手のひらサイズの無限の世界〜初恋と青春は鍵付きで〜

せいとも

文字の大きさ
上 下
34 / 66
第九章

初デート⁇⑧

しおりを挟む
 由奈は自分の分を瑞希に払い、気になったことを聞く。

「学生証って言われたことないけどいるんだね」
「中学生って言うと学生証って言われることが多いよ」

 確かに背も高く大人びている瑞希は、高校生だと思われてもおかしくない。

「瑞希くん高校生に見えるもんね」
「ええ⁈そんなに老けてる?」
「プッ、老けてるんじゃなくて大人っぽいの」
「そうかなぁ。この前までランドセル背負ってたけど?」

 毎日顔を合わせていた頃は、瑞希のランドセル姿に違和感はなかったが、改めて思い出すと見た目とランドセルにギャップがあった気もする。

「じゃあ、行こう。何が見たい?」
「イルカ!」
「イルカショーの時間を確認してから見て回ろう」

 館内に入ると外の暑さが嘘のように涼しい。人が多い館内を瑞希と手を繋ぎ見て回る。

 館内の案内を見て連れて行ってくれる姿にも、きゅんとする。同じ年なのに頼りがいがあり何もかも完璧だ。

 水族館でも瑞希の姿は目立っていてチラチラ視線を感じるが、館内が暗めなので駅前ほど気にならない。

 瑞希に手を引かれ、迷うことなく館内を回りイルカショーのプールまでやって来た。

「前の方に座っていい?」
「濡れないかな?」
「すぐ乾くよ」

 瑞希に連れられ前方の席に座る。心なしか瑞希のテンションが高い。

「瑞希くんもイルカ好き?」
「ヘヘッ、バレた?つぶらな瞳がなんとも言えない」

 いつも大人っぽい瑞希が急に年相応になり、その姿にも胸を撃ち抜かれる。

「ズルイ……」
「ん?なにか言った?」
「ううん」

 イケメンで優しくて大人っぽくて、でもこんな自然体な一面もあるとわかって更に好きになる。本当にズルいと思う。魅力が溢れている。好きにならない方がおかしいと思う。

 そこでふと思い出した疑問を聞いてみることにした。

「瑞希くん、私以外からもお手紙届いた?」
「へ?」
「卒業式の日、手紙を送ってってみんなに言ってたから」
「誰からも来てない。由奈ちゃんだけだよ。届いた時は、すっごく驚いたけど嬉しかった」

 とびきりの笑顔で嬉しかったと言ってくれる瑞希に、胸が熱くなる。
 


しおりを挟む
感想 20

あなたにおすすめの小説

王女様は美しくわらいました

トネリコ
児童書・童話
   無様であろうと出来る全てはやったと満足を抱き、王女様は美しくわらいました。  それはそれは美しい笑みでした。  「お前程の悪女はおるまいよ」  王子様は最後まで嘲笑う悪女を一刀で断罪しました。  きたいの悪女は処刑されました 解説版

瑠璃の姫君と鉄黒の騎士

石河 翠
児童書・童話
可愛いフェリシアはひとりぼっち。部屋の中に閉じ込められ、放置されています。彼女の楽しみは、窓の隙間から空を眺めながら歌うことだけ。 そんなある日フェリシアは、貧しい身なりの男の子にさらわれてしまいました。彼は本来自分が受け取るべきだった幸せを、フェリシアが台無しにしたのだと責め立てます。 突然のことに困惑しつつも、男の子のためにできることはないかと悩んだあげく、彼女は一本の羽を渡すことに決めました。 大好きな友達に似た男の子に笑ってほしい、ただその一心で。けれどそれは、彼女の命を削る行為で……。 記憶を失くしたヒロインと、幸せになりたいヒーローの物語。ハッピーエンドです。 この作品は、他サイトにも投稿しております。 表紙絵は写真ACよりチョコラテさまの作品(写真ID:249286)をお借りしています。

生贄姫の末路 【完結】

松林ナオ
児童書・童話
水の豊かな国の王様と魔物は、はるか昔にある契約を交わしました。 それは、姫を生贄に捧げる代わりに国へ繁栄をもたらすというものです。 水の豊かな国には双子のお姫様がいます。 ひとりは金色の髪をもつ、活発で愛らしい金のお姫様。 もうひとりは銀色の髪をもつ、表情が乏しく物静かな銀のお姫様。 王様が生贄に選んだのは、銀のお姫様でした。

ローズお姉さまのドレス

有沢真尋
児童書・童話
最近のルイーゼは少しおかしい。 いつも丈の合わない、ローズお姉さまのドレスを着ている。 話し方もお姉さまそっくり。 わたしと同じ年なのに、ずいぶん年上のように振舞う。 表紙はかんたん表紙メーカーさまで作成

きたいの悪女は処刑されました

トネリコ
児童書・童話
 悪女は処刑されました。  国は益々栄えました。  おめでとう。おめでとう。  おしまい。

【完結】月夜のお茶会

佐倉穂波
児童書・童話
 数年に一度開催される「太陽と月の式典」。太陽の国のお姫様ルルは、招待状をもらい月の国で開かれる式典に赴きました。 第2回きずな児童書大賞にエントリーしました。宜しくお願いします。

悪女の死んだ国

神々廻
児童書・童話
ある日、民から恨まれていた悪女が死んだ。しかし、悪女がいなくなってからすぐに国は植民地になってしまった。実は悪女は民を1番に考えていた。 悪女は何を思い生きたのか。悪女は後世に何を残したのか......... 2話完結 1/14に2話の内容を増やしました

運よく生まれ変われたので、今度は思いっきり身体を動かします!

克全
児童書・童話
「第1回きずな児童書大賞」重度の心臓病のため、生まれてからずっと病院のベッドから動けなかった少年が12歳で亡くなりました。両親と両祖父母は毎日のように妾(氏神)に奇跡を願いましたが、叶えてあげられませんでした。神々の定めで、現世では奇跡を起こせなかったのです。ですが、記憶を残したまま転生させる事はできました。ほんの少しだけですが、運動が苦にならない健康な身体と神与スキルをおまけに付けてあげました。(氏神談)

処理中です...