上 下
64 / 66
第十四章

入院⑦

しおりを挟む
 『カチャ』『バタン』生活音が聞こえて目が覚めた。

 目を開けると自分の部屋のベッドの上ではなく、入院していることを思い出す。

 昨夜は、楽しかった思い出に浸っていたらいつの間にか眠りについた。朝まで起きることなく熟睡していた。

「竹内さん、おはようございます」
「あっ、おはようございます」
「眠れた?」
「はい、ぐっすり」
「それは良かったわ」
 
 昨夜の看護師さんが優しく話しかけてくれる。

「聞いてもいいですか?」
「どうしたの?」
「病院に泊まってたんですか?」
「そうよ。夜勤だったの。もうすぐ日勤の看護師が来るから交代したら帰るわ。何か気になることがあるの?」
「私も将来看護師になりたくて」
「まあ、そうなの?未来の後輩かしら。それまで私も頑張らなくちゃ。なにか聞きたいことがあったらいつでも言ってね」
「はい。ありがとうございます」

 バイタルチェックをしながらも、由奈の質問に笑顔で答えてくれる。夢を現実に繋げる入院にしたい……。
 
 病院生活も案外暇ではない。

 決まった時間に食事、先生の診察、点滴、バイタルチェックと何かと病室に人の出入りがある。

 四人部屋でカーテンで仕切られていているので、音に注意をしていたらある程度は自由だ。

 スマホを見たり、教科書を開いて勉強したり、今のところ退屈をすることはない。スマホで本もマンガも読めるし、人に迷惑をかけないなら、やはりスマホは便利だ。

 みんなが学校に行っている時間は、当たり前だが誰ともメッセージのやり取りはできない。

 学校が終わって、みんなが自宅に帰り着いたころ、由奈のスマホがブルブルと震えだす。由奈が入院したことを知り、メッセージをくれているのだ。グループではなく個人的に……。

 入学してからスマホでは色々なトラブルがあったが、二学期も終わりが見えた頃、みんながある程度の使い方を学んだのだろう。

 少しずつだが返事を返していく。

 『ありがとう』と短い言葉に心からのお礼を込めて……。



 
しおりを挟む

処理中です...