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第十三章
体育祭⑤
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「竹内さん、北川さんお疲れ。チームに貢献してくれてサンキュー」
応援団の田中から言葉が掛かった。普段、会話をすることがないので驚くも、妙に嬉しい。
「田中くんも応援団お疲れ様。凄くカッコいいよ」
「最後までよろしくね」
由奈達からの言葉に田中も嬉しそうだ。
学校行事を通じて、生徒同士の絆が深まる。こんなことでもなかったら、あまり関わりたくないと田中と話をすることもなかったし、田中がこんなにも気さくだとも知らないままだった。今までは第一印象で判断してしまっていたからだ。
「朱里ちゃん、私来年はリレーとかに出たいかも」
「私も思った。失敗しても、遅くても一生懸命に参加していたら誰も文句は言わないもんね」
「うん」
「あっ、ゆーちゃん」
「ん?」
「あの人」
朱里の指差す先には、次のプログラムのリレーのスタンバイをしている生徒の姿があった。
「どこどこ?」
「青のビブス着てる人」
由奈は目を凝らしてリレーの列を見る。
「あっ、わかった!」
がっしりした体の日に焼けた先輩だ。
少し離れているので顔ははっきり見えないが、雰囲気からイケメンオーラを感じる。
由奈の視線は、青いビブスに釘付けだ。リレーは、グラウンドのトラックを一人一周するので間違いなく由奈達の前も通る。姉の由香も第一走者で出るが、もうそれどころではない。姉の走りは予行で見ているので、今は朱里の気になる人を見逃したくはない。
姉のチームのアンカーは白のビブスなので、クラスは違うようだ。名前さえわかれば、姉に聞くことも出来る。
『よーい パンッ』
ピストルの音と共にスタートがきられた。昨日同様、由香は一位で走っている。どこかで父が撮影しているはずだ。最後のコーナーを曲がりスタートから一位のままバトンが第二走者に渡った。
そこからは、抜かしては抜かされを繰り返し、チームの順位が何度も変わる。
そして――。
アンカーにバトンが渡った。白が一位で受け取り走り出す。その後、赤、黄と続き青が最後だ。一位との差はグラウンドトラック四分の一といったところか。
応援団の田中から言葉が掛かった。普段、会話をすることがないので驚くも、妙に嬉しい。
「田中くんも応援団お疲れ様。凄くカッコいいよ」
「最後までよろしくね」
由奈達からの言葉に田中も嬉しそうだ。
学校行事を通じて、生徒同士の絆が深まる。こんなことでもなかったら、あまり関わりたくないと田中と話をすることもなかったし、田中がこんなにも気さくだとも知らないままだった。今までは第一印象で判断してしまっていたからだ。
「朱里ちゃん、私来年はリレーとかに出たいかも」
「私も思った。失敗しても、遅くても一生懸命に参加していたら誰も文句は言わないもんね」
「うん」
「あっ、ゆーちゃん」
「ん?」
「あの人」
朱里の指差す先には、次のプログラムのリレーのスタンバイをしている生徒の姿があった。
「どこどこ?」
「青のビブス着てる人」
由奈は目を凝らしてリレーの列を見る。
「あっ、わかった!」
がっしりした体の日に焼けた先輩だ。
少し離れているので顔ははっきり見えないが、雰囲気からイケメンオーラを感じる。
由奈の視線は、青いビブスに釘付けだ。リレーは、グラウンドのトラックを一人一周するので間違いなく由奈達の前も通る。姉の由香も第一走者で出るが、もうそれどころではない。姉の走りは予行で見ているので、今は朱里の気になる人を見逃したくはない。
姉のチームのアンカーは白のビブスなので、クラスは違うようだ。名前さえわかれば、姉に聞くことも出来る。
『よーい パンッ』
ピストルの音と共にスタートがきられた。昨日同様、由香は一位で走っている。どこかで父が撮影しているはずだ。最後のコーナーを曲がりスタートから一位のままバトンが第二走者に渡った。
そこからは、抜かしては抜かされを繰り返し、チームの順位が何度も変わる。
そして――。
アンカーにバトンが渡った。白が一位で受け取り走り出す。その後、赤、黄と続き青が最後だ。一位との差はグラウンドトラック四分の一といったところか。
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