくて、どうしようもなくて、彼の一挙手一投足にただ振り回されてしまっていた。 葵は私のことを本当はどう思ってるの? 私は葵のことをどう思ってるの? 意地悪なカテキョに翻弄されっぱなし。 こうなったら確かめなくちゃ! 葵の気持ちも、自分の気持ちも! だけど甘い誘惑が多すぎて―― ちょっぴりスパイスをきかせた大人の男と女子高生のラブストーリーです。

阿呆になりて直日の御霊で受けよ

降守鳳都
歴史・時代
ちょっと変わった視点からの壬申の乱の物語です。 様々な要素を好き放題に詰め込んでいます。 奇想天外な展開もあり、コミカルな要素もあり、 じっくりと語り掛けたり、教養の部分も押さえています。 より多くの人に私たちの無意識に根差している 天皇-すめらみこと-の誕生までの物語を 知って頂きたいと思って筆を取りました。

処理中です...