手のひらサイズの無限の世界〜初恋と青春は鍵付きで〜

せいとも

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第十三章

体育祭⑥

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 誰もが青の一位はないだろうと思っていたのだが、バトンがアンカーに渡った瞬間から、一気にスピードがあがりぐんぐん前との距離をつめて行く。颯爽と駆け抜けて行く姿に、女子の黄色い声が至るところから上がる。

「南くんー」
「南先輩~」
「キャー」
「カッコイイー」

 どうやら、青のビブスの彼は南くんというらしい。南くん情報は、聞かずとも後ろの女子から聞こえてくる。

「あれって、野球部だった南先輩だよね」
「うんうん。四番でピッチャーでキャプテン」
「誰か告白してフラれたって言ってなかった?」
「4組の堀田さんじゃない?」
「あっ、そうだ!」

 堀田さんは、一年生の中でも可愛いと言われている女子なのだが、少し性格に問題がある。何でも自分が一番でないと気がすまない。絵理香達のグループメッセージに入ってすぐに揉めた一人だ。客観的にみるとどっちもどっちなのだが、絵理香達と違い校則違反をしたり、学校をサボったりはしないので、まだまともなのかもしれない……。

「野球部の南先輩だって」
「名前がわかっただけで充分」
「そうなの?」
「憧れの存在として、これからも遠くから見とくよ」
「しゃべりたいとかないの?」
「ゆーちゃんも見てたでしょう?かなりの人気者だよ」
「そうだけど……」
「身近なアイドル的存在かな……」

 確かに、一年生から見ると三年生は遠い存在で、大人っぽく見える。同じ部活だったりしない限り、話をする機会すらないものだ。

「先輩に憧れて、学校で会えるかもと思うだけで、学校生活が更に楽しくなるよ」

 由奈も、瑞希と学校が離れるというきっかけがあったから一歩を踏み出せた。同じ学校に通っていたら今でも見ているだけだったかもしれない。

 初恋からの一歩は、かなりハードルが高いのだ。

 由奈は朱里の気持ちも痛いほどわかるので、応援はしつつ見守ることにする。お互いの初恋の恋バナで盛り上がるだけで楽しいのだ。

 体育祭は、由奈達のクラスの赤チームが優勝した。玉入れで、少しでも貢献できたと思うと嬉しい。

 

 
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