手のひらサイズの無限の世界〜初恋と青春は鍵付きで〜

せいとも

文字の大きさ
上 下
45 / 66
第十二章

文化祭②

しおりを挟む
『由奈ちゃんへ

 文化祭の練習頑張っていますか? ピアノの伴奏に選ばれるなんてすごいね。吹奏楽部とクラスの伴奏、両方は大変だと思います。無理しないようにね。文化祭は、家族じゃないと見に行けないんだよね?残念。
 僕の学校は、先に体育祭があるので、今は暑い中で毎日練習しています。僕はクラス対抗リレーのアンカーに選ばれました。
 部活も秋の総体が始まり、練習と試合に忙しい毎日です。
 お互い頑張ろうね。
 瑞希 』

 体育祭のリレーで、アンカーを走る瑞希の姿を想像し、ドキドキする。男子校の体育祭はどんな感じなのだろうか。同じ学校に通っていたら、瑞希の走る姿に女子はキャーキャー大騒ぎだっただろうと想像できる。

 学校でも、かっこいいと言われている先輩がいるが、由奈は瑞希と比べてしまい全く何とも思わない。

 そのことを朱里に言ったら、「瑞希くんと比べたら可哀想だよ」と言われた。

「確かに」と妙に納得したものだ。

 朱里もいつからか、みーくんから瑞希くんと、由奈の影響で呼び方が変わっていた。幼馴染みの関係も微妙に変化するお年頃だ。


◇◇◇

 あっという間に文化祭の日がやって来た。

 由奈にとっては初めての文化祭。姉の由香にとっては最後の文化祭。

 父が仕事の都合で休みが取れなかったので、母が一人で見に来てくれる。

 午前中は全クラスの発表、午後からが文化部による発表が行われる。母は朝から張り切っていて、最初から最後まで見ると言っている。

「はぁ……」
「どうしたの?」
「緊張してきた。お姉ちゃんは緊張しないの?」
「しないことはないけど、あまり力が入りすぎると余計に失敗するから、なるようになると思うことにしてる。由奈、クラスの伴奏は、ピアノからあまり観覧席が見えないから大丈夫よ。吹奏楽の発表の方が、舞台から客席がよく見える。でも、仲間がいっぱいいるんだから、心強いでしょう?」

 確かに姉の言う通りだ。

 クラスの伴奏は一人だから間違えてしまうと目立つとプレッシャーだったが、ピアノから指揮者を見るのでお客さんの顔はほとんど見えない。

 クラリネットを吹く時は、客席がよく見えるが頑張って練習してきた仲間がたくさんいる。


しおりを挟む
感想 20

あなたにおすすめの小説

ローズお姉さまのドレス

有沢真尋
児童書・童話
最近のルイーゼは少しおかしい。 いつも丈の合わない、ローズお姉さまのドレスを着ている。 話し方もお姉さまそっくり。 わたしと同じ年なのに、ずいぶん年上のように振舞う。 表紙はかんたん表紙メーカーさまで作成

生贄姫の末路 【完結】

松林ナオ
児童書・童話
水の豊かな国の王様と魔物は、はるか昔にある契約を交わしました。 それは、姫を生贄に捧げる代わりに国へ繁栄をもたらすというものです。 水の豊かな国には双子のお姫様がいます。 ひとりは金色の髪をもつ、活発で愛らしい金のお姫様。 もうひとりは銀色の髪をもつ、表情が乏しく物静かな銀のお姫様。 王様が生贄に選んだのは、銀のお姫様でした。

悪女の死んだ国

神々廻
児童書・童話
ある日、民から恨まれていた悪女が死んだ。しかし、悪女がいなくなってからすぐに国は植民地になってしまった。実は悪女は民を1番に考えていた。 悪女は何を思い生きたのか。悪女は後世に何を残したのか......... 2話完結 1/14に2話の内容を増やしました

灰かぶりの子ども・サンドリヨン

山口かずなり
児童書・童話
サンドリヨンは、美人な子ども。 毎日お掃除ばかりで灰まみれ。 三つの呼び鈴が鳴ったら、3人の女のお世話ばかり。 そんな可哀想なサンドリヨンにも、叶えたい夢がありました。 その夢とは…。 (不幸でしあわせな子どもたちシリーズでは、他の子どもたちのストーリーが楽しめます。 短編集なので気軽にお読みください)

きたいの悪女は処刑されました

トネリコ
児童書・童話
 悪女は処刑されました。  国は益々栄えました。  おめでとう。おめでとう。  おしまい。

お姫様の願い事

月詠世理
児童書・童話
赤子が生まれた時に母親は亡くなってしまった。赤子は実の父親から嫌われてしまう。そのため、赤子は血の繋がらない女に育てられた。 決められた期限は十年。十歳になった女の子は母親代わりに連れられて城に行くことになった。女の子の実の父親のもとへ——。女の子はさいごに何を願うのだろうか。

王女様は美しくわらいました

トネリコ
児童書・童話
   無様であろうと出来る全てはやったと満足を抱き、王女様は美しくわらいました。  それはそれは美しい笑みでした。  「お前程の悪女はおるまいよ」  王子様は最後まで嘲笑う悪女を一刀で断罪しました。  きたいの悪女は処刑されました 解説版

おっとりドンの童歌

花田 一劫
児童書・童話
いつもおっとりしているドン(道明寺僚) が、通学途中で暴走車に引かれてしまった。 意識を失い気が付くと、この世では見たことのない奇妙な部屋の中。 「どこ。どこ。ここはどこ?」と自問していたら、こっちに雀が近づいて来た。 なんと、その雀は歌をうたい狂ったように踊って(跳ねて)いた。 「チュン。チュン。はあ~。らっせーら。らっせいら。らせらせ、らせーら。」と。 その雀が言うことには、ドンが死んだことを(津軽弁や古いギャグを交えて)伝えに来た者だという。 道明寺が下の世界を覗くと、テレビのドラマで観た昔話の風景のようだった。 その中には、自分と瓜二つのドン助や同級生の瓜二つのハナちゃん、ヤーミ、イート、ヨウカイ、カトッぺがいた。 みんながいる村では、ヌエという妖怪がいた。 ヌエとは、顔は鬼、身体は熊、虎の手や足をもち、何とシッポの先に大蛇の頭がついてあり、人を食べる恐ろしい妖怪のことだった。 ある時、ハナちゃんがヌエに攫われて、ドン助とヤーミがヌエを退治に行くことになるが、天界からドラマを観るように楽しんで鑑賞していた道明寺だったが、道明寺の体は消え、意識はドン助の体と同化していった。 ドン助とヤーミは、ハナちゃんを救出できたのか?恐ろしいヌエは退治できたのか?

処理中です...