手のひらサイズの無限の世界〜初恋と青春は鍵付きで〜

せいとも

文字の大きさ
上 下
57 / 66
第十三章

体育祭⑥

しおりを挟む
 誰もが青の一位はないだろうと思っていたのだが、バトンがアンカーに渡った瞬間から、一気にスピードがあがりぐんぐん前との距離をつめて行く。颯爽と駆け抜けて行く姿に、女子の黄色い声が至るところから上がる。

「南くんー」
「南先輩~」
「キャー」
「カッコイイー」

 どうやら、青のビブスの彼は南くんというらしい。南くん情報は、聞かずとも後ろの女子から聞こえてくる。

「あれって、野球部だった南先輩だよね」
「うんうん。四番でピッチャーでキャプテン」
「誰か告白してフラれたって言ってなかった?」
「4組の堀田さんじゃない?」
「あっ、そうだ!」

 堀田さんは、一年生の中でも可愛いと言われている女子なのだが、少し性格に問題がある。何でも自分が一番でないと気がすまない。絵理香達のグループメッセージに入ってすぐに揉めた一人だ。客観的にみるとどっちもどっちなのだが、絵理香達と違い校則違反をしたり、学校をサボったりはしないので、まだまともなのかもしれない……。

「野球部の南先輩だって」
「名前がわかっただけで充分」
「そうなの?」
「憧れの存在として、これからも遠くから見とくよ」
「しゃべりたいとかないの?」
「ゆーちゃんも見てたでしょう?かなりの人気者だよ」
「そうだけど……」
「身近なアイドル的存在かな……」

 確かに、一年生から見ると三年生は遠い存在で、大人っぽく見える。同じ部活だったりしない限り、話をする機会すらないものだ。

「先輩に憧れて、学校で会えるかもと思うだけで、学校生活が更に楽しくなるよ」

 由奈も、瑞希と学校が離れるというきっかけがあったから一歩を踏み出せた。同じ学校に通っていたら今でも見ているだけだったかもしれない。

 初恋からの一歩は、かなりハードルが高いのだ。

 由奈は朱里の気持ちも痛いほどわかるので、応援はしつつ見守ることにする。お互いの初恋の恋バナで盛り上がるだけで楽しいのだ。

 体育祭は、由奈達のクラスの赤チームが優勝した。玉入れで、少しでも貢献できたと思うと嬉しい。

 

 
しおりを挟む
感想 20

あなたにおすすめの小説

ローズお姉さまのドレス

有沢真尋
児童書・童話
最近のルイーゼは少しおかしい。 いつも丈の合わない、ローズお姉さまのドレスを着ている。 話し方もお姉さまそっくり。 わたしと同じ年なのに、ずいぶん年上のように振舞う。 表紙はかんたん表紙メーカーさまで作成

灰かぶりの子ども・サンドリヨン

山口かずなり
児童書・童話
サンドリヨンは、美人な子ども。 毎日お掃除ばかりで灰まみれ。 三つの呼び鈴が鳴ったら、3人の女のお世話ばかり。 そんな可哀想なサンドリヨンにも、叶えたい夢がありました。 その夢とは…。 (不幸でしあわせな子どもたちシリーズでは、他の子どもたちのストーリーが楽しめます。 短編集なので気軽にお読みください)

鎌倉西小学校ミステリー倶楽部

澤田慎梧
児童書・童話
【「鎌倉猫ヶ丘小ミステリー倶楽部」に改題して、アルファポリスきずな文庫より好評発売中!】 https://kizuna.alphapolis.co.jp/book/11230 【「第1回きずな児童書大賞」にて、「謎解きユニーク探偵賞」を受賞】 市立「鎌倉西小学校」には不思議な部活がある。その名も「ミステリー倶楽部」。なんでも、「学校の怪談」の正体を、鮮やかに解明してくれるのだとか……。 学校の中で怪奇現象を目撃したら、ぜひとも「ミステリー倶楽部」に相談することをオススメする。 案外、つまらない勘違いが原因かもしれないから。 ……本物の「お化け」や「妖怪」が出てくる前に、相談しに行こう。 ※本作品は小学校高学年以上を想定しています。作中の漢字には、ふりがなが多く振ってあります。 ※本作品はフィクションです。実在の人物・団体とは一切関係ありません。 ※本作品は、三人の主人公を描いた連作短編です。誰を主軸にするかで、ジャンルが少し変化します。 ※カクヨムさんにも投稿しています(初出:2020年8月1日)

忠犬ハジッコ

SoftCareer
児童書・童話
もうすぐ天寿を全うするはずだった老犬ハジッコでしたが、飼い主である高校生・澄子の魂が、偶然出会った付喪神(つくもがみ)の「夜桜」に抜き去られてしまいます。 「夜桜」と戦い力尽きたハジッコの魂は、犬の転生神によって、抜け殻になってしまった澄子の身体に転生し、奪われた澄子の魂を取り戻すべく、仲間達の力を借りながら奮闘努力する……というお話です。 ※今まで、オトナ向けの小説ばかり書いておりましたが、  今回は中学生位を読者対象と想定してチャレンジしてみました。  お楽しみいただければうれしいです。

おっとりドンの童歌

花田 一劫
児童書・童話
いつもおっとりしているドン(道明寺僚) が、通学途中で暴走車に引かれてしまった。 意識を失い気が付くと、この世では見たことのない奇妙な部屋の中。 「どこ。どこ。ここはどこ?」と自問していたら、こっちに雀が近づいて来た。 なんと、その雀は歌をうたい狂ったように踊って(跳ねて)いた。 「チュン。チュン。はあ~。らっせーら。らっせいら。らせらせ、らせーら。」と。 その雀が言うことには、ドンが死んだことを(津軽弁や古いギャグを交えて)伝えに来た者だという。 道明寺が下の世界を覗くと、テレビのドラマで観た昔話の風景のようだった。 その中には、自分と瓜二つのドン助や同級生の瓜二つのハナちゃん、ヤーミ、イート、ヨウカイ、カトッぺがいた。 みんながいる村では、ヌエという妖怪がいた。 ヌエとは、顔は鬼、身体は熊、虎の手や足をもち、何とシッポの先に大蛇の頭がついてあり、人を食べる恐ろしい妖怪のことだった。 ある時、ハナちゃんがヌエに攫われて、ドン助とヤーミがヌエを退治に行くことになるが、天界からドラマを観るように楽しんで鑑賞していた道明寺だったが、道明寺の体は消え、意識はドン助の体と同化していった。 ドン助とヤーミは、ハナちゃんを救出できたのか?恐ろしいヌエは退治できたのか?

四尾がつむぐえにし、そこかしこ

月芝
児童書・童話
その日、小学校に激震が走った。 憧れのキラキラ王子さまが転校する。 女子たちの嘆きはひとしお。 彼に淡い想いを抱いていたユイもまた動揺を隠せない。 だからとてどうこうする勇気もない。 うつむき複雑な気持ちを抱えたままの帰り道。 家の近所に見覚えのない小路を見つけたユイは、少し寄り道してみることにする。 まさかそんな小さな冒険が、あんなに大ごとになるなんて……。 ひょんなことから石の祠に祀られた三尾の稲荷にコンコン見込まれて、 三つのお仕事を手伝うことになったユイ。 達成すれば、なんと一つだけ何でも願い事を叶えてくれるという。 もしかしたら、もしかしちゃうかも? そこかしこにて泡沫のごとくあらわれては消えてゆく、えにしたち。 結んで、切って、ほどいて、繋いで、笑って、泣いて。 いろんな不思議を知り、数多のえにしを目にし、触れた先にて、 はたしてユイは何を求め願うのか。 少女のちょっと不思議な冒険譚。 ここに開幕。

灰色のねこっち

ひさよし はじめ
児童書・童話
痩せっぽちでボロボロで使い古された雑巾のような毛色の猫の名前は「ねこっち」 気が弱くて弱虫で、いつも餌に困っていたねこっちはある人と出会う。 そして一匹と一人の共同生活が始まった。 そんなねこっちのノラ時代から飼い猫時代、そして天に召されるまでの驚きとハラハラと涙のお話。 最後まで懸命に生きた、一匹の猫の命の軌跡。 ※実話を猫視点から書いた童話風なお話です。

ちきゅうのおみやげ(α版)

山碕田鶴
絵本
宇宙人の たこ1号 が地球観光から戻ってきました。おみやげは何かな? 「まちがいさがし」をしながらお話が進む絵本です。フルカラー版と白黒版があります。フルカラー、白黒共に絵柄は同じです。 カラーユニバーサルデザイン推奨色使用。  ※絵本レイアウト+加筆修正した改稿版が「絵本ひろば」にあります。

処理中です...