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第五章
必然の出逢い SIDE 仁⑤
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「まさか社長の被害にあったりは……」
彼女が心配になる。
「まだ、新入社員で担当を持ってなさそうだった。けど……」
「今回のドバイの件も含め、社長が問題だな」
「そうですね……」
やっと、興奮が落ち着いた春樹も秘書モードに戻っている。
「春樹、城之内不動産の現社長の事を詳しく調べさせてくれ。早急に」
「わかりました」
調査結果では、セクハラ・パワハラの事実や業者との癒着など、真っ黒な事実が出て来た。
城之内グループとしては、早急に対処する。社長である親父に報告し、許可をもらい今回は自主退職をしてもらう事にした。甘いかもしれないが、良からぬ事を企まれても厄介だ。
城之内不動産の社長を俺のところに呼び出した。
「わざわざお越しいただきありがとうございます」
俺の感情のこもらない言葉に相手は顔を引きつらしている。
「ワシに何か用ですか?」
「はい。あなたの事は色々と報告が上がってます」
「はい?」
「こちらとしては、穏便に済ますために自主退職をオススメします」
「何を!?」
「あなたがして来た悪行を退職、いや自主退職という処分で許そうって言ってるんです。感謝してほしいぐらいです」
冷たい目元に少し口元を緩め微笑んでいるかのような、噂で聞く『氷の微笑』を目の当たりにした城之内不動産の社長は、顔が引き攣る。
「なんでワシが……」
「心当たりがないと?でしたら、こちらに上がっている報告書を警察に渡して調査してもらってもいいですが?」
「もういい!辞めてやる!」
「左様ですか。では書類はうちの秘書の田沼までお願いします」
何か言いたげだが無言で出て行った。
「心当たりが色々あるんでしょうね。もう少しゴネるかと思ってました」
「ああ。プロジェクト前に決着がついて良かった」
「プロジェクトもですが、月野さんが被害に合わなくて良かったですね」
「月野さん?」
「ああ。すみません。数日前、専務が捜しておられた女性の名前がわかったのでお知らせしようと思っていて忘れてました」
「そういう事は早く言え」
「月野真琴さんです」
「真琴……。いい名前だ」
「専務、ニヤケ過ぎです」
「ウルサイ」
「今後の城之内不動産の社長をどなたにお願いするか、もうお考えがありそうですね」
春樹には、俺の考えが読めるようだ。
「ああ、営業部の花田部長に行ってもらいたい」
「花田部長ですか。なるほど」
花田部長は、四十代だが柔軟な発想と人当たりの良さを持つ遣り手で、同年代の中では一番の出世頭だ。
「手が空いている時に来てもらっていいか?あと、城之内不動産についての資料と今後のドバイのプロジェクトについての資料を用意してくれ。花田部長の後任は、春樹と人事部長に任せる」
「わかりました」
こうして彼女を見つけ、彼女もとい真琴の職場環境を整えた俺。花田部長には、俺が入社当時から専務に就任するまでお世話になり、俺が春樹以外に素の俺を出せる唯一の存在だ。
花田部長に城之内不動産の現社長の退職から、次の社長を任せたい話をしたら、何か他に理由があるんだろうと見抜かれてしまった。
真琴の事を素直に話した俺に驚かれたが、時々様子を知らせてくれると言う。協力者が増えて心強い。
真琴待ってろよ!
ところが、ドバイのプロジェクトの総責任者の立場から、この後すぐにドバイを拠点として仕事をすることになってしまった……。
彼女が心配になる。
「まだ、新入社員で担当を持ってなさそうだった。けど……」
「今回のドバイの件も含め、社長が問題だな」
「そうですね……」
やっと、興奮が落ち着いた春樹も秘書モードに戻っている。
「春樹、城之内不動産の現社長の事を詳しく調べさせてくれ。早急に」
「わかりました」
調査結果では、セクハラ・パワハラの事実や業者との癒着など、真っ黒な事実が出て来た。
城之内グループとしては、早急に対処する。社長である親父に報告し、許可をもらい今回は自主退職をしてもらう事にした。甘いかもしれないが、良からぬ事を企まれても厄介だ。
城之内不動産の社長を俺のところに呼び出した。
「わざわざお越しいただきありがとうございます」
俺の感情のこもらない言葉に相手は顔を引きつらしている。
「ワシに何か用ですか?」
「はい。あなたの事は色々と報告が上がってます」
「はい?」
「こちらとしては、穏便に済ますために自主退職をオススメします」
「何を!?」
「あなたがして来た悪行を退職、いや自主退職という処分で許そうって言ってるんです。感謝してほしいぐらいです」
冷たい目元に少し口元を緩め微笑んでいるかのような、噂で聞く『氷の微笑』を目の当たりにした城之内不動産の社長は、顔が引き攣る。
「なんでワシが……」
「心当たりがないと?でしたら、こちらに上がっている報告書を警察に渡して調査してもらってもいいですが?」
「もういい!辞めてやる!」
「左様ですか。では書類はうちの秘書の田沼までお願いします」
何か言いたげだが無言で出て行った。
「心当たりが色々あるんでしょうね。もう少しゴネるかと思ってました」
「ああ。プロジェクト前に決着がついて良かった」
「プロジェクトもですが、月野さんが被害に合わなくて良かったですね」
「月野さん?」
「ああ。すみません。数日前、専務が捜しておられた女性の名前がわかったのでお知らせしようと思っていて忘れてました」
「そういう事は早く言え」
「月野真琴さんです」
「真琴……。いい名前だ」
「専務、ニヤケ過ぎです」
「ウルサイ」
「今後の城之内不動産の社長をどなたにお願いするか、もうお考えがありそうですね」
春樹には、俺の考えが読めるようだ。
「ああ、営業部の花田部長に行ってもらいたい」
「花田部長ですか。なるほど」
花田部長は、四十代だが柔軟な発想と人当たりの良さを持つ遣り手で、同年代の中では一番の出世頭だ。
「手が空いている時に来てもらっていいか?あと、城之内不動産についての資料と今後のドバイのプロジェクトについての資料を用意してくれ。花田部長の後任は、春樹と人事部長に任せる」
「わかりました」
こうして彼女を見つけ、彼女もとい真琴の職場環境を整えた俺。花田部長には、俺が入社当時から専務に就任するまでお世話になり、俺が春樹以外に素の俺を出せる唯一の存在だ。
花田部長に城之内不動産の現社長の退職から、次の社長を任せたい話をしたら、何か他に理由があるんだろうと見抜かれてしまった。
真琴の事を素直に話した俺に驚かれたが、時々様子を知らせてくれると言う。協力者が増えて心強い。
真琴待ってろよ!
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